eバイク旅ノート Vol.40 「旅ルポ★日本縦断3700キロ 02」熊本県阿蘇市→広島県尾道市

旅行家藤原かんいちが30日間で果たしたeバイクによる佐多岬→宗谷岬、日本縦断3700キロチャレンジ旅。今回は第2回目のリアルレポートです。

黄色いポストとバナナのオブジェ
門司港の郵便局で偶然見つけた、黄色いポストとバナナのオブジェ。門司が「バナナの叩き売り」の発祥の地であることから設置された

5月16日、雨の佐多岬をスタート、3日間で阿蘇までやってきた。3日間で約400kmも走ったのは初めて、それも20kg以上の荷物を積んで走っているのに、疲れはあまり感じていなかった。もちろん電動アシストの力があってこそだと思うが、2年前から準備していた旅が、ついに実現したという喜びが大きいような気がする。人間は楽しかったり嬉しかったりすると、肉体の疲れも感じにくくなるのかもしれない。どちらにしても、滑り出しは順調だった。

4日目。国道212号で阿蘇有数の観光スポット『大観峰』を目指す。阿蘇北外輪山の最高峰で、カルデラ内の北阿蘇と阿蘇五岳、九重連山などを望む、絶景展望台として知られている。カーブが連続する坂道をHIGHモードでグングン上って行く。さらにミルクロードを15分ほど走ると大観峰の駐車場に到着した。

歩いて展望台へ向かう。遊歩道を上りつめた場所が広場のようになっていて『大観峰』と書かれた石碑が立っている。さらに展望台の先端まで行くと、眼下に広がるパッチワークのような水田、その向こうに横たわる阿蘇山が目に飛び込んでくる。目の前に広がる壮大な景色にただただ圧倒される。

大観峰を満喫するとステージ04『やまなみハイウェイ』へ向かった。大分県由布市と熊本県阿蘇市を結ぶ山岳ドライブコースで、車はもちろんオートバイ、サイクリストにも大人気のルートとなっている。草原の道を気持ちよく走る。しばらく進むと路肩に『焼とうもろこし』の文字があった。お腹もすいていたので、休憩タイムにする。広い景色を眺めながら甘いとうもろこしを頬張る。う~ん、幸せだ♪

大観峰
ペダルをこいで上り、たどり着いた大観峰。パッチワークのような水田、その向こうに見える山が阿蘇五岳。圧巻の大絶景を目に焼き付ける
上り坂
汗をかいて進んで行く気持ち良さと、寄り道の楽しさを教えてくれたeバイク。この上り坂の先に絶景が待っていると思い、ペダルをこいだ。

瀬本からは本格的な峠道が始まる。eバイクとは言え、長い上り坂が続くと息が上がる。ひたすらペダルをこぎ続け、ようやく牧ノ戸峠(標高1330m)に到着した。何かないかと思い峠の売店を覗くと、名物ソフトクリームを発見。少し前に焼きとうもろこしを食べたばかりだけど…… ご褒美ということで購入。疲れた時に食べる甘いものは別腹。食べ過ぎのような気もするが、体力を使っているのでヨシとしておく。半日かけて『やまなみハイウェイ』の絶景を満喫、この日は130km走り、大分県中津市のネットカフェに入った。

翌日。7時過ぎにスタート。しばらく国道10号を北上、小倉から県道に入り門司を目指した。数年前に来た時は復原工事中で見ることができなかった門司港駅だが、長い工事期間を経て、創建当時の美しい姿を取り戻していた。何度見ても美しい駅舎、国の重要文化財に指定されていることも頷ける。記念に駅舎とeバイクを写真に収めた。

九州と本州を隔てる関門海峡を越えるため『関門トンネル人道』へ向かった。入口から大型エレベーターへ、eバイクと一緒に乗り込む。地下60mまで下りると、ドアが開き、細く長いトンネルが現れる。ここは歩行者と自転車、原付バイクしか通行できない、日本でもかなり珍しい人道トンネル。僕が初めてここを通ったのは40年前。いまでは完全に観光スポットになっていて、たくさんの観光客が訪問、県境はフォトスポットになっていた。

門司港駅
数年ぶりに訪れた『門司港駅』は長い復原工事を経て、美しくお色直しされていた。歴史ある佇まいと最新のeバイクとのコントラストが面白い
関門トンネル人道
関門トンネル人道を歩いて県境を越え、山口県に突入。九州の旅は終わり、ここから本州の旅が始まる。ゴールの宗谷岬までまだまだ先は長い

eバイクを押して県境を越えて山口県に入る。エレベーターで地上に出ると、国道2号を東へ向かう。夜8時過ぎ、新山口駅前にある東横インにチェックイン。夕食は本場の九州で食べ損ねた長崎ちゃんぽんを食べた。

6日目。昨日に続いて国道2号。目的地は広島。途中に絶景ロードはないし、見どころも岩国市の錦帯橋まで特にないので、トリップメーターの数字が増えることだけを励みにペダルをこいだ。道の駅ソレーネ周南で小休憩。今日は土曜日なので人が多い。売店で見つけたサクランボを購入、乾いた喉を潤した。

さらに進むと国道沿いにゲームや自動販売機が並ぶレトロな店を見つけた。トラック・カー用品と書かれているので、トラック野郎ご用達の店なのだろう。まるでおもちゃ箱をひっくり返したようにカラフルで、見ているだけで楽しい気分になる。そういえば昔は国道沿いに個性豊かな店がたくさんあったなぁ。幼い僕にはその全てが未知なる世界、好奇心の対象だったが、いまは大手のチェーン店がほとんど。小さな冒険の機会も激減してしまった。

さくらんぼ
『道の駅ソレーネ周南』の産直新鮮野菜コーナーで安くておいしそうなサクランボを見つけた。外のベンチに腰掛け、フルーツでビタミン補給
レトロな看板が飾られている店
国道2号を走っていると、壁中にレトロな看板が飾られていた店を見つけた。いまは営業をやめてしまったようだが、何の店だったのだろう?

広島では友人の蒲生くんと4年振りに再会した。以前は関東にいたが、その後広島移住、結婚、子供が生まれ、さらに新しい事業も始めた。激動の2年を話してくれた。夕食は広島名物、お好み焼きをご馳走してもらう。鉄板の上で生地、キャベツ、そば、豚バラ、玉子などをヘラで器用に焼き、重ねていく。その技術はまさに職人ワザ。もちろん味も文句なしだった。

翌朝一番で広島の原爆ドームを訪問。いままで戦争はどこか遠い昔話のように思っていたが、ロシアのウクライナ侵攻から、いつ起きてもおかしくない、現実的なことだと感じるようになった。原爆ドームの前に立つと、世界平和への思いはますます強くなった。

7日目。数日前から始まった尻の痛みが日に日に悪化している。これほどの長旅は初めて、どこか痛くなると思っていたが、それが尻とは想像もしていなかった。SNSのコメントにクッション入りのサドルカバーがオススメとあったので、ホームセンターで探してみる。幸運にも最後の1個が残っていたので慌てて掴み取りレジに並んだ。駐車場でサドルに取り付け。GEL入りなのでクッション性は高そうだ。これで少しは痛みも和らぐかな?

夕方、ステージ05『しまなみ海道』の入口、尾道に着くと、懐かしい友人が出迎えてくれた。ともさん夫婦とゆうさん、3人と会ったのは13年前の九州。そんなに長い時が経っているのが信じられないくらい、すぐに昔の時間に戻った。3人は61歳の自転車旅に驚いているが、ともさんは農業と宿、ゆうさんはアフリカ雑貨店にチャレンジ中。話を聞いていると毎日が楽しく、充実していることが伝わってくる。居酒屋で夕食を一緒に食べながら、懐かしい話をしたり、友人の近況を聞いたり、楽しく笑い合った。

広島では2夜連続で友人とリラックスした時間を持つことができた。旅を始める前はこんな風に友人が応援に駆けつけてくれるとは思っていなかった。本当に嬉しかったし、日本縦断を応援してもらえていることに幸せを感じた。たくさんパワーをもらった、よし、明日からまた頑張るぞー♪

蒲生さん夫婦
蒲生夫婦に広島の有名店のお好み焼きをご馳走になった。鉄板から直接食べるのでアツアツ、ボリュームも満点でお腹いっぱいになった
原爆ドーム
核兵器で被爆した原爆ドーム。核兵器の惨禍を伝える建物であると同時に、核兵器廃絶と世界平和を求めるシンボルにもなっている
国道2号
国道2号は時々視界が開け、美しい島々が浮かぶ瀬戸内海を見ることができる。交通量が多いので後続車に気を使うが、距離を稼ぐには一桁国道がベスト
藤原さんと友人たち
尾道では懐かしい友との再会が待っていた。13年振りの再会がウソのよう、つい先日も会っていた友達のように、おしゃべりをした

■ここまで(7日間)の総走行距離:872.4km

■今回の走行ルート

コラムカテゴリの最新記事