eバイク旅ノート Vol.64 eバイク日本一周04「オロロンラインを走り最北の町稚内へ」

ふたり合わせて123歳。妻のヒロコは61歳にして生まれて初めての長い自転車旅、それもいきなり日本一周。果たして最後まで走り切れるのか!?
自宅の神奈川相模原市をスタート、関東を縦断し三国峠を越えて新潟、そこから日本海沿いを北上。秋田からフェリーに乗って苫小牧に上陸。北海道を北へ北へと向かう。

DAY18

今日の目的地は樺戸郡浦臼町にある『鶴沼キャンプ場』。北海道初キャンプとなるので楽しみだ。昨日と打って変わって、朝から青空が広がっている。eバイクに跨ると弾けるように走り出した。できる限り最短距離で浦臼町へ行きたいので、道道を使って直線的に進んで行く。最初に目指すは岩見沢だ。

Google mapに出た経路を頼りに進んで行くと、川にぶつかった。ルートのラインはそのまま川に沿って延びているのだが、工事中で川沿いまで行けない。ガーン! というか、そもそも道がない。仕方がなく別のルートを探し、大きく迂回した。ルートをネット頼みにしていると、たまにこういうことがある。

昼時に岩見沢に到着した。腹ペコなので食堂を検索すると近くにある『食堂倶楽部よしび』なる店がヒットした。行ってみると小さな食堂で、人気の店らしく地元の人で埋まっていた。ヒロコは本日のきまぐれメニュー『いかげそ天丼』を、僕は『ミックスフライ定食』を注文したが、どちらも衣がサクサク。特にいかげそは肉厚で柔らか。ミックスフライのエビフライ、カニコロ、ザンギ、どれも美味しかった。山カンで選んだ店だが、ここは大当たりだった。

国道12号で北上。ジリジリと焼き付けるような太陽、今日は北海道とは思えないほど暑い。湿気がないので日陰に入れば涼しいのだが、国道12号、田舎は木陰になる木が見当たらない。ヒロコは「暑い暑い」と苦しそう。水分は取っているが、心配だ。ようやく現れた木陰に飛び込むと、ヒロコはその場に座り込んだ。どうやら軽い熱中症になったらしい。5分ほどで復活したが、8月に走る東北関東が心配になった。

着いたキャンプ場は青々とした公園の中にあり、とても気持ちがよかった。受付の人にお願いして

eバイクのバッテリー充電の電源を確保。テントを張り終えると歩いて日帰り温泉へ向かった。北海道のキャンプ場は隣に温泉施設があることが多いので便利。さっぱりした気分で寝袋に入った。

宿泊地:北海道浦臼町
走行距離:88.1km

国道
北海道の札幌市と旭川市を結ぶ国道12号。 美唄市光珠内町から滝川市新町までの29.2kmが日本一の直線道路。呆れるほどまっすぐな道をeバイクで走り抜けた
暑さでダウンするヒロコさん
涼しいはずの北海道で、まさかこれほどの高温を体験するとは思わなかった。あまりの暑さにヒロコはダウン。熱中症になる前に日陰に入り、水分を取り、体を休めた
鶴沼キャンプ場
北海道で初めてのキャンプしたのが、浦臼町にある『鶴沼キャンプ場』。広々とした緑の芝が広がる気持ちのいいサイト。歩いて行ける場所に日帰り温泉あり

DAY19

テントのファスナーを開けると、青空が広がっていた。今日もいい天気だ。早々とパッキングを済ませて走り出す。国道275号を北上、新十津川、雨竜、北竜と進んで行く。北海道といえば酪農やポテトや麦、とうもろこし畑などのイメージが強いが、この辺りは意外と水田も多い。広々とした景色は北海道らしく気持ちがいい。

北海道定番セイコーマートで休んでいるとロードバイクが一台やってきた。話をすると同年代の人で、一週間程度の休みを使って、時々北海道に来ているという。飛行機に自転車を積んできて、エリアを決めて走るスタイル。今回は道央エリアでこれから旭川、富良野方面へ行く予定。旅のスタイルも自転車のモデルも違うが、旅人同士、束の間楽しくおしゃべりをした。

碧水から国道233号で留萌方面へ。ここまではポツポツと町があったが、ここから先は何もなくなる。民家も激減、ひたすら緑色の景色が続く。「本当に何もないんだねー」ヒロコのリアルな呟き声がヘルメットのインカムから聞こえてくる。

久しぶりに町が見えてきた。留萌だ。スーパーにコンビニ、ガソリンスタンド……なんでもある。今日の宿泊予定地は隣町、小平にある『小平町望洋台キャンプ場』。北海道では初めて見る日本海。青い海を左手に眺めながらキャンプ場へ向かう。

ヒロコが「バンガローがいい」というので今日はバンガローにした。メリットは面倒なテント張り作業がなく、電源か確保できること、デメリットはテント泊より高く、アウトドア気分が盛り上がらないこと。一長一短だが、ここはヒロコを優先する。

高台にあるキャンプ場でシャワーから出ると、ちょうど日が沈むタイミングで、西の地平線がオレンジ色に染まっていた。慌ててバンガローからスマホを取りに行き、走って眺めのよい場所へ。オレンジ色に染まる太陽と地平線を写真に納めた。思い出に残るいい夕焼けだった。

宿泊地:北海道小平町
走行距離:91.9km

道の駅・田園の里うりゅうの花畑
国道275号沿いにある『道の駅・田園の里うりゅう』で見つけたお花畑。6月の北海道はどこも鮮やかな花々が咲き誇り、美しい景色で目を楽しませてくれる
リサイクルショップ
国道を走っていると色鮮やかな店を見つけた、ユニークな雰囲気のリサイクルショップで、昔懐かしいもの、レトロアメリカンなものなどが所狭しと並んでいた
小平町望洋台キャンプ場の日の入り
日本海沿いの高台にある『小平町望洋台キャンプ場』で見たサンセット。旅の最中は忙しく動き回っているためか、意外にも夕陽を見る余裕がなかったことに気がついた

DAY20

嬉しいことにや3日続けて快晴だ。日本海沿いオロロンラインを北上する。海の眺めが良く気持ちがいい。『道の駅おびら鰊番屋』に着き、サイドスタンドを立てようとしたら、倒れそうになったので、慌てて両手で支えた。見るとスタンドを取り付けるボルトの1本が折れている。「マジかーっ!」まさかのトラブル発生だ。

改めてよく見ると、フレームとスタンドを繋ぐボルトの1本が折れ、もう1本が抜けてなくなっていることがわかった。たぶん振動で緩んだのだろう。とりあえず、ボルトさえ手に入れば自分でも直せそうなことがわかり、ホッとした。

今日の宿泊は天塩にある『鏡沼キャンプ場』。テントもいいが、明日の天気予報が雨なのでバンガローで連泊することにした。国道232号を北上。羽幌で『甘えびファクトリー』なる店を発見した。窓が大きく明るい雰囲気のお店でエビを使った加工食品を販売、イートインコーナーでは漁師カレーなどが食べられるというので、ここでお昼にする。

ヒロコがガーリックシュリンプはとっても柔らかく、頭から全部バリバリいける。僕が食べた漁師カレーも海産物のダシが染み込んでいてとても美味しかった。どちらも大正解だった。

夕方、キャンプ場に到着。ここは広々としたキャンプ場で真ん中に小さな池があるのが特徴。受付へ行くと、僕達が予約したオートバンガローは少し高台にあった。温泉施設『てしお温泉夕映』のすぐ隣なので便利そう。荷物を降ろして温泉のレストランへ行き、名物のしじみラーメンを食べる。初めて食べたが、しじみのダシが効いていていい感じ。北海道といえば海の幸、何を食べても美味しいのが嬉しい。

宿泊地:北海道天塩町
走行距離:109.9km

甘えびファクトリー
国道232号で見つけた『甘えびファクトリー 』。蝦名漁業部が経営するお店で、新鮮な甘えびを余計な添加物を用いず、工場でひとつずつ手作りした物が並ぶ
道の駅おびら鰊番屋
『道の駅おびら鰊番屋』で僕が乗るWABASH RT(ワバッシュRT)のサイドスタンドのボルトが折れるトラブルが発生。その後しばらくの間、サイドスタンドなしの移動が続いた
オロロン鳥の巨大レプリカ
国道沿いにそびえ立つ『オロロン鳥』の巨大レプリカ。名前の由来は鳴き声が“オロロン”と聞こえるから。とても貴重な鳥で日本では天売島にしか生息していない

DAY21

天気予報の通り、昨夜から降り出した雨は今朝になっても止まなかった。隣の温泉施設に休憩所があったので、夕方からはそこで原稿書きに没頭する。リアルな旅では、雨や風の悪天候、体調の好不調、旅の進み具合など様々。快適ではない場所での原稿書きには慣れてきたが、原稿の進みが遅いのだけはどうにもならない。スラスラ書ける人が羨ましいぞ(笑)

宿泊地:北海道天塩町
走行距離:0km

鏡沼キャンプ場
天塩にある『鏡沼キャンプ場』ではバンガローに宿泊した。北海道のバンガローは値段が比較的安く、バッテリーを充電するための電源があるのでeバイク旅に最適

DAY22

今日は稚内へ向かう日。晴天とはいかず、どんよりとした雲が広がっているが、ここは雨は降っていないだけで、ヨシとしよう。天塩川を越えて、オロロンラインを北上。少しするとズラッと風力発電の風車が並ぶ、オトンルイ風力発電所が見えてくる。圧巻の景色だ。

さらに進むと電柱がなくなり、海と大地と一直線の道だけになる。広い北海道の中でも、この景色は特別だと思う。今日は雲で利尻富士が見えないのがちょっと残念。広大な景色の中を淡々と進んで行く。ポツポツときたので『こうぼねの家』展望台休憩所へ逃げ込んだ。

雨の様子を見ているとスマホを見ていたヒロコが「雨雲が来てるから、早く行こう!」と叫んだ。マジかー! 慌ててサドルに飛び乗った。しばらくすると雨は本降りに。びしょ濡れになって、今日の宿『みどり湯ライダーハウス』に到着した。ここに来るのは6年振りだ。

『みどり湯ライダーハウス』は、いまでは数少なくなったライダーハウス(バイク旅人向け簡易宿泊所)のひとつ。夜9時になると宿のおばちゃんの号令で宿泊者が居間に集められ全員で肩を組み松山千春の『大空と大地の中で』を大声で大合唱。その後は全員で自己紹介。このミーティングが20年以上続いている。

ヒロコはみどり湯は初体験。感想を聞くと古き良き時代の日本を感じたといって笑った。大合唱も悪くないなーと思うけど、連泊で毎日だとキツイかも。スペインなどヨーロッパを自転車旅した75歳サイクリスト清水さんと仲良くなり、海外自転車旅の話に花が咲いた。

宿泊地:北海道稚内市
走行距離:69.4km

オロロンライン
北海道の日本海沿いで人気のツーリングルート『オロロンライン』のクライマックスとなるのが風力発電用の風車がズラッと並ぶ、オトンルイ風力発電所の景色
オロロンラインを走る
冷たい雨が降りしきる中、稚内を目指してオロロンラインをひた走る。ここまで本格的な雨に振られたのは初めて。全身ずぶ濡れ状態、靴まで濡れてしまった

DAY23

今日も稚内に滞在。まずはコインランドリー。昨日の雨で全身ウェアは全てずぶ濡れ。特にヒロコは靴が濡れてしまったので大変。一番近いランドリーへ行ってみると、靴専用の洗濯機と乾燥機があったので早速使ってみる。2足できるので僕のサンダルシューズも一緒に洗い、さらに乾燥。これで完璧だ。

次はボルトが一部折れて使えなくなったサイドスタンドの修理だ。サイズの合うボルトを探しにホームセンターへ。DIYコーナーを探すと、あった。ジャストサイズのボルトを発見!これで直せる、良かったー! 宿に戻り、さっそく修理開始。30分後、サイドスタンドは見事に復活した。この3日間はスタンドがなくて不便だったが、これで解消だ。

宿泊地:北海道稚内市
走行距離:0km

みどり湯ライダーハウス
稚内にある『みどり湯ライダーハウス』は33年間も続いている、ある意味日本一有名なライダーハウス。隣は稚内で唯一の銭湯『みどり湯』で、昨年施設内にBARもオープンした
コインランドリー
長い旅になると、洗濯する回数もそれなりになる。最近はシューズ用の洗濯機と乾燥機があるのでありがたい。今回初めて使ったが、想像以上にきれいになった

DAY24

『みどり湯ライダーハウス』には毎日10〜15人くらいの旅人が入れ替わりやってくる。中心のバイクが8割で、残りは自転車など。今回は自転車旅をしている香港人夫婦がいて、歳が近いこともあり、すぐに仲良くなった。キャンプが中心のようだが、電話でのバンガローの予約などに苦労しているという。ならばと、代わりに僕たちが電話して予約をとるととても喜んでくれた。僕も海外の旅では地元の人に何度も助けられきた、少しだが恩返しできたようで嬉しかった。

夜は海外旅の話して盛り上がった、清水さんと香港人夫婦を見送った後。僕たちも近郊を走りに出かけた。まずは稚内の外れにある、ノシャップ岬へ、赤白のストライプが特徴の、背の高い灯台が岬のシンボル。周辺で写真を撮ってから、美味しい海鮮を食べるために『漁師の店』へ。メインから少し離れた場所にある、年配のご夫婦が切り盛りする、知る人ぞ知るお店。僕はホッケ定食、ヒロコはウニいくら丼を食べた。ホッケは自分で焼くスタイルなのだが、脂がのっていて美味しかった。もちろんウニいくらも申し分なしだった。

宿泊地:北海道稚内市
走行距離:23.1km

清水さん
同じ自転車での旅ということから親しくなった清水さん。年上だが気さくに話しかけてくれたのが嬉しかった。ヨーロッパ旅をしたという共通点もあり話が盛り上がった
香港から来た夫婦と
香港からきた夫婦と仲良くなった。自転車で日本を旅行するのが夢だったという。日本語が出来ないので苦労しているが、たくさんの日本人に助けられたという
ノシャップ岬
サイドスタンドの修理が終わったので、稚内の周辺を走った。赤白の灯台が立つノシャップ岬、最東端の納沙布岬(ノサップみさき)と似ているためよく間違われるらしい

★現在『夫婦で行くE-BIKE日本一周の旅』のクラウドファンディングを実施中。ぜひ旅の夢と感動を共有しましょう! ご支援のほどよろしくお願いいたします。
https://camp-fire.jp/projects/view/669580

取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp

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