eバイク(YAMAHA WABASH RT/ヤマハ・ワバッシュRT)で自由気ままに旅した「北海道旅」のレポートです。
旭川市西神楽で北海道旅人ための情報発信基地&カフェギャラリー『HOKKAIDER BASE』をオープンした小原くん。普段はカメラマンとして活動。さらに北海道ツーリング地図の実走調査を26年間も担当。まさに北海道旅のバイブル的な存在。道、グルメ、スポット、宿やキャンプ場などなど、旅情報は何でも知っているので、北海道旅を予定している人はぜひ『HOKKAIDER BASE』立ち寄ってみてください。
地元の人やライダーとおしゃべりしていると、友人の鈴木さんがロードバイクで遊びにやって来たので、お互いの自転車交換してみることにした。初めて乗る8kg台のロードバイクにワクワク、実際に走ってみると別物。とにかく軽く軽快で、グングンスピードが上がる、自転車がまるで手足になったような錯覚に陥った。一方、eバイクに乗った鈴木さん、「面白いね♪ 旅をするならeバイクかも、荷物をいっぱい乗せてキャンプとか楽しそう」と無邪気に笑った。少し乗っただけだけど、eバイクの景色が見えたようだ。
国道237号を北へ向かう。旭川市内から国道12号で滝川方面へ。しばらく進むとトンネルが現れ、自転車と歩行者は手前の脇道へ進めの標識が。そちらへ入って行くと道幅はグンと狭くなり、なぎ倒された雑草が道を覆っていた。なぜ? どうして? 首をかしげながら進んでゆく。今は使われていない旧道だからか、まったく管理されていないようで、路肩は雑草が生い茂り、路面も荒れ放題。探検気分で進んでゆく。
旭川から深川、滝川、砂川と国道12号沿いは『川』が付く地名が4つも連続する。石狩川に沿って町があるからだと思うが、ここまで連続するのはかなり珍しい。7時半、日が暮れる。日本縦断の時から夜間走行は慣れているが、北海道はほとんど外灯がないので慎重に進んでゆく。予約していた砂川の旅館に着いたのは9時過ぎ。130kmと距離はそんなに走っていないのに今日は疲れた。風呂に入り、夕ごはんを食べるとすぐ布団にもぐりこんだ。
砂川を出ると札幌を目指した。国道12号をひたすら南下する。日本一とされる29.2kmの直線道路もいいペースで走り切った。ちなみに日本一長い直線の鉄道というのもあるのだが、国道12号と並行する『JR函館本線』と思いきや、意外にも太平洋沿いの『JR室蘭線』沼の端~白老間と知り、驚いた。
午後2時過ぎ、久しぶりの大都会、札幌市内に入った。大都会は車が多いので走りたくなかったのだが、札幌は道幅が広く、土曜日で車も少なく快適だった。定番の時計台や大通公園などを訪れたあと、友人ふみさんの家を訪ねた。ふみさんは徒歩で世界中を旅していて、18年前にオーストラリアの宿で会ったのが最初だった。その後何度か日本で再会。日本歩き旅の途中で、あゆみちゃんと出会い、結婚。それからあゆみちゃんと夫婦ふたりで歩き旅が始まった。2017年~19年にはカナダ横断の旅も果たしている。
ふたりと直接会うのは10年ぶりだが、ふたりとも想像以上に元気だった。コロナ禍もあるのでしばらく旅はしないようだが、あゆみちゃんはヨガを、ふみさんはデリバリーのバイトを楽しそうにやっていた。歩き旅の時と同じようにふたりが持っているものは最小限、住んでいる部屋にあるものは机と布団くらい、とてもシンプルな暮らしをしていた。夜は旅から自転車、人生から宇宙までいろんな話をした。
当初、苫小牧発のフェリーで翌日、北海道を出る計画だったのだが、ネットで確認すると毎日出ているフェリーがこの日だけ運休日。突然1日できてしまった。そこで、かなり前から気になっていた、喜茂別にあるカフェ&ゲストハウス『雪月花廊』へ行ってみることにした。廃校になった小学校の校舎を改築した宿なのだが、とても居心地がよくて、ごはんもおいしいとたくさんの旅人から聞いていたのだ。
地図で確認すると札幌から80kmと距離も丁度よさそう。ふみさんとあゆみちゃんに見送られ、札幌を後にした。国道230号で喜茂別へ向かう。今日は昨日とは一転、朝から青空が広がっている。ツーリングライダーの姿が多いのを見て、今日が日曜日だったことを思い出す。長い旅をしていると曜日の感覚がなくなってしまうのだ。
札幌の奥座敷『定山渓温泉』を過ぎると、中山峠へ向かって緩やかな上り坂が始まった。視界が開けると遠くの山とどこでも広がる森が見えた。中山峠の売店で休憩にする。中山峠の名物と言えば『あげいも』、串に揚げた大きなイモが3つ刺さっている、定番のテイクアウトフード。一本買うと、マヨネーズとチリガーリックパウダーをかけた。ホクホクとしたジャガイモに北海道を感じる。「なまらうまいぜ」(笑)
峠を下りしばらく進むとポツポツと民家と店が現れる。喜茂別の町に入ったらしい。正面に美しい羊蹄山が見える。国道276号へスイッチすると支笏湖方面へハンドルを向けた。ここまで来たら『雪月花廊』まであと一息だ。道の周りは畑ばかり、平らな道をひたすらペダルを踏んで進んでゆく。
国道沿いに『レトロカフェレストラン・雪月花廊』と書かれた看板が現れた。やった到着だ。広い敷地には校庭の名残らしき鉄棒があり、その向こうに赤い屋根に木造平屋の校舎が見えた。 「こんにちはー!」と声をかけると、奥から「はーい♪」明るい女性の声が返ってきた。みんなから「かかさん」と呼ばれ愛されている今関さんだ。名前のイメージから勝手に年配の人を想像していたが、若い女性だった。食事付きも可能ということなので2食付きでお願いをする。宿泊は他に3人、みんな常連、長期滞在らしい。後から初北海道ツーリングという女性ライダーもやってきて、賑やかな夕食会となった。
宿の手伝いをしていて、みんなから「親方」と呼ばれている青年が「10年前、沖縄で会いましたよね」と言ったのでビックリした。記憶の奥から、那覇のゲストハウスでカブ旅していた大学生がいたことを思い出した。その宿の名前を言うとビンゴ! やはりそうだった。そんな予想外の再会もあり、北海道最後の夜は大いに盛り上がった。
翌日。ついに北海道放浪、最後の日がやってきた。ここから苫小牧まで約70km、午後6時45分のフェリーに乗れればいいので時間的には余裕がある。国道276号は道に沿って民家が点在するのどかな風景が続いた。10kmほど走ると国道453号にぶつかった、このまままっすぐ行くと支笏湖なのだが、美笛峠が通行止めなので、道道86号を使って白老方面へ向かう。
交通量の少ないマイナーロード。起伏の少ない緩やかな道がひたすら続く。手持ちのスポーツドリンクが尽きたことに気が付く。そういえば『雪月花廊』を出て2時間以上走っているのに、途中に店どころか自動販売機もなかったな。もう少し多めに持っておけば……と悔やんだ。
変化のない道に突然『白老キャンプフィールドASOBUBA』の文字。道の奥に広いキャンプ場があり自動販売機が見えたので行ってみる。平日のせいか人はほとんどいない。車が一台停まっていたので声をかけると関係者で2020年にオープンしたばかりだと教えてくれた。ハンモックサイトがあったり、ウエルカムドリンクサービスがあったり、なかなか面白そうなキャンプ場だ。オレンジジュースを飲むと再び走り出す。
アイヌ文化をテーマにした施設『ウポポイ』が2020年に白老にできたことを思い出したので、行ってみると、何と定休日だった(笑)。フェリーの出港までまだ時間があるので、ウポポイの奥にあるポロト湖へ行ってみる。湖畔に出たところでいきなり雨が降り始めた。慌てて軒下へ逃げ込む。しばらく様子をみるが、止む気配がない。
フェリーに乗り遅れたら、笑うに笑えない。仕方なく雨具を着こんで、雨の中へ突入した。30分ほど走ると雨は小降りになり、苫小牧に着くころには完全に上がっていた。最後はもう少し北海道を楽しみたかったのに……呟きながらフェリーターミナルへ向かった。
30日間で成し遂げた日本縦断チャレンジ。続編のような形で楽しんだ北海道の旅。eバイクだからどんな旅をしなければいけないということはない。長距離にチャレンジする旅もできるし、のんびりとした旅も楽しむことができる。結局、何を使うかではなく、どう使うか? 乗る人次第で無限に広がるeバイクの世界。この先、僕のeバイク旅は新しい方向へ展開してゆきますので、お楽しみに♪
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