eバイク旅ノート Vol.26 霞ヶ浦一周、ラスト待っていた絶景

予想外に楽しめた諏訪湖一周。次はもっと大きな湖を一周してみたいと思い、関東地方で最も大きな湖、霞ヶ浦へ行くことにした。ちなみに霞ヶ浦は茨城県南東部にある湖で、日本で2番目の大きさを誇っている。1番はもちろん滋賀県の琵琶湖。

サイクリストの間では霞ケ浦を一周することを「かすいち」と呼び、人気ルートのひとつになっている。僕自身、オートバイで霞ヶ浦に何度か来たことがあるが、一周したことは一度もない。調べて見ると外周はおよそ130km。これまで何度か走ったことのある距離、湖畔はほとんど平坦なはずだから、eバイクで僕の体力なら行けるだろう。期待に胸を膨らませ霞ヶ浦に向かった。

深夜の常磐道、桜土浦インターで降り、土浦の中心に近い湖畔にある霞ヶ浦総合公園で車を停めた。車から相棒ヤマハ・YPJ-TCを降ろし、軽くウォーミングアップ。ルートは湖側を走れる反時計回りにする。冷え込むのでジャージの上に防風防水性の高いレインウエアを着込む。下はストレッチ性の高いパンツ一枚のみ。下半身は脚がスムーズに動けるよう、いつも薄着にしている。5時半。少し空が明るくなってきたところで、さあ出発だ。

今日は風もなく湖面も静かで波ひとつたっていない、見上げれば空は小さい雲がポツポツあるだけ。最高のサイクリング日和だ。道の路面にはサイクリングロードを記すブルーのペイントが施されている、湖一周なので道に迷うことはないが、このペイントがあるないとでは安心感が全然違う。左手に霞ヶ浦、右手に田畑の景色が続く。時々ボートが停泊している小さな港があるが、漁をする船の姿は見えない。

湖畔に沿って延びる道は車道だが、ほとんど車が通らないのでまるで自転車専用道路のようだ。信号もないのでマイペースで走れる。周りの景色で良く目につくのがレンコン畑、茨城県がレンコンの産地であることは知っていたが、こんなにたくさんあるとは思わなかった。ここも、あっちも、こっちもレンコン畑。これもまた霞ヶ浦の景色のひとつになっている。

霞ヶ浦総合公園
土浦駅から5分のところにある霞ヶ浦総合公園をスタート地にした。オランダ風車が印象的。次の旅では筑波山に上ってみたい
美浦村の田園風景
広大な田園風景が広がる美浦村。霞ヶ浦一周の旅では湖だけでなく、様々な景色と出会えるのが魅力。あっという間に虜になった
霞ヶ浦の湖畔の道
湖畔の道は交通量はとても少ないので、車を気にすることなく走ることができる。一周130km、まさに自転車天国。こんな道は他にない

さらに進んで行くと壮大な田園風景が広がった、湖から続く広い空、開放的な景色がどこまでも続く。少し湖を離れると高い煙突と廃墟のような建物が見えてきた。柵で囲われ敷地には入れないようになっている。何の施設だろう? ペダルから足を降ろし、スマホで調べてみると“鹿島海軍航空隊基地跡”であることがわかった。どうやら旧日本軍の施設跡らしい。なるほど霞ヶ浦はそんな歴史も抱えていたのか…… そう考えると景色も違う色に見えた。

和田岬を抜け、しばらく走ると右手に駐車場と公衆トイレが現れた。左側には湿地帯が広がっている。ここは妙岐ノ鼻・浮島湿原、たくさんの野鳥類が訪れることで知られている。観察小屋の近くには妙岐ノ鼻で見られる野鳥観察のカレンダーがあり、訪れる鳥たちが写真入りで紹介されていた。いまの時期も生息しているようなので、キョロキョロと探してみたが、残念ながら裸眼で確認することはできなかった。

稲敷大橋と北利根橋を渡り潮来市へ。さらに風の塔がある天王崎公園までやってきた。時刻はすでに11時。かなり走ったなと思い地図を確認したが、まだ半分も走っていなかった。霞ヶ浦一周、こりゃ思ったよりも大変かも。ここまでブラブラ寄り道ばかりしていたので気を引き締める、ここからはペースアップ。ランチ予定地「道の駅たまつくり」を目指してひたすらペダリングだ。

12時半、霞ヶ浦大橋の袂にある道の駅に到着した。ここでほぼ半周なので、少しホッとする。今日は土曜日。駐車場は車がいっぱい、オートバイと自転車も結構たくさん停まっている。売店に入ると農業が盛んな土地、棚に旬の野菜が並んでいる。レジでは買い物カゴに野菜をどっさり詰め込んだお客さんが長蛇の列を作っていた。

店内の奥にあるイートインコーナーへ行くと、メニューに霞ヶ浦で獲れたナマズを使ったバーガー「なめパックン」があった。他に「豚パックン」「鴨パックン」などもあるが、ここは絶対ナマズだろう。イートインも大混雑で出来上がるまで30分近くかかった。ハラペコ状態で食べた「なめパックン」はつくねのような食感で癖もなく、食べやすかった。僕的にはもっと癖が強くてもいいかなと思ったが、おいしかったので大満足。改めて売店を見ると妻が好きなイチジクが並んでいたのでお土産に買い、バッグに詰め込んだ。

小袖ヶ浜
南部にある「小袖ヶ浜」は霞ヶ浦では貴重な砂浜。その景色はまるで海のよう。他にも湿原があったり、公園があったり変化に富んでいる
鹿島海軍航空隊基地跡
自然の景色からガラッと雰囲気が変わるのが、鹿島海軍航空隊基地跡。旧日本軍の施設跡が霞ヶ浦にあることを知らなかったので驚いた
道の駅たまつくり
霞ヶ浦一周のルート上にある、唯一の道の駅「たまつくり」は貴重な存在。大きくはないが地の野菜が充実、テラスからの眺めも素晴らしい
なめパックン
これがなまずを使ったハンバーガー「なめパックン」。なまずと聞くと一瞬どうかな? と思うがおいしいので、是非食べてみて欲しい

霞ヶ浦一周にはショートカットのコースもあり、その場合は霞ヶ浦大橋を渡って土浦に向かうことになる。僕はもちろん完全走破を目指しているので橋は渡らず、湖畔を辿って高浜方面へ向かった。車が通らない、気持ちのいい湖畔の道が続く。北部の折り返し地点、恋瀬川にかかる愛郷橋を越えると霞ヶ浦一周も終盤戦。15時を過ぎると、日は陰り影も長くなってくる。先のことを考えるとあまりのんびりはしていられない。自然とペダルに力が入る。前方に見える霞ヶ浦大橋を目指して、ひたすらeバイクを走らせる。

100kmを超えたあたりから、ももと膝が痛み始めてきた。峠越えの時とはまた違う、脚の痛み。痛みをだましだまししながらペダリング。ひと休みしたいなと思っていた所で、歩崎公園の「かすみがうら市交流センター」に着いたので、休憩にする。ここの1階はレンタサイクル所になっていて、サイクリングを楽しんだ人が次々帰ってくる。みんな充実したいい顔をしている。1階にあるカフェ「かすみマルシェ」でホットコーヒーでも飲むかと思いながらカウンターへ行ったところで、すぐに横のジェラートに目移り。急遽スイートポテトのジェラートに変更する。食べてみると、柔らかい甘みが何とも優しい。疲れた体に染み込むようだ。変更して大正解だった。

16時半。空は青からオレンジへ。日没まで秒読みになった。沈む夕日を眺めていると、湖のはるか先に山影を見つけた。形からして富士山みたいだけど、まさか霞ヶ浦から見えるわけはないよな。でもどこからどう見ても富士山。調べて見るとやっぱりそうだった。霞ヶ浦と富士山のコラボレーション。それは霞ヶ浦一周の旅がくれた、最高の贈り物だった。

ついに日没。ライトの明かりを頼りに進んで行く。土浦の町明かりが遠くに見える。全身ヘトヘト、膝も痛むが、残った気力をふり絞ってペダルをこぐ。ここまでくるともう、自転車もeバイクも関係ない。自分との闘いだ。市街に入ると車も外灯も増え、一気に明るくなった。ここまで来たらゴールまであとわずか。そしてついに、総合公園のランドマーク、オランダ風車が見えてきた。やった、ゴールだ。ついに走り切ったぞ。満足感に包まれる。マルチメーターを見ると走行距離は134.5km。バッテリーの残量は8%だった。

霞ヶ浦の矢羽根
路面のブルーのペイントを辿って一周した。これがあるかないかで全然違う。これが日本中にできたら、サイクリングへの認識が変わるだろう
かすみがうら市交流センター
湖畔にある「かすみがうら市交流センター」はおすすめの休憩スポット。霞ヶ浦一周の情報収集に最適な場所で、レンタサイクルもある
霞ヶ浦からの富士山
遠くに富士山が見えたときは一瞬自分の目を疑った。まさか霞ヶ浦から富士山が望めるとは…… 今回の旅がくれた最高の贈り物だった

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