60歳オーバーの夫婦がeバイクで日本一周。妻ヒロコは生まれて初めての自転車旅。インドアで運動嫌い、途中でギブアップするかと思ったが、約3か月間をかけて東日本一周を走り切った。今年4月から西日本をめぐる旅がスタート。神奈川県をスタートし、静岡県、愛知県、三重県……旅は進んで行く。
DAY111
当初は紀伊半島を回る計画だったが、西日本は町が多いこともあり思うように距離が伸びず、予定よりかなり遅れ気味になっている。そこで紀伊半島を周るのは諦め、伊勢から西へ向かうことにした。
伊勢から奈良へ抜けるルートは国道368(369)号と国道166号の2本。どちらも山の中を走る道なので町も少なく、途中に泊まれる宿は数えるほどしかない。色々探しまくった結果、国道369号沿いの御杖村に古民家の民宿を発見、運よく予約が取れたのでそこへ向かう。
伊勢の宿を出ると多気町を目指す。周りに畑が広がるローカルな道。道の駅茶倉に入ると、男性が声をかけてくれた。聞くと昔自転車旅をしたことがあり、懐かしく思い声をかけたという。一緒にお昼ごはんを食べながら、東北の出身で三重に移住したこと、現在は大工をしていて、近くのキャンプ場の炊事場を作っていることなど話してくれた。
国道368号を進んでゆくと、徐々に山深くなる。道幅も狭くなり「ここが国道?」という感じ。峠に着くと伊勢本街道らしく、旅籠の名残があった。昔は多くの人がこの道を歩いて伊勢神宮へ向かったのだろう。同じ道を今僕たちはeバイクで走っている。大きな時の流れを感じた。
今日は100kmもないのでバッテリーは余裕だと思っていた。ところが峠越えがあったからか、予想以上に減りが早く、宿の約8km手前で10%を切ってしまった。最後に再び上り坂が登場、ここで終ったら辛い、何とかバッテリーを持たせなければ。電力消費の少ないECOモードに切り替え、脚をパンパンにしながら坂を上ってゆく。「大丈夫なの?」「いや何としても、走り切る!」最後の坂を上り切ると、あとは宿まで下り坂。バッテリー切れになる前にどうにか宿に辿り着くことができた。
宿主の徳田さんとは何度か電話でやり取りしていたが、宿に着くと玄関は閉まっていて誰もいなかった。携帯電話にかけてみるが、電源が入っていないか、電波の届かない場所にいますとテープの声。
宿の前から、10分、20分、30分…… 何度もかけても繋がらない。困った。まさか、事故? 別の心配が脳裏を過ぎる。40分過ぎたところでようやく現れた。友人に呼ばれて行った場所が、運悪く電波の届かないエリアだったらしい。ほぼ同じタイミングで奥さんも帰ってきて、いきなり賑やかになった。
ここは元々、旦那さんの実家なのだが、とにかく建物も造りも立派。部屋もたくさんあるので宿にはピッタリだと思う。話好きの奥さんで宿ができるまでのストーリーなど、いろんな話しをしてくれた。
宿泊地:奈良県御杖村
走行距離:66.2km
総走行距離:5332.4km
DAY112
朝、宿主の徳田さんがトーストを焼いてくれたので、4人でテーブルを囲みおしゃべりしながらいただいた。歳が近いことから共通点が多く、旅や夫婦、生き方など話題に事欠かなかった。小さな村の宿で過ごした時間、思い出に残る宿泊となった。
昨日頑張ったので今日はほぼ下り坂。しかし、寒い。温度計の13℃に驚いたが、その先では何と9℃!4月下旬とは思えない寒さだ。そういえば昨晩も宿でストーブをつけてもらったんだ。暑いよりはいいけど、この寒さは予想外。
こんなに上ったの?というほど延々と下り坂が続く。何だか得した気分になる。宇蛇で良い食事場所が見つからなかったのでコンビニでカップラーメンを買って食べることにした。駐車場で食べていると年配の人が「どこから来たの?」と声をかけてくれた。昔北海道を旅したことや、今は焼き芋屋をしていることなど話してくれた。
食べ終えてコンビニを出ようとしたら、今度は別のお兄さんが「よかったら飲んでください」と言ってエナジードリンクを差し出した。嬉しい差し入れ、心温まる好意に感謝する。今日は人に縁がある日のようだ。
桜井市に入ると市街地エリアに突入、交通量が一気に増えた。幹線道路らしくチェーン店が並ぶ。陸橋が自転車通行禁止だったり、歩道橋のスロープを押して歩いたり、大きく迂回して踏切を渡ったり、一筋縄ではいかなくなった。荷物が重いので、特にスロープの上り下りがキツい。日本は自転車に優しくない国だと改めて思った。
午後3時過ぎ、香芝市の西畑さんの家に到着した。西畑さんは夫婦それぞれが海外自転車旅の経験者で、共通の友達も多かった。以前にネットでのやり取りは何度かしているが直接会うのは初めてだ。西畑ファミリーは古民家を改築した家に住んでいて、離れがあるのでそこへ泊まるようすすめてくれた。これもひとつの縁なのでありがたくお世話になることにした。
オートバイと自転車、形は違うが同じよう世界を旅してきたことから、話が弾んだ。夜のごはんはYUKAさんが作ったインドカレー。本場を越える美味しさにびっくりした。食後は男と女、夫婦を話題のつまみにして、お酒が進む。楽しい夜となった。
宿泊地:奈良県香芝市
走行距離:58.8km
総走行距離:5391.2km
DAY113
今日は天気が悪いので、部屋にこもって原稿書きの日とする。離れのテーブルを陣取り、パソコンをパチパチ。休憩時間は部屋の中や庭に飾られているKATSUAKIさんが作ったオブジェを眺め、疲れた目を癒した。
夜は娘のHASUMIちゃん、おすすめのラーメン屋へ。豚骨や魚貝類を使ったコクのあるスープ。炭が入った黒い麺が特徴のラーメンで、とても美味しかった。そして夜は4人でおしゃべり。楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
宿泊地:奈良県香芝市
走行距離:7.3km
総走行距離:5398.5km
DAY114
お世話になった西畑さん家族にお礼を告げて出発。ルート的には大阪方面なのだが、まだ走っていない和歌山県に足跡を残すために南下した。その前に、バイク神社があると聞いたので行ってみることに。町の外れにある神社で特に祈願するような場はなく、ライダー同士が出会い、繋がる場所のようだった。神殿と呼ばれる大きな部屋にはガンダムやキン肉マンなど様々なものが飾られているようだが、残念ながらシャッターが降り、内部は見ることはできなかった。
再び市街地走行が始まる。富田林、河内長野と進んで行き国道371号に入ると、道幅がぎゅっと狭くなり車の数も減った。ローカルな道を進み長いトンネルを抜けると和歌山県に突入。橋本市へ向かってぐんぐん坂を下って行く。
何か和歌山らしいものを食べたいと思い、柿の葉寿司を食べることにした。町で見つけた『柿の葉すし本舗たなか』へ行ってみる。イートインスペースがあるので、ここなら最適だ。鯛、鮭、さば、山菜を食べるが、具と酢飯のバランスがよくペロッと食べ切ってしまった。ヒロコもかなりお腹が空いていたようで、僕より早く食べ終えていた(笑)。さらに追加で穴子もいただきました。
お店の女子店員さんが僕たちの旅に興味津々「今日はどこまで行くの?」「どこに泊まるの?」「日本一周?何日くらいかけて?」質問の嵐。私もしてみたいなぁと元気いっぱい、和歌山県はアクティブな人が多い?
47都道府県にeバイクの足跡を残すことが一つの目標、少しの距離だが和歌山県を走れてよかった。そのまま国道24号を走り再び奈良県、五條市に入った。古い町並みで知られる五條。前回はオートバイの旅で一角をチラッと訪ねただけ、今回は泊まりなのでゆっくり見て回れるだろう。
古い貴重な建物がたくさん残っているので、通りを歩いているとタイムスリップしたような、不思議な気分になった。町から少し離れた場所にあるゲストハウスに宿泊。荷物を下ろすと、近くある台湾料理の店へ行き、僕はラーメンと麻婆丼のセット、ヒロコは野菜炒めを食べた。ボリューム満点で、お腹がはち切れそうだった。
宿泊地:奈良県五條市
走行距離:55.4km
総走行距離:5453.9km
DAY115
朝、再び五條の町並みを散策してから、大阪へ向かう。まずは国道24号で大和高田を目指す。最初は車も少なくのんびりしていたが、徐々に車が増え、走りにくくなる。昨日、ルートの近くに虎の置物がたくさんある『朝護孫子寺』なるものを見つけたので、そこへ向かう。
途中までは順調だったが、残り数kmのところから、いきなり急勾配の上り坂になる。「本当にこの道なの?」「Googleマップではこっちなんだよねー」「この急坂を上るの?信じられない!」最も軽いギアにして、さらにHIモードで何とか上ってゆくが、想像以上にキツい。道が急坂すぎて自転車を止めることもできない。
やっと現れた駐車場にタイヤを滑り込ませ、自転車を止めた。先を見ると坂はまだまだ続いている。「はぁはぁ……この荷物でこの坂は無理だ、諦めよう!」「止まれる場所もないし、もうダメ、限界、脚が動かない〜」ということで『朝護孫子寺』行きはパスとなった。
柏原市に入るとひたすら市街地が続く。信号、自転車、歩行者、車道も怖いが、歩道も走りにくい。都会走行はいつものことだが、距離が伸びない。それでも何とか午後6時過ぎ、大阪の友人宅に到着した。20年以上付き合いのある友人なので気兼ねなく過ごせる。今日から数日間滞在させてもらい、大阪を満喫しよう♪
宿泊地:大阪府東淀川区
走行距離:74.6km
総走行距離:5528.5km