僕は10歳から50年以上相模原市に住んでいるのだが、高台やビルに上ると丹沢・大山の山々が見ることができる。それほど高い山ではないが、小中学の校歌の歌詞に出てくることや、10代から自転車、オートバイでヤビツ峠へ何度も訪れていることから、とても親しみを感じている。
大山は古くから霊山として信仰され、江戸期には年間20万人が来山するほどの隆盛。大山への参拝は「大山詣り」と呼ばれ、さらに多くの参拝者たちが辿ってきた道は大山道(大山街道)と呼ばれ親しまれていた。今回はその大山の中腹にある大山阿夫利神社が目的地。身近な存在といいながら、まだ一度も参拝したことがないのでとても楽しみだ。
相棒は大容量バッテリーが自慢のヤマハ・YPJ-TC。自宅から往復50km程度なので予備バッテリーはなしで大丈夫だろう。まずは相模川にかかる高田橋を目指す。平日の朝は車が多いので、国道は避けて県道で向かう。相模川を越え、さらに中津川を越えて厚木市内へ入って行く。通学時間帯にぶつかり、県道は自転車だらけ。体力のある中高生と抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り広げていると、いい感じで体が温まってきた。
県道63号沿いのマクドナルドで朝ごはん。何度も食べているが、eバイク旅の途中で食べると、なぜかおいしく感じる。エネルギーチャージすると、再びペダルを踏み出す。緩やかな坂道を上ると「伊勢原市」の標識が見えてきた。目的の大山阿夫利神社まであと少し。新東名の高架をくぐると右折・大山方面と記された標識が現れる。交差点には大山阿夫利神社の大看板が立っている。右折すると道幅は狭くなり、なだらかな上り坂が始まる。視線を上げると前方で僕を見守るように、大山が構えている。


道のすぐ近くまで民家が迫る狭い道を進んで行く。並行するように流れる鈴川に架かる橋は赤く塗られ、この道が大山へ続く参道であることを示している。旅館や懐石料理の看板が目立つようになり、道の勾配も徐々にきつくなってくる。ギアを落としHIGHモードに切り替え、強力なアシストを受けながら坂をグイグイ上って行く。しばらくして大山参拝の起点となるバスターミナル&市営有料駐車場に到着。車やバスの参拝者はここからは歩きとなる。道はまだ先に延びているのでeバイクで行けるところまで上ってから、徒歩となる。
飲食店や旅館、土産物屋、露天などが賑やか並ぶ「こま参道」を歩いて行くと、10分ほどで大山ケーブルの追分駅に到着した。歩いて大山阿夫利神社(下社)まで上ることもできるが、ケーブルカーを使えば10分足らずで行くことができる。今回はeバイクで走る帰路も考え、ケーブルカーにする。車内は参拝者や登山客であっという間に満員になった。ザックを背負った中高年者が多い、どうやら参拝地として有名だが、軽登山コースとしても人気があるらしい。



6分で「下社駅」に到着。ここまでくれば大山阿夫利神社下社は目と鼻の先だ。体力は有り余っているので、軽快なステップで最後の石段を駆け上がった。鳥居をくぐると風格のある朱塗りの大山阿夫利神社下社、拝殿が現れる。境内の正面に拝殿、左手には富士山の岩を用いて復興された五頭からなる大山獅子。右手にはお守りや御神札を売る授与所と御祈祷の受付所がある。
まっすぐ進み、拝殿の前に立つとゆっくりと手を合わせた。静かな時間が流れる。参拝を終えて石段へ戻ると、その向こうに雄大な眺望が広がっていた。丹沢の山、伊勢原の町並み、その先に相模湾が広がっている。風景を眺めていると、心が洗われるような清々しい気持ちになった。江戸期の参拝者が見た景色とは違うかもしれないが、同じような気持ちになっていたかもしれない。そんな気がした。



eバイクに跨ると、次の目的地へ。伊勢原市内まで下り、国道246号に出ると西へ西へ、ひた走る。30分ほど走ると「三岳園」に到着した。受付で料金1000円を払い、坂を上って行くとみかん畑が見えてきた。そう、次の目的は「みかん狩り」。数日前に地元の神奈川県、伊勢原で「みかん狩り」ができることを知りやってきた。子供のころからみかんが好きで、冬になると指が黄色くほど食べまくっていた。そんなみかんが食べ放題、しかもお土産みかん付き。生まれて初めてのみかん狩り。子供のように気持ちが高鳴る。
まずはたくさんあるみかんの木から1本を選び、太ったおいしそうなヤツをハサミで切る。いただきます。おおっ、甘くておいしい。それからはひたすら剥いては食べ剥いては食べの繰り返し。新鮮で瑞々しいので、際限なく食べられる。ある程度食べると場所を移し、別の木のみかんも食べてみる。木によって多少味の違いがあるのかと思ったが、食べ過ぎでわからなくなった。おいしければいいのだ。どちらにしてもみかんを食べまくった、幸せな1時間半だった。地元の霊山、大山阿夫利神社参拝に、初のみかん狩りまで体験。身も心も充実の旅となった。

