ドイツやフランスといった海外におけるeバイクの最新事情のレポートに続いては、日本国内の情勢を振り返ってみよう。eバイクの業界最前線で活躍するジャーナリストの難波ケンジ氏が、2024年までを総括する。

体験できる場所が広がった
2024年の日本のeバイク事情をまとめると、欧州で展開されている主要ドライブユニットサプライヤーの新型ユニットが国内に入ってこなかったこともあり、トレンドを変えてしまう大きな動きのなかった年。一方で国内勢には勢いが見られた一年だ。
ヤマハ発動機は、eバイクの体験ができるブランドスペースを横浜に設立し、およそ時を同じくして、グラベルとクロスバイクのeバイク2車種をアップデートしてきた。また、パナソニックは、親子で楽しめるジュニア仕様のeバイクを発売したのがトピックといえる。
一般社会では様々な乗り物が電動化に突き進んでいるので、展示会などでのeバイクとのコラボレーションもたくさん見られた。つまりマニア側というより、一般社会側でeバイクの認知度が上がってきた一年だったように感じられる。そしてMTB界隈では、eMTBへの理解は国内でも着実に深まっており、市場は広がってきている。とはいえ日本の法規に合わせた新ユニットが投入されていないのがもどかしい。
体験できる場所や機会は着実に広がり、eバイクに乗ってみたいと思えば気軽に体験できるようになった。それが2025年のスタートラインだ。
Topic 1 子供と一緒にスポーツ×電動アシスト! 国内ブランド発キッズ向けeバイクの登場

価格/17万2000円
パナソニック・ゼオルトS3F
価格/19万5000円
問・パナソニックサイクルテック
欧州では10年近く前から需要が存在した、親子でのeバイクサイクリング。アシストがあるからこそ、交通の少ないアップダウンのある道路で親子でサイクリングを楽しめ、同時にアシストが体力の差を埋めてくれるので、会話を楽しみながら我慢することなくサイクリングできるのがその理由だ。パナソニックではそのニーズを考え、ジュニアサイズのゼオルトSJFを発売。約300Whのリチウムイオンバッテリーに、軽快車でも採用されている軽量ドライブユニット、カルパワーを搭載し、54kmの航続距離を実現したジュニアMTBだ。サスペンションフォークとアルミフレームを採用し、7段変速を搭載しながら17万円台の価格を実現している。

Topic 2 eバイクを旅先で、週末に、もっと気軽に体験するための「ベース」の増加
eバイクを体験してみたいと思ったときに、気軽に体験したりレンタルできる施設が広がりを見せたのも24年だった。初夏にヤマハ発動機が横浜・みなとみらいにオープンしたブランド体験施設ヤマハ イーライド ベースでは、ヤマハ製品や乗り物の楽しさに触れるだけでなく、eバイクの体験試乗も可能。20台程度の試乗車が常時用意され、観光のついでに予約なしで訪れて体験できる。また、メリダが展開するメリダエックスベースや、スペシャライズドの北海道エクスペリエンスセンターなど、既存の施設も含めて、さらに多くの場所でeバイク体験が実現。eバイクに乗ることを目的として旅に出かけるも良いし、旅に出たついでにeバイクを楽しむのも良いだろう。
ヤマハ発動機の電動化を体験できるブランド施設

オートバイやボート、そしてeバイクなど様々な乗り物を製造しているヤマハ発動機の、横浜みなとみらいに新しく開いたブランド施設。免許がなくても楽しめるヤマハ製品であるeバイクを通じ、ヤマハの楽しさを知るための施設で、最新モデルを中心にレンタル用eバイクを常備。eバイク体験料は何と無料だ。みなとみらいを巡るガイドツアーも開催されており、公式サイトから予約可能。

ヤマハ イーライド ベース
神奈川県横浜市西区みなとみらい 5-1-2
横浜シンフォステージ イーストタワー1階
営業時間 /夏期(3月~11月)10:00〜18:00、冬期(12月~2月)10:00〜17:00
アジア初のスペシャライズドエクスペリエンスセンター

エスコンフィールドに隣接する、アジア初となるスペシャライズドのエクスペリエンスセンターでは、店内に常時50台以上展示されている全てのバイク・ホイール・サドルがレンタル可能。最大で7日間の長期貸し出しを行っているので、手ぶらで北海道に行って、スペシャライズドのeバイクを試しながらのサイクリング旅行がかなう。なお、冬季の貸し出しは行っていないが、雪上ライディング体験会が毎日行われている。

スペシャライズド 北海道 エクスペリエンスセンター
北海道北広島市Fビレッジ1番地
THE LODGE スペシャライズド 北海道ボールパーク
Fビレッジ エクスペリエンスセンター
TEL/011-557-8096
営業時間/10:00~18:00
メリダの全ラインナップを常設する最大級の体験施設

メリダが国内でラインナップしているほとんどのモデルを常設で展示しているブランド体験施設。全てのバイクがレンタル可能で、eバイクは特に多くの台数をそろえている。パンプトラックや施設の隣に常設MTBコースもあり、周辺はeバイクでのサイクリングに適した山岳路が広がる。そして各種講習会や、キッズ向けのスクールなどeバイクのみならずサイクリングライフ全般に役立つ情報がそろっている。

メリダエックスベース
静岡県伊豆の国市田京195-2
伊豆ビレッジ内
TEL/0558-77-2727
営業時間/9:00~17:00
Topic 3 ジャパンブランドにおける普及グレードのeバイクが拡充
円安による自転車界の値上げの波は一段落したように感じられるが、市場で初めてのeバイクに求められている値段は20万円以下との声が聞かれ、輸入ブランドのドライブユニットでは不可能ともいえるこの価格帯に、国内メーカー勢が挑んでいるのも興味深い現象。安いだけでなく今まで培ってきた自転車作りのノウハウも投入されている。
注目は電動アシスト軽快車で2トップを行くパナソニックとヤマハで、パナソニックは20万円をちょうど切る価格帯にゼオルトL3というモデルをラインナップ。ヤマハ発動機はクレイグという、より街乗り向けのスポーティな軽快車を発表し、25年1月末より出荷を始める。日本で最初の自転車メーカーであるミヤタのEX-クロスe共々、日本独自の電動スポーツ車というカテゴリーが生まれそうな空気を感じる。

ヤマハ・パス クレイグ
価格/12万9000円
問・ヤマハ発動機
クレイグは街乗り向けのコミューティングをターゲットにしたスポーティな軽快車とクロスバイクの中間カテゴリー。内装式の3段変速にダイヤモンド形状のフレームを採用し、バッテリー容量も控えめながら、価格は12万円台を実現している。

パナソニック・ゼオルトL3
価格/19万5000円
問・パナソニックサイクルテック
ゼオルトL3はアルミフレームとダウンチューブ装着バッテリーを採用したモデルをラインナップ。軽快車で定評あるカルパワーユニットを装備し、スポーツバイクの楽しさと軽快車の価格を両立させてきた。

ミヤタサイクル・EX-クロスe
価格/17万6000円
問・ミヤタサイクル
日本の老舗ブランド、ミヤタのEX-クロスeは、SRサンツアーのリヤモーターを採用したクロスバイク。バッテリー容量は313Whで、モーターは最大トルク60Nmを発生。外装変速機と油圧ディスクブレーキを装備し、通勤通学だけでなく、ツーリング用途にも使える。