“eバイクMTB”がおすすめ フルサスに電動アシストが付いた新たな遊び/Vol.7 フルサスeMTBをガチトレールでガチ走りさせた場合のバッテリーの減りについて

“eバイクMTB”がおすすめ フルサスに電動アシストが付いた新たな遊び/Vol.7 フルサスeMTBをガチトレールでガチ走りさせた場合のバッテリーの減りについて

eMTBに乗り始めて1番よく聞かれる質問は「それどれぐらい走る?」である。獲得標高でおよそ1200mと答えると、相手は物足りない表情をすることが多いが、肌感覚としてはそんな感じである。スマートフォンでGPSアプリ、Cyclometerなどを使って距離や標高を調べることが多くなった。バッテリーの消耗は距離よりもむしろ登った標高に影響される。

MTプロのバッテリー性能

eMTB、ヤマハ・MT-Proのバッテリーはどれくらいもつ?

ヤマハ・MT-Proは500w/hのバッテリーを搭載、最強モードで73km走行できるとされている。オートマチックモードでは88kmの走行が可能であるという。上はカタログのスクリーンショットだ。走行距離の算出方法にはこうある。

常温15〜25°C、車載重量65kg。 コースは、平坦路(1km)、勾配4度の上り坂(1km)、平坦路(1km)、勾配4度の下り坂(1km)。わかりにくいが4kmのテーブルトップ形状の地形が続く。 平坦時「変速機12速」時速15km、上り「変速機7速」時速10km、下り「変速機12速」時速20km。そして、1kmごとに一旦停止する。

この条件で88kmと算定されたものを、実際のeMTBの環境でガチ走りさせてみて、バッテリーはどれぐらい距離が持つのか試してみた。テストした環境は、静岡県富士市にあるMTBパーク『フジヤマ・パワーライン・トレイル』の走行イベントだ。

フジヤマ・パワーライン・トレイルは、eMTBが楽しいライドパークだ。パークというより、富士山の麓を走るワイルドなトレイルだ。送電線の調査道を元にした、通称東電トレイル。4kmのテーブルトップなんていう生やさしい地形じゃない。

ハードなコースにバッテリーはどこまで耐えられる?

運営会社東京電力パワーグリッドの設置力を活かしたコースはある意味地形改革。鉄筋や単管も惜しみなく使い、橋やスイッチバックを設置しフジヤマの火山地形を乗り越えさせる。

スコップでディグするトレイルビルドがハンドワークなら、東電トレイルはメガビルドだ。上り返しや激下りにライダーとしての技量が問われるトレイルだが、その分自分の技量の確認でも磨くのにも使える。

このイベントでは一周18.8kmのコースを周回できた。行きの8kmほどを標高差250m下って、上り返しの11kmほどを戻ってくる。下りとはいっても、今どきの用語で言うところの『ダウンカントリー』である。無数の登り返しを超えながら標高を下げて、最後林道で戻ってくる。そのスタミナを通常の距離感で捉えることはできない。

フジヤマトレイルはゴツゴツとした地形、路面を乗り越え攻略していく感じ。激坂のスイッチバックで腰を引きゆっくりとブレーキコントロールで降り、いくつもの登り返しをeモーターでぐいぐいと上っていく。クロスカントリーの、まさにカントリーをクロスする感じが味わえる。

鉄塔の下

また東京電力が仮設した鉄塔の下を走っていくので、こーゆー結構エモく映える写真を撮れる。天気の良い時は富士山が見える。冬場は特に雲が出ないことが多いので、富士山ショットがいくつか取れる。

同じバイクのライダーと走れば

アップダウンを繰り返しながら走っていくのだが、上り返しをeアシストでバリバリクリアできるのは、これまで走ってきたMTBでのつらい経験を穴埋めしているようで心地よい。

何度も走っているので、コースの感じはわかっている。なんとなく飛べるスポットとか、突っ込みすぎるとやばいセクションもわかっているので、ローリスク・ハイスピードでやっつける。

走っていると、途中で同じヤマハのMT-Proを乗っている人に抜かれた。この人こそ俺と同じスピードで走れる人だ! 瞬時にそう感じた僕は、一緒に走っていたペダルバイクの仲間たちに申し訳ないと心で謝りつつ、この人のお尻についていった。

石田慎一さんと

写真左が石田慎一さん。僕と同じ時期、23年の2月に僕と同じヤマハのMT-Proを購入されて、そこから乗り続けているそうだ。とりあえず後ろにくっついて走ってみると、やっぱり同じようなラインで同じような速度で走れるので楽しい。一緒に走るなら、いろいろイコールコンディションが嬉しい。

石田さんのMT−Proはいろいろいじってあって、見ているだけで楽しかった。タイヤはもちろん変えて、システム自体もチューブレスタイヤにして。このコースで1周半ほど一緒に走ったのだが、彼はすでに2周目半。その時点でのバッテリー残量を見ると3周目はそのまま行けそうだが、という印象だそうだ。

こちらも2周を回ったところで、3周目にはちょっと入りたくない感じのバッテリー残量目盛りだ。2周を走ってここまで距離ほぼ40km。まぁよく走ったって意味では体の疲れ方も結構走ったなって感じなのだが、もうちょっと欲を出して走っておきたい気持ちもある。

限界突破

アシストモードは「オートマチック」で全部行っていたけれども、3周目にバッテリーが切れるのはなんとなく気がついていた。切れてしまうんだろうなぁと思っていながら、ペダルを回してきたが、これからグッと上るんだぜという手前で切れてガッカリした。ギリギリ戻って来られるかもと思っていたがダメだった。

結果、ガチトレイルでのガチ走りだと、バッテリーは50kmほど持った。かなりハードに上らせたりしたので、電力の消耗も早かったのではと考える。

電池が切れるまではやっぱりエコモードにして走っていたが、そうするとむしろモーターの動きが抵抗になるような感じも受けたので、オートモードのままにしておいた。モーターは快適だが、メーターはチカチカして、心はヒリヒリする。まだか、まだか。ふと全てのライトが消え、バッテリーがなくなった。知ってたけど、やっぱりがっかりした。

ヤマハのシステムはモーターを切ると抵抗がほとんどなくなる。なので車体は確かに重いのだが、まあ進まないことはない。きついのもふくめて走りだ。ここからは、ただとにかくがんばった。ペダルバイクに乗っていた頃はこうだったかと思い出す。体力がしっかりないと削がれるのは集中力だ。上りで走りへの集中と気力がなくなってしまう。eMTBはこれをなくしてくれる、そこが一番いいところである。

さて次の日には股関節が痛くなったのに驚いた。やはりQファクターが広めで、バッテリーの幅が広い分、少し開きぎみの、しかも重たいバイクの長時間ペダリングとなったためか。ただこの痛みは丁寧なストレッチとお風呂、そして股関節へ入念にマッサージガンを当てたため次の日以降に残すことはなかった。なおマッサージガンについては、かなり効くので改めて別の機会にぜひ述べたい。

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