eバイク旅ノート Vol.50 北海道放浪03 羅臼→釧路

eバイク(YAMAHA WABASH RT/ヤマハ・ワバッシュRT)で日本縦断3700キロチャレンジ旅の後、自由気ままに旅した「北海道旅」のレポートです。

知床半島の東南側にある羅臼町。町の主な産業は漁業、人口は4千4百人、コンビニ一軒だけの小さな町だ。羅臼に着いた日も翌日も、ずっと雨。天気が良くなったら人気の露天風呂温泉『熊の湯』へ行こうと思っていたが、雨の中を自転車で濡れてまで行く気にはなれず。食料を買いに出る以外は、ほぼ宿の部屋で過ごした。

3日目の朝。羅臼は深い霧に包まれているが、天気予報の『晴れ』の文字を信じて、宿を出た。羅臼を出たらしばらくコンビニもないので、おにぎりとカップ麺で腹ごしらえをしてから町を離れた。

海岸に延びる国道335号を標津方面へ向かって、eバイクを走らせる。30分ほどすると霧は徐々に切れ始め、あっという間に青空に変わった。走っていると浜に横たわる大きな物体を見つけた。何だろう?動物か? eバイクを降りて近づいてゆくと、トドの死骸だった。怪我をしていたようだが、自然現象? それとも人間の仕業? 原因はかわからないが、なかなか見られない光景だけに、深く脳裏に焼き付いた。

羅臼の町
世界自然遺産、知床半島の東南側、雨のため2泊した羅臼の町を出発する。朝はひどい霧だったが、徐々に天気は回復していった
トドの死骸
海岸沿いに延びる国道335号を走っていると、大きな物体が浜に横たわっているのが見えた。何だ!? と思いながら浜に降りてゆくとトドの死骸だった

薫別で海岸線を離れ、内陸へ向かった。目指すはライダーが知名度を上げた、絶景スポット『開陽台』。林の中をしばらく進むと、開けた景色に変わった。牧草地の向こうに知床連山、さらにペダルをこぐと草原の先に国後島が見えた。スケールの大きさに圧倒される。

11時。開陽台に到着。小高い丘の上に展望台があり、階段を上ると地平線が見えた。壮大な景色はまさに『北海道、デッカイドー!』。懐かしいこのフレーズ知っている人、どれくらいいるだろう? 青空なので今日はキャンプがしたい。スマホで弟子屈周辺のキャンプ場を調べると『RECAMP摩周(桜ヶ丘森林公園オートキャンプ場)』がヒットした。

行ってみると弟子屈の町の外れにある、整備されたキャンプ場だった。受付のドアを開けると、「自転車旅ですか? いいですね!」若くて元気なスタッフが笑顔で対応してくれた。いかにもアウトドアが大好きという感じの青年で、この仕事を始めたきっかけや北海道の魅力を楽しそうに語ってくれた。昔、北海道のキャンプ場は市町村が運営、管理人さんも定年退職した年配者というイメージだったが、アウトドアブームもあり、随分雰囲気が変わった。

開陽台へ向かう道
開陽台へ向かっている途中、3日ぶりに青空が広がった。きれいな景色を見ていると、それだけでテンションが上がる。ペダルも軽く感じる
開陽台
開陽台に到着。38年前にここでキャンプ、その時に見た星の数は本当にすごかった。あの時に見た雄大な星空と仲間たちとも思い出はいまも消えない
リキャンプ摩周
弟子屈で泊まったのが『RECAMP摩周(桜ヶ丘森林公園オートキャンプ場)』。自転車乗り入れOKの広いテントサイトが気持ち良かった

翌日。テントを張ったままにしておき、軽装で美幌峠(標高525m)へ向かった。美幌峠は屈斜路湖沿いの国道243号を上り詰めたところにある峠で、展望台から絶景が眺められることで知られている。森に囲まれた道は徐々に標高を上げてゆく。左右にカーブをいくつか繰り返すと、視界が開け、眼下に屈斜路湖がドーンと見えた。

さらに上って美幌峠に到着するとeバイクを停め、展望台へ駆けあがった。するとそこには、広大な屈斜路湖とその真ん中に浮かぶ中島、その先には摩周岳まで見える。目の前に広がる大パノラマを、しばしうっとり眺めた。

展望台を降りると『道の駅・ぐるっとパノラマ美幌峠』へ行き、名物のフライドポテトで腹ごしらえ。その後は一気にダウンヒル。屈斜路湖畔、砂浜を掘ると温泉が出てくる『砂湯』へ向かった。美しい湖はもちろん、足湯、レストラン、キャンプ場などがあることから、屈斜路湖随一の観光スポットとなっている。着くと家族連れ、団体客、外国人など、たくさんの観光客で賑わっていた。

持ち歩いていた焼きそばロール
北海道は町と町の距離がすごく離れていたり、小さな町にはコンビニや食堂がないこともあるので、どこでも食べられるように食料を持ち歩いていた
美幌峠への道
美幌峠へ向かって坂道を上っていると、視界が開け壮大な屈斜路湖が姿を現した。天気も良く、今回の旅で見た中でベスト3に入る絶景だった

砂湯から10kmほど走ると『硫黄山(アトサヌプリ)』が見えてくる。木が生えていない裸山から上がる噴煙、独特の景色が広がっている。荒涼とした大地、鼻を突く硫黄の匂い、激しく吹き上がる蒸気…… ただ歩いているだけで、いま地球が生きていることが伝わってくる。

古い木造建築の『川湯温泉駅』は駅舎の一部がレストラン『オーチャードグラス』になっていた。お腹がすいていたのでここでランチにする。ガッツリ食べたいと思い、チーズハンバーグを注文した。昭和を思わせるレトロな店内、近郊の食材を使ったハンバーガーはどこか懐かしい味がした。

川湯温泉駅
JR北海道、釧網本線の『川湯温泉駅』に到着。丸太を使った山小屋風の駅舎がユニーク。駅の構内には誰でも無料で浸かれる『足湯』がある
オーチャードグラスのチーズハンバーグ
『川湯温泉駅』の中にある駅舎カフェレストラン『オーチャードグラス』で食べたチーズハンバーグ。人気のカフェでビーフシチューやケーキなどもある

今日のラストは摩周湖。日本で最も透明度の高い湖で、青以外の光の反射が少ない湖は『摩周ブルー』と呼ばれている。道道52号に入り、しばらく坂道を上ると駐車場と『摩周湖第3展望台』の標識が現れる。eバイクを降りて展望台へ登ると、幻想的な景色が目に飛び込んできた。ここでしか見ることのできない摩周ブルーをしっかり記憶に焼き付けた。

そこで“晴れた摩周湖を見ると婚期が遅くなる”という話を思い出した。確かに『霧の摩周湖』という歌があるくらい、霧が多いようだが、なぜそんな伝説ができたのかは謎だ。

摩周湖
展望台から望む摩周湖。アイヌ語で「カムイトー」、神の湖と呼ばれている。湖の周囲は急峻な斜面になっているため、湖面に下りることはできない

弟子屈のキャンプ場を出ると国道391号で釧路へ向かう。北海道は平坦な道が多いためバッテリー消耗が少ない。特にYAMAHA WABASH RTは大容量のバッテリーを積んでいるので、北海道ならHIGHモードで100km以上走ることができる。最長記録は140km越え。今日はどこまで延びるのか楽しみだ。

国道391号は釧路川と釧網本線とほぼ並行して延びているため、美しい花が咲く土手の道を走ったり、小さな駅に立ち寄ったり、大自然の中を列車が走る姿を眺めたり、これまでとはひと味違う北海道を満喫した。

ルピナス
釧路へ向かう途中、土手に無数のルピナスが咲いていた。北海道の初夏を代表する花で、ルピナスを見るといま北海道にいんだと実感する

昼すぎ、右手に湖が見えてきた。シラルトロ沼だ。続けて塘路湖が見えてくる。トイレ休憩のために塘路駅へ立ち寄ると、駅前に『Bob’s Burger』という名のハンバーガーショップがあった。こんな田舎の駅前にハンバーガー屋とは、予想外の展開だ。店内には星条旗があったり、ポップでレトロな看板が壁に飾ってあったり、かなりアメリカンな雰囲気。これならハンバーガーもおいしそうだろうと思い『ボブズバーガー』を注文した。

話を聞くと4月にオープンしたばかり、できたてホヤホヤのお店だった。食べた後、オーナーさんとおしゃべり。僕が釧路に向かっていることを知ると、「それなら釧路でProof Pointというホステルを経営しているから、良かったら泊まって」と言った。なんか聞いたことがある名前だと思い、スマホを確認すると、僕が予約していたホステルだったのでビックリ。ふたりで目を合わせながら「わーっ、これはすごい偶然♪」と笑った。

シラルトロ沼
国道391号を南下していると『シラルトロ沼』が現れた。釧路湿原国立公園内、標茶町にある湖で冬でも凍結しない淡水湖として知られている
ボブズバーガー
塘路駅前にある『Bob’s Burger』は今年4月にできたばかりのハンバーガーショップ。アメリカンな店内で食べるボブズバーガーは格別、ランチにおすすめ♪
釧路駅
JR北海道の主要駅のひとつ『釧路駅』に到着した。北海道の駅はどこも特徴があるので、観光スポットとしてめぐり歩くのも楽しい

ルート

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