eバイク旅ノート Vol.73 eバイク日本一周13「台風と闘いながら北海道ラスト函館へ」

60歳を越える夫婦がeバイクで日本一周の旅に出た。今年6月に神奈川県の自宅をスタート、関東、新潟、東北と走り秋田からフェリーで北海道の苫小牧へ。最北端(宗谷岬)、最西端(納沙布岬)などを時計回りで北海道を一周、苫小牧へ戻ってきたところで突然の体調不良、夫婦揃ってダウン。室蘭のホテルで5日間の静養を経て復活! 再び旅が動き出した。

DAY70

ずっと気になっていた台風7号は北海道には上陸せず、日本海側を北上することがわかった。それでも風は強くなるのは確か、向かい風にならないことを祈って、ゲストハウス『ポンコタン』を出発した。最も接近するのは明日。今日は曇が多いが、青空も少しだけ見えている。風もまだ強くない。

長いトンネルを2つ抜けると国道37号に出た。あとはひたすら長万部へ向かうだけだ。豊浦の町を出ると上り坂が始まった、海寄りの道なので緩やかな道だと思っていが、実際は山が深く、アップダウンが激しくトンネルも多い。体力がどんどん削られていく。

礼文華峠を越えて下り始めると、前方にまっすぐに延びる海岸線が見えてきた。どうやら山道は終わったらしい。下り切り線路を越えると、海岸に沿って延びる一直線の道になった。山道ではあまり感じなかったが、海に出ると追い風であることがわかった。想像以上にいいペースで進んで行く。

お昼に食べようと思っていたサンドイッチを朝からバックに忍ばせていたが、休憩ができそうな場所がない。延々と走り続け、結局、長万部まで来てしまった。駅の待合室へ行きそこで食べることにした。ここなら雨風の心配もないので、安心して食べられる。

チェックインの午後3時に合わせて民宿『シャマンの里』のドアを叩いた。木造の建物は古く昭和の香りがする。今年70歳というオーナーさんは気さくな人で冗談を言って笑わせてくれるし、何年も通い続けている常連さんがいたり、初めて来たのに、なぜかほっこりできる不思議な宿だった。

夜めしは長万部名物、かにめし本舗かなやの『かにめし』にする。味付けされた蟹の身は細かくてフワフワ、一緒にのっているシャキシャキ食感のタケノコと相性もバッチリ。シンプルだがとてもおいしかった。夜になると風が徐々に強くなり木々を揺らす音が激しくなる。

宿泊地:北海道長万部町
走行距離:51.5km
総走行距離:3368.8km

ポンコタン
洞爺湖町にあるゲストハウス『ポンコタン』は温かくてアートな宿でした。ちなみにポンコタンとはアイヌ語で「小さな集落」という意味らしい
洞爺湖温泉
「2008洞爺湖サミット」で注目された洞爺湖温泉。町自体はコンパクト。湖畔に沿って並ぶ温泉ホテル、美しい洞爺湖を浴室から眺めることができる
国道37号
洞爺湖から国道37号に出る。地図を見ると海沿いに見えるが、実際は深い山岳地帯でアップダウンが多く、eバイクでもきつい場所がいくつかあった
長万部駅
乗客のいない静かな長万部駅、ベンチのある広い待合所で遅いお昼ごはんにする。ここなら飲み物も買えるし、雨風も凌げるので安心して食べられる
かなやのかにめし
昭和25年に誕生した長万部名物、かなやの『かにめし』。タケノコと一緒にじっくりと炒られたかにの身にうまみが凝縮されていておいしかった
シャマンの里のオーナーと記念撮影
長万部を出る朝、お世話になった民宿『シャマンの里』のオーナーと記念撮影。長万部唯一の格安民宿。気さくなオーナーさんと楽しく過ごすことができた
シャマンの里の猫
愛嬌たっぷりな民宿『シャマンの里』の猫ちゃん。僕たちが出発の準備をしていると、その様子を察したのか、お見送りに外まで出てきてくれた?

DAY71

朝ごはんを食べながら外の様子を見る。今日は台風が北海道近郊を通るので風が強い。町の中にいると建物が多いのでそれほど強く感じないが、風を遮るものがない海岸線に出たらどうなるのか? 心配症のヒロコは朝からかなりナーバスになっている。

出発して海岸線の国道5号に出ると、いきなり強烈な向かい風になった。一瞬身構えたが、スピードは上がらないものの何とか進める。速度は遅くても頑張ってペダルをこぎ続ければ、いつかはゴールにたどり着く。焦らず行こう。

しばらく進むと前方に車が止まり、親子連れが出てきた。何だろう?と思ったら、父さんが僕のファンで、SNSで北海道にいることを知っていたらしい。さらに話を聞くと「藤原さんの10万円日本一周の旅行記の影響を受けて、僕も原付バイクで日本一周をしたんですよ!」と嬉しそうに話してくれた。自分の旅が誰かの力になったらという思いはあったが、こんな風に直接本人から言われると感動する。ありがとうございます。僕もペダルをこぐ力が湧いてきました!

壁のような向かい風に立ち向かい、少しずつ前進。ライダーたちが手を挙げながら追い抜いてゆく、「がんばれよー」と言われているようで嬉しい。僕たちも手を挙げて応えた。時速14、5kmでノロノロと進んで行く。eバイクじゃなかったら、時速10km以下になっていただろう。ヒロコはヘルニアの腰が痛いようで、走りながら腰を伸ばしたり、休憩する度にストレッチをしたり、必死に闘っている。

八雲の町でランチを食べようと思い、ネットでチェックしていた食堂へ行くと、ガーン! 休みだ。仕方なく近くのパスタ屋に入ると、こちらは満員御礼状態、席に着いたがなかなか注文を取りに来ない。かなり時間がかかりそうなので諦めて外へ出る。疲れている上にハラペコ、さらに食べられる店がない。ヒロコと険悪ムードになる。僕たちがケンカになるのは空腹のときなので、すぐに国道をUターン、反対車線に見つけたラーメン屋に飛び込んだ。熱いラーメンをすするとようやくヒロコの気持ちも落ち着いた、ああ良かった……

八雲の町を出ると、台風が離れて行ったのか風は少しずつ弱くなっていった。夕方、大沼国定公園に入る。今日の宿は大沼公園駅の近くにある『YUKARA LEAF LODGE』。一階にカフェがある、オシャレなホステルだった。予約していたドミトリールームに荷物を降ろし、夕食を食べるため出かけた。ところが歩いても、歩いても、食事ができそうな店が一軒もない、それどころかコンビニも見当たらない。マジか…… 結局、宿へ戻りカフェで食べることになる。食事が終わると、疲れから早めの就寝となった。

宿泊地:北海道七飯町
走行距離:83.5km
総走行距離:3452.3km

SNSでeバイク日本一周を知り声をかけた人
SNSで僕たちのeバイク日本一周を知っていて、走っているところを偶然見つけ声をかけてくれた。人は不思議な縁で繋がっていることを実感する
台風7号が日本海を北上。北海道も影響を受けて強風になった。運悪く向かい風。足腰に負担がかかるので腰にヘルニアがあるヒロコはかなり辛そう
大沼国定公園
夕方、大小いくつかの湖沼が点在、北海道駒ヶ岳が聳える『大沼国定公園』に到着。湖には大小126もの小島があり、そのいくつかは橋で結ばれている
ユーカラリーフロッジのドミトリールーム
大沼公園駅の近くにある『YUKARA LEAF LODGE』ではドミトリールーム(相部屋)に宿泊。1階にはカフェ、共同シャワーとコインランドリーがある
ユーカラリーフロッジ
昨年OPENしたばかりの『YUKARA LEAF LODGE』。目の前には広々とした芝生が広がるオートキャンプ場『YUKARA AUTO CAMP』がある

DAY72

一晩寝たら疲れもだいぶ取れた。今日は函館までなので時間的には余裕がある。大沼を一周してから函館へ向かうことにする。沼の周辺は人の姿はほとんどなくとても静か、木陰は涼しく気持ちがいい。昔バイクツーリングの時に良く泊まっていた『東大沼キャンプ場』へ寄ってみると、昔に比べてきれいに整備されていた。20代のころ、北海道各地で出会ったバイク旅人たちとこのキャンプ場で再会、星空を見上げ、焚火を囲み夜遅くまで語り合ったことを思い出す。あの時の旅人たちは今どこで、何をしているのだろう……

湖畔の道を走っているとキタキツネがひょっこり現れた。この辺りを縄張りにしているのか? 食べ物はあるのか、仲間はいるのか? いろんなことを考える。脅かさないようゆっくり横を通過する、数十メートル行くと今度はエゾリスが現れ、道を横断した。エゾリスを初めて見たヒロコは満面の笑顔。ほかの土地ではこんな風に野生動物と出会うことは滅多にない、北海道の懐の深さを感じる。

大沼一周を終えると国道5号で函館へ向かった。しばらく行くと道の両側に赤松が続く道になる、日本の道百選に指定されている赤松街道だ。これまで何度か来ている北海道、この赤松並木が見えてくると、北海道の旅も終りが近いことを実感、少し寂しい気持ちになる。

建物が多くなるといよいよ函館だ。「函館に来たらここでしょ!」ということで、テーマレストラン『ラッキーピエロ』の十字街銀座店へ。『ラッキーピエロ』は店ごとに特徴、テーマがあるのだが、ここは初めてだ。入ってビックリ。サンタクロースにトナカイ、クリスマスツリー、雪だるまなど、クリスマスだらけ。いま夏だよね? 全然違う季節なのに、店内はクリスマス一色。人気NO1のチャイニーズチキンバーガーを食べながらハッピーな気持ちになった。

宿泊地:北海道函館市
走行距離:51.8km
総走行距離:3504.1km

朝の大沼
朝の大沼をeバイクでぐるっと一周。車も走っていなくてとても静かだった。途中で昔よく泊った懐かしい『東大沼キャンプ場』にも立ち寄った
キタキツネの飛び出し注意の標識
キタキツネの飛び出し注意の標識はたくさん見てきたが、こんな風にキャラっぽい雰囲気で描かれた標識は初めて。こんな標識に出会うと嬉しくなる
国道5号
赤松並木が続く国道5号。あまり北海道っぽくないこの景色が見えてくると、北海道の旅がもうすぐ終わる証、寂しい気持ちが込み上げてくる
ラッキーピエロ
函館のグルメと言えば『ラッキーピエロ』、地元では「ラッピ」の愛称で親しまれている。17店舗はそれぞれお店のテーマが違うのでめぐり歩きもおすすめ
チャイニーズチキンバーガー
ラッキーピエロの人気ナンバー1の『チャイニーズチキンバーガー』。甘辛味の唐揚げが3つにパリパリレタス、マヨネーズがのったボリューム満点のバーガー

DAY73

今日はeバイクはお休みにして、函館に住む友人の車で市内観光。函館自由市場へ行くと、魚介類販売業をしている友人が市場を案内してくれた。店を回りながら、今年は海水温が高すぎて魚の水揚げ量が少ないこと、函館名物のイカが不漁続きで値段が高騰していることなど教えてくれた。

再び車に乗って移動。津軽海峡が見える丘にある函館牛乳「あいす118」へ行き濃厚なソフトクリームを食べ。巨大なテーマパークのようなレストラン『ラッキーピエロ』峠下総本店では、オムライスをかっ込んだ。夜は函館名物、塩ラーメンでシメる。函館の食を思い切り堪能した。

宿泊地:北海道函館市
走行距離:0km
総走行距離:3504.1km km

DAY74

今日は函館最終日。eバイクで函館の中心地をウロウロ。まずは『金森赤レンガ倉庫』。明治時代に作られた赤レンガ倉庫群はショッピングモールとなり人気観光スポットになっている。目の前は海が広がっていて、港町らしいオシャレな雰囲気。景色を眺めながらゆっくり函館サイクリングを楽しんだ。夜は友人とジンギスカンを堪能。これでもう北海道でやり残したことはない。明日のフェリーで青森だ。

宿泊地:北海道函館市
走行距離:4.0km
総走行距離:3508.1km

旧函館区公会堂
港町らしくエキゾチックなムードが漂う函館。いくつかある名所の中でも特に、明治時代に建てられた洋風建築『旧函館区公会堂』は気品があり印象に残った
ハセガワストアのやきとり弁当
函館名物のひとつがハセガワストアの『やきとり弁当』。注文を受けてから焼くのでアツアツが食べられる。ちなみに定番は鳥肉ではなく豚の串焼きです(笑)
元町エリア
坂が多い元町エリアではeバイクのアシストが大活躍だった。坂上に見えるグレーと黄色の建物が『旧函館区公会堂』、その後ろに聳えている山が『函館山』だ
金森赤レンガ倉庫
函館観光のメインスポットがベイエリア。その中心にあるのが『金森赤レンガ倉庫』。グルメにショッピング、雰囲気たっぷりにライトアップされる夜もおすすめ
ジンギスカン
北海道最後の夜。函館の友人がジンギスカンをご馳走してくれた。約1か月半では足りなかったので、ヒロコと絶対にeバイクでまた来ようと誓った

取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp

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