eバイク旅ノート Vol.23 キャンプツーリングin奥多摩・後編

eバイクで行く1泊2日の奥多摩キャンプツーリング。1日目は神奈川県相模原市の自宅から、奥多摩の氷川キャンプ場まで。2日目はキャンプ場を出たあと、奥多摩駅の近くにあるレンタサイクルショップTREKKLING(トレックリング)をぶらり訪問。そこから再びヤマハ・YPJ-TCに跨り、TREKKLINGの出口さんがおすすめしてくれた旧道“奥多摩むかし道”へ入っていった。 ペダルをこいでいると崖の上に鉄橋らしきものが見えた。おかしいな? 鉄道は奥多摩駅で終わっているはずなのに……どいうことだろう。不思議に思いスマホで調べると「東京都水道局小河内線」であることがわかった。小河内ダムの建設に使用するセメントや砂など、建設資材を運ぶために建設された貨物線で、1957年にはすでに廃線になっている。eバイクで廃線跡めぐりも面白そうだなぁ~、いけない遊び心が頭を横切る。

奥多摩むかし道
TREKKLINGの出口さんのアドバイスで訪ねた“奥多摩むかし道”。後で確認したら全行程の半分しか走っていなかった。次は全部走るぞ
キャンプ用品を満載したeバイク
キャンプ用品を満載するとかなり重くなる(約20kg)。運転は慣れてくるが、eバイクでなかったら峠越えはかなりきつかったと思う
東京都水道局小河内線で使われていた鉄橋
上に見えるのが60年以上前に廃線になった“東京都水道局小河内線”で使われていた鉄橋。線路や駅の跡なども少しだけ残っている

再び青梅街道(国道411号)。坂道を上ると、壮大な水を蓄えた奥多摩湖が見えてきた。空が広い。湖畔は公園になっていて、休日を楽しむ人たちが楽しそうに湖を眺めている。道を挟んだ反対側の大きな建物は“奥多摩 水と緑のふれあい館”。湖底に沈んだ旧小河内村各集落の郷土の歴史や水道事業を展示する施設で、展望レストランなどもある。湖畔沿いの道を進んで行くと大麦代園地に当たる。大きな木が点在する駐車場があり、ツーリングでやってきたオートバイがたくさん停車している。僕もその中に仲間入り、ベンチに腰掛けひと休み。秋の景色をのんびりと眺める。

奥多摩湖沿いの道をさらに奥へ奥へと進んで行く。この辺りはとにかくトンネルが多い。道幅が狭いので、後ろから車が来たりするとヒヤヒヤする。追突も心配だが、僕の一番の恐怖は排気音。特にノンネル内で後方から迫ってくるトラックやオートバイの排気音はトンネルに反響して狂気的な大きさになる。自転車ならではの恐怖。トンネルに入る度に、早く抜け出そうと全力でペダルをこいだ。

奥多摩湖畔の道
青空が広がり気持ちが良かった奥多摩湖畔の道。天気が良かったので湖の水も輝いて見える。この景色が東京だなんて信じられる?
大麦代園地の駐車場
大麦代園地の駐車場はツーリングライダーの憩いの場で、僕も何度か来たことがある。この日も多くのライダーが体を休めていた
麦山の浮橋
奥多摩湖にはダム建設時に水没した道の代替として設置された浮橋が2つある。麦山の浮橋はドラム缶橋として知られ名所になっている

奥多摩周遊道路、大月・檜原・小菅方面と記された標識の道を左折する。青梅街道を離れ、国道139号へ入って行く。眺めのいい橋を渡り、小菅川に沿いを進んで行く。山間に延びる道は途中から谷が深くなり、川は見えなくなる。東京都から山梨県へ。交通量はどんどん減っていき、すれ違うのはツーリングオートバイばかりになった。

玉川キャンプ場、原始村キャンプ場、平山キャンプ場など、キャンプ場の看板が多くなる。こちらの方は奥多摩とはまた違う雰囲気、今度はこっちでキャンプをしてみたいな。久しぶりに川が見えた場所は、川を段々に区切られた管理釣り場になっていた。小菅フィッシングビレッジと書かれている。緑の山々に囲まれた自然豊かな釣り場、たくさんの人が気持ち良さそうに釣りをしている。自分で魚を釣って、さらに自分で焼いて食べたら、最高においしいだろうなぁ。

国道139号をさらに進んで行くと“道の駅こすげ”の看板。ここでひと休みにしよう。広い駐車場と二つの建物が現れる。ひとつがレストランで、もうひとつが物産館。ログハウス風の物産館の中を覗くと小菅村の特産品のわさびを使ったわさび漬け、名産のこんにゃく、川魚の加工品、多摩源流水・多摩川サイダー、オリジナルの工芸品など様々なものが売られている。一方のレストランはピザやパスタがメインの洋食レストラン。店内で食べたい気もするが、人が並んでいて時間がかかりそう。手持ちのパンがいくつか残っているのでこちらを食べることにする。温かい缶コーヒーを買ってベンチでパクリ。シアワセだぁ~

道の駅こすげ
道の駅こすげ。自転車の人のためにサイクルラックがある。テイクアウトのコーナーでは軽食やソフトクリームなどが売られていた
小菅村の特産品が売られている物産館
小菅村の特産品が売られている物産館。道の駅の近くには多摩源流温泉“小菅の湯”がある。美人の湯として知られ、露天風呂もある

ここを出たら、鶴峠までは上り坂。気合を入れてペダルをこぎ出す。今回の旅は予備バッテリーを1本持参。さらに昨晩、キャンプ場で充電もさせてもらったので、使える電力は十分すぎるほど残っている。強力なアシスト力が得られるHIGHモードを使ってガンガン進んで行く。上野原方面と記された標識の道を左折して県道18号へ入って行く。道に沿ってポツポツとあった民家が途切れると、いよいよ本格的な峠道になる。上り坂は体力的、精神的にきついが、頂上へ向かって上っている高揚感が好き。荒い息遣いが峠道に響き渡る。

ペダルを踏んでいると、ふと6年前を思い出す。54歳の時、僕は愛知県をオートバイで旅行中に心筋梗塞になった。救急車で病院へ運ばれ緊急手術、ステントを入れた。それまで大病をしたことがなかったので、まさか自分が心筋梗塞になるとは、夢にも思っていなかった。幸い心臓のダメージは少なく、医者からは適度な運動をする方がいいと言われた。ただ続けているスポーツもなく、運動も好きではない。健康維持目的に散歩などもしてみたが長くは続かなかった。

そんな時に出会い、始めたのがeバイクだった。汗をかく気持ち良さ、長い距離を走った時、峠を越えたときの達成感。電力をどんな風に使って進むか頭を使う楽しさもある。その上に健康にもいいのだから、こんなに素晴らしい乗り物はない。eバイクに出会えて良かったと心から思う。そんなことを考えながらこいでいると、前方に鶴峠が見えてきた。

やった到着だ。標高870mか……意外と低いんだな。苦笑い。1泊2日のキャンプツーリング、最後のピークは鶴峠。バッテリーの残量もたっぷり残っている。上野原まで長いダウンヒルだがYPJ-TCはディスクブレーキなので安心。相模湖から国道412号へ入れば、地元の相模原市。ここから先は慣れた道程。さあ、ラストスパートだ。

鶴峠
鶴峠(標高870m)に到着した。峠に着くと嬉しい。展望が開けないのが残念。さあ、ここからダウンヒルタイムだぞーっ!やほーっ!
九十九折れが続く峠道
九十九折れが続く峠道。下り坂は体力的に余裕だし、気持ちもいいのだが、のんびり景色を見ながら走れないのが難点。ぜいたくな悩み(笑)

全走行距離:153.3km
使用電力:バッテリー1本+62%

奥多摩・後編ルート

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