世界の街のリアルなeバイク事情とは? eバイクジャーナル from ドイツ&フランス

ゲーテ通り

世界を飛び回るジャーナリストの難波ケンジ氏が、今回は主にドイツとフランスからeバイクを取り巻く環境をレポートする。都市交通としてのeバイクは、どのように活用されているのか?

難波さんとベンジャミン・ディーマー氏

Reporter
難波ケンジ

国際派自転車ジャーナリスト。訪独のついでにメリダ・ヨーロッパR&D CEOのベンジャミン・ディーマー氏に会って話を聞いた。

国を挙げての公共交通システムとしてeバイク活用の促進が続く

eカーゴバイク

5年ぶりのドイツは別世界

2024年は、コロナ禍を経て5年ぶりにヨーロッパを複数回訪問したが、街の景色が変わったといって良いと思う。というのも、市街地の自転車走行環境が劇的に変化しているのだ。例えば冒頭の写真は、日本人にとってハブ空港なので行ったことのある人も多いであろう、フランクフルトの高級ショッピングストリートであるゲーテ通り。見てのとおり、あの高級街が自転車道路になっている。街中の至る所に自転車道路が設けられ、片側2車線のうちの1つを潰して自転車道にしたり、裏路地は居住者や業務車以外は進入禁止の自転車道にしてみたり、時間限定で自転車専用にしてみたりと、自動車大国ドイツが自転車に全振りしている感がある。

そして朝と夕方は、その道路を小さい子を乗せたカーゴバイクが保育園の送迎に走りまくっているのだ。カーゴeバイクが売れているとは聞いていたけども、ここまで増えている現実に驚く。ちなみに欧州のカーゴeバイクは3500ユーロ(約58万円)ぐらいが中心で、高いものだと余裕で5000ユーロ(約80万円)を超えてくる。5年前はスポーツ用だったeバイクの潮流は、今やシティユースにまで拡大し、世界はとんでもないスピードで進化している。

自転車以外の面では……?

ドイツ中心街
ガソリン価格の高騰もあって、自動車の利用が少し減って、電車とeバイクが盛んなドイツ中心街。ラッシュの渋滞は相変わらずだが、相次ぐ規制強化でドライバーはへきえき
電動キックボード
パリなど一部の自治体で禁止され始めた電動キックボードも、フランクフルトではレンタルが盛ん。駐輪マナーを見ると、ルールのギリギリを狙うドイツらしさ

in Germany

eカーゴバイク

駐輪場など日本とは利用環境が異なる

駐輪場

移動スピードの速いヨーロッパらしく、頑丈なフレームと低重心のカーゴeバイクは日本の軽快車より安全なのは間違いないが、日本とは住宅や駐輪場事情が違うので、どちらが正しいとは言いづらい。荷物運搬用としては、既存のダイヤモンドフレームのeバイクにキャリヤを付けたものが多く、ほとんどがハブモーターの廉価なeバイクだった。

量販店でも展示のほとんどがeバイク

量販店の展示自転車

量販店に行っても、展示自転車のほとんどはeバイク。カーゴeバイクも普通に売られている。写真は大手スポーツ量販店のデカトロンだが、売られている自転車の単価は結構高く、3000ユーロぐらいが中心価格帯だった。実は日本のeバイクは欧州に比べて、かなり戦略的な価格なのかもしれない。スポーツタイプ、ステップイン、カーゴが同じ割合の印象。

カーゴeバイク普及の影には自治体から補助金

子乗せeバイク

定価が20万円を超えると極端に売れなくなるという日本の電動アシスト軽快車とは、もはや違う世界の購買力がそこにはあるとしか思えないが……。聞くと、脱炭素を掲げる連立政権の影響もあって、子乗せのカーゴeバイクには自治体を通じて補助金が投入されているらしく、所有している自動車を手放してeバイクを購入すると、自治体によっては半額近く補助がある。

カーゴeバイクではシマノユニットが強い

シマノのユニット

カーゴeバイクは、スタートアップ的な専業のブランドが雨後の筍のごとく立ち上がっており、それらにはボッシュ1強のドイツにあって、結構な割合でシマノユニットが装着されており、日本人としてうれしい限り。写真のバイクはバッテリーを外しているが、外していないバイクもたくさんあったので、近年のドイツで盗難は減っている模様。

in France

フランス

お隣フランスもeバイク全盛だがドイツと違う

ステップインスタイルのeバイク

お国変わるとeバイクのスタイルも変わるのがヨーロッパ。カーゴが流行のドイツと比べて、フランスではステップインスタイルのeバイクが人気。写真のバイクはパナソニックユニット搭載で日本の軽快車と似たスタイル。フランス人の感性には、このスタイルに優雅さを感じるのかもしれない。日本と似ているが、少しエレガントなのは気のせいだろうか?

レンタルも販売もステップインが多い

レンタルeバイク

観光地のレンタルeバイクも、誰でも乗りやすいステップインスタイルがはやりのようで、乗っている人を見ると比較的中高年齢の人が多い印象。若い人は街中では余り自転車に乗っておらず、むしろスポーツとして人力のロードバイクに乗っている人が多い印象。ドイツとは全く異なる景色があるが、日本に近いのはフランスの方かもしれない。

フランスはドイツとは少し違うeバイク事情

フランス

ヨーロッパの大国、ドイツとフランスは隣同士だけれど文化も言語も異なり、eバイクというかサイクリング事情も大きく違う。両国共にマウンテンバイクが盛んなのは同じでeMTBは売れているが、ロードバイクも同じぐらい人気なのがフランス。ちなみにeロードは出始めこそ売れたが、今はほとんど売れていない。街乗り用では、ドイツのようなカーゴeバイクははやっておらず、一方でeバイク自体は非常に普及しているが、一目見て平均価格がドイツと比べて半額近いものが多い。中国製のハブモーターのブランドや、後付けキットが盛んなのがフランスの特徴。ステップインフレームのeバイクは極めて盛んだ。

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