日本一周に最適なeバイクはどれかを模索。その中でバッテリー容量や長距離走行力や操作性などを選択ポイントに、ミヤタのロードレックスとヤマハのYPJの2車種に絞り込んだ。数日間レンタルできる店を探していたところ、運よく町田市にある鶴川サイクルを発見。数日間ロードレックスに乗ることができた。
前回の試乗レポートはこちらから
ロードレックスの特性はある程度把握できた、次はヤマハのYPJだ。色々探したが結局、長期レンタルできる店は見つからず、ヤマハ発動機の広報に直接お願いをして、車両を借りられることになった。候補モデルであるYPJ-ERに加えて、リヤキャリヤとフェンダー、サイドスタンドを標準装備したオールマイティモデルのYPJ-TCも一緒に借りることができた。2つモデルを乗り比べできるのはありがたい。
まずはツーリング向けのモデルTCから乗ってみる。タイヤサイズは700×35Cサイズ、ロードバイクとしては太めの部類。ERとの大きな違いはフラットバーハンドル、フロントサスペンション。いい例えが浮かばないが、雰囲気的にはクロスバイクとMTBを足して割ったような感じ(笑)
僕がふだんの足として使っている自転車がフラットバーなので安心感はあるが、ドロップハンドルを握ったときの「よし、これから走るぞっ!」的なテンションがない。まあこれはあくまで僕個人の感覚ですが(笑) 試乗ツーリングの目的地は江の島に決めた。自宅の相模原から往復80kmの距離。フラットでほとんどアップダウンがないコースだが、まずはeバイクで走る80kmを体感しておきたい。
相模川に沿って南下。車道、歩道、自転車歩行者道路など、路面状況を変えながら進んで行く。しばらく走ると川沿いに延びた砂利道が現れた。フロントサスペンションで振動をある程度吸収していると思うが、デコボコが激しすぎて、さすがに快適走行とまでは言えない。ただフラットバーなのでコントロールがしやすいのは◎。その後、土の道になるといい感じで走ることができた。日本一周でどれだけ悪路を走るのかわからないが、路面の変化に強いのはERよりもTCなのは確かだろう。
海老名から市街地の県道に入って行く。強力なアシストが得られる「HIGHモード」を使ってグイグイ進んで行く。調子を良くこいでゆくと時速24kmを超え、ペダルが徐々に重くなってくる。走れないことはないが、できる限り体力を温存しておきたいので、時速20km弱に力をゆるめる。2時間くらいたつと時速20km前後あたりが快適に走れることがわかってくる。
海岸沿いに延びる国道134号にぶつかる。自転車で江の島へ行くのは3年ぶり。確か、海沿いにサイクリングロードがあったはずと思い、国道を越えて海岸線へ向かった。すると案の定サイクリングロードがあった。海を右に見ながら江の島へ向かう。道はかなり荒れていて砂を被っている場所がたくさんあるが、悪路に強いTCなら安心して走れる。絶対にERと思っていたが、路面状況を気にせず走れるTCもいいなと思い始める。
昼過ぎに江の島に到着した。3年前に自転車で来たときに比べると疲れは少なく、体力的にも余裕たっぷり。さすがeバイクだ。体力も気力も有り余っているので、そのまま島の裏路地を探索したり、江ノ電の江ノ島駅の周辺を走り回ったり…… 初めて自転車探検をした子供の頃のように夢中でペダルをこぎ、江の島散歩を楽しんだ。
帰路は海沿いサイクリングロードは使わず、住宅街の道を縫うように走った。「広い家だな~、きっとお金持ちなのだろう。どんな仕事をしている人かな?」とか「このオシャレな家だから、きっとアパレル系の人が住んでいるだろう」とか、周りの家を眺めながらさまざまな想像を膨らませた。速度が遅い自転車だと楽しみも多くなる。
午後5時、無事帰宅。往復80kmくらいだと思っていたが、実際の走行距離は95.7kmになっていた。ちなみに平均速度は時速14.9kmだった。一番驚いたのはバッテリー残量が49%もあったこと。ほぼHIGHモードで100km近く走ったのに、まだ半分も残っている。今回のようなフラットなコースなら200kmも夢ではなさそうだ。さらにECOモードを組み合わせたら、もっと長い距離を走れるかもしれない。これは大容量のリチウムイオンバッテリーを積むYPJの強みだと思うが、ERに乗るのがますます楽しみになった。
距離もさることながらeバイクが最も威力を発揮するのが上り坂。どうせなら次は峠越えに挑戦してみたい。となったら箱根がベスト。しかし自宅から芦ノ湖までざっと見積もって100kmはある。いきなり日帰り往復200km越えはさすがにキツイ。ということで、御殿場に宿泊する1泊2日で行くことにした。往路で箱根越えをして御殿場まで行き、翌日は山中湖&道志経由して帰宅するコース。ERによる初めての泊りがけ峠越えツーリング、期待が膨らむ。
ところが準備段階で問題が発生。長さ25cm、重さ約1kgの充電器を持って行かなければならないが、サドルバッグが小さすぎては入らない。ウソだろ~。他に使えるのはザックだけ。重い荷物を入れると疲れるので背負いたくないが……他に方法がない。渋々ザックに詰め込んだ。ちなみに将来的にはリヤキャリヤとサイドバッグを装着する予定。サドルバッグにワイヤーロックとタオル。ザックに充電器、着替え、工具など詰め込む。
朝7時に家を出る。相模原から国道129号で平塚を目指す。しばらくは市街地、旅気分は盛り上がらないが、太平洋へ出たとたんテンションが上がった。国道134号を西へ向かう。今日は日曜日、ロードバイクの人がたくさんいる。時速20km前後で走っていると、ロードバイクが僕の横を風のように走り去って行く。どれくらいの速度で走っているのだろう?
午前10時。大磯港で休憩にする。コロナ禍のいま、密にならない「釣り」がブームと聞いていたが、堤防をのぞくと黒山の人だかりができていた。堤防に沿って一列になり、釣竿を振っている。今日は天気がいいので、釣りも気持ちよさそうだ。ベンチに腰掛けアイスを食べていると、ポツポツとロードバイクがやってくる。思い思いの場所に自転車を停め、足を休ませている。
少し前、道の路面に「太平洋岸自転車道」のペイントがあることに気がついた。何だろうと思いスマホで調べると、千葉県の銚子から和歌山市まで全6県、総延長1400kmに及ぶ自転車道構想であることがわかった。これほど壮大な自転車道路があるとは知らなかった。いつかeバイクで「太平洋岸自転車道」の全線走破してみたい。いや、絶対に走るぞ。
「太平洋岸自転車道」の大磯区間は自転車専用道があり、とても走りやすかった。車を気にせず走れるのは安心感があるし、何より気持ちがいい。広い空と青い海を独り占めしている気分。ペダルをこぐ足が心なしか軽く感じる。
再び国道1号。小田原に入ると一気に交通量が増えてきた。早川沿いに出ると大渋滞。動かなくなった車の横を慎重に走り抜けて行く。渋滞がないのは自転車のひとつの特権だが、それ以上に体を動かす気持ち良さ、周りの自然をダイレクトに感じられることがうれしい。そうこうしているうちに旧東海道街道の入口、三枚橋が見えてきた。いよいよここから、本格的な峠道が始まる。