ヤマハ・CROSSCORE RCと共に巡った坂東の札所と名湯

ヤマハ・CROSSCORE RCと共に巡った坂東の札所と名湯
石段と車道が交差する場所から眼下を望む。背後には小野子三山が連なる

電動アシスト自転車の先がけメーカーが作る
最新のeクロスバイクが快適で頼もしい。

ユニットの助けを得て楽に高みに到達

電動アシスト自転車を世界に先駆けて開発したヤマハが、満を持してリリースしたCROSSCORE RCの実力を試すべく、群馬県渋川市に足を運んだ。ここ渋川には坂東三十三観音の第16番札所となる「水澤観世音」や、県を代表する温泉地「伊香保温泉」など、旅心を誘われるスポットがいくつもある。とはいえ水澤観世音も伊香保温泉も標高600mから700mの高みにあり、そこに向かう道のりはシンドイものとならざる得ない。そこで「CROSSCOREの力に頼ろう」との甘い考えで、渋川駅最寄りの駐車場からスタートを切った。
県道から右折した道はいきなり勾配を増し、時に10%を超える勾配も待ち構えるものの、鍛え上げた脚……ではなく同社が新たに開発したドライブユニットはものともしない。かつ、このユニットの偉いところは、その実力を自慢気に見せつけるのではなく、「ご主人様が無理をしないよう、少しだけサポートさせていただきました」との姿勢に徹しているところである。だからそれなりに息は上がるし、坂を上りきれば達成感も得られる。アシスト量が急に増すことに伴うトルクが抜けるような感覚に、他のeバイクに乗ったとき見舞われたことがあるのだが、そこは30年の歴史でノウハウを積み重ねてきたヤマハ。絶妙のさじ加減が施されており、実に自然にサポートしてくれる。さらにアシストモードをオートマチックアシストモード(速度・クランク回転数・ペダルを踏む力・道の勾配という4つのデータに基づき、適切なアシストパワーを提供)にしているから、必要な操作はギヤの切り替え程度。だから左右を見渡す余裕も生まれ、これは眺める楽しさを増すだけでなく安全にも直結。

駅近の駐車場に車を止め、標高600mオーバーの高みを目指して走り出す
市街からさほど離れていないのに、道の両側は木に覆われて山間の趣を醸し出す
水澤観世音に到着。石段を登った先が、仁王尊と風神・雷神を祭る仁王門だ
参拝をする前に、手水場に立ち寄って身を清める
境内の中心に建つ本堂は、本尊として十一面千手観世音菩薩を祭っている
6体の地蔵尊を祭る六角堂。手で押して回すことで真心の供養を願う

平坦路も坂道も自転車らしく走る

合流した県道を僅かに右に進むと、名物の水沢うどんの店が出迎えてくれる。休日にはどの店も行列必至ということで、好みの店を訪ねて予約を入れたら、待ち時間を利用して水澤観世音を参拝。石段を登った先の境内には、十一面千手観世音菩薩を祭る本堂や地蔵尊が回転する六角堂などがある。
頃合いを見計らって入った店でコシと透明感に満ちた麺を堪能した後は、さらに県道を上って伊香保温泉の石段街に到着。両側に旅館やホテル、土産物屋が立ち並ぶ石段は、いくらeバイクといえ登っていくことはできないが、幸いにして石段に平行する坂道があり、そこ(もちろん急坂)ではCROSSCORE RCが存分に実力を発揮してくれる。しかも途中にある枝道が石段と交差しており、そこでは石段を登った際のごほうびとなる景色を、eバイクでも味わうことができるのだ。
さて、せっかく温泉に来たからには「ひと風呂浴びたい!」と誰しもが思うもの。ここ伊香保温泉には2か所の共同浴場があり、そのうち「伊香保露天風呂」は源泉地にある伊香保を象徴する湯でありながら、石段の頂上からさらに500mほど進んだ先だからか、訪れる人の少ない穴場となっている。歩きなら億劫に感じられる場所でも、無理せずたどり着けるのがこのバイクだ。
ここでゆっくりお湯につかったら、後は駅近くの駐車場まで下る一方となるのだが、思った以上に速度が増しても太いタイヤとサスペンションフォークが真価を発揮。路面から伝わる振動が過不足なく吸収されることで視線は安定し、緊張とは無縁の爽快感に身を包まれてのゴールとなった。

水澤観世音の門前には、名物の水沢うどんの店が軒を連ねる。コシと透明感に満ちた麺は、どの店も引けを取らない
参拝を終えお腹がいっぱいになったところで、伊香保温泉を目指して再び坂を上っていく
1956年まで運行されていた東武伊香保軌道線の車両が、軌道終点付近の峠の公園に展示されている。高低差524mで平均勾配は41.8パーミルに達していた
伊香保露天風呂の手前には、日本一まずいと言われる温泉が飲める場所がある。まずいのは鉄分の多さゆえ。貧血気味の人(自分だ)にオススメとなる
伊香保露天風呂は源泉地に位置し、掛け流しの湯を堪能できる。かつて混浴だった浴槽を真ん中で仕切っており、その名残が感じられる。さほど熱くはないため、じっくりとつかってられる
石段の登り口にある「IKAHO」のロゴのモニュメントは、絶好のフォトスポット

YAMAHA CROSSCORE RC

ヤマハ・クロスコアRC

価格:31万7900円
問ヤマハ発動機 https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/ Tel:0120-090-819

WABASH RTと同じドライブユニットを搭載した、スポーツバイク入門者に最適なクロスバイクタイプのeバイク。サスペンションフォークや油圧ディスクブレーキも採用するため、街中に限らずさまざまな走行シーンをカバーする。カラーが3種用意されるのは、性別や年齢で乗り手を選ぶことのないこのモデルならでは。なお車載をする際には、必要に応じて前後輪を外すといい。そうすれば荷室への収まりがいいだけでなく、重量が分散して積み下ろしがしやすくなる。

SPEC
サイズ:S、M、L
カラー:ミスティグリーン、フレイムオレンジ、ピュアパールホワイト
フレーム:アルミニウム
フォーク:SRサンツアー・NEX-E25-C(63㎜ トラベル)
ドライブユニット:ヤマハ・PWseriesST
バッテリー:36V-13.1Ah
充電時間:約3.5時間
コンポーネント:シマノ・アルタス&アリビオ(9S)
ブレーキ:前後
油圧ディスクブレーキ
タイヤ:27.5×2

ハンドルバーには左から多機能メーター、バッテリー給電タイプのフロントライト、反射板、ベルを標準で装備している
バッテリー残量メーター、走行モード、スピードメーターは常時表示。機能表示を切り替えで、トリップメーター、オドメーター残りアシスト走行可能距離など多表示する。液晶画面はバックライト付きで、ハンドルを握ったまま操作が可能な大型ボタンを採用
新開発のドライブユニット「PWseriesST」は、同SE比100gの軽量化を果たしつつ、速度・クランク回転数・ペダルをこぐ力、道の勾配という4つのデータに基づき、最適なアシストパワーを提供する
初心者でも戸惑うことのないシンプルな操作を実現するため、フロントギヤはシングル。チェーンの脱落を防ぐガイドも付いている
SRサンツアー製のサスペンションフォークは、路面状況に応じて切替可能なロックアウト機構を備える。油圧ディスクブレーキは、制動力は十分ながら急に増す感覚があるため、ブレーキレバーは優しく扱いたい
ロックを解除してカバーを開ければ、バッテリーは簡単に取り外せる。eバイクの近くにコンセントがない場合は、外したバッテリーだけで充電ができる。ダウンチューブとシートチューブ(Sを除く)に台座があり、ボトルやツールケースを装着できる
もちろんバッテリーを装着したままでも、ダウンチューブ上部のコネクタを使って充電することができる。満充電までに要する時間は3時間30分ほどと早い。行程の途中で継ぎ足し充電をすることも現実的だ
スポーツバイクの多くが省くサイドスタンドが付属。デザインも優れているのでスタイルを壊さないものになっている。場所を選ばずどこでも駐車できるのがありがたい。街巡りにはなくてはならない装備といえる

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