eバイク旅ノート Vol.68 eバイク日本一周08 「ついに本土最東端の納沙布岬到着。祝福のさんま丼」

ふたり合わせて123歳の夫婦がeバイクで日本一周の旅に出た。神奈川県をスタート、関東を縦断して日本海、秋田からフェリーで北海道へ渡った。苫小牧から時計回りで北海道一周を目指す。前回は道東エリアのハイライト、屈斜路湖、摩周湖、美幌峠を走り、知床半島縦断道路を経て羅臼まで。今回はその続きです。

DAY47

羅臼の朝は意外と冷え込んだ。長袖の上にウインドブレーカーを着て走り出す。それでも気温は徐々に上昇、30分ほど走るとウインドブレーカーを脱いだ。国道335号、羅臼を離れてしばらくは海が見えたり、民家も点在していたが、途中からほぼ森だけになる。森の中をひたすら走り続けると、ようやく人の住む場所、標津町に出た。

お腹がすいたので国道沿いで見つけた大衆レストランに入った。灼熱の暑さなのでエアコンを期待したがここは北海道、残念ながらエアコンはなく、数台の扇風機が忙しそうに回っていた。席はほぼ満席、見たところ地元の人たちばかり、町の食堂という雰囲気だ。メニューの中に『俺ライス』なる料理があったので注文してみる。目の前に運ばれてきた料理はオムライスの上にタレが絡んだ生姜焼きがドン! その上からマヨネーズがドバドバかかっていた。ごはんが半端ない量のうえ、味もかなり濃い。苦労しながら最後まで食べ切った。

午後3時。野付にある『尾岱沼ふれあいキャンプ場』に到着。広い芝生が中心に広がる開放的なキャンプ場で、サイトから『野付湾』が見える。バンガローの近くには気持ちよさそうなテーブルベンチがあったり、とてもいい雰囲気。ヒロコも気に入ったよう。バンガローへ荷物を運び込み、バッテリーの充電開始。次は昨日浴びられなかったシャワーだ。ここのシャワーは100円を入れると5分間お湯が出るというシステムなので、時間との勝負だ。服を脱ぎ万全の態勢でコインを入れる。200円を目標に大急ぎで髪と体を濡らし、すぐにシャンプー。頭をガシガシ洗い、続けて石けんで体もガシガシ洗う。急いで洗ったからか、まさかの5分で洗い終えてしまった。まあ、スッキリしたのでいいでしょう(笑)

次はコインランドリーで洗濯。その間にコンビニに買いに行こうかと思っていたら、雨が降り出した。マジかー。仕方なく売店で売っていたポテトチップ、カステーラ、牛乳を夕ごはんにする。たまにはこんなごはんもアリでしょう。とりあえず、やりたかったことが全部できてよかった。さあ、後は寝るだけだ。

宿泊地:北海道別海町
走行距離:59.8km
総走行距離:2488.8km

ライダーハウスお気楽屋
羅臼では格安で宿泊できる『ライダーハウスお気楽屋』に泊まった。昔は北海道各地にあったライダーハウス、ここ数年で激減、いまは貴重な存在になっている
国道335号で標津へ
国道335号で標津へ向かう。北海道の国道は道幅が広く交通量が少ないのが嬉しい。2~3時間走ってもコンビニがないのはちょっと辛いけどねー(笑)
俺ライス
標津の町で見つけたレストラン『いし橋』。“俺ライス”という名前に惹かれて注文、出てきたのはオムライスに生姜焼きが載ったボリューム満点の料理だった

DAY48

昨日は雨に降られたが、今朝は快晴。外のテーブルで青空の下で朝ごはんを食べることにした。「青空の下ではやっぱり気持ちがいいね」と最初は喜んでいたが。どんどん日差しが暑くなる。とても北海道の朝とは思えない気温で、肌がジリジリ焼けてくる。暑さに耐えきれず、バンガローの日陰に退散する。サンドイッチをかじりながら、今日は暑さに耐えられるのか? 不安になってくる。

国道244号を走り始めると、想像を絶する暑さ。北海道は涼しいと決め込んでいたのでよけい暑く感じる。走っていると風が当たって涼しいが、ペダルを止めた途端暑さが押し寄せてくる。最初の休憩ポイント『道の駅おだいとう』に着くと、グリーンTシャツの人が「お久しぶりです、小澤です!」と声をかけてきた。なんと、十数年前、東京の写真展で会った小澤さんではないか。まさかこんなところで会うとは思わなかった。いまは北海道と東京の2拠点生活をしていて、SNSで近くにいることを知り、会いに来たという。なんとも嬉しい再会だった。

しばらくは海が見えていたが、途中から森の景色になる。変化の少ない単調な道が続く。人が住む場所を目指して、ただひたすらにペダルをこぎ続ける。単調な景色と暑さで気が遠くなりかけたところで、『明郷・伊藤☆牧場』と書かれた看板が現れた。

久しぶりに見る文字看板にテンションが上がる。トイレにカフェ、ソフトクリームのマークもある。「やった!」「休憩にしよう!」敷地に入って行くと、おしゃれな雑貨屋カフェ、レストランなどの建物がいくつか点在する施設だった。冷房の効いたカフェに入ると「涼しい~」「天国だ~♪」笑顔がこぼれる。

お腹がすいたので牛すじカレーとクラムチャウダーを注文。喜んで食べていると、次々にお客さんがやって来る。ソフトクリームとシェイクが人気らしく、ほとんどの人がどちらかを買っていく。僕たちも釣られて食後にソフトクリームを購入。濃厚なミルク、滑らかな食感、納得の味だった。

厚床から国道44号に入る。根室を目指してひた走る。時々道の横にある木陰で体を休め、水分補給を繰り返しながら進んで行く。1時間ほど走ると『道の駅スワン44ねむろ』が見えてきた。バイクを停めると急いでエアコンが効いた室内へ飛び込む。「ああ~涼しい」ベンチに座ると、暑くなった体を休めた。

体力が回復すると再び根室を目指した。町に入ると国道に沿ってホームセンター、ドラッグストア、電気店、レストラン、スーパーなどが現れる。大きな町は網走以来だ。午後3時半にゲストハウスに到着した。住宅地の中にある民家を改築した宿で、アットホームな雰囲気。ドミトリー式だが2人部屋なのでほとんど個室と同じになる。部屋を案内されると久しぶりの布団だった。本当はベッドの方が楽なのだが、たまには布団もいいもの。9日間連続走行、さらにこの暑さ、さすがに疲れがたまってきたのでゴロンと横になった。とてもいい宿なのでしばらくここに滞在して休もう。

宿泊地:北海道根室市
走行距離:88.5km
総走行距離:2577.3km

尾岱沼ふれあいキャンプ場
広いフリーテントサイトの向こう側に雄大な野付湾が広がる、気持ちのいい『尾岱沼ふれあいキャンプ場』。泊まったバンガローも清潔で居心地がよかった
小澤さんと
SNSで北海道を旅していることを知り、近くにいることから『道の駅おだいとう』に駆けつけてくれた小澤さん。十数年ぶりの再会が北海道とは、日本も狭い
野付湾
別海十景のひとつ『野付湾』。余裕があれば行きたかったのが野付半島の『トドワラ』。昔たくさんあった朽木も、ここ最近は海水の浸食などにより激減しているという
明郷・伊藤☆牧場のソフトクリーム
『明郷・伊藤☆牧場』の牛すじカレーとクラムチャウダーもおいしかったが、ソフトクリームも絶品。お客さんが次々買って行く、シェイクも人気のようだった
明郷・伊藤☆牧場
何もない自然の中を走り続けた先に現れる、カフェやレストランの看板は、まさに砂漠のオアシス。『明郷・伊藤☆牧場』のエアコンで涼みリフレッシュした
ゲストハウス・トマヤ
根室で宿泊した『ゲストハウス・トマヤ』はアットホームな宿。宿主は同じ60代ということで話が弾んだ。部屋も清潔で共同キッチンがあるのが嬉しい

DAY49

今日は久しぶりに休養日とした。eバイク移動がないので、朝9時ごろまで寝ていた。午前中はゆっくり過ごし、お昼は国道沿いに見つけた回転寿司屋『根室花まる』へ行ってみることにした。たまたま店舗を見つけたのだが、情報通のヒロコが「『根室花まる』は都内に数店舗あるんだけど、どこも2時間待ちがザラなくらい、大人気なのよー♪」と嬉しそうに教えてくれた。その言葉を聞いて期待感が2段階UPした。

大都市東京と違って根室は人口2万3千人の町。さすがに行列はなく、すぐに入店となる。板前さんが威勢よく出迎えてくれた。真ん中に板前さんその周りを囲むようにテーブルが並んでいる。壁や幕にある“今日のおすすめ”やメニューを見て、早速注文する。とろにしん、サーモンの中落ち、花咲がに、活〆はまち……など、ネタが新鮮で大きくどれもおいしい。値段もそんなに高くないし、都内で大人気なのもわかる気がした。大満足のお昼ごはんとなった。

午後は根室市図書館へ行き、コラム原稿書き。約4時間缶詰状態でパソコンに向かった。旅を伝えるのが僕の仕事なので、頑張りました(笑)。その後、eバイクで町散歩。根室駅に寄ったり、スーパーで夕ごはんの材料を買ったり、町を散策しながら宿に戻った。宿の共同キッチンでうどんを茹で、揚げを載せてきつねうどんにする。いつも外食なので、簡単な料理だが楽しかった。夜は居間でほかのお客さんとおしゃべり。いつもとひと味違う時間を楽しんだ。

宿泊地:北海道根室市
走行距離:6.8km
総走行距離:2584.1km

回転寿司・根室花まるの寿司
東京で大人気らしい『回転寿司・根室花まる』の本店へ。そういえば、北海道に来て初めてお寿司でした(笑) 値段は200円~300円台が中心と良心的
回転寿司・根室花まる
おいしい食事は明日の活力になるよねー。まぐろはもちろん、とろにしん、サーモンの中落ち、花咲がになど、普段あまり食べないネタを堪能しました
根室のノスタルジックな風景
北海道の町には懐かしい昭和の香りが漂う建物がたくさん残っている。根室も裏路地に入った瞬間にタイムスリップ、ノスタルジックな風景に出会える

DAY50

最も東にある町として知られる根室の町。今日はここからさらに東にある本土最東端の『納沙布岬』へ向かう。本土最北端の『宗谷岬』では雨が降ったり、チェーンが切れたり、夜間走行になったり……散々だったが、今日は天気も良く、気分も上々。

道道35号を時計回りで岬へ向かう。町を抜けると広々とした緑の平原が広がった。雄大な景色の中を進んで行く、荷物は宿なのでペダルが軽い。道は緩やかなアップダウンが続く。

『ノッカマップ灯台』と書かれた標識があったので道道を離れ、脇道へ入って行く。草原のジャリ道をしばらく行くと視界が開け、白黒の灯台が見えた。草原の海に浮かぶように立つ『ノッカマップ灯台』は、どこか牧歌的で、まるでヨーロッパの国を旅しているような、不思議な気分になった。

トーサムポロ沼を越え、倉庫が並ぶ小さな集落を抜けると、高くそびえる『オーロラタワー』が見えてきた。最東端の景色を望む高さ96mの展望タワーで、岬のランドマーク的存在だが、現在は残念ながら休館中。『四島の架け橋』『北方館』などがある望郷の岬公園を抜けると、本土最東端『納沙布岬』と記された碑が現れた。

「おーっ、最東端に来たぞ」「やったねー」これで最北に続けて最東端を制覇したことになる。感慨に浸りながら、碑の横にeバイクを2台並べて記念撮影をする。去年の今頃はヒロコとふたりeバイクでこんなところまで来られなんて、想像もしていなかった。人生って面白い。

納沙布岬といえば、さんま丼が名物の『鈴木食堂』。以前ここでバイトをしていた友人がいて、ぜひ食べてくだいと言われていた。ほかの数人の旅人からも聞いていたので行ってみることにする。簡易小屋のような建物に入り、名物の『さんま丼』を注文する。ご飯の上にタレを絡めたさんまの切り身がきれいに並べらた丼で、見るからにおいしそう。実際に食べてみると、臭みもなくおいしい。さんまは塩焼きが一番と思っていたが、概念が変わった。

食べ終えたあと食堂の大将の元へ挨拶に行くと「どうも、かんいちさんでしょ~ 聞いてるよ」と大笑い。どうやら友人が僕の情報を回していたらしい。ここで働いているバイトくんも日本一周の途中で、しばらく働いたら旅を再開する予定だという。同じ旅人ということで盛り上がり一緒に記念写真。楽しい時間を過ごした

2時間ほどかけてゲストハウスに戻ってきた。10分ほどすると窓から雨の音、いいタイミングだった。ここ数日、夕方になると雨というパターンが続いている。雨が上がったタイミングを見計らって、根室名物『エスカロップ』を食べに行く。提供する店はいくつかあるようだが、老舗の喫茶店『どりあん』を選んだ。昭和の香りがする店内でエスカロップを食べる。バターライスにデミグラスソースのかかったトンカツが載った、洋食料理なのだが、バターライスとソースの相性が抜群にいい。ボリューム満点のメニューでお腹いっぱいになった。もう一つ『オリエンタルライス』というメニューが気になったので、次に来るときはぜひ食べてみたい。

宿泊地:北海道根室市
走行距離:49.3km
総走行距離:2633.5km

納沙布岬へ
荷物は宿に預けて軽装で『納沙布岬』へ向かう。道はゆる~いアップダウンの連続、高い木はほとんどなく低い草の草原がどこまで続く、ヨーロッパの景色を思い出した
ノッカマップ灯台
偶然目に留まった『ノッカマップ灯台』の標識。草原に延びる細い道を行くと白黒の灯台が見えた。こんな景色に出会えるのも速度が遅いeバイクだからこそ
納沙布岬
神奈川の自宅を出て旅を続けること50日目。ついに本土最東端『納沙布岬』に着いた。妻ヒロコとふたり60歳を越えたいま、eバイクで一緒に来られたことが嬉しい
鈴木食堂
何人もの旅人から聞いていて、いつか行きたいと思っていた『鈴木食堂』にようやく来ることができた。ノスタルジー漂う店内、海を眺めながら、いただきます♪
さんま丼
これが噂の『さんま丼』!この時はシーズン前なので冷凍さんまだった。初めて食べたが、タレの味も良く、生臭さもなく最高においしかった。ヒロコも満足そう
北方領土エリカちゃんの顔抜きパネル
戦前の北方領土にいた日本人の生活を伝える『根室市北方領土資料館』(入場無料)で、北方領土イメージキャラクター『エリカちゃん』になりきる、お茶目なヒロコ(笑)
明治公園
根室にある『明治公園』の芝生に寝ころぶ。奥に見える3基の煉瓦サイロは高さ15m、直径約6mで国大最大級サイズ。道内では2番目に古い煉瓦サイロ
どりあんのエスカロップ
喫茶店『どりあん』で食べた、根室のご当地グルメ“エスカロップ”。サクサク食感のカツ、バターライスにタケノコが入っていることが特徴

取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp

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