eバイクヤマハ・YPJ-TCで富士山の裾野を一周する旅の後編。朝7時。道の駅すばしりをスタート、富士山を中心に時計回りで半周。国道469号、白糸の滝、ミルクランドなどめぐり、青木ヶ原樹海までやってきた。樹海の真ん中を縫うように延びる道は、走っても走っても景色が変わらず、まるで同じ道をループしているような錯覚に陥る。早く抜け出したい、自然とペダルをこぐ脚に力が入る。それだけに国道139号の交差点を示す道路標識が見えたときはホッとした。
このまま国道139号に乗って富士吉田方面へ向かってしまうと西湖や河口湖が見られなくなるので、県道に入り西湖へ出る道へ向かう。森を抜け、坂道を下ると西湖が見えてきた。これまでずっと森が続いていたので、水がある景色が嬉しい。湖を左手に見ながらペダリング。曇り空だが、緑の山々と青い湖が気持ちいい。景色がいいと脚も軽くなる。これが電力を必要としない、最強力アシスト「HAPPY」モードというやつか?(笑) 湖畔に沿ってキャンプ場が点在、道路から見える湖畔のサイトはカラフルなテントがビッシリ並んでいる。子供たちが嬉しそうに駆け回っている。そんな光景を眺めながら、この秋にはキャンプツーリングをしてみようか、と考えた。
文化洞トンネルを抜けると河口湖に出た。北側の湖畔道路を走っていると、右手に富士山の美しいシルエットが見えてきた。湖越しに見える富士山は開放的で気持ちがよかった。湖沿い自転車が走れる歩道が見えたので車道を離れ入って行く。公園の一角に「河口湖七福神めぐり」と書かれたのぼりと黄金の「弁財天」が目に留まった。これは富士河口湖在住の漫談家、綾小路きみまろさんが寄贈した『黄金の七福神』らしい。富士山と湖の絶景と一緒に七福神参りも楽しそうだ。周辺にはオシャレなカフェなどもあるようで、カップル、家族連れ、女子グループ、いろんな人たちがそれぞれの休日時間を過ごしていた。
サイクルコンピューターを見ると、すでにバッテリー残量が20%を切っていた。「意外と消耗しているなぁ……」と思ったが、この先は急な上り坂もないし、まあ大丈夫だろう。あまり気にせず「HIGH」モードのまま進んで行く。
道沿いに地元産のフルーツや野菜を売る店を見つけたので、自転車を止めてちょっと覗いてみる。山梨県と言えばフルーツ王国。いまはぶどうの季節らしく、人気のシャインマスカットや巨峰がたくさん並んでいた。どれも大粒でおいしそう。値段を見るとかなり激安、お土産に買って帰ることにする。大きなサイドバックを付けているので、スペース的には余裕で積みことができた。これがYPJ-TCの利点。
フルーツ好きな妻が喜ぶ顔を思い浮かべながら、河口湖大橋を渡って行く。国道139号へ入り、山中湖方面へ向かう。観光地らしく県外の車が渋滞を作っている。渋滞は無縁のeバイク、その横をゆっくり走り抜けて行く。道の駅富士吉田で小休憩。サイクルコンピューターを見ると、ゴールの須走まで20km以上あるのに、バッテリー残量が4%しかないことに気が付いた。最後まで持つか? 突然不安になった。それでも山中湖から須走までは下り坂、山中湖まで行ければ何とかなると自分に言い聞かせた。
ところが予想外に緩やかな上り坂が延々と続く。電力消費の少ないECOモードに切り替え、節約走行で進んで行くが、バッテリー残量はどんどん減って行く。同時に心の余裕もどんどんなくなって行く。ようやく山中湖に到着。湖に沿って貸ボート屋が並び、カラフルなボートがたくさん浮かんでいる。まさに夏の避暑地という感じだ。
山中湖畔を走っている途中、ついにバッテリー残量が0%になった。まじか…… 出発前に富士山一周コースを地図でざっと見たところ、大きな峠は最後の「篭坂峠」だけ。アップダウンはありそうだが、バッテリーは1本で余裕で行けると勝手に思い込んでいた。さらに路面状況を気にせず「HIGH」モードで走っていた自分を反省するが、後の祭りだった。
さらに山中湖から「篭坂峠」はすぐだと思っていたが、実際は2km以上があり、ひたすら上り坂が続いた。「こんな上り坂があった!?」ヒーヒー、ゼーゼー唸り声を上げながらペダルを踏む。峠手前、最後の数百mのところで完全にグロッキー。こぐのは諦め、自転車を降りて、押すことにする。こんなことになるとは……僕の油断というか、判断ミスだった。いい教訓になった。
苦労をしただけに「篭坂峠」着いたときは嬉しく、思わず「やった」と叫んでしまった。峠から道の駅すばしりまでは下り坂。爽快なダウンヒルに、疲れも吹き飛んでいった。午後5時半、無事、道の駅にゴールイン。振り返ると今朝出発する時には姿を見せていなかった富士山が現れ、僕を笑っていた。事故がなければOK! 終わりよければすべてよし。充実感いっぱいの富士山一周の旅となった。
今回のルートマップ