eバイク旅ノート Vol.22 キャンプツーリングin奥多摩・前編

初めて行く、1泊2日のキャンプツーリング。行く先は走行距離やバッテリーの持ちなどを考え、奥多摩に決めた。旅の相棒eバイク、ヤマハ・YPJ-TCはリヤキャリヤが標準装備なので、オプションのサイドバックを装着するだけで、即キャンピング仕様になる。自宅のある相模原市から奥多摩まで片道約70km、バッテリーの容量的には足りるはずだが、峠越えや荷物が多いことも考えて、念のために予備バッテリー1本と充電器も入れておく。eバイクの旅は、バッテリーの余裕が、そのまま心の余裕にもなるからね~(笑)

氷川キャンプ場
eバイクで初めて行く1泊2日のキャンプツーリング。行き先は片道約70km、奥多摩の氷川キャンプ場。果たしてどんな旅になるのか?

何だかんだで荷物がかなりの量になってしまった。おそらく20㎏はあるだろう。家を出てしばらくすると、段差を越えるときなど車体が大きく振られることがわかった。さらに止まって後輪を持ち上げようとしたら、重くて動かない。それからは段差など気を付けるようにする。

モーターサイクルに乗っていた頃は、奥多摩ツーリングは定番だったので道順はほぼ記憶していた。ところが実際に走ってみると、新しい道ができていたり、店が変わっていたり、大きく変化していた。それにしても、自転車(eバイク)で奥多摩までへ行くのはいつ以来だろう? もしかしたら高校以来かも。あのころはまさか自分が還暦の歳に、自転車で(それもeバイクで)奥多摩へ行くなんてことは想像もしていなかった。人生何があるかわからない。

モーターサイクルツーリングの時は難なく上っていた坂が、eバイクだとキツかったり、路肩や歩道に新しい発見があったり、乗り物が変わると、同じ道でも見る場所が変わることがわかった。

朝食用に調理パンをパン屋で購入。公園を見つけたらそこで食べようと思い先へ進むが、どこまで走っても見つからない。30分以上走ってようやく緑の多い公園を見つけた。自転車を止めて公園のベンチへ直行。やった、いただきます。誰もいない朝の公園、静かな景色をひとり占めしながらパンを食べる、何とも贅沢な時間だ。

公園で食べるパン
パン屋で買ったパンを、やっと見つけた公園で食べる。普通のことなんだけど、旅の途中だと幸せに感じる。栄養をチャージしたら走るぞ~

県道と都道を繋げて、八王子、あきる野市、青梅と進んで行く。青梅には、昭和30年~40年頃のお菓子や薬の商品パッケージ、おもちゃ、ポスター、ドリンク缶など懐かしい生活雑貨を展示する昭和レトロ商品博物館がある。久しぶりに見学しようと立ち寄ったが、何と、定休日。ガーーーン! それならと思い、七つの曲がり角がある細い路地に猫アートが並ぶ「にゃにゃ曲がり」へ向かった。ここは手作りの猫があちこちに置かれている、おもしろストリート。さらに本物の猫にも会えるかと思ったが、残念ながら会えなかった。

にゃにゃ曲がり
東京都青梅市は猫の町として有名。駅の近くにある「にゃにゃ曲がり」の路地の中には、様々なキャラクターの猫アートがあるのが楽しい

青梅街道(国道411号)を西へeバイクを走らせる。青梅の市街地から離れるほど、交通量は減り、自然は多くなる。ようやくサイクリング気分も上がってくる。奥多摩は人気のツーリングスポットなので何台ものモーターサイクルとすれ違う。ツーリングを楽しむライダーたち、心なしか排気音まで弾んで聞こえる。一気に走り抜けてしまうのがもったいないので、時々橋の上から多摩川を眺めたり、古そうな建物を写真に撮ったり、のんびり進んで行く。

それなのに、午後3時に氷川キャンプ場の入口看板に到着してしまった。少し早いけど、時間がないよりはいいだろう。坂を下ると正面にキャンプ場の受付があった。eバイクを降りて宿泊手続き、用紙に住所と名前を書きこみ、持ち込みテントひと張り&大人ひとり1500円を支払う。ソロキャンプとしては相場の値段。坂を下った河原がテントサイトになっているという。

川へと下る急斜面に沿って、たくさんのバンガロー&ロッジが点在。いろんな形、サイズの建物がある。その間を縫うように急斜面の歩道が延びている。かなり急勾配なのでバイクを降りて、慎重に下って行く。下り切ったところがテントサイトで屋根付きの炊事場があった。テントサイトからさらに下ったところに多摩川、正面は緑の山。多摩川に沿って左右に延びるテントサイト、僕は土手寄りの空スペースにテントを張った。テントはざっと見たところ30、いや40張りくらいだろうか。平日でこれだけいるとは驚きだ。いま“キャンプブーム”と言われているが、本当らしい。

氷川キャンプ場
氷川キャンプ場は今回は予約なし、持ち込みテントで当日の飛び込みで宿泊できたが、人気のキャンプ場なので予約したほうが確実
氷川キャンプ場
多摩川沿いの斜面と河原に作られた氷川キャンプ場。山の景色を眺めながらのんびりキャンプ。休日になるとテントが埋め尽くす

今回のテーマはキャンプツーリングだが、そのために走りの時間を犠牲にするのはいやなので、大掛かりな調理器具や焚き火台、薪などは持って来ていない。最低限の調理用品のみ。夕ごはんはカセットコンロで沸かした湯でつくったレトルトのカレーとごはん。簡単すぎるメニューだけど、緑の山と青い空を眺めながら食べるとおいしかった。大切なのは味よりもシチュエーション。自然の中、汗を流してペダルをこぎ、自然に囲まれた中でテントを張り眠る。それだけで十分に幸せだった。

テントの中
狭いながらも楽しい我が家が10分で完成。テントはまさに便利なお家。テーブルとチェアーをおけば、そこは大自然のリビングになる
レトルトのカレーとごはんを温める
カセットガスのコンロを使って今夜のごはん、レトルトのカレーとごはんを温める。でき上がるまでの15分がとても長く感じる

朝6時に起床。自然の力か、目覚まし時計なしで目が覚めた。ファスナーを開けると気持ちいい風がテントの中に吹き込んでくる。聞こえるのは鳥の鳴き声だけ、これぞキャンプの朝という感じだ。風はキンと冷たい。少し歩こうか。靴を履くと坂を上り、橋を渡って奥多摩駅まで散歩する。駅まで約10分、思ったよりも近かった。これなら電車で来てキャンプもできるなぁ…… そんなことを考えた。テントに戻って、朝ごはん。昨日買った菓子パンとコーヒーでお腹を満たす。テントを畳み、バイクに積み込むとキャンプ場を後にした。

奥多摩駅の近くで見つけたレンタサイクルTREKKLING(トレックリング)を覗くと、開店作業の途中だった。声をかけるとマネジャーの出口さんとディビッドさんが笑顔で応えてくれた。TREKKLINGではレンタルはもちろん、サイクリングツアーを主催、ガイドもしているという。コースには「奥多摩むかし道」や「奥多摩の渓谷&滝めぐり」などがあり、さらにディビッドさんがガイドする、英会話とサイクリングを同時に楽しめる「Cyclenglish(サイクルイングリッシュ)」なんてツアーもあるらしい。これはユニーク、僕も参加してみたい。自転車で移動しながら意思の疎通をするのは難しそうだと思ったが、ヘルメットにインカムを付けているので、問題はないという。なるほどねー

TREKKLING のレンタルサイクルはMTBやクロスバイク、ロードバイクのほかに電動アシスト付きのスポーツ車、小径車まで用意されている。周辺は山道、坂が多いこともあり、いまは電動が人気だという。僕がeバイクで来たことを話すと、ふたりとも興味津々だった。おしゃべりが楽しすぎて、気が付くと1時間もたっていた。やばい、今日中に帰宅できなくなる。慌ててTREKKLINGを出た。

国道を離れ、出口さんおすすめの「むかし道」へ入って行く。奥多摩は何度か来ているが、こんな道があるとは知らなかった。むかし道は旧道なのでほとんど車が通らない、それだけでかなり楽になる。同時に周りの木々との距離も近くなる。途中にあると聞いていた湧水地に立ち寄り、ボトルに詰め込んだ。口に含むと冷たくておいしい。まさに大地の恵み、生き返るようだ。鼻歌を口ずさみながらゆっくりペダルを踏む。自然の匂いと空気を全身で感じながら、僕は奥多摩湖へと向かった。

トレックリング
サイクルツアー&レンタルTREKKLINGは、クロスバイク、MTB、電動アシスト車等60台も揃っている。もちろんヘルメットなども用意されている
トレックリングのスタッフ
TREKKLINGのスタッフ、出口さんとデイビッドさん。レンタルは奥多摩で借りて小澤酒造、青梅、河辺の3か所で乗り捨てできるのが嬉しい
境の清泉
奥多摩むかし道にある“境の清泉”は隠れた名水 。古くから周辺に住む人たちの生活水で、旧道往来する人々の憩いの水でもあった

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