次なる目標は妻ヒロコとふたりで日本一周。まずはレンタルeバイクで少しずつ慣れていこうということになった。今回は富士山麓に広がる朝霧高原でレンタルすることにした。

霞ヶ浦から1か月、ヒロコが久しぶりに時間が作れそうだというので、eバイクのレンタルを探し始めた。普通の自転車や電動アシスト自転車に比べると、本格的なeバイクがレンタルできるところはまだまだ少数。ネット検索していると静岡県富士宮市が観光アクテビティとしてeバイクを導入、朝霧高原を中心に市内の15か所でレンタル提供していることがわかった。「富士山を眺めながらeバイクか、いいな。よし決めた、朝霧高原へ行こう」。
今回は僕が所有するYAMAHA YPJ ERを車に積載、一方ヒロコは道の駅朝霧高原の『上野製菓』でeバイクをレンタルすることにした。自宅の相模原から中央自動車道に乗り富士吉田線へ。富士吉田ICで降りると国道139号で朝霧高原へ向かう。天気はまずまずなんだけど、富士山は雲がかかっていて全容は見えず。残念だが、これから雲がなくなって行くことを期待しよう。
10時少し前『上野製菓』に到着。電話予約していたレンタルeバイクを受け取った。レンタルは90分以内(1000円)、3時間以内(2000円)、3時間以上(4000円)の3種類。できるかぎり長く乗りたいので3時間以上を選んだ。閉店時間が17時なのでそれまでにここへ帰ってくればOK。さあ、思い切り走りまくるぞー。
前回、霞ヶ浦でレンタルしたのはクロスバイクだったが、今回はマウンテンバイクのYAMAHA YPJ-XC。ハンドル幅が広くタイヤも太い。見た目がごついので、ヒロコ大丈夫か? と心配して見ていたら「あーこれ、乗りやすいかもー」意外な反応が返ってきた。聞くと今回はSサイズなのでサドルが低く(霞ヶ浦のときはMサイズ)、ハンドルが高い位置にあるのがいいらしい。「だって、ハンドルが低いと前傾姿勢になって前が見にくいんだもん」。なるほど、前傾姿勢の方が風の抵抗が少なくてラクだと思っていたけど、景色を眺めながらゆっくり走りたいヒロコは、ハンドル位置が高いバイクの方が乗りやすいらしい。

最初の目的地は『白糸の滝』。国道139号は交通量が多そうなので、裏の県道で向かう。距離は13~4km、ぼぼ下り坂なので1時間もあれば着くだろう。県道の周りは緑の草原と牧場、高原らしいの景色が続く。遠くに富士山を眺めながら進んでゆく。まだ10kmも走っていないのにレジャー施設『富士ミルクランド』でジェラートをパクリ。新鮮な牛乳を使っているのでとてもミルキー。おしいジェラートを食べながら、ヤバイ! こんなことしていたら全然進まない……と気が付き。慌ててeバイクに跨った。

それから『白糸の滝』までほぼノンストップで走った。ふたりで来るのはいつ以来? 思い出せないくらい久しぶりだ。駐車場にバイクを停めて歩いて滝へ向かう。昔ながらの土産物屋の前を抜けると、遠くに滝が見えてくる。幅150mの絶壁から無数の滝が白糸のように流れる『白糸の滝』の景色は昔のまま。長い階段を降り、遊歩道を歩いて滝の近くまで行き、ゆっくりとその絶景を眺めた。

滝の後はヒロコにぜひ食べてもらいたいと思っていた富士宮のB級グルメ、焼きそばの店へ向かった。住宅地の奥にある、小さな橋の横に立つ食堂『天神橋』についた。昭和っぽい雰囲気もいいけど、食べてほしいのは富士宮の焼きそば。肉とエビイカなど入っているミックスを注文する。出てきた焼きそばはみそ汁付き。シコシコ食感の麺にあっさりソースがいい感じで絡みとてもおいしい。食べやすい軽やかな味付けなので、食が進みあっという間に完食となった。


重たくなったお腹で再びサドルに跨った。次に向かうのは『田貫湖』。富士山の西麓にある人造湖で、周辺にはキャンプ場や宿泊施設、またヘラブナなどの釣り場としても親しまれている。田畑と民家が点在する田舎道から、周辺を木々に囲まれた山道になる。徐々に上りが続くようになるが、こんなときに力を発揮してくれるのがeバイク。体力のない妻でも電動アシストのお陰で、ムリないペースでスイスイ進んでゆく。
坂を上り切ると田貫湖が右手に見えてきた。湖畔に沿って延びるサイクリングロードが見えたので入って行く。少し走ると田貫湖キャンプ場に出た。「大昔、ここでキャンプしたこと憶えている?」「うん、あの時は丁度お盆休みで、すごい人だったね!」「テントに花火が飛んできたり、子供が目の前で追いかけっこしたり……大騒ぎ」「キャンプ場でのんびり過ごすつもりが、全然できなかった、あははは……」懐かしい思い出話に花が咲いた。

ロードマップを見ると、サイクリングロードで湖を一周できるようなので行ってみる。前回の霞ヶ浦に比べると小さな森があったり、キャンプ場の中を走ったり、湖畔を走ったり変化があって楽しい。ペダルをとめて写真を撮ったり、おしゃべりをしながら進んでゆく。


田貫湖を離れるとグーグルマップの最短ルートで『陣馬の滝』へ向かった。杉の森の中を縫うように延びる道を走っていると、小さな川が道を横断する場所に出た。こんなところがあるとは知らなかったので「川渡りだ!」とふたりで盛り上がる。川の幅は約10m、水の深さも10cmくらいなので、問題なく渡れた。後ろのヒロコは大丈夫か? と見守っていると、何の気負いもなくスイスイ渡ってしまった。逞しいね~。

『陣馬の滝』は源頼朝公が陣を張って馬を休めた場所として知られる滝で、白糸の滝に比べるとかなりコンパクト。人も少ないので、静かに眺めることができた。ここまで来たら道の駅朝霧高原まであとわずかなのだが、ちょっとだけ回り道で『ふもとっぱらキャンプ場』に行ってみることにした。富士山がドーン! と真正面に見える高原キャンプ場で、人気アニメ『ゆるキャン△』の舞台になるなど、様々なメディアなどでも紹介されている人気のキャンプ場。名前は知っているがまだ行ったことがない。
国道139号に出てしばらく進むと『ふもとっぱら』と書かれた標識が現れた。矢印に沿って脇道に入って行く。10分ほど走ると右手に広い草原とテントが見えてきた。どうやらここらしい。キャンプした人のSNSなどで見ていたが、実際に見るとまた違う。とにかく広くて開放的。今日は月曜日だけどテントがいっぱい、料理をしたり、チェアーでまったりしたり、それぞれの時間を楽しんでいる。いまは富士山は雲で隠れてしまっているが、テントのファスナーを開けた瞬間に富士山が見えたら、最高だろう。「気持ちよさそうだねー」「いいね、いつかここでキャンプしよう」ふたりの意見は一致した。
午後4時過ぎ。道の駅朝霧高原にある『上野製菓』へ戻り、借りていたeバイクを返却。今回の旅は終了となった。ヒロコに感想を聞いてみると「変化があって、楽しくて、あっという間だった!」上機嫌に応えてくれた。確かに霞ヶ浦の時はずっと湖沿いの道だったからね。一方、今回は田舎道、山道、高原道、国道、サイクリングロード、川渡りまであった。さらに歩いて滝を見に行ったり、ジェラート食べたり、焼そば食べた後、店先でお店のおばあさんと立ち話をしたり……。まさに旅という感じだった。心配していた腰のヘルニアも前回ほど痛くならなかった。理由はハンドルの位置のようで、高い方が腰への負担もがかからないよう。少しずつだが、ふたりのeバイク旅の形が見えてきた。


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