eバイク旅ノート Vol.39 「旅ルポ★日本縦断3700キロ 01」佐多岬→阿蘇

旅行家藤原かんいちが30日間で果たしたeバイクによる佐多岬→宗谷岬、日本縦断3700キロチャレンジ旅。その旅のリアルレポートを今回から全8回に分けてお送りします。

紆余曲折ありながら2月に決めた『eバイクチャレンジ30日間日本縦断3500km』。30日間で3500kmというのは1年半のeバイク経験から出した目標だった。35日間(1日100km)ならできそうだけど、25日間(1日140km)はさすがにムリ。それなら30日間(1日120km)はどうだろう? できる可能性は20%くらい? 頑張ればできるかもしれない。まさにチャレンジに相応しい目標値だった。

それでもこれはあくまで卓上の計算。旅には雨の日や向い風、さらに標高2000mを超える峠越えやダート走行もある。そして何より30日間も連続で走り続けた経験がない。ほとんどの人がないと思うけど(笑) アスリートでもない61歳の中年男に、そんなことができるのか? 体を壊してリタイヤなんてことにならないか? 不安要素を探せばきりがなかった。その一方で30日間日本縦断にチャレンジしてみたいという気持ちがどんどん膨らんでいった。できるかどうかわからない、だからこそチャレンジしてみたい。心はすでに決まっていた。

使うバイクは3月にヤマハから発売されたグラベルタイプのeバイク、WABASH RT(ワバッシュRT)に決めた。バッテリー容量、オン&オフロードへの対応力など、日本縦断を考えるとまさに理想的なバイクだった。長旅用に備えてリヤキャリヤを装着、サイドバッグを取り付ける。また、状況によって1日の走行距離が150kmを超えることを想定して予備バッテリーを1本携帯することにした。

ワバッシュRT
日本縦断という長距離走行と路面状況の幅を考えるとグラベルタイプのYAMAHA WABASH RTは理想的と思い選択。その期待に十分に応えてくれた
MT-800N
より多くの荷物を積載するため、ミノウラ MT-800N リヤキャリヤを装着した。スチール製で丈夫、荷掛けフックが4か所あるのも便利だった

準備が整うとまずは車両を大阪へ輸送。到着の日に合わせて高速バスで大阪へ移動。大阪で車両を受け取ると鹿児島県志布志行きの『フェリーさんふらわぁ』に乗り込んだ。13時間の船旅を経て志布志に着くと、自走で出発地、本土最南端の佐多岬へ向かった。

5月16日、スタートの日。佐多岬はあいにくの雨模様だった。雨具を着込んで走り出す。今回の日本縦断は日本を代表する18の道(以下ステージと呼ぶ)を繋ぐ形でルートをプランニングした。スタートと同時にステージ01『佐多岬ロードパーク』を走行。全長約9kmに及ぶ道は熱帯林に囲まれ、まるでジャングルロード、ヤシの木や熱帯植物など「ここは本当に日本なのか?」という感じ、まるで南の国を走っている気分だった。

国道269号、国道220号と繋ぎ、桜島の南部を走る国道224号に着いた。噴煙を上げる桜島の麓を走る道がステージ2の『桜島溶岩ロード』。国道を離れて湯之平展望所へ向かう。険しい傾斜の上り坂を息を切らし上って行く。すでに100km以上走っているので、上り坂がさらにきつく感じる。上り切ったところに展望所。そこから見える溶岩原と鹿児島市内の景色はまさに絶景、疲れを吹き飛ばしてくれた。

初日は少しでも走行距離を延ばしておこうと思い、鹿児島県霧島市まで、140km以上走ることになった。ネットカフェに入ったのは夜11過ぎ。疲れたが、純粋に旅をしていることが嬉しかった。

佐多岬ロードパーク
ステージ01の『佐多岬ロードパーク』を走り、ホッと一息。今回は雨で思うような写真は撮れなかったが、ぜひeバイクで走って欲しい
桜島溶岩ロード
噴煙を上げる桜島を見ると、鹿児島にいることを実感する。ステージ02の『桜島溶岩ロード』は溶岩原など他にない絶景を見ることができる

2日目。霧島市から県道を走って横川、湧水と繋ぎ、宮崎県のえびの市へ。国道221号のダイナミックなループ橋を走り、熊本県人吉から球磨川に沿って延びる国道219号へ入って行った。令和2年7月の豪雨によって起きた球磨川の氾濫。実際に走ってみるとその傷跡は2年過ぎた今も深く残っていて、工事中の河川が何個所もあったり、橋がなくなっていたり、通行止めで走れない区間もあった。印象に残っているのは肥薩線。線路が大きくゆがんでいたり、雑草で埋もれていたり…… ほとんど放置された状態。復旧への道筋が見えない肥薩線の現状を目の当たりにした。

八代市のホテルに着いたときには午後8時を過ぎていた。2日連続で140km越えとなったが、脚が軽い筋肉痛なくらいで、体力的には問題なし、気分的にはまだまだ走れそうだった。

国道221号
熊本県と宮崎県の境にある加久藤峠を挟んで北側に『人吉ループ橋』南側に『えびのループ橋』。2つのループ橋がある珍しい国道221号
国道219号
球磨川に沿って延びる国道219号。令和2年の球磨川氾濫で大きな被害を受けたエリアで、あちこちに傷跡は残っているが川の流れはとても穏やかだった

九州で楽しみにしていたのが、ステージ03の『阿蘇パノラマライン』。40年前にオートバイツーリングで訪れて以来、何度も来ているが自転車(eバイク)で走るのは初めて、期待に胸が膨らむ。

阿蘇パノラマラインを走る前に腹ごしらえと思い、国道325沿いにある、バイカーに人気の高い『ストロングボスサルーン』に入った。アメリカ西部を思わせる建物、店内も広くアメリカンな看板やポスターが飾られていたり、気分はもう完全にアメリカだ。雰囲気に合わせてチーズバーガーを注文する。ケチャップとマスタードかけて、いただきます♪。ビーフ100%で肉感たっぷり。まさにアメリカンハンバーグという感じだ、ポテトフライもホクホク。大満足のランチとなった。

ストロングボスサルーンのハンバーガー
『ストロングボスサルーン』のハンバーガーはビーフ100%。ボリュームもあり食べ応え十分だった。次はぜひオムライスを食べてみたい
ストロングボスサルーンの店内
ウッディーな店内は広々。ステージがあり、タイミングが良ければ生演奏を聞くことができる。展示されているハーレーダビットソンもカッコイイ

阿蘇南部の白水から『阿蘇パノラマライン』へ入って行く。道は上り坂だが、ダイナミックな景色に気持ちが引き込まれているのか、それとも電動アシストのお陰か、グングン進んで行く。見上げれば青空、とにかく天気に恵まれているのが嬉しい。阿蘇らしい枯草色の草原と山々が広がる。走っているだけで気分がいい。

阿蘇火口へと続く『阿蘇山公園道路』は通行止めのため、そのままパノラマラインのハイライト『草千里ヶ浜』へ向かう。カーブを曲がると『草千里ヶ浜』が目の前にドーンと広がった。烏帽子岳の北麓に広がる草原と池のコントラストが美しい。この美しい景色をeバイクと共に見ているのかと思うと感慨深かった。

阿蘇パノラマラインの牛
ステージ03の『阿蘇パノラマライン』の周辺には広大な景色が広がっている。広い空の下で、放牧された牛たちも気持ち良さそうに見える
阿蘇パノラマライン
eバイクならゆっくり景色が眺めながら走れるし、気に行った場所で気楽に停めることができる。今回の旅でeバイクの魅力と利点を再確認した

■ここまでの総走行距離:395.9km

■ルート

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