eバイクの旅では日本一周、その先には世界の旅も見据えている。旅で使うeバイクはどのメーカーのどのモデルにするか? 悩むところだ。
選択ポイントとなるのは①長期間・長距離走行に耐えられること、②キャリヤとマッドガードの取り付けが可能なこと、③舗装路が中心だが多少の悪路は走れることなど。さらに日本で取り扱いをしているメーカーの方が安心できるし、僕的にはさまざまなポジションでハンドルが握れるドロップハンドル車なら理想的。
色々並べてみたけどそんな都合のいいeバイクはあるのか? とりあえずネットで探してみる。仕様、装備、1充電の走行距離などを中心にチェック。自転車初心者の僕はメーカーやブランドに関しては無知なので「へぇ……このメーカーもeバイクを作っているんだ」とか「このブランドは台湾だったのか!」色々な発見があった。そんな中、徐々に車両を絞り込み、最後に2台が残った。
1台は日本を代表する自転車の老舗メーカー、株式会社ミヤタサイクル(公式サイト)のROADREX 6180(ロードレックス6180)。eバイクでは珍しく、グラベルロードでオフロード・オンロードを選ばず走れる650B×45Cの太いタイヤを履いている。バッテリーサイズも11.6Ahと大容量で1充電の走行距離は強力アシストの「HIGHモード」で70km、軽アシストの「ECOモード」で105kmを実現。フレーム各所にダボがあるのでキャリヤやボトルケージの取り付けも可能。そしてドロップハンドル。まさに理想的な1台だった。
もう1台はモーターサイクルメーカ―として、また電動アシスト付自転車の先駆者のメーカーとして、確かな実績を持つヤマハ発動機株式会社(公式サイト)のYPJ-ER。僕自身2004年~08年に電動モーターサイクルのパッソルで世界一周していることから、高い信頼性を感じている。
そのヤマハ発動機が作ったeバイクのひとつがYPJ-ER。ハンドル高やフレーム形状などはロードバイクとグラベルロードの中間的なポジション。タイヤサイズも700×35Cとロードにしては太めだが、ロードレックスの650B×45Cよりは細目。オプションでリヤキャリヤやマッドガードも用意されている。何より一番の魅力は13.3Ahの大容量バッテリー。1充電の走行距離は「HIGHモード」で93km、「ECOモード」で152kmととにかく走行距離が長いこと。状況によって1日100km以上走る場面があることを考えるとこれは魅力的。ということでまずはこの2台に絞り込んだ。
ただ、試乗車で周辺を数百m走っただけでは、その中身はほとんどわからない。できれば数時間レンタルをして数十kmいろんなシチュエーションを走ってみたい。そう思いこの2車種をレンタルできるお店・施設をネットで探すが、なかなか見つからない。
半分諦めかけたときに、ロードレックスをレンタルしているというサイクルショップを1軒見つけた。鶴川サイクル(公式サイト)。住所を見ると東京都町田市と自宅から近い。藁をつかむ思いでメールをすると『半日~5日間まで5000円でレンタルが可能です』と夢のような返信が返って来た。これは夢か幻か。絶好のチャンスなので4泊5日フルで借りることにした。
僕の自宅があるのは神奈川県相模原市。車やモーターサイクルで遊びに行く場所として宮ケ瀬ダムがある。距離にして往復40km。eバイクで走るにはちょうどいい距離なので、宮ケ瀬ダムへ行ってみることにする。初めてのeバイクツーリング。まるで遠足へ行く小学生のような気分だった。
サドルにまたがりドロップハンドルを握る。ふだんの足として乗っている自転車はフラットバー、それに比べるとかなり前傾姿勢に感じる。そういえば大昔乗っていたランドナーもこんな感じだったな……懐かしく思い出す。自転車旅に夢中になっていた10代、泊りがけのツーリングや峠越え、ランドナーでいろんなところへ出かけた。今回訪ねる宮ケ瀬ダムが完成したのは2000年。僕が10代の頃はなかったので、自転車で行くのは初めてとなる。
軽快に市街地を進んで行く。ロードレックスはとにかくアシストの掛かり方が自然、癖がないので軽やかにペダリングができる。「これ本当にアシストしてるの……?」徐々に疑問が湧いてくる。そこで試しに上り坂の途中でモードをOFFしてみる、すると突然ペダルに鉛が付いたように重くなる。「ええっ、こんなに大変な上り坂だったの?」慌ててギヤをダウン、モードを一気にHIGHに切り替える。「ビックリした~」。アシストを疑った自分を反省する(笑)。
一方、平地である程度スピード出ている状態だと時速24kmを越えてアシストが効かなくなっても、ペダルの重さを感じることはあまりなかった。調子が良ければ平地で時速30kmくらいならいい感じでこげる。eバイクだが、同時に自転車としての完成度が高い証拠だと思う。
愛川半原で国道412号を離れると急勾配の上り坂が始まった。自転車をこいで上るのはかなりきつそうな急勾配、アシストをHIGHモードにして、傾斜に合う丁度いいギアを探す。そこが決まるとペダリングがすーっと楽になる。アシストモードの切り替えとギヤチェンジの組み合わせによって、いろんな走り方が選べる。それがeバイクの楽しいところ。
トンネルをいくつか抜けると右手に宮ケ瀬ダムが見えてくる。いいペースで進んでいるので、そのままノンストップでダム湖の西岸にある鳥居原園地へ向かう。オートバイではこれまで何度も走っている道だが、坂道の傾斜を体で感じたり、トンネルが異常に怖かったり(笑)、面白そうな脇道を見つけたり、新しい発見がたくさんあった。
鳥居原園地には広い公園と農産物を直売する施設「鳥居原ふれあい館」と大きな駐車場がある。高台にあるため眼下には緑豊かな公園、宮ケ瀬ダムの眺めがすばらしい。またここはライダーに人気のスポットで駐車場にはたくさんのバイク、あちこちにライダーが集まり、楽しそうにおしゃべりをしていた。
自転車で20km走ってきたとは思えないくらい疲れていないことに驚く。これがeバイクなのか。もちろんオートバイやクルマに比べたら疲れているはず、だがその疲れがとても心地いい。体力的にはまだまだ走れる、というか物足りない。トイレ休憩を済ませると、早々とロードレックスにまたがった。「さあ走ろう!」eバイクでこんな距離を走ったのは初めて、いつの間にかその魅力にハマっている自分がいた。
次回はYPJ-ER試乗編を予定。お楽しみに!