フルモデルチェンジしたシマノのマウンテンバイク(MTB)コンポーネント、XTR、デオーレXT、デオーレは、ヨーロッパでも話題沸騰! 国際派自転車ジャーナリストの難波ケンジが、ドイツでの自転車イベントで試乗する機会を得た。現地から報告する。



Rider
難波ケンジ
eバイクの黎明期より20年以上にわたってその変貌を見つめてきた、国際自転車ジャーナリスト。日本にeバイクを持ち込んだ最初の人物として知られる。

欧州仕様のフリーシフトを試した!
完全ワイヤレスコンポーネントとなったシマノのMTBコンポーネント「XTR」、「デオーレXT」、「デオーレ」そしてグラベルコンポーネントの「GRX」が日本で話題だ。しかし、実は欧州仕様の新型Di2シリーズには、有線式のXTRやデオーレXTが用意されている。というのも欧州のMTBの販売の中心は、もはや完全にeMTB。そしてeMTBには駆動用バッテリーが搭載されているため、シマノのドライブユニットを搭載したeMTBならE-TUBEケーブルをドライブユニットに接続すれば電源が供給でき、それによってリヤディレーラーにバッテリー搭載が必要ないことから、主に欧州でこの仕様が用意されているのだ。
そして、シマノが海外で展開しているドライブユニット「EP801」ユニットと新型のDi2を接続すると、ドライブユニットのチェーンリングに搭載されたフリー機構を使って、空走時にモーターがチェーンリングを回して変速してくれる「フリーシフト」機能が使えるのである。アシストを「オートマチックモード」に入れておけば、ドライブユニットの電源を入れてペダリングを始めると、システムがトルクとケイデンスやスピードなどを計測して最適なギヤへと自動で変速してくれる。これはペダリングを止めて空走状態で下っているときも、車速に合わせて自動的に適切に変速してくれるので、文字どおりオートマチックな走りが体験できるわけだ。試乗した最初の印象では、自分のペダリングの感覚に合わせて回したいと思ったが、そこから一度機械式の変速機のバイクに乗り換えてみると、自動変速がいかに快適なものだったかが良く分かった。
このオートマチックモードからマニュアルモードに入れて走ると、変速はラピッドファイアESのレバーを使って手動で行うので、最初は国内でのXTR Di2の体験と変わらないと思ったが、下りでペダリングを止めていてもボタンを押すと変速してくれる仕組みは、一度体験すると必須とすら思えてくる。国内ではEP801ドライブユニットの日本仕様が投入されていないことから、この機能は体験することができないが、既に技術的にも市販製品へ投入されるレベルということから、いつの日か日本にも導入されて使えるようになる日を望みたい。

Topic 1:11スピードの有線式電動モデルもラインナップ
XTR 11speed
MTBコンポの最高峰。シマノ・XTR M9200シリーズ

XTRやXTは、欧州仕様には11速仕様も用意されていて、こちらは変速システムがハイパーグライドとなるのでチェーンの耐久性などが高い。もちろんeMTBのトルクに対応しているが、12速システムの方がグラウンドクリアランスや、変速スピードなどでメリットは大きいと言える。

Topic 2:ワイヤレス化した2つのグレードのモデルも試乗
ハイエンド~ミドルグレードに位置するデオーレXTとデオーレも、今回テストすることができた。まずXTRと同じくフルワイヤレス化したデオーレXTでは、変速のキレとスピードに関しては、今までのシマノMTBコンポーネントの歴史の中で、最もXTRに近いと言えるレベルに進化している。もちろんXTRの方がチェーンがミートしたときの滑らかさや、多段変速時にスプロケの上を走っていく感覚では上回っているが、フルワイヤレス化によってリヤメカのボディ全体の剛性感をより高めたことを含め、その完成度は別の次元にきたと言える。
DEORE XT
XTRを受け継ぐ、デオーレXT M8200シリーズ


そしてデオーレだが、レース以外の用途、いやレースで使っても変速性能において何の不満もない。ただし、デオーレのシフトレバーはボタンのクリックが2段階になっていないので1段ずつの変速か、レバー長押しによるマルチシフトかでしか変速できない点と、それに加えてボタンの角度が自由に変えられるエルゴシフト機構が装備されない点は知っておきたい。
DEORE
デオーレ M6200シリーズで12速ワイヤレス化がより気軽に


近年、MTBの変速システムにおいてはスラムのフロントシングル&フルワイヤレスが世界中で人気だったが、満を持して登場したシマノのフルワイヤレスMTBシステムの出来栄えは想像以上。まさに驚きにあふれるものだった。
