eバイク旅ノート Vol.78 eバイク日本一周18「eバイクで走りたい日本の道10選(東日本)前編」

日本一周では改めて日本文化の素晴らしさ、自然の豊かさを実感した。全身で自然の匂いや風、景色の変化をダイレクトに感じられるのが自転車旅の魅力。そしてこの旅では体力を使い過ぎないeバイクだからこそ楽しめる道にたくさん出会いました。そこでeバイクでぜひ走って欲しいと思った道を10ルートを選んでみた。まずは北海道の5ルートをご紹介。どれも魅力的な道、ぜひ出かけましょう!

01:礼文島東海岸ルート(海岸線ほか)
北海道礼文町

北海道稚内の西方に浮かぶ、約300種類の高山植物が咲く“花の島”として知られる礼文島。アクセスは稚内港から『ハートランドフェリー』。所要時間は1時間55分で南部にある香深港に着く。

礼文島は南北約28km、東西約8kmの細長い島、自転車で走る場合は東海岸を南北に延びる『れぶんアツモリロード』道道40号』が中心となる。美しい利尻富士を眺めながら走る東海岸ルートはアップダウンもなく、潮風を受けながら気持ち良く走れる。ちなみに西海岸は断崖絶壁の連続で一部にしか道がないため島を一周することはできない。

eバイクで走るなら縦断がおすすめ。香深港をスタートしたら南端の知床へ行き、映画のロケ地となった『北のカナリアパーク』へ。その後は『れぶんアツモリロード』を北上、キャンプ場もある『久種湖』、そして北端の『スコトン岬』へと至る。総距離は約60kmとなる。

その中にぜひ組み込んで欲しいのが、北部にある絶景ロード『江戸屋山道』だ。南から来ると道道507号沿いにある江戸屋バス停の横が入口になる。坂を上ると丘の上に出る。木のない草原なので抜群に眺めがいい。車もほとんど通らないので、ゆっくり景色が堪能できる。途中にある『トド島展望台』からは海に浮かぶトド島がきれいに見える。全長約2.7kmと短いが、離島とは思えない雄大な景色が堪能できるのでぜひ走って欲しい。また時間がある人は、ルートから外れるが『金田ノ岬&灯台』、『桃岩展望台』をプラスするとより充実した礼文旅になる。

江戸屋山道
『江戸屋山道』は礼文島一の絶景ロード。全長は僅か2.7kmだが、景色のスケール感が半端ない。車もほとんど通らないのでまさに自転車の楽園
スコトン岬
礼文島の最北端の地『スコトン岬』。北の最果てを感じる。その先に浮かんでいるのは無人島の『トド島』、晴れた日には遠くにサハリンも見える
久種湖畔キャンプ場
『久種湖畔キャンプ場』キャンプをするならここ。オートサイトやコテージ、バンガローなど設備充実。久種湖畔を一周できるトレッキングコースもある
れぶんアツモリロード
『れぶんアツモリロード』道道40号から眺める絶景の利尻富士。事前の天気予報によると礼文島滞在2日間は“曇”の予報だったが見事に晴れた

02:日本海オロロンライン(海岸線ほか)
北海道天塩町~稚内市

北海道の小樽から稚内まで続く約380kmの日本海沿いのルートが『オロロンライン』。オロロンとはウミガラスの別名で、1960年代には約8千羽が飛来したが、その数は年々減り、国内では絶滅危惧種になっている。

オロロンラインどこも素晴らしいが、eバイクで走るなら天塩~稚内区間(道道106号)がイチオシ。南側は天塩川の河口にかかる天塩河口大橋から絶景ルートが始まる。右は広大な原野、左は青い日本海、その間を貫く直線道路。痺れるような道が50km以上も続く。

しばらくすると28基もの風車が並ぶ『オトンルイ風力発電所』が見えてくる。その景色は圧巻の一言。数少ない休憩スポット『サロベツ原野駐車場トイレ』もその近くある。さらに進むと“N”を模った『北緯45度モニュメント』、吹雪の時の待機所となる『浜里パーキングシェルター』を抜けると電線と電柱がなくなり、景色はさらに開放的になる。

稚咲内まで建物もない原野が続き、そこを過ぎると再びひたすらまっすぐな道が続く。ほぼ平坦なのでバッテリーの消費は気にせず進んで行ける。次に現れる建物(休憩施設)は『こうほねの家』。天塩河口大橋から走ること41km、初めての自動販売機があるので、水分補給をしておこう。階段を登ると展望台があり、天気が良いと利尻富士がきれいに見える。

その後もひたすら広大な景色が続く。5kmほど走ると再び電柱と電線が現れ、人が住む集落、抜海村に着く。郵便局はあるがお店はない。さらに8kmほど進むと直進が稚内市街、左折はノシャップ岬の標識が現れる。そのまま直進すると初めて長い上り坂になる。久しぶりの上りなのでちょっと辛く感じる。上り切る手前にある『夕日が丘駐車場』から望む、利尻富士は絶景なのでぜひ立ち寄ろう。この坂道を上り切ると稚内の町、この旅のゴールとなる。

約60kmのこのルートは休憩所が数か所あるだけで、途中にお店やコンビニは一軒もない、ただひたすら原野と海と道があるだけ。こんな体験ができる道は日本でも数えるほど。ぜひ一生一度は走って欲しい。

オトンルイ風力発電所
オロロンラインに沿って28基もの巨大風車が並ぶ『オトンルイ風力発電所』。ちなみに“オトンルイ”はアイヌ語で“浜にある道”という意味
オロロンライン
小樽から稚内まで約380km続く風光明媚なドライブルート『オロロンライン』。特に天塩~稚内間はライダーからの人気も高く絶対的な支持を得ている
こうほねの家
天塩~稚内の間はコンビニどころかジュースの自動販売機も数えるほどしかない。天塩側から来た場合41km先にある『こうほねの家』が最初の自販機になる
利尻富士
普通の道にあるはずの電線と電柱がないのでスッキリ、解放的な景色がどこまでも続く。天気が良い日は日本海に浮かぶ利尻富士がきれいに見える

03:網走常呂自転車道線(湖畔や森など)
北海道北見市常呂町~網走市

北海道の東部。サロマ湖湖畔から網走市まで延びる、網走国定公園内を走る延長距離40.2kmのサイクリングロード。昭和62年に廃止された国鉄湧網線跡に作られた道なので全体的に平坦でeバイク初心者でも走りやすい。また独立した専用道路なので車を気にせず走ることができる。

オホーツク海の近くを走ったり、能取湖や網走湖の湖畔を走ったり、森の中を走ったり、変化に富んでいる。途中には『常呂交通ターミナル』『能取湖畔駐車場』『卯原内交通公園』『卯原内交通公園』『大曲駐輪場』など休憩スポット&トイレもたくさんある。また並行して走る国道238号沿いにコンビニがいくつかあるので、食料や飲み物の入手も可能。

私は2度走っているが、2022年の時は森の中で丹頂鶴の親子に出会いとても感動した。大自然の中を走る道なので、倒木が道を塞いでいたり、路面一面が花びらで埋まっていたり、アドベンチャー感が満載だった。また、この道を昔は列車が走っていたことを想像すると、感慨もひとしおになる。

このルートを走る場合、さらにサロマ湖や網走で新鮮な海の幸を食べたり、『博物館網走監獄』の見学などを加えると、より充実したサイクリングになる。季節としては、能取湖『サンゴ草群生地』が紅く染まる9月がおすすめ。

網走常呂自転車道線
『網走常呂自転車道線』は湖沿い、森の中、田園など景色が変化に富んでいるので飽きないが、所々路面が荒れているところがあるので注意しよう
蒸気機関車
廃止された国鉄湧網線跡に作られたサイクリングロード。わずかにレールが残っていたり、実際に走っていた蒸気機関車も展示されている
網走常呂自転車道線
立体交差する陸橋で国道239号を越えて網走湖畔へと進んで行く『網走常呂自転車道線』。鉄道の廃線跡を使った道ならではの景色が楽しめる
博物館網走監獄
ぜひ見学して欲しいのが網走刑務所の旧建造物を保存公開している『博物館網走監獄』。写真は明治29年に作られた舎房で需要文化財にもなっている

04:美幌峠&屈斜路摩周湖畔線(湖畔&峠越え)
北海道弟子屈町

北海道の峠越えルートはいくつかあるが、初心者でも走れて素晴らしい景色が見られる、国道243号の『美幌峠(標高525m)』がおすすめ。その前に走った藻琴峠も良かったが、峠へのアプローチと峠からの絶景の点で上回った。

美幌町、弟子屈町どちらからアプローチするか? 初めての人なら美幌側がおすすめ。上りの傾斜が緩やかだし、峠で絶景が見えた瞬間の感動もこちらの方が大きい。ただ、弟子屈側から上る利点もある。傾斜が急なので体力的には大変だが、ヒルクラムしている充実感、絶景の中を上る気持ち良さという点ではこちらが上回る。どちらから上っても別の魅力があるのが美幌峠なのです(笑)

峠にある道の駅『ぐるっとパノラマ美幌峠』には必ず立ち寄ろう。名物の『揚げいも』に『ザックザクカレーパン』、『美幌牛と玉ねぎのカレー』『えぞ鹿肉ロースト丼』などなど、美幌町の食材で作ったおいしい料理が勢ぞろい。お腹を満たしてくれます。2階は広い展望休憩所になっているので、素晴らしい景色を眺めながら食べることもできます♪

美幌峠からの大パノラマと共にぜひ楽しんで欲しいのが日本最大のカルデラ湖『屈斜路湖』。湖畔の砂を掘るとお湯が出る『砂湯』、周辺には個性豊かな温泉、露天風呂がいくつもある。またキャンプ場も多く、カヌーなども楽しめるのでぜひアウトドアを満喫しよう。

弟子屈方面から美幌峠へ向かってヒルクライム
弟子屈方面から美幌峠へ向かってひたすらヒルクライム。北海道の国道なので傾斜はそれほどきつくない。雄大な景色に包まれながら少しずつ上って行く
美幌峠から望む大パノラマ
標高525mの美幌峠から望む大パノラマ。眼下に日本最大のカルデラ湖『屈斜路湖』が見える。天気が良い日は摩周岳や斜里岳、知床連山が一望できる
屈斜路湖
屈斜路湖はカヌーやフィッシング、キャンプなどのアウトドアが楽しめる。周辺には池の湯、砂湯、コタン温泉など、無料の露天風呂もたくさんある
ぐるっとパノラマ美幌峠
道の駅『ぐるっとパノラマ美幌峠』は“地域を食べる”がコンセプト。レストランやベーカリー、テイクアウトなどご当地グルメが充実している

05:知床横断道路(峠越え)
北海道ウトロ町~羅臼町

世界遺産の知床半島。ウトロと羅臼町を結ぶ全長27kmのルートが知床横断道路(国道334号)も外せないeバイクおすすめルート。横断道路の真ん中にある知床峠(標高738m)へのヒルクライムをぜひ楽しんで欲しい。ウトロ側から上った場合、峠まで約15km。カーブは少なく直線的にグングン標高を上げて行く感じになる。途中にある唯一の休憩スポットが知床五湖方面との分岐にある『知床自然センター』。アウトドアショップ、カフェのほか、オリジナル映像が観られるシアターもあるので、休憩を兼ねて立ち寄りたい。

羅臼側から上る場合、約17kmと少し長くなるが、カーブが多く景色の変化にも富んでいる。カーブを曲がる度に新しい景色が現れるので、ワクワクが止まらない。羅臼から3kmほど上ったところにある『知床羅臼ビジターセンター』は、知床の自然、歴史、文化などがわかりやすく展示解説しているのでぜひ立ち寄りたい。

もう一つおすすめ立ち寄りスポットは天然温泉露天風呂『熊の湯』。原生林に囲まれた野性味あふれる露天風呂で、地元の人と観光客の交流の場になっている。入浴は無料だが、寄付金箱があるのでぜひ心付けを。道を挟んだ反対側には『羅臼温泉野営場』があるので、キャンプ好きな人は宿泊して温泉を一緒に楽しもう。

知床峠からは雄大な羅臼岳が間近に見える。また天気がいい日は国後島も望むことができる。その景色はまさに頑張って上ってきた人へのご褒美。eバイクのバッテリーを満タンチャージして、ぜひ知床峠にチャレンジしよう!

知床横断道路
『知床横断道路』ウトロ側から知床峠を目指す。ひたすら続く登り坂。道の先に空高く聳え立つ羅臼岳が見える。時々休憩をしながら一歩一歩進んで行く
知床峠付近から望む羅臼側
知床峠付近から望む、羅臼側の絶景。眼下には広大な原生林、その中を縫うように延びる道路。水平線の向こうには国後島が霞んで見える。これぞ絶景!
ゴジラ岩
ウトロの港のランドマーク『ゴジラ岩』。高さ15mもある奇岩なので行くとすぐに見つかる。ウトロには他に『オンコ岩』『三角岩』という奇岩もある
熊の湯の看板
国道334号にある熊の湯の看板。羅臼川を渡ると男女の脱衣所が見えてくる。地元の人から長く愛されている無料の露天風呂。マナーを守って入浴したい

取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp

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