旅行家・藤原かんいちが30日間で果たしたeバイク(YAMAHA WABASH RT/ヤマハ・ワバッシュRT)による佐多岬→宗谷岬、日本縦断3700キロチャレンジ旅。今回は第4回目のリアルレポートです。
12日目。朝8時徳島発、和歌山行きのフェリーに乗るため徳島港へ向かう。20分ほどでターミナルに着くと、同世代の男性が声をかけてきた。聞くと最近SNSで繋がり、何度かメッセージでやり取りをしていた伊達さんであった。もちろん初対面。家が近いので、仕事へ行く前に会いに来たという。するとそこへ13年前の旅で知り合った徳島のやまちゃんまで現れた。まさかの展開、嬉しいハプニングだ。僕のSNSを見て、この船に乗ると予測したらしい。見送りに来てくれた男2人に大きく手を振り、船に乗り込む。
徳島から大阪方面、車なら淡路島を経由なのだが大鳴門橋も明石海峡大橋も自転車で渡ることができない。そこで登場するのが南海フェリー(公式サイト)。徳島から和歌山まで2時間。料金も大人2000円+自転車700円と安い。船旅が好きなサイクリストにおすすめのフェリー。
和歌山港に降りると古い友人が待っていたのでビックリ。みんなどうして、連絡なしで来るんだ~笑。海外バイク旅仲間で会うのは十数年ぶり。30日間以内という目標がなければゆっくり話しをするのだが、今回は時間的余裕がないので、おしゃべりは少なめにして先へ向かった。次はゆっくり話そう。
次に向かうは、大阪と奈良の県境にある、ステージ07の『暗峠』。標高は455mと高くないが、日本屈指の急傾斜の峠道で、その最大勾配は40%とも言われている。オートバイでも上るのに大変な道にeバイクで挑む。楽勝? それとも大苦戦か? どちらにしても楽しみだ。和歌山市内に入ると紀の川に沿って東へ向かう。土手には川に沿って歩行者・自転車用道があった。車を気にせずに走れるのが嬉しい、こんな道が全国各地にあればと思う。
途中から国道24号、さらに国道480号で北上する。交通量が少ないと喜んでいたら、和歌山大阪の県境、鍋谷トンネルの入口に「自転車進入禁止」の標識が。ガーン! 仕方なく峠越えの旧道へ入って行くと、これが超クネクネ道。なかなか前に進まない。くそー、県道で行けばよかった、と思ったが後の祭り。10km近く遠回りすることになった。結局、松原市のホテルに着いたときは8時近くになっていた。
13日目。宿泊したホテルへ昨晩、そして今朝も関西の友人が応援に駆けつけてくれた。持つべきは友、嬉しい限りだ。みんなの励まし、応援の言葉は大きなエネルギーになる。元気いっぱいで『暗峠』へ向かった。大阪に入ってからはずっと市街地。車は多いし、道は複雑、路肩は狭くて信号も多いので、精神的に疲れる。
『暗峠』へ向かう途中、宅配会社に立ち寄った。できる限り荷物を軽くするため、防寒着や使わない物をバックにまとめ、自宅へ発送した。これで5、6kgは軽くなったはず。手続きを終えて駐車場に戻ると車体が大きく傾いている。うそー。まさかのパンクだ。確認するとどこで踏んだのか、針金の破片がタイヤに突き刺さっていた。宅配会社の駐車場で工具を広げる。パンク修理はオートバイの旅で散々やって来たので、慣れている。30分ほどで終了、すぐさまバイクに跨った。
東大阪市の枚岡から国道308号へ入って行く。線路をくぐると急傾斜の上り坂が始まる。アシストは最強のHIGHモード、ギヤも最も軽いギアにセットしておく。準備万端。住宅地の間を縫うように伸びる道は、国道とは思えないほど狭い。そしてスキー場のような急斜面。ハァハァ…… 息は上がるし、体力的にもきついが、何とか上れる。
坂の途中でペダルを止めたら、再スタートは不可能。それどころかズルズル後退、下手をしたら転倒する可能性もある。呼吸がつらくなると、路肩の傾斜が緩やかなところまで必死に上り、そこでペダルを止めて休憩する。息が整うと再び上り始める。そんなことを何度か繰り返し、ようやく暗峠にたどり着いた。
おそらくeバイクでなければ上れなかった、いや上ろうと思わなかった、とにかく急斜面のすごい峠だった。峠付近は石畳、本陣や旅籠があり、伊勢参宮街道として使われていた当時の面影を残している。雰囲気のある場所だった。峠の茶屋があったのでかき氷を注文、峠到着を祝った。
峠を下ると、あとはひたすら滋賀県大津市を目指した。交通量の多い国道1号を避けて、ローカルな道をつなぎ、最短距離で向かう。グーグルマップで何度も確認をしながら進むが、途中で選んだ道を間違えていたことが判明。10km近くロスしたが、どうにか大津市内のホテルに到着した。
14日目。今日は琵琶湖の西海岸沿いを走り、北部にある『奥琵琶湖パークウェイ』ステージ08を通って、福井県敦賀市あたりまで行けたらと思っている。ホテルを出てしばらくすると琵琶湖が見えてきた、湖を右手に見ながらeバイクを走らせる。琵琶湖大橋を過ぎると景色は広大になり、対岸の景色が霞んで見えないほど、琵琶湖の大きさを実感する。
琵琶湖の真ん中あたりの近江舞子で、友人がキャンプしている『ジェイホッパーズ琵琶湖』(公式サイト)へ立ち寄る。ここはビワイチの中継地、宿泊&キャンプ地として人気のゲストハウス。広い敷地にフットサルコートにキャンプサイト、BBQ場など設備も充実している。本当は泊まりたかったが、今回は距離的に合わなかった。駐車場に入るとキャンプをしていた海外ツーリング仲間の稲川さんと斎藤さん、この宿オーナーで友人の飯田さんが迎えてくれた。久しぶりに会うのでおしゃべりに花が咲いた。みんなオートバイ乗りだが、僕の旅を通じて少しだけeバイクに興味を持ったようだった。
湖上に鳥居が立つ延命長寿の神様『白髭神社』、風車が回るリゾート『STAGEX(ステージクス)高島』などに立ち寄りながら北上。今日は日曜日なのでどこもロードバイクがいっぱいだ。古い町並みが続く海津を過ぎ、眺めのいい道をしばらく走ると『奥琵琶湖パークウェイ』の入口が現れる。ここからは上り坂。桜並木が続いている、春には琵琶湖と合わせて素晴らしい桜の景色が見られるのだろう。
坂を上り切ったところに『つづら尾崎展望台』、駐車場にはオートバイがズラッと並んでいた。そういえば、あれほどたくさん走っていたロードバイクを『奥琵琶湖パークウェイ』に入ってからピタッと見なくなった。ビワイチのルートから外れているからだと思うが、素晴らしい道なのでぜひ走ってほしい。
駐車場からの絶景と爽快なダウンヒルを楽しむと国道8号で敦賀へ向かった。宿泊場所で頭を悩ませるのがeバイクの保管場所。敦賀のビジネスホテルはビルの2階が受付、1階に置けるスペースは見当たらない。盗難を考えると表通りに置きたくない、宿主に相談すると親身になってくれ、2階受付横のスペースに置けることになった。こういうときの対応は宿によって様々、臨機応変な対応がありがたい。宿主の心使いに感謝する。これで安心して眠れる。
15日目。日本海沿いを北上する。国道8号から、国道305号(別名:しおかぜライン)へ入って行く。気持ちのいい海岸線が続く。越前岬を超えた先でバナナジュース専門店と書かれた売店が目に入った。珍しいので寄ってみることにした。かわいい女の子の店員さんの『バナナボーイ』というお店だった。体力も使っているし、ビタミン豊富で栄養たっぷりバナナはぴったりと思い、ビックサイズを注文した。飲んでみるとこれが冷たくて濃厚で最高においしい。甘いバナナジュースが疲れも吹き飛ばしてくれた。同時に気持ちもリセット。さあ走るぞ!
次に、険しい断崖絶壁が続く名勝、『東尋坊』を訪ねる予定だったが、天気予報を見ると雨雲が急接近。今回はパスして先を急ぐ。ちなみに今日の宿泊は金沢市。実は10年前くらいから何度か訪ねている『ゲストハウスポンギー』(公式サイト)に泊まる予定。宿のオーナーまさきさんは同じ歳。初めて泊まった日から意気投合、まさきさんの気さくな性格もありすぐに仲良くなった。その後SNSでやり取りしていたが、昨年8月突然の心筋梗塞。心臓に大きなダメージを受けたが、今は負担にならない程度で宿に出ているという。僕も6年前に心筋梗塞をしているので他人事とは思えなかった。元気な顔を一刻も早く見たい、自然とペダルに力が入る。
金沢市内。路地を曲がると、古い町家を改装した宿、ポンギーが見えくる。懐かしい。まさきさんと、女将のにいなさんが外で出迎えてくれた。まさきさんは思っていたより元気そう、会えたことが嬉しくて言葉にならない、思い切りハグ。とにかく生きて再会できて、よかった。
部屋に入ると、eバイク旅のこと、ポンギーのこと、心筋梗塞のことなど堰を切ったように話した。せっかくだからまさきさんともっと話がしたい。原稿の仕事も溜まっているし、1日くらいは休養も必要と考え、急遽ポンギーで連泊することにした。翌日の午前中は原稿書き。昼はおいしい海の幸を一緒に食べ、車で金沢を観光。楽しい時間を過ごした。後半に向けてリフレッシュ、いい骨休めとなった。
■ここまで(16日間)の総走行距離:1859km
■今回の走行ルート