ジョッシュ・メルカド氏●スペシャライズド/マウンテンバイク部門プロダクトマネージャー
(プロフィール)
トレイル系ハードテール・ファミリーの製品開発を担当。モトクロスのレースで育ち、サスペンション会社から大学に進学、ここでオフロード自転車の楽しさに目覚め、マーケティング専門知識と共にスペシャライズドに入社。今年で入社6年目。
5年後にはeMTBとアナログMTBの比率は8:2程になる?
−−現在あなたが感じているeMTBの傾向を大まかに教えてください
今は、圧倒的に電動アシスト化が進んでいると感じるよ。これから5年以上立てば、もっと当たり前になっていくんじゃないかな。
価格帯で言えば、例えば6000ドルほどの価格帯のバイクで、eバイクとアナログバイク(アシストのない自転車をこう呼んでいた)の比率が今は5:5ぐらいだとしたら、それは、5年後には8:2ぐらいになっているんじゃないかと思う。
確かに価格は高いけど、でもいつも走る仲間が5人いたとする。そのうちの1人がeMTBを手に入れると、どうしても他の4人も欲しくなってしまう。なんで自分はアナログバイクなんだ、って。そんなふうに乗り換えていく人は多くなっているね。
−−例えば本社ではeMTBはどんなふうに使われていますか?
従業員の多くは、eバイクに乗り換えているよ。特にスペシャライズドでは有名なランチライド、お昼時に大体1時間から1時間半ぐらいのライドが推奨されているんだけど、それにeMTBでいく人が多くなったね。eMTBなら走れるコースや距離が変わってくるし、帰ってきてすぐにランチを頬張る時間もできる(笑)。
僕自身は、元々(モーターサイクルで)モトクロスレースをしていたからかもしれないけど、eMTBに乗ることが多いね。トレイルがすぐそばにあるから、通勤ですぐにトレイルを走れるんだ。
eMTBに乗ってるから最近は、急坂があるトレイルがお気に入りになった。僕が住んでいるところは、職場から車で10分ぐらい走ったら、30km弱あるライドを全部で1時間半ぐらいで走れるんだ。走りが身近になったね。
−−この間軽量なLEVO SLを試乗しましたが、これには大きな可能性を感じました
その軽量なLEVO SLはもちろん売れてるんだけど、ハイパワー版のTURBO LEVOもあって、今、人気はTURBO LEVOの方が高まっている。なぜかというと、1人がハイパワーのバイクを持っていると、自分の軽量eバイクがローパワーなんだと事実を切なくなってしまうようなんだ。人の考えることだね。
というのも消費者が目を向けるのは、大きくは数字だから。バッテリー容量だったり、走れる距離だったり。SLの超軽量さは、本格MTBライダーのためのデザインだ。パワーを重視せずとも、走る感覚がアナログMTBのようであるのが大切だった。それは問題ない。ただ問題になるのは友達がハイパワーなeMTBに乗っている場合だよ。
これが考え方のシフトだ。今までは軽いものが羨ましかったけれど、これからはハイパワーなものが欲しくなる時代になる。リアルな山道のシングルトラックでは軽い方が乗りやすいけれど、重くたって利点がある。荒れた路面では、重さは味方だよ。重いeバイクなら重心が低くて安定する。
若い層が電動アシストのパワーを好み始めている
−−ということは、軽量eMTBは未来ではない?
そんなことはないよ。サイクリングの究極は楽しむこと。軽いバイクの方が1日気持ち良く乗れるだろうし、そのためのバイクだ。これはもっと進化していくと思う。
ただSLはバッテリー容量もパワーも少ないとも言われてしまう。軽量なフルサスeMTBがなぜ必要なのか、というのを理解してもらうには、もう少し乗り手に知識が、あるいは経験が必要になるんだと思う。SLは軽いまま少しパワーを上げて進化し、ハイパワーなバイクと共存していく。そんなシナリオだと思うよ。
−−eMTB購入層の変化は見られますか?
結構変わってきていると思う。ちょっと前までは、年を召した方や、月に2、3回しか乗らないのでアシストが必要、というライダーが購入のメイン層だった。
でも今は、若い25、26歳の人々が、これに乗って楽しく走っているという話を聞く。思うに、eバイクの感覚が少し変わってきたのかな。僕にはまだアシストが必要じゃないよ、という体力のある人も乗り始めている。
それにeMTBが走れるトレイルも増えてきた。今アメリカでは、eバイクが乗れないトレイルもあるんだ、日本ではまだないのかもしれないけど。だんだん世界はそうなってきた。でも、それは変わりつつある。eバイク、eMTBへの理解もどんどん深まって、需要も増えていくと思うよ。