eバイクで日本一周するぞ~! とやる気は満々なのだが、実際のところ僕はeバイク初心者。eバイクが実際どういうもので、どんなタイプがあって、旅に向いている車種はあるのかなど、正直なところ知らないことも多い。
それよりなにより、eバイクを一度体験しなければ話にならない。そこでまずは試乗と思い、電動アシスト自転車専門店代官山モトベロ(公式サイト)を訪ねた。
2020年9月某日。僕は不釣り合いなオシャレな街、代官山にいた。T-SITE GARDENにある代官山モトベロは、試乗できる電動アシスト自転車が30台以上もある、日本屈指のスペシャルショップ。試乗の相談をすると知識豊富なスーパーバイザー村上さんが、アドバイスしてくれることになりました。
電動アシストが効くのはこぎ出しから時速24kmの間だけ。それ以上の速度になるとアシストはなくなり、普通の自転車と同じ状態になる。これは全車種共通。常にどんな状態や速度でも楽々ペダルがこげると思っている人が多いので、ここは重要。僕も大昔はそうだったし(笑)。また走りながらアシスト力(モード)の切り替えができることや、アシストとギアチェンジをうまく組み合わせると楽に走れることなど、基本的な扱い方法を丁寧にレクチャーしてくれた。
1台目は台湾のメーカーBESV(ベスビー)のJF1となった。車重は16.1kgとeバイクとしては軽量の方。アシスト力はエコ/スマート/パワーの3段階。バッテリーが内蔵されているので、一見eバイクには見えない。洗練されたデザインが特徴。乗り慣れているMTBやシティ車と同じフラットバータイプなので、僕が初めて乗るeバイクとしてはベストかもしれない。
JF1にまたがり、モトベロを出発。市街地を走りながらモードを切り替えると、アシスト力の差を実感する。弱いエコモードだとほとんどわからないが、強いパワーモードにするとグングン押されるように進んで行く。特に上り坂になるとその威力がよくわかる。
人力で走っているのに、そこに電力のアシストが加わると、不思議とペダルを踏むのが楽しくなる。何と言ったらいいのか……自転車がまるで別の意識を持ったロボットのように感じるのだ。人間とテクノロジーのバランスがとてもいい。この感じはモーターサイクルにはないし、また自転車とも違う、まさに新感覚。これがeバイク。これは面白い!
23年前に乗ったホンダのラクーンに比べると、アシストのかかり方が自然なのでとてもこぎやすい。さらにカタログデータではあるが、航続距離は110kmとラクーンの4倍以上。もう完全に別次元の乗り物になっている。
またサイクルコンピュータが標準装備されているので、モーターサイクルのように走りながら走行速度や走行距離の確認ができる。さらに平均速度、最高速度、消費カロリーなども簡単にチェックできるようになっている。いろんな意味で23年のテクノロジーの進歩を実感した。
次に登場したのが日本の老舗自転車メーカー、ミヤタサイクルのクルーズ。JF1とスタイルが近いこともあり、数km走ってみたが大きな差を感じることはできなかった。
次の試乗が今回一番楽しみにしていたBESVのJR1。こちらはドロップハンドル、2×11段変速、700×25cタイヤを履いたロードモデル。ネットで調べてみるとeバイクは町中を走る「クロスバイク」と野山を駆け回る本格的な「MTB」の2種類が中心。舗装路をスピーディに走る「ロードバイク」やオンとオフを走る「グラベルロード」モデルは数えるほどしかない。
僕にとって旅する自転車と言えばドロップハンドル。10代のときに乗っていたランドナー車の影響なのだが、とにかく一度はドロップハンドルのeバイクに乗ってみたかった。
JR1の車重は16kgとeバイクとしてはかなり軽量。こぎ出すと前傾姿勢ポジションもあって、ついついスピードを出したくなってくる。調子に乗ってグイグイこいでいると、あっという間に時速24kmを超えてしまった。楽しいけど、これじゃeバイクに乗っている意味がない。そう思い返し、ペダルを踏む力を緩めた。
日本一周は長丁場。ハイスピードで走る場面はほとんどないだろう。そもそも速く走りたいならeバイクではなく、軽量でタイヤの細いロードバイクに乗ればいい。eバイクの利点は電動アシスト、ゆっくり長く走るのが得意な乗り物なのだ。
ポジションが変えられるドロップハンドルは長距離に向いているしJR1でもゆっくりは走れるだろう。しかしリヤキャリヤにサイドバックを装着したり、マッドガードをつけて雨天走行をしたり、時に路面状況の悪い道も走ることを考えるとJR1は少し違うような気がした。
スローペースであちこちに寄り道をしながら進んで行く、そんな僕の旅スタイルにピッタリなeバイクはあるのか? 日本一周の相棒となるeバイクを探す旅が始まった。