温泉というと「お風呂」に興味が集まるが、歴史のある温泉地ではその土地にも注目したい。今回出かけた長野の野沢温泉はとくに歴史が古く、しかも温泉への接し方も違う。そこに魅力があった。
のんびり、しみじみとeバイクで温泉地を巡る
日本には「いいところ」がたくさんある。そしてここで訪れた野沢温泉もまた「いいところ」であった。
といっても実は今回、野沢温泉の神髄である温泉に入っていないのだ。「それでどこを指していいと言っているのか?」というリアクションがあるのは、原稿を打つモニターの中に見えるくらいわかっている。
だけどこの撮影のとき、ガイドをしていただいた上野眞奈美さんとあちこちを走っていたらそう思えたのだ。
この野沢温泉は、一説によると鎌倉時代からの歴史を持つという。それだけに村をよく見ると、そこかしこに「時の流れ」を感じるものがある。石積みだったり古い神社だったりと、時間の経過とその間の放置(保存)具合がバランスしていないと見ることができないものたちだ。
野沢温泉村を巡る道は細く、山あいに沿って延びているので、eバイクで走ると自然とスローペースになる。だからこそ気をつけて周りを見ると気づきが多いのだ。
なお、野沢温泉の温泉はどこかの企業の所有ではなく村が所有しているので、村民は誰でも利用する権利がある。それだけに「温泉を守る」という意識を誰もが持っている。だから歴史や風景に表れる「時の流れ」も守られているのだろう。
そんな野沢温泉、eバイクでのんび&しみじみと巡るにはぴったりのところじゃないだろうか。
もっとまわりたい そう思う温泉地ライド
野沢温泉のメイン通りに上野さんご夫婦が営む「コンパスビレッジ」というショップがあり、そこでは取材で上野さんが乗っているのと同じSpecializedのVado SLがレンタルできる。このeバイクがレンタルできるところは全国的に見ても多くないと思うので、Vado SLでサイクリングをしてみたいと思う人はコンパスビレッジに問い合わせしてみるといいだろう。
ということで本題。上野さんはeバイクツアーガイドもしているので、案内できるルートをたくさんお持ちだが、今回は温泉地を中心に案内してもらった。
Specializedのeバイクは、Vado SLを含めて自然なトルクフィールでライダーの走りをアシストする特性になっている。それだけに「アシストが弱い?」と思うところもあるが、そこは心配無用。
コンパスビレッジでVado SLをレンタルするお客さんはふだん自転車に乗らない人のほうが多いし、若い人もいれば熟年層もいる。
でも、皆さん共通のコメントが「eバイクってこんなに走れるの!」であるそうだ。
温泉地の急坂に入ると最初は「えぇ〜」となるが、上り出すと「え?」から「お〜!」という驚きに変わる。そして上りきると息が切れながらも、達成感で笑顔になっている。
ちなみに今回の取材では取材班のひとりはあえて小径eバイクを借りたのだが、Vado SLと一緒に走るとやはり差を感じた。
これはアシスト力のことでなく車体の話。舗装が荒れたところを通るので小径車は不安定になりがちだが、Vado SLが履く700×38Cサイズのタイヤは安定感があり、グリップもいいのでトラクションがしっかりかかる。
また、急な坂の上り下りでは、状況に合わせてポジションを移動したいところだが、Vado SLは適切な乗車姿勢が取れるので、細く急な坂道が現れてもアシストだけでなくカラダ全体で対応できるのがいい。安心感があると同時に「スポーツ自転車らしいアクティブな面白み」も味わえるのだ。
さて、そんな感じで温泉地の路地をまわるのだけど、野沢温泉には各所に無料の共同温泉がある。
ここは観光客向けかと思いきやそうでない。前のページにも書いたが、温泉は村が所有していて村民は自由に使えるものである。
そんなことから共同温泉は、ここに住む人にとっては「我が家のお風呂」というものでもあった。
とはいえ村の人に排他的な考えはない。ずっと昔から、山を越えて人が訪ねてくる地域ゆえに「もてなす気持ち」で訪れた人に共同温泉を勧めてきた。つまり自分の家のお風呂を旅人に「どうぞ」と気持ちよく開放してきたのだ。
そして今もそれは続くので、観光客が利用することはまるで問題ない。ただ、他人の家のお風呂を借りるわけだから、マナーやありがたみは忘れないようにしたい。
そんな他とは少し違う野沢温泉の文化は面白い。ゆえに歴史に名を残す文化人も多く訪れて長期滞在したという。で、この取材の移動中、目に留まったのが若い外国人の姿。長期泊をしているかのようなラフな格好、古びた民宿の前に置かれたイスに腰掛けて本を読んでいた。
残念ながら移動の最中に見たものなので画像に残していないが、昔の
文化人も同じような感じで野沢温泉の時間を過ごしていたのではないかと思う光景だった。そしてこの地が「そうした時間を過ごすのにいい場所」というイメージが膨らんだ。
野沢温泉周辺は見どころがたくさんあるエリアなので、いかようにも観光が楽しめると思うが、eバイクという「足」でのんびりまわったおかげで気がつけたことが多かった。これは率直な感想であり、こうした体験がしたいからeバイクに乗るのだと改めて思った。
やっぱりeバイクはいい。そして訪れた野沢温泉は期待以上のところだった。時間が許せばもっとまわりたいところだった。野沢温泉に行くことがあれば、Vado SLでまわることをお勧めしたい。
SPECIALIZED Vado SL 4.0
スペシャライズド・ヴァドSL4.0
価格:39万6000円
問スペシャライズド・ジャパン https://www.specialized.com/jp/ja
Vado SLのSLとはSuperLightの意味なので、軽さがこのeバイクの特徴でもある。車体が軽いと押し歩き等の取り回しが容易なのは当然、走りの軽快感が高い。その特徴に合わせてSL1.1モーターによるナチュラルなアシストがあるので、ごく自然に「脚力が上がった」ようなライドが味わえる。乗り味を重視したいというのならVado SL4.0はベストな選択だろう。
SPEC
サイズ:S、M、L、XL
カラー:ライムストーン、ブラックリフレクティブ
フレーム:E5アルミニウム
ドライブユニット:スペシャライズドSL1.1モーター
バッテリー容量:320Wh
制御系:スペシャライズドTUC、LEDディスプレイ
コンポーネント:スラム・NX(11速)
タイヤ:スペシャライズド・パスファインダースポーツ(700×38C)
上野眞奈美さん(コンパスハウス)
スキーに詳しい方ならご存じの上野眞奈美さんにガイドしていただいた。2012〜2013年のワールドカップフリースタイルスキー・ハーフパイプで2位の成績を収めた他、大きな大会で好成績を残し、ソチオリンピックでは日本代表となっていた。現在は野沢温泉に在住。このエリアの魅力をスキーやサイクリングなどスポーツを通じて伝える「コンパスハウス」というご主人が経営する会社で働く。なお、上野さんがこの撮影で着用しているヘルメットはスペシャライズドの「ALIGNⅡMIPS」だ
SHOP:コンパスビレッジ
野沢温泉のアクティビティ発信基地であるコンパスビレッジ。積雪期間以外はレンタルeバイクやeバイクツアーを行っている。オリンピアンである上野さんが対応してくれる
長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9526
Tel:0269-67-0224