eバイク旅ノート Vol.83 eバイク日本一周23「東海の旅、新たな出会いと感謝の再会」

60歳オーバーの夫婦がチャレンジと好奇心から始めたeバイクで行く日本一周。昨年の東日本一周に続いて、今年は西日本をめぐる旅。神奈川県の自宅をスタート、静岡県内に住む世界バイク旅の友を訪ねたりしながら、旅は西へと進んで行く。

DAY100

静岡市内のホテルの前で自転車にパッキング。外のテーブルにいたアジア系の旅行者が興味深け気に見ていたので、話しかけてみる。聞くとタイから来た人でレンタカーを使って家族旅行をしているという。昔、タイの日本企業で働いていたことがあり、その時の知人を訪ねているという。お互いの旅の話をしたり、facebookをフォローし合ったり、束の間だが楽しい時間を過ごした。

今日の目的地は“遠州の小京都”と呼ばれる、森町。掛川市の隣町で、電動バイクのヤマハPASが生まれた地でもある。今回は森町にあるヤマハのeバイクを販売、レンタルしているショップ『エルドラード森町』を訪ねる予定。

静岡市内を出てからもしばらく市街地が続いた。安倍川を越えて用宗を越えると民家はなくなり、山道になる。上り坂をしばらく進むと高台になり、眼下に太平洋の絶景が広がった。景色を眺めているとあっという間に下り坂になり、再び市街地が始まる。

島田市内の道沿いで『焼津ぶしうどん』なる看板を見つけた。どんなうどんかと思いながら店内へ。どうやら削りたての鰹節がたっぷり載ったうどんらしい。実際に食べてみると、これが鰹節の香りがとてもいい。ごぼうの天ぷらも絶妙で、麺はもちもち。予想通り美味しいうどんだった。

金谷から再び峠越え。それほど標高は高くはないので、無理せずゆっくり上っていく。ヒロコもeバイクの走り方、上り坂は完全にマスターしたようで、いいリズムで走っている。

午後4時ごろ。『エルドラード森町』に到着、SNSでやり取り「ぜひ遊びに来てください♪」と言ってくれていた葭川さんが笑顔で出迎えてくれた。『エルドラード森町』を作ったサステン(株)の社長、友田さんもやって来て、歓迎してくれた。

この場所を作るきっかけとなった話、森町を紹介するPVなども見せてくれた。ふたりとも気さくな人柄ですぐに打ち解けた。森町に連泊するので、明日は周辺を走ろうと思っている。

宿泊地:静岡県森町
走行距離:69.1km
総走行距離:4879.4km

用宗街道で焼津へ
用宗から用宗街道(県道416号)で焼津へ向かう。山道をクネクネと上り、標高が高くなると眼下に青い太平洋がドーン! と広がった
焼津ごぼう天うどん
道路沿いで見つけた『焼津ぶしうどん・しょうた』。焼津ごぼう天うどんを注文。削りたての香り高い鰹節をもちもち麺に絡めて食べる
桜木駅
静岡県掛川市にある天竜浜名湖線の桜木駅。副駅名は「ヤマハピアノのふるさと」。ノスタルジックな駅舎とホームは国の登録有形文化財
エルドラード森町
SNSを通じて声をかけてくれた『エルドラード森町』。森町はヤマハのPASが生まれた町なので、この訪問はある意味“里帰り”かも(笑)

DAY101

森町では『ゲストハウス森と町』に宿泊。昔、レコード屋だった店舗を宿に改装。寝室以外にキッチン、居間などもありとても快適だった。自転車も屋内に保管できるので、eバイク旅にはおすすめだ。

静岡県在住で同じようにeバイクを楽しんでいる松本さんが遊びに来たので一緒にランチ。eバイクの魅力、自転車のいいところ、夫婦の大変ところなどなど、おしゃべりをした。

午後からは『エルドラード森町』の葭川さんや社員さんたちとeバイクでサイクリング。のどかな田園地帯を走り、遠州地方第一の社として長い歴史を持つ古社、小國神社へ。参道を歩き参拝者休憩所へ行くと、なんとヤマハのeバイクが展示されているではないか。これってかなり珍しいことだよね? とても不思議だけど嬉しい景色だった。

この先は葭川さんと3人でサイクリング。陶芸の工房を訪問して話を聞いたり、大洞院にある清水次郎長の子分、森の石松の墓を見に行ったり。最後は迷路のような町中を走り抜けたり…… 3人でeバイクを楽しんだ。いつもはふたりなので、3人で走るというだけでも新鮮だった。

夜は葭川さんのお母さんを囲んで4人でお食事会。お母さんのむかし話、森町の歴史など、どれも印象的な話ばかりだった。eバイクとSNSを通じて縁が繋がった葭川さん。思い出深い夜になった。

宿泊地:静岡県森町
走行距離:24.4km
総走行距離:4903.8km

葭川さんとサイクリング
『エルドラード森町』の店長、葭川さんと一緒にeバイクでサイクリング。他のeバイクと走るのは初めて、数時間だったが楽しかった
森の石松の墓
森町にある『森の石松の墓』。その昔、ギャンブル運が上がるという噂から、墓石を削る人が続出、墓石ごと盗まれたこともあったとか
柏屋
森町最後の夜、葭川さん親子と一緒に夕ごはんをいただいた柏屋は、創業100年の老舗の割烹料理の店。歴史ある建物で、内装も凝っていた

DAY102

朝、天宮神社を参拝してから『エルドラード森町』へ向かった。お世話になった葭川さんや社長にお礼を告げて出発する。森町を出ると徐々に民家が多くなり住宅地になって行った。

磐田市の町で産直の施設を見つけたので、休憩に立ち寄ると売店に“遠州焼”なる文字があった。初めて聞く名前。どんなものかと思い注文してみた。出てきた遠州焼き、見た目はお好み焼き。味もほぼお好み焼きだ。大きな違いはたくわんが入っていること、癖があるかなと思ったら普通に食べやすい。万人向けする味だった。

午後2時半ごろ、豊富な水を蓄える『浜名湖』が見えてきた。広々とした景色は開放感があっていい。湖畔の道を進んで行く。牛型のトイレと駅が目に留まったのでちょっとストップ。そこは『浜名湖佐久米』という駅で、カモメがくることで知られているようだった。さらにアニメ『ゆるキャン』で有名になったらしい。せっかくなので駅舎もぶらっと散策。

国道362号、本坂トンネルの狭い歩道をヨタヨタと進んで行くと、ようやく愛知県になった。坂を一気に下り豊川市内へ。今日の宿泊予定地、蒲郡を目指してひたすらペダルをこぐ。ライトを点灯して夜間走行。結局、蒲郡のネットカフェに入った時には夜8時を回っていた。

宿泊地:愛知県蒲郡市
走行距離:84.8km
総走行距離:4988.6km

葭川さん、友田さんと
お世話になった『エルドラード森町』の葭川さんと社長の友田さんが出発を見送ってくれた。森町は思い出に残る素晴らしい滞在となった
遠州焼
磐田市の売店でみつけ、初めて食べた『遠州焼』。静岡名産の桜海老入りも美味しかったが、イカ入りも気になる、よし次はミックスにしよう
浜名湖
静岡県を代表する湖『浜名湖』。浜名湖を一周する『ハマイチ』はサイクリストに人気らしく、この日も多くの自転車を見かけた
浜名湖佐久米駅
カモメが集まることで有名になった天竜浜名湖線の『浜名湖佐久米駅』。人気アニメのゆるキャンでも登場。この日も多くの人が訪れていた
みかん畑
長く続いた静岡県、最後は国道362号で愛知県との県境へ向かう。三ヶ日はみかんの名産地、峠道の周辺にはみかん畑が広がっていた

DAY103

ネットカフェの快活クラブは朝のパンが無料、トーストを食べてから出発する。しかし、60歳をこえた人がネットカフェに泊まって、さらに自転車で日本一周をしているのだからビックリだ。こんなことしている夫婦、日本でも数えるほどだろうな(笑)

今日の目的地は知多半島の南端、南知多町にある『ゲストハウスほどほど』。最短ルートで向かっていると、境川で問題が発生! 自転車は地下トンネルを通らなくてならないのだが、それが地下11階まで階段とスロープ移動。下りはいいが、上りは地獄だ。それでもこのトンネルを行くしかないので、決死の覚悟で突入する。

どうにか対岸にある上り階段までやってきた。ここから先はヒロコひとりの力では押せないので、ふたりで1台を押して上る。地上に出たところに自転車を置き、再び地下11階まで降りて行く。今度は僕のバイクをふたりで地上まで押して行く。かなりの重量なので、最後には息が上がり、全身から汗が噴き出てくる。超ハードな仕事となった。

半田の町に入ると、走ろうと思っていた道が通行止めになっていた。一難去って一難か? と思ったら、お祭りの真っ最中で山車が通るための、一時的な通行止めだった。しばらくするとかけ声と共に人と大きな山車が登場。目の前を勢いよく通り過ぎて行く。偶然、祭りに出くわすとは、ラッキーだ。

午後4時半。ゲストハウスに到着すると、宿主のこっすーが出迎えてくれた。9年ぶりの再会だ。実は9年前、南知多をバイクで取材旅行していた。その時にこの宿に泊まったのだが、翌日、突然胸が痛くなった。もしかしたら心臓の病気かも知れないと思い、宿に戻ってこっすーに相談。話をすると心配してくれ、すぐに車で病院へ送ってくれた。

検査をするとすぐに心筋梗塞と判明、救急車に乗せられ半田病院へ。緊急手術でどうにか命を繋ぐことができた。あの時、こっすーがいなかったら、一体どうなっていたのか? こっすーはまさに命の恩人なのだ。

あの時のお礼と共に、元気な体と妻ヒロコを連れて『ゲストハウスほどほど』にくることができてよかったと心から思う。その後、仕事に出ていた奥さんのななちゃんも帰宅、一緒に再会を喜んだ。夜はみんなで食卓を囲んで夕ご飯会。懐かしい話やコロナ禍の宿こと、二人の未来など、いろんな話をした。

宿泊地:愛知県南知多町
走行距離:54.9km
総走行距離:5043.5km

快活クラブ
蒲郡のネットカフェ、快活クラブに宿泊。シャワーが浴びられて、飲み放題、さらに朝食のパンも無料。予約の必要もないので旅での使用価値は大
歩行者&自転車用の地下トンネル
歩行者&自転車用の地下トンネルで境川を越える。地下11階、下りは良かったが、荷物と自転車の重さが手にかかる上りは地獄だった
お祭り
運よく半田市内のお祭りに遭遇。力車が賑やかな掛け声と共に目の前を通り過ぎてゆく。若者や子供がたくさん参加、活気に満ち溢れていた
南知多町
知多半島の南端にある南知多町には歴史を感じる、古い家並みがたくさん残っていた。eバイクの速度なら、ゆったり眺めながら走れる

DAY104

昨晩は疲れていたようで、布団に入ると爆睡だった。朝、再会を祝ってみんなで記念撮影をしてから出発した。南知多らしいレトロな町並みを眺めながら北上。海岸沿いにある野間埼灯台で小休憩。大正10年に建てられた灯台でいまは“恋人たちの聖地”として知られている。ノスタルジックな雰囲気のある灯台と一緒に記念撮影。思い出の一枚にした。

灯台の近くにある『灯台ラーメン』で昼を済ませると、寄り道せずにひたすら名古屋へ向かった。途中から広域農道に入るとローカルでのんびりした雰囲気なったが、名古屋市の中心に近づくに連れて、ビルが多くなる。名古屋市内は道幅が広く歩道も広いためか、大都会にしては走りやすかった。

ホテルはネットで探し、低料金ということで決めたが、着いてみると街のど真ん中にあった。チェックインをして、しばらくして洗濯のために外に出ると、すぐ近くにテレビ塔があった。あの料金でこんな場所に泊まれるの? なんだかすごく得した気分だった。

こっすーさん、ななさんと
今回の旅、そして9年前の心筋梗塞でお世話になった、こっすーとななちゃん。ふたりがここで宿をしてくれていたから今の僕が存在している
野間埼灯台
道のすぐ横に立っている野間埼灯台。大正10年に建てられた、愛知県で最も古い灯台で、恋人たち聖地としても知られている
山羊
ソーラーパネルが並ぶ敷地で一心不乱に草を食べている山羊たち。雑草がなくしてくれる上に山羊のお腹もいっぱいになる。これぞまさに一石二鳥
テレビ塔
名古屋市内のホテルに到着。ひと段落してコインランドリーに行こうとホテルを出ると、ビックリ、すぐ近くにテレビ塔が立っていた

取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp

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