ドイツと台湾に拠点を置く、グローバル総合自転車ブランドのメリダ。そのトップを務める3人が、2024年11月に来日して伊豆のメリダエックスベースでミーティングを行った。そこで、国際的ジャーナリストの難波ケンジ氏が、同ブランドの eバイクカテゴリーのマネージャーへ直撃インタビューを敢行した。

eバイク部門マネージャー
ハネス・ノラー
ポルシェやメルセデス、ボッシュが本拠地を構える南ドイツの大都市シュトゥットガルト出身の32歳。ロードからMTBまでオールジャンルでサイクリングを楽しむが、特にMTBは下り系のレースにも参戦する。
MERIDA X BASE
静岡県伊豆の「メリダエックスベース」で、ブランド発表会を開催

シュテファン・セイツ
左:R&D統括マネージャー
ベンジャミン・ディーマー


eバイクは自転車の中心に
「どのジャンルのeバイクが伸びているかというと、『オールカテゴリー』」。つまり、eMTBをはじめとして、グラベル用のeバイク、ステップインフレームを持ったシティ用のeバイク、荷物を積むためのカーゴバイクまで、あらゆるカテゴリーで、ヨーロッパではeバイクが中心になりつつあると、ハネス氏は開口一番に語る。

一方でカテゴリーによっては、モーターが付いていないバイクが盛り上がりを見せているのも事実だそう。ロードタイプについては、5年ほど前にeロードが出始めた頃は瞬間風速的に受注が殺到したブランドもあったが既に落ち着いており、ハネスいわく「結局、ヨーロッパの時速25kmのアシスト制限では、みんなが知っているとおりロードバイクの巡航速度はそれより速いので、単なる重いロードバイクになりアシストの恩恵を受けられるのはある程度の勾配の登坂だけ。そして、ハイエンドのロードバイクはそれ自体が既に高価なので、eバイク化すると値段についていけないサイクリストも多かったのでしょう。イタリアなどのベテランサイクリストには需要があるので、一部のハイエンドブランドだけが展開していくことになるのでは」とハネス氏。
そんな中、現在のヨーロッパ最大のトピックは、大トルクを持つユニット搭載のロングストロークeMTBだ。80Nm以上が当たり前になり、2024年7月に登場したDJIのユニットは100Nm超えを実現。上りの楽さからライダーはサスペンションのロングストローク化を求め、メリダでもヨーロッパでは180mmトラベルを持つメリダe 180を投入した。バッテリーもバイク全体の価格からすると容量が大きくなって、100ユーロ価格が高くなっても大きな問題ではなく、従来の定番500Whを上回る750、800Whといったサイズに、さらに別体バッテリーを搭載するスタイルが増えてきた。
「結果として、ベテランのMTBライダーは軽量でハンドリングに優れたeMTBを求め、軽量eMTBカテゴリーもできているが、100Nmを発生するユニットも40 Nmの軽量ユニットも重量差は僅かで、軽量ユニットのメリットは少ない。最終的には大トルクで軽いユニットに集約されていくのではないでしょうか?」
そしてeロードが下火となり、各社はeロードカテゴリーをeグラベルへと進化させているが、荷物を積んで林道を走るeグラベルは好評だ。毎日使えるコミューターとしても人気だが、このカテゴリーでは人力のグラベルバイクの人気の方が上回るという。というのも「グラベルを求めるユーザーは本当に多様で、ヨーロッパでは最初のスポーツサイクルにグラベルを求める人が増えている。目的は通勤通学とポタリング。シリアスなサイクリストは自分の脚に自信があるので、やはり人力を求めるということになっている」。
また、カーゴバイクは雨後の筍のごとく新しいブランドが登場していて、出荷台数は右肩上がりだが、これは自治体の補助金によるところが大きいのは以前に紹介したとおり。2025年のトピックは、クロスバイク系のバイクにキャリヤを装着したeSUVだという。「結局多くの人はカーゴバイクまでの積載性を必要としないし、駐輪場事情も普通の自転車の形をしていた方が便利なので、前カゴ&リヤキャリヤ付きのSUV的なカテゴリーがトピック。子載せも対応可能で、スポーティな走りの日本の電動アシスト自転車に近いと思っていただければ良い。メリダではヨーロッパでこのカテゴリーの新製品も出しています」。
人力のスポーツサイクルの新規開発を止めているブランドも多い中で、メリダでは「幅広いユーザーのための総合ブランドなので、ペダルバイクもeバイクも今後も全力で開発していきたいと思います」とハネス氏は語った。



価格/38万5000円

価格/31万7900円