eバイク旅ノート Vol.101 eバイク日本一周41「琵琶湖から福井、そして古都金沢へ」

スポーツも運動も嫌いな超インドアな妻ヒロコ、還暦からeバイクに乗り始めた夫かんいち。eバイクによる夫婦日本一周の旅。昨年は東日本一周を完走。今年4月から西日本の旅。自宅神奈川から太平洋側を西へ。沖縄から折り返し、九州の日本海寄りを北上、山陽、関西を走り琵琶湖までやってきた。

DAY223「26歳の時何してた?」

猛暑の中、6日間連続で走ったので、今日は琵琶湖の北にある『ライダーハウス日本何周』で一日のんびり過ごすことにした。ちなみに“ライダーハウス”というのは1980年代頃に北海道で生まれた、バイク旅行者向けに作られた簡易宿泊所(寝具持参・相部屋が基本)で、バイク旅行者でなくても宿泊可能。ライダーハウスは2000年代になると北海道では徐々に減少していったが、逆に全国各地に少しずつ広がっていった。

ちなみに今回の日本一周では稚内の『ライダーハウスみどり湯』、帯広の『RIDER HOUSE CAFE Pit』、南大隅町の『ライダースハウス 郷がえる』などに泊った。どの宿も良心的な値段で、オーナーさんが親切、それぞれ個性があり居心地がよかった。

『ライダーハウス日本何周』では夫婦ということで個室にしてくれた。エアコンの効いた広い畳部屋は快適そのもの。連泊ということもあり朝はゆっくり起床、歩いて湖畔へ行くとトンボがいっぱい飛んでいた。気温はまだまだ暑いが、少しずつ秋へ向かっていることを実感した。

共同キッチンで朝ごはん作って食べる。その後は洗濯したり、パソコンで原稿を書いたり、宿の中でゆっくり過ごした。僕たちの場合、全部の体力の7割くらいは自転車をこぐことに使っているので、自転車に乗らないというだけで、気分的にも肉体的にも、大きなリフレッシュ&休養になる。

今日は8月13日、お盆休みのど真ん中なので、受付時間の午後5時を過ぎるとバイクや自転車の旅人が続々やって来る。気が付くと居間に7〜8人が集まり、旅や人生談議が始まった。ほとんどが男のひとり旅、そこから夫婦で旅するのってどうなの?という話題になる。男から見ると夫婦旅は羨ましいような、でもちょっと大変そうな、気になる存在らしい。

その後話題は26歳の時にチャレンジした原付バイクでのオーストラリア一周、世界一周の旅へと広がっていった。ターニングポイントとなった26歳。みんなは何をしていたか聞いてみると、次々に武勇伝が飛び出してくる。冗談を言って笑ったり、「いやそれはアリ得ないっ!」と突っ込みを入れたり、話が白熱。賑やかな夜となった。

宿泊地:滋賀県長浜市
走行距離:0km
総走行距離:9575.2km

琵琶湖
朝、朝食を食べる前に歩いて琵琶湖へ。湖畔を散歩したが湖は眠っているように静かで、風が気持ちいい。少しの時間だがリフレッシュできた
ライダーハウス日本何周
『ライダーハウス日本何周』では屋内に自転車を保管してくれた。安心感があるし、涼しい場所で整備ができるのはありがたかった
ライダーハウス日本何周
たくさんの宿泊者が居間に集まり賑やかな夜を過ごした。年齢も旅のスタイルなどの垣根を越えて、交流できるのがライダーハウスの良いところ

DAY224「敦賀で銀河鉄道999」

プライベート優先のビジネスホテルとは違って、ライダーハウスはほかの旅行者と交流できるのが大きな魅力。宿との出会いは一期一会。これからも長く続いて欲しい。三重の伊賀からバイクを飛ばして僕たちに会いに来てくれた坂井さんとオーナーの何周さんに見送られ宿を後にした。

今日の目的地は福井市内。県道から一桁の国道8号に入ると一気に交通量が増えた。路肩を慎重に進んで行く。ゆるやかな上り坂が延々と続くが、アシストがあるのでそれほど負担に感じることはない。前方に福井県の標識が見えてくる。標識を抜けると下り坂になった。やった峠越えだ、やっぱりダウンヒルは最高。自然がいっぱいの景色の中を気持ちよく走り抜けて行く、頬に当たる風が心地いい。

敦賀駅へ行くと、通りに松本零士の『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』の登場人物のモニュメントが並んでいた。銀河鉄道999の星野鉄郎とメーテル、宇宙戦艦ヤマトの古代進やスターシャなどなどいろんな像があり、見て回るだけで楽しかった。その後は、歴史ある赤レンガ倉庫を訪問、敦賀を堪能すると再び海岸沿いを北上した。点在する海水浴場はどこも家族連れで賑わっている。

山道になり上り坂が続くとヒロコがしきりに腰が痛いと言い始める。元々ヘルニア持ちのヒロコ、上り坂でペダルに力を入れる体制になると痛くなるらしく、辛そうな顔になる。こればかりは代わってあげることはできない「大丈夫、もっとゆっくりでいいよ」と声をかけた。

眼下に青い日本海が広がる道の駅『河野』に到着した。軽食コーナーがあるようなのでここで昼食休憩にする。僕は豚しょうが焼き丼 、ヒロコはにしんが載っている北前そば を注文。ヒロコは亡くなった父親がにしんそばが好きだったことを思い出して、食べることにしたという。お盆なのでもしかしたら父親の声が聞こえたのかもしれない。お父さんもきっと僕たちの旅をを見守ってくれている、そんな気がした。

トンネルをいくつか抜け、山を下ると市街地になった。国道の両側に大型店がズラリ並んでいる。平地になるとペダルが軽くなり、距離もグングン延びて行く。80km以上走り、予定の福井市内のネットカフェに到着した。駐車場はいっぱい、盆休み中なので店内も混雑している。ほぼ満席に近い状態だったが、運よく隣同士のブースが確保できた。荷物を運び込んでひと安心。シャワーを浴びてスッキリ。夕食は外のお店で焼き肉丼。大満足で就寝となった。

宿泊地:福井県福井市
走行距離:83.6km
総走行距離:9658.8km

坂井さんと宿のオーナー何周さんと
琵琶湖の朝。伊賀から会いに来てくれた坂井さんと宿のオーナー何周さんと。偶然にも3人のTシャツの色が信号になってました(笑)
赤レンガ倉庫群
明治から昭和初期にロシア経由でヨーロッパへと繋がる国際都市として繁栄した敦賀港の近くにある赤レンガ倉庫群。恐竜のベンチで記念写真
国道8号
国道8号で日本海沿いを北上する。広く青い海と大きな空を感じながら進んで行く。全身に風を感じ、同時に自転車で旅ができる幸せを感じる
道の駅河野
国道8号沿い、南越前町の標高約200mの高台にある道の駅『河野』。施設はシンプルだが、展望が素晴らしく日本海が一望できる
快活クラブ
泊りは福井市内のネットカフェ『快活クラブ』。狭いのが難点だが電源、Wi-Fi、パソコン、マンガ、シャワーにドリンクもあるので超便利

DAY225「金沢の居酒屋で乾杯」

ネットカフェにはパック料金があり、今回は15時間パックで5544円(ふたり合計)になった。充電して、シャワー浴びて、ドリンク飲み放題、ネットもマンガもあってこの料金は安い。シニア割もあるしね(笑)。ヒロコが「マンガが面白すぎて、寝るのが遅くなったぁ~」と言いながら眠い目をこする。まあ、こんなデメリットもあるけどね。

朝、外に出るとすでに暑い(笑)。荷物を積み込むと金沢に向けて走り出す。今日は1日ほぼ平坦、交通量の多い市街地走行。休憩場所には困らないが、景色を楽しむ感じではなさそうだ。ひたすら国道8号を北上する。町を抜けると田んぼの風景が広がった。田んぼの見ていると自然と心が安らぐ、やっぱり自分たちは日本人なんだと実感する。

坂井市、さわら市へと進んで行くと市街地から緑の多い山道になった。しばらくすると石川県の標識が現れる。これで残るは4県だけになった。旅も終盤だ。しばらく走ると再び市街地になる。昼時、国道沿いのチェーン店はどこもいっぱいで、順番待ちの列が外まで延びている。どこかいいところはないか?とネットをチェック。台湾料理があったので行ってみるとすぐに入店できた。ラッキー。さらに頼んだ料理はどれも美味しく、ボリューム満点で値段もお手ごろ。店員さんもいい感じ、最高のチョイスだった。

しばらく走った先にある道の駅『白山めぐみ』で再び休憩。おやつタイムのアイスクリームを食べていると、山側にある黒い雨雲に目が留まった。「ヒロコあの雲、ヤバそうだね」「わー!ホントだ、これ絶対に降るよ」雨に当たりたくないので、早めに切り上げ走り出した。急ぎ足で金沢市内へ向かう。頑張った甲斐あって、雨に濡れる前にビジネスホテルに到着。ほっと胸をなでおろした。

荷物を下ろし、落ち着いたところで金沢に住む知人、梅村さんと居酒屋で合流した。SNSで知り合い、直接会うのはこれが2度目、ヒロコは初対面だが梅村さんがとても気さくな人柄なのですぐに打ち解けることができた。バイク旅のトラブルや金沢移住の話題で盛り上がる。料理は地魚が中心でどれも新鮮で美味しい。さらにヒロコはお酒もいい感じで呑めたようで上機嫌。梅村さんのお陰で金沢の食を思い切り堪能することができました。感謝感謝です。

宿泊地:石川県金沢市
走行距離:74.5km
総走行距離:9733.3km

福井の田畑
広々とした田畑が広がる福井の米どころ。西日本の旅を始めた4月頃は水を張っていた田んぼ、季節は進みいまは青々、稲穂も膨らんでいた
石川県境を記す標識
坂を上るとついに石川県境を記す標識が見えてきた。この旅では47都道府県を全て訪れる予定。残っているは4県だけ、いよいよゴールが見えてきた
階段
歩道が途切れていきなり階段になった。自転車も荷物も重いので、こういうのが一番きつい。この時は下り側だったので助かった~(笑)
梅村さんと乾杯
乾杯♪金沢無事到着を友人の梅村さんに祝ってもらいました。梅村さんの知人の居酒屋さんで金沢の海の幸とお酒を堪能。最高の宴になりました♪

DAY226「夫婦で整体施術をしてもらう」

金沢連泊。午前中はコインランドリーで洗濯。午後から昨日お世話になった梅村さんの元を訪ねた。日本一周の道中、ヒロコは疲れがたまったり、リフレッシュしたいときに整体へ行っていたのだが、なんと運が良いことに梅村さんが整体師であることが判明。これはぜひとも、お願いします!ということでやってきたのだ。

2日連続で梅村さんにお世話になるふたり。本当にありがたいです。ヒロコが施術を受けている時間を使って僕はWABASH(ワバッシュ)のタイヤ交換作業。僕は整体が苦手なので受けない予定だったが「かんいちさんもやった方がいいですよ、やりましょう!」と梅村さんが強くプッシュするので、受けることになった。実際にしてもらうと痛いけど、気持ちがいいような……。結局のところ、かなりラクになりました。これで自宅まで元気に走れそう。梅村さんありがとうございます。

夕方、金沢にあるゲストハウス『ポンギー』のオーナーまさきさんがホテルに会いに来てくれた。10年前に初めて泊まったのだが、その時からなぜか馬が合い、金沢に来たときは必ず『ポンギー』に泊まっていた。しかし今回は空室がなく泊まれず、まさきさんの方からわざわざ会いに来てくれたのだ。2年ぶりの再会、合わせたかったヒロコも紹介できたし、短い時間だったが嬉しい時間を過ごすことができた。

宿泊地:石川県金沢市
走行距離:19.0km
総走行距離:9752.3km

金沢城公園
風光明媚な『金沢城公園』の横を走り抜けて行くヒロコ。この周辺は『兼六園』『金沢21世紀美術館』『石川県立美術館』など見どころが多い
整体を受ける
流れからいきなり苦手な整体を受けることになった。友人の梅村さんが親切丁寧にやってくれたので、激痛に襲われることはならなかった
金沢の長町武家屋敷跡
日暮れ近くから金沢の長町武家屋敷跡を散策。路地に続く土壁と長屋門、こんこんと流れる大野庄用水など。昔ながらの風情を感じる

DAY227「金沢観光とゲストハウスポンギー」

金沢連泊。朝起きてロビーへ行くと朝食の順番を待つ人が長い行列を作っていた。食いしん坊のふたりは食べる気満々で列に並んだ。バイキング形式なのであれもこれも食べたいでどんどん量が多くなる。普段はパンが多いが、好きな納豆があったのでごはんにする。朝からお腹いっぱい。さあ、今日は金沢観光するぞー

まずは歩いて『金沢21世紀美術館』へ。チケット売り場に着くとまたしても大行列。さすがお盆休みだ(笑)。そこですぐにWEB購入に切り替え、午後1時入場のチケットをゲットした。それまで時間があるので日本三名園のひとつ兼六園へ行ってみる。入口に行くと“無料開放”の文字。やった。どうやらお盆の期間は無料らしい。美しい霞ヶ池、兼六園のシンボル徽軫灯籠、雁行橋や根上松、瓢池などなど、園内をゆっくり見て歩いた。

午後は金沢21世紀美術館で現代アートを堪能。展示はどれも興味深く、さらにエレベーターもトイレも椅子も、美術館の中は全てがアート。まさに驚きと発見の連続だった。夕方からはゲストハウスポンギーを訪ねる。築150年以上の呉服屋を改築した小さな宿。以前はなかったカフェスペースができていたり、窓が新しくなっていたりバージョンアップしていた。

居間に入るとほかの宿泊者さんがいてひとりひとり自己紹介をしてくれた。今日は欧米の人が中心のよう。僕たちは拙い英語で世界一周やサハラ砂漠の体験談を話したり、まさきさんからポンギーの変化や歴史を聞いたり。いろんなことを話した。まさきさんと僕は同じ歳でさらに心筋梗塞という重病を体験した同志でもある。会えるだけでも嬉しい存在。元気でまた再会しましょうと約束、大きく手を振りポンギーを後にした。

宿泊地:石川県金沢市
走行距離:0km
総走行距離:9752.3km

兼六園
日本三名園のひとつ『兼六園』。歴代藩主によって手掛けられた兼六園の広大な公園で、園内には築山、池、茶屋などが点在、時間をかけて楽しんだ
金沢21世紀美術館
金沢の新しさのシンボルとして誕生した『金沢21世紀美術館』。見て、触れて、感じるアート作品が多いので、想像以上に楽しむことができた
ポンギー
金沢ゲストハウス『ポンギー』ではオーナーのまさきさんと女将ニーナちゃんが笑顔で迎えてくれた。宿泊者とも交流ができたし良い思い出になった

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