eバイク旅ノート Vol.19 ぐるり富士山一周120km・前編

「日本一周」や「世界一周」など「○○一周」という言葉は不思議な魔力を持っている。ネットでググるといろんな「○○一周」がヒットする。その中に「富士山一周」なるワードを見つけた。富士山と言えば登山のイメージ、これは意外だった。さらに検索すると「富士山一周サイクリング」まで出てきた。富士山を中心に国道や県道を繋いで裾野をグルっと一周する、全長約120kmのルートがあり、サイクリストに人気があるらしい。僕の日本一周は来年になったけど、富士山一周ならできるかも。360度いろんな角度から富士山を眺める旅、なんだかおもしろそうだ。軽いノリで僕の富士山一周は始まった。

今日の天気予報は「曇り時々晴れ」、雨の心配はなさそうだ。車に相棒のヤマハYPJ-TC(ヤマハのサイト)を積み込み。「道の駅すばしり」へ向かった。ここは富士山に最も近い道の駅で、無料で入れる「足の湯」が人気なのだが、到着したのは朝7時。残念ながら足湯にお湯は入っていなかった。ついでに、ドカーンと見えるはずの富士山も低い雲に隠れて全く見えない。肝心要の富士山が見えないとどうもテンションが上がらない。それでも、丸一日走っていれば一度くらい見えるだろう。気持ちを切り替えてeバイクに跨った。ルートは須走を起点にして時計回りで走る予定。

道の駅すばしり
朝7時半に「道の駅すばしり」を出発する。この日の天気予報は悪くなかったが、この時点では低い雲に覆われ富士山は見えなかった

国道138号は自動車道路のため、並行する県道を使って御殿場方面へ下って行った。途中で右折して国道469号へ入って行く。富士宮まではこの国道469号をたどって行くことになる。しばらくはどこにでもありそうな、のどかな住宅地が続く。違うのは富士山の裾野らしくゴルフ場の案内看板が多いこと。いつものように焦らずマイペースで進んで行く。30分ほど走ると民家が少なくなり、視界が開け、広い草原が広がった。

この周辺は自衛隊東富士演習場となっているため、アーミーカラーの自衛隊車が列になって走り抜けて行く。草原の間からは戦車のような車両が並んでいるのが見えた。大きくて包容力のある大自然の富士山とは対照的な光景だ。再び住宅地になり、さらに進むと今度は木々に囲まれた森になった。短い距離で景色がどんどん変わっていく。上り坂が続く。“富士サファリパーク”の入口看板を見つけると「へぇ~ここにあるんだ~」と独り言をつぶやいた。

国道469号の標識
今回走った国道469号は景色の変化が富んでいるのでサイクリングに最適。コンビニのない区間が長いので携帯食を持っていると安心

富士山の南部を東西に延びる国道469号は、国道にしては交通量が少ないのでマイペースで走れるのが嬉しい。サイクリングには最適な道かもしれない。残念なのは富士山が見えないことくらい。富士宮市に入ると県道72号に乗り換え「白糸の滝」へと向かった。訪れるのは数年ぶりだろう? とにかく久しぶりなのは確かだ。着くと専用の広い駐車場があり、新しい観光案内所、休憩スペースなどきれいに整備されていた。

「随分変わったなぁ」と思いながら滝へ向かっていると、昔ながらのお土産屋が現れた。昔は有名観光地と言えば、こんな風に通りに沿ってお土産屋がずらっと並んでいたな。しかし近年は減少の一途を辿っている、そういえば僕もここ何年お土産を買ったことがないなぁ。坂道を下ると「白糸の滝」が見えてきた。湾曲した岩壁の間から白い糸のように流れる滝の美しさは昔と変わっていなかった。何度見てもいい滝だ。滝つぼの近くまで行きマイナスイオンを全身にたっぷりチャージした。

白糸の滝
「白糸の滝」は富士山周辺にある観光名所のひとつ。自転車の駐車場料金は無料。近くにある豪快に流れ落ちる「音止の滝」も見ておきたい

eバイクに跨り再び走り始めると、住宅地の電柱に“お好み焼きやきそば 天神橋”の文字。富士宮と言えば焼きそばが有名。せっかくなので本場のやきそばを食べておきたいと思い、路地へ入って行った。民家が点在する田舎町、こんなところにお店があるのかな? もしかして道を間違えた? と思ったところで、お店が現れた。外壁に大きく「富士宮やきそば」と書かれているので間違いない。

地元に人気の店なのか、11時半だというのにすでに駐車場に車が数台停まっていた。店内を覗くと3人の女性が忙しそうに動き回っていた。持ち帰りできるというので「ミックス焼きそば」をひとつ注文する。外で待つこと10分。「おまちどうさま~」おばさんが温かい焼きそばも持ってきてくれた。いいにおい。崩れないようにサイドバックの中にそっと収める。いい場所を見つけたら、そこで食べよう。

お好み焼きやきそば 天神橋
天神橋のやきそばはおすすめ! 後で調べてみると2021年8月上旬にテレビ番組で紹介されていたことがわかった。やきそばミックス650円

県道71号を北上していると、雲の間からようやく富士山が顔を出した。今回初めて見る富士山だ。すぐにまた隠れそうなので、慌ててスマホを取り出し、写真に収めた。ここにきてようやく富士山を一周している実感が湧いてきた(笑)。少し行くと道沿いに「富士ミルクランド(公式サイト)」という施設があった。よしここでお昼休みにしよう。

富士ミルクランドはレストランや宿泊施設、動物とのふれあいが楽しめる広場、農産品や乳製品を販売する店などがある総合観光施設。なんとeバイク(ヤマハのYPJ-TCもある)のレンタサイクルまであるらしい。広い無料駐車場があり、緑の芝生もある。売店の前では観光客がおいしそうにソフトクリームやジェラートを食べている。休憩用のテーブルを見つけると、自転車を止め、焼きそばを広げた。弾力がある麺、甘いソース、削り節。これぞ富士宮やきそばという感じだ。走った後の食事は最高。さらに濃厚なジェラートも堪能。富士山を眺めながら、幸せなランチタイムを過ごした。

富士山
富士山を半周近くしたところで、ようやく富士山を眺めることができた。「もしかして一度も見られないかも……」と思っていたので嬉しかった
富士宮やきそば
富士宮やきそばは、肉カス(油かす)と魚粉(削り粉)が特徴。この後ミルクランドで売っているジェラートも食べたが濃厚でおいしかった
富士ミルクランド
ミルクランドにはeバイクのレンタサイクルがあるので、ここまで車で来て、富士山周辺をeバイクで楽しむということもできる

今日の走行距離は120km程度、アシストのモードはあまり気にせず、強力なアシストが得られるHIGHモードでグングン進んで行く。朝霧高原を抜けると深い森が見えてくる。富士山の北西部に広がる広大な原生林「青木ヶ原樹海」だ。高台から見ると密生した木々が海のように見えることから樹海と名が付けられたという。「樹海に一度入ると出られなくなる」とか「磁石が使えなくなる」など俗説を持つ青木ヶ原樹海。旅は後半戦へと続いてゆく。

青木ヶ原樹海
青木ヶ原樹海の大地と倒木はコケで覆われ、原生林の下はゴツゴツとした溶岩が広がっている。自然が造り上げた景色はとても神秘的
eバイク旅ノート19
1日120kmならばバッテリー1本で十分に走り切れると思っていたので、アシストモードの選択などあまり気にせず走っていたところ……

今回のルートマップ

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