ご存知の通りeバイクは電動アシストはあるけど、自転車なのでペダルをこがなければ前へ進まない。当然のことながら坂道が延々続く峠越えや長距離を走り切るには、それなりの体力・脚力が必要になる。それをわかっていながら、僕は30日間以内で日本縦断3500kmを走る!と無謀な目的を掲げた。決めたからには何としても成し遂げたい。一方、これまでの長距離ツーリング、度重なる膝の痛みから脚力が不足していることがわかってきた。
スタートまでに少しでも脚力をつけておきたい。実戦でどこか走りたいと思っていたところ、ヤビツ峠のある県道70号の「通行止め解除」という朗報が飛び込んできた。1年前に走った時はヤビツ峠の北側の一部が通行止めで、南側の秦野とヤビツ峠を往復する形になった。しかし、いまなら自宅の相模原から宮ケ瀬、県道70号を使ってヤビツ峠越え、秦野、厚木、相模原と一筆書きで走ることができる。よし決めた、ヤビツ峠へ行こう!
脚力をつけるために、今回は強いアシストが得られる“HIGHモード”は使わないこと(OFF~STDモード)をマイルールにした。朝6時半出発。このところ真夏日があったかと思えば、最高気温が一桁の日があったり、差が激しいので、念のため厚手のウインドブレーカーを持ってゆく。丁度桜の季節であちこちで咲いている。満開の桜を眺めながら、相模川を越え、半原経由で宮ケ瀬へと進む。やまびこ大橋を渡り、県道64号をしばらく進むと県道70号・ヤビツ峠の入口が現れる。7時半。以前はこの交差点に「通行止め」の看板があったが、撤去されている。解除されたを確認して、県道70号へ入って行く。
18km先のヤビツ峠まで交通量が少ない山道が続く。自然に包まれ、のんびりムードになる。すれ違うのはツーリストらしきオートバイとロードバイク、みんな僕と同じように開通する時を待っていたのだろう。道は緩やかにアップダウンを繰り返す。所々にキャンプ場が現れるがどこも静かで、営業している気配はない。道の周りの木々が途切れ、視界が開けると崖の下に流れる中津川が見えた。少しずつ標高が上がっていることがわかる。
深い山の中の道、視界にあるのは木々と空とアスファルトの道路だけ。家から自転車で2時間走っただけなのに別世界だ。僕がこの道を初めて走ったのは中学2年。40年以上も前だが、景色はそれほど変わっていない気がする。道は舗装になったけどねー(笑)
国民宿舎“丹沢ホーム”の看板を過ぎたあたりから、上り坂の傾斜が本格的になってくる。同時に登山客の姿をポツポツ見かけるようになる。山の斜面に黄色い野花が咲いている。その数はどんどん増え、まるでお花畑のよう。ペダルを止めて眺め、写真に収めた。春ですね~。坂道を上り、カーブをいくつか曲がると、見覚えのあるヤビツ峠売店が見えてきた。やった! 峠に到着だ。何度上ってもやっぱり嬉しい。今回はHIGHモードなしで上ったが、それほど膝は痛くならなかった。これまでの旅で、多少は脚力がついてきたのかもしれない。
コーヒーでも飲みたいと思い、バスターミナルの上にある“ヤビツ峠レストハウス”へ行ってみたが、何と、シャッターが閉まっているではないか。あちゃ~、定休日か、残念~! 気を取り直して、下り坂へ突入。冷たい風が気持ちいい、ダウンヒル最高。少し下ったところにある展望台“菜の花台”で小休憩。丘の上にあるベンチに腰かけ、コンビニで買ったパンをかじりながら、絶景を眺める。気分上々。今日は曇っているが、それでも秦野や平塚の町はもちろん、海に浮かぶ江の島も見えた。
スマホで『秦野、桜、名所』で検索すると県道70号沿いに日本三大桜の一つ“淡墨桜”があることがわかったので行ってみることにする。道沿いならeバイクに跨りながらでも見えるだろうと思ったが、どこにもない。eバイクを止めて辺りをキョロキョロ。少し手前の道沿いに“淡墨桜”と書かれたのぼりがあるじゃないか。あそこだ! 民家らしき敷地の中へ入って行くと、奥にある畑の中に大きな桜の木が立っていた! 桜の周りは菜の花畑。薄ピンク色と黄色のコントラストが美しい。こんな景色初めて見た。眺めているだけで幸せな気持ちになる、桜景色だった。
一気に下り、国道246号に出た。以前、伊勢原みかん狩りの旅の時に立ち寄った店で、お土産用に大袋の甘夏を購入。サイドバックに詰め込むとパンパンになった。3kgは重たくなったと思うが、アシストがあるeバイクならそれほど気にならない。というか、いいトレーニングになる(笑)。今回はようやく開通した“ヤビツ峠”ルートばかりか、貴重な“淡墨桜”の景色まで堪能、想像以上に充実した旅となった。