サイクリングコースのオジさん率はなぜ高い?
筆者の家からも近い河川敷のサイクリングコースで平日、休日問わずよく見かけるのが60歳以上と思われるオジさん達が自転車で走っている姿。
本格的なロードバイクに乗っている人もいれば、街乗りでも使っているであろうごく普通のクロスバイクの人もいる。まあ、とにかく「自転車で走っているオジさん」が多いのだ。
と言う筆者も立派なオジさんである。そして少し前まで自転車の趣味はなく、歳を取るに任せた?身体の衰え具合に甘んじていた。
しかし、歳は取っても考え方や意識はある程度の年代から変わるものではないので、自分の身体がオジさんになっていくことに違和感や不快感があったりした。
そして数年前のこと、そんな感情が後押しすることで、運動が好きではないし得意でもないオジさんが一念発起してeバイクに乗るという事態にまでなったのだった(笑)
サイクリングコースを自転車で走るオジさん達もおそらく似たような考えを持っていて、自分の身体に対する「こうであって欲しい」という希望から「離れすぎない」ようにするため努力をしているのだろう。体脂肪率をヒト桁にしたいわけではない。許せる範囲の体型を維持したい、体力もほどほどにあって欲しいと思うだけなのだ。
そんなことをがんばるオジさんは同志であるし、がんばっているのなら応援もしたくなってくるものである。
そこで勧めたいのがeバイクに乗ることだ。eバイクは自転車に乗る際の身体への負荷を軽減してくれるので「きつすぎない」運動が可能となる。そしてそれは仕事や家庭の事情で、日頃トレーニングをすることができない人にとって、運動を続けるのに重要なポイントになる。そう、運動を始めた直後は意気込みもあるのでつらくても頑張れるが、時間がたつと勢いは衰えがち。でも、そんなときでもアシストのあるeバイクは「適度に負荷を減らしてくれる」ので続けやすいのだ。
それに身体への負荷が少なければ自転車で行ける範囲が広がるので、eバイクで走りに行くこと自体が楽しくなってくる。
すると「身体のために乗る」というストイックな気持ちではなくて、素直に「楽しいから乗る」へと変わってくるので、なんだかんで続けられる……これは筆者が実際に通ってきた道である。
スペシャライズドVADO SL5.0 EQでeサイクリング趣味を開始
筆者が乗るのはスペシャライズドのeバイク「VADO SL 5.0 EQ(ヴァド エスエル5.0イーキュー/以下VADO)だ。
VADOシリーズは毎日の通勤からエクササイズラン、そしてサイクリングなど自転車でやりたいことをすべてこなせる万能モデルであり、それでいて数あるeバイクのなかでも特筆できるスタイリッシュなデザインを持っている。さらにVADO SLの「SL」とは「SuperLight」のことでつまり軽量に作られたeバイクである。
モーターのアシストがあるeバイクではペダルバイクほど車重は気にならないものだが、それでも軽いのは走りの面でメリットが多い。また、車体が軽ければ街中を押して歩くときや、段差を越えるために持ち上げるようなときも楽。それに筆者はVADOを室内保管しているので、家のなかに持ち込む際にも軽さはありがたい。軽いことはこのeバイクの大きな特長である。
そしてもうひとつ、EQのモデルは前後フェンダーとリヤキャリヤを装備しているので、よりふだん使いがしやすいという特長がある。
しかもEQが装備するフェンダーはスペシャライズドが自社で所有する風洞実験装置にて、走行時に水がどのように跳ね上げられるかを研究することで水濡れや汚れを最小限に防ぐという機能を持ったもの。加えて素材についても軽量であることを追求したという他に類を見ないこだわりが詰まったフェンダーなのだ。
走り慣れたコースでVADOをチェック
今後はVADOであちこち走りに行く予定だが、今回はVADOのことを知るため慣れたコースを走ってみることにした。
コースは東京都と神奈川県の境を流れる多摩川沿いのサイクリングも許可されている遊歩道。区間は東京都の狛江市付近から上流へ向かうというものだけど、気楽なサイクリングがしたかったので「どこまで行く」とは決めずに「どこかまで」である。
VADOはいわゆるクロスバイクタイプのeバイクなので、ハンドルはフラットバーを装備。ギヤまわりのコンポーネントはスラム・GXイーグルが使われていて、シフターはフラットバー用。個人的には親指のみで操作するこのシフターはドロップハンドル用のブレーキレバーと一体になったシフターより使いやすくて好みである。
ポジションは軽めの前傾。前を見るため首を意識的に上げる必要もないので街乗りでは視界が確保しやすく安全性も高い。
また、適度な前傾はペダルを漕ぐ足に体重を載せやすいし、体重をハンドルを握る手、体幹、ペダルを漕ぐ足、そしてサドルの上のオシリに分散できるからスポーティな自転車に乗った際に起こりがちな「オシリが痛い」の状態になりにくいイメージだ。
多摩川沿いのコースはすべて舗装路だが、場所によっては舗装の表面が荒れていて細かい振動が連続するようなところもある。
走りにくいと言うほどではないがガタガタとくるのは不快であるし、振動に耐えるために身体に余計な力も入るので、長い距離を走るときはそれが疲れにもなってくるだろう。
しかし、VADOシリーズでもSL 5.0/SL5.0 EQにはそんな路面に対応する装備が付いている。それがロードバイク用に開発された「フューチャーショック1.5」という縦方向の衝撃を吸収する機構だ。
「フューチャーショック1.5」はステムの内にスプリングが組み込まれていて、スプリングのレートによってハンドルが車体からフローティングされた状態になっているもの。
そしてストローク量は約20mmとなっているが、このストローク量では大きな衝撃をいなすほどの効果はない。
でも、舗装が荒れているところを通過するときに感じていた細かい衝撃はかなり吸収してくれるので、以前乗っていたショック機構なしのeバイクと比べて路面の荒れを感じにくい。
また、ハンドルから下(フレーム、ホイール、タイヤ)が路面の凹凸に追従しているのか、フロントが跳ねるような挙動も減った感覚だったで走行安定性がいいと言う印象を受けた。
なお、VADO SL 5.0/5.0EQはフロントフォークがカーボン製なのでその特性もこの乗り味に貢献していると思う。
さて、かんじんのアシストについてだけど、VADOのSL1.1モーターは最大出力240Wでトルクが35Nm。この数値はスポーツタイプのeバイクとしては控えめな数値だが、スペシャライズドのそもそもの考え方がモーターの力でグイグイ走るのではなく、自然な感じでライダーのペダリングをアシストすることを狙ったもの。ゆえにSLモーターは毎分75回転以上のケイデンスでペダリングしたときに最大限の効率が得られる設定が基本系である。
VADOのような街乗りからサイクリングまでが守備範囲なeバイクであればそれほど強いアシストはいらないし、スペシャライズドを選ぶような人はeバイクであっても「自転車としての乗りごたえ」も欲しいと思うので、SL1.1モーターのこの設定はスペシャライズドらしいものと言えるだろう。
実際に乗ってみるとしっかりとしたアシストを感じたし、アシストのトルクが少ないぶん、自然とペダルバイクと同様のシフト操作で状況に対応する乗り方になっていた。以前乗っていたeバイクはトルクが50Nmほどあったので、ついついシフトをさぼった乗り方をしていたが、VADOは「スポーツバイクはシフト操作して乗るのが面白い」と改めて感じさせるものだった。
使い勝手のよさと走りのよさが両立している、これはいいバイク
試し乗りの予定だったが、なかなかに快適に漕げてしまったので気がつくと往復で約70kmほど走ってしまった。
もちろん途中に休憩を挟みながらだったし、それなりに疲れたが、きつくてたまらないという感覚もなく、オシリの痛みも後半に少し出たくらい。その理由がフューチャーショックのおかげなのか、軽さなのか、車体のジオメトリーなのか、それともSLモーターの特性なのかという部分はまだ判断ができないが、これだけ走れてしまう性能は冒頭に書いたオジさんの要望を実現するのに十分すぎるものであるとは言いきれる。
今後はこのVADOであちこち走りに出かける予定だけど、自転車記事にありがちな「乗れる人目線」での内容ではなくて、身体作りを適度にがんばりたいオジさんが考えて、見て、感じてきたことを紹介していくので、同じような考えの人、自分の身体をどうしようと思っている人、身体によくて自分のペースで楽しめる趣味が欲しいと思っている人はぜひ、これからも読んでいただきたい。