ここまで世界のeバイクや電動アシスト付きモビリティの現状を追ってきた。では2025年現在、日本の電動アシスト付き自転車の現在地とは? 今回はヤマハの最新モデルを、難波ケンジがチェックする。

Rider
難波ケンジ
eバイクの黎明期より20年以上にわたってその変貌を見つめてきた、国際自転車ジャーナリスト。日本にeバイクを持ち込んだ最初の人物として知られる。
ベテランも納得の充実性能
長らくスポーツサイクルに乗っている読者の中には、電動アシスト付き軽快車を日常に組み込んでいる人と、「電アシ車なんて」と見なかったことにしている人で分かれているのではなかろうか?そこで後者の人には「最近の電アシ軽快車を侮るなかれ!」とお伝えしたい。というのも、今回改めて紹介するのは、世界で初めて電動アシスト自転車を量産したヤマハの最新モデルなのだ。スタイリッシュな通勤通学のためのPASリンと、スポーティなシティコミューティングへ向けたPASクレイグだが、これらには30年に及ぶノウハウがここぞとばかりに投入されており、ベテランでもうなるほどの仕上がりとなっている。
近年、欧州でもスポーツサイクル愛好者が、普段の街乗りにカーゴeバイクを取り入れるトレンドが起きているが、日本のアシスト車は彼らよりも四半世紀に及ぶ経験値を持っているだけあって、細部にわたって仕様が吟味されていることに驚かされる。同時に日本の厳しい使用環境で鍛えられてきたため、10年を軽く走り切れる耐久性と信頼性を併せ持っている。
自転車専門誌の読者がフレッシュマンにお薦めしても良いし、もしくは自身の移動においても、もっと気軽にクランクを回すことを取り入れてみたくなるような自転車だ。

左:ヤマハ
PAS RIN(パス リン)
価格/15万2000円
伝統のスタッガードフレームとモダンを融合
アシスト軽快車といえば極限までに乗り降りのしやすさを追求したステップスルーフレームが定番だが、PAS リンはストレートダウンチューブのスタッガードフレームを採用。バッテリーも大容量な15.8Ahを採用。これにトレンドを押さえた淡い色彩のカラーをフェンダーまで統一して塗っている。通勤通学モデルだが、40代、50代でも似合うデザインが良い。
右:ヤマハ
PAS CRAIG PLUS(パス クレイグプラス)
価格/14万2000円
大容量バッテリーとフェンダーをプラス
スチール製のダイヤモンドフレームに、軽快車用の2軸式センターユニットを搭載したスポーツカジュアルな低価格モデル。標準モデルのクレイグはバッテリー容量が8.4Ahと小さかったが、クレイグプラスでは、大容量な15.8Ahバッテリーと前後フェンダーを装備して、長距離・悪天候にも対応したモデルとなった。変速はアシストがあるがゆえに軽量な内装式の3段なのが特徴。
問・ヤマハ発動機
装備が充実の街の遊撃手 PAS CRAIG PLUS(パス クレイグプラス)





Impression スポーツモデルと言い切れる玄人好みのフィッティング
街乗りを意識したアシスト車のクレイグだが、乗るとヘッドチューブが短くスポーティなフィッティングとなっており2mmスペーサーを3枚挟んだ状態でもスポーツバイク並みの前傾ポジションが取れる。軽快車ユニットのためシートチューブの後ろにバッテリーを置くが、これによるリヤセンターの長さも、アシストと相まって気持ちが良い。アシストがあるので3段変速で市街地では十分。フロントブレーキの制動力は弱めで、ここはベテランには気になるところかもしれない。往復20km程度の街中探検が楽しみなモデルだ。
通勤通学に向けた実用と洗練 PAS RIN(パス リン)





Impression 極太タイヤとスタッガードのクルーザー感覚
モノチューブのPAS WITH系でも剛性が十分なヤマハだが、リンはスタッガードフレームによりさらにシャープな走りに。タイヤがかなり太いけれど空走時の転がりは軽く、発進はアシストがあるので極めて軽快だ。
