eバイク旅ノート Vol.97 eバイク日本一周37「熊本から島原半島、そして長崎へ」

スポーツも運動も嫌いな超インドア派の妻ヒロコと還暦からeバイクを始めたかんいちのeバイク夫婦日本一周の旅。昨年は東日本を一周。今年は西日本一周を目指して神奈川から中部、関西、四国、九州、沖縄とめぐった。鹿児島から北上、熊本の南阿蘇までやってきたが、連日の雨に悩まされることに……。

DAY195「雨上がりのサイクリング」

南阿蘇のゲストハウス。今日も朝から雨。こんなに降り続いて大丈夫なの?と心配になるくらい降っている。とても自転車で走れる状況ではないので今日も連泊。自転車で外も走れないし、歩いて行ける距離に食堂やコンビニもない。宿に引きこもり状態、手持ちのレトルト食品などで何とか食い繋いでいく。

午後2時過ぎ。居間でパソコンを叩いていると、窓から薄日が差してきた。外に出ると雨は上がっていて、曇り空ながら少しだけ青空もある。ずっと雲に隠れていた阿蘇山の山頂付近も見えている。「やったーっ!」せっかく阿蘇にいるんだ、少しでも自転車に乗ろうということで、道の駅『あそ望の郷くぎの』まで出かけることにする。

雄大な阿蘇山とその裾野に広がる田園風景を眺めながらペダルをこぐ。流れる風が気持ちいい。30分ほどで道の駅に到着。道の駅は広々とした平原にあり、正面にドーンと阿蘇山が見える、展望のいい場所にあった。景色を眺めながらジェラートやソフトクリームを食べたり、短いながら阿蘇のアウトドア時間を楽しんだ。雨でほとんど宿から出られなかったので、今日は良い気分転換になった。さすがにこれ以上は連泊したくないので、明日は出発しよう。

宿泊地:熊本県南阿蘇村
走行距離:15.0km
総走行距離:8259.6km

阿蘇山
長く降り続いた雨が上がったので宿を飛び出し、自転車で出かけた。ずっと雲の中に隠れていた阿蘇山もようやく顔を見せてくれた
あか牛の像
道の駅『あそ望の郷くぎの』で見つけた巨大な“あか牛”の像。道の駅には南阿蘇の名産、あか牛が食べられる焼肉レストランがある

DAY196「霧の草千里」

今日は曇り空、雨は降っていない。まっすぐ熊本市内へ降りる予定だったが、せっかく阿蘇にいるんだから草千里まで行ってみない?とヒロコに提案する。アシストがあるとはいえ10km以上続く上り坂。自分の体力がどこまで続くか悩んでいるようなので、とりあえず行けるところまで行って考えよう、ということで走り出す。

国道325号から県道299号へ。上り坂では無駄な体力をできるだけ使わないよう、できる限り一定のスピードで進んで行く。森が続いたと思ったら、低い草地の丘が広がったり、景色は変化に富んでいる。阿蘇パノラマラインに入りさらに上って行くと、左手にお椀を逆さまにしたような『米塚』が見えてくる。周りは草原が広がっている、徐々に阿蘇らしい景色になってきた。

草千里まで3kmまでのところまできた。ヒロコはかなり疲れているようなので「そろそろ引き返そうか?」というと「かんいちは草千里まで行きたいんでしょ?行ってもいいよ」と嬉しい言葉が返ってきた。さすがヒロコ。よし、頑張って草千里まで行こう。

ところがしばらく行くとどんどん霧が出てきて、ついに濃い霧で何も見えなくなってしまった。ようやく阿蘇火山博物館の駐車場に到着。目の前に雄大な草千里が広がっているはずなのに、霧で何も見えない「頑張って上ったのに、これじゃどこにいるかわかんないじゃん!」ふたりで笑った。

写真を撮って草千里を離れると、延々と下り坂が続く。あれよ、あれよという間に熊本市内に入ってしまった。まだ3時前なので、熊本城へ行ってみる。お城に着くと国内外の観光客であふれていた。さすが日本有数の観光地。8年前の地震で大きな被害を受けた熊本城。敷地に入ると見学通路が作られていて、高い場所から城壁など修復中のところが見えようになっていた。天守閣の外観はほぼ修復されていて、その姿は見惚れるほど美しかった。

宿泊地:熊本県熊本市
走行距離:70.6km
総走行距離:8330.2km

米塚
高さ80m、美しい円錐形の『米塚』を眺める。約3000年前に形成された単成火山(スコリア丘)で、頂上部分が大きくくぼんでいる
草千里
阿蘇有数の観光スポット『草千里』まで来たのに霧で何も見えない。何も写らないけど頑張って上ってきたので記念写真だけは撮っておく
おべんとうのヒライ
熊本で良く見かける『おべんとうのヒライ』に入ってみた。お弁当や惣菜だけでなく食堂コーナーがありかつ丼やうどん、カレーなどが食べられる
熊本城
2016年の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城。復旧工事が進めながら2019年から特別公開を開始。国内外たくさんの観光客が訪れていた

DAY197「島原半島を行く」

何日ぶりだろうか、今日は朝から青空が広がっている。それだけで幸せな気分になる。まずは島原へ渡るフェリーが出る新港へ向かう。約15kmなので順調に行けば1時間位で着けるだろう。ルートはいくつかあるが、白川に沿って向かうことにした。河川の堤防を走る道があり、車も通らず快適そのものだった。

新港から高速フェリーに乗ると30分で島原港に到着、長崎の旅が始まる。島原城を経由して内陸を走る農道『雲仙グリーンロード』へ入って行く。諫早方面へ向かうので、海沿いの国道251号でもよかったのだが国道は車が多そうなのでこちらの道を選んだ。ところが道幅が狭い上、意外と交通量も多い。さらに北部に入るとアップダウンが激しくなってきた、それもかなりの急勾配、「これなら海沿いの方がいいかもね」ヒロコと意見が一致、逃げるように国道251号へ向かった。

国道251号は愛野の過ぎると町はなくなり自然が多くなる。ビジネスホテルがないので今夜はレジャーホテル宿泊となった。最近は予約サイトで簡単に予約もできるし、女子グループプランなんていうのもあるらしい。実際泊まってみると、駐車場は屋根付きだし、部屋はビジネスホテルの4~5倍広い。さらに朝食付きで、ビジネスホテルより安いのだから使わない手はない。これからはレジャーホテルをうまく活用していこう。

宿泊地:長崎県諫早市
走行距離:54.8km
総走行距離:8385.0km

白川に沿って延びる道
白川に沿って延びる道を走って熊本新港へ向かう。久しぶりに朝から天気が良く、景色もいいので自然とテンションが上がるヒロコ
くまモン人形
島原へ渡るフェリーターミナルで見つけた『くまモン』人形。フェリーに乗ったら熊本ともお別れになるので、記念写真を撮っておく
島原城
一般道から天守閣がよく見える『島原城』。日本100名城のひとつ。現在、建物はキリシタン史料館(天守閣)などに利用されている
雲仙グリーンロード
『雲仙グリーンロード』を使って雲仙市方面へ向かう。道が少し標高の高い所を走っているため、遠くに有明海や熊本の山々が見える

DAY198「眼鏡橋を渡ってみる」

宿を出発した後もしばらく自然の多い道が続いた。国道251号は少し高い場所を走っていて、時々視界がパッと開け青くキラキラと輝く海が見える。快適な道が続く。東長崎から大きな町になり国道34号に入ると急勾配の上り坂になった。山の急斜面にできた住宅地を眺めながら「電動自転車でも帰宅が大変そう」「平らなところに住みたくならないのかな?」ふたりで様々な想像をめぐらせた。

長いトンネルを抜けると下り坂になった。転がるように長崎市内へ入って行く。一気にビルが立ち並ぶ都会になり、路面電車も現れた。人が多いので早めに昼ごはんを食べておこうと思い、中華屋へ入った。カウンター席だけの庶民的なお店。長崎ちゃんぽんと中華丼を選んだが、どちらも優しい味付けで美味しかった。年配の夫婦が営むお店で僕たちが自転車で神奈川から来たと知りビックリ、旅や夫婦の話で盛り上がった。

日本初の石造りのアーチ橋で、日本三大名橋のひとつでもある『眼鏡橋』へ行ってみる。川に沿って歩けるように遊歩道ができていて、下から上から、さらに横から様々な角度から橋を眺めることができるようになっていた。また中島川には古い石橋がたくさん残っているので、一つひとつ見て回るのも楽しかった。

橋の後は「長崎に来たらぜひ遊びに来てください」と言ってくれていた友人、高西くんの家へ向かった。市内から南へ走ること1時間。山の斜面に立つ高西くんの家に到着した。日本縦断以来なので2年ぶりの再会になる。5年位前にバイク日本一周旅人の取材を通じて知り合った友達で、いまはカメラマンとして活躍している。

夜は高西くんいきつけのお寿司屋に連れて行ってもらいお寿司を堪能したのだが、これがどれも新鮮で、ビックリするくらい美味しかった。長崎といえばちゃんぽんやカステラのイメージが強かったのだが、完全に覆った。

宿泊地:長崎県長崎市
走行距離:41.5km
総走行距離:8426.5km

東長崎の町並みと牧島
東長崎から国道34号で長崎市内へ向かう。長く続く上り坂、ペダルを止めて後ろを振り返ると賑やかな東長崎の町並みと牧島が見えた
三吉
長崎市内でお昼ごはん。ネットで見つけた中華飯店『三吉』。カウンターだけのアットホームなお店で値段も安く、料理もおいしかった
眼鏡橋
1634年、興福寺の黙子如定禅師が架設したとされている『眼鏡橋』。川面に映る影が双円を描き「メガネ」に見えることからこの名がついた
蚊帳を張って寝る
長崎市ではカメラマンの高西くんにお世話になる。夜は部屋に蚊帳を張って寝ることに。なんだか親せきの家へ来たようで嬉しかった

DAY199「樺島でトルコライス」

今日から数日長崎に滞在、僕は原稿を書いたり、ヒロコはリモートワークをする予定なのだが、今日は高西くんの好意で長崎半島の樺島へ出かけることになった。樺島に着くとまずはレストラン『だいまん』へ。高西くんおすすめのトルコライスを注文。ピラウとナポリタン、デミグラスソースのかかったトンカツと夢のような組み合わせのトルコライス。食べてみるとサクサク衣のとんかつ、濃厚なナポリタン。大大大満足のおいしさでした。

再び車で移動。樺島の南端にある『樺島灯台』へ。高台の公園の先に白い灯台、展望台に登ると雄大な海の大パノラマが広がった。絶景を堪能した後は、長崎市にあることを初めて知った恐竜博物館へ。全長約13mもあるティラノサウルスの全身骨格レプリカや復元ロボットがあったり、想像以上に楽しめた。夜は高西くんのお母さんも合流して4人で食事会となった。お母さんとは年齢が近いこともあり、昭和や平成のあるある話で盛り上がった。何はともあれ、一日付き合ってくれた高西くんに感謝。

宿泊地:長崎県長崎市
走行距離:0km
総走行距離:8426.5km

だいまん
長崎市野母崎の樺島。小さな集落の中にあるレストラン『だいまん』は知る人ぞ知る、隠れ家的なお店。ここのトルコライスは絶品!
樺島灯台
長崎半島の南部、橋で繋がる樺島へ渡り、高台に建つ『樺島灯台』へ。展望台に登ると天草灘や五島灘など美しい大パノラマ広がった
ベネックス恐竜博物館
日本で3番目となる恐竜専門の博物館が長崎市の『ベネックス恐竜博物館』。貴重な全長約13mのティラノサウルスの全身骨格レプリカがある

DAY200「22年ぶりに思い出の『四海樓』へ」

今日、一番の目的は22年前のオートバイで日本縦断の旅で食べた『四海樓』のちゃんぽんを食べること。あの時に食べたちゃんぽんがおいしくて、ふたりの忘れられない思い出になっているのだが、果たしてその記憶は本当なのか? そしていま食べても美味しいのか? それを再確認するのだ。

午後1時過ぎ。満席のため順番待ち、しばらく待つと窓際の席を案内された。大きな窓から水辺の森公園や稲佐山がきれいに見える。そして運ばれてきたちゃんぽん、口を付けた瞬間「これ、これ、間違いない」太麺に野菜がたっぷり、そしてクリーミーなスープ。「やっぱりおいしいね♪」ヒロコと大きく頷いた。そして再び忘れられない味になった。

車で移動して『長崎原爆資料館』を見学。長崎ミルクセーキ発祥の店『ツル茶ん』へ行きサクサク食感のミルクセーキを堪能。中華街をブラブラ歩きながら、角煮マンとハトシを食べたり。高西くんが車を運転しながら各地の歴史やここ数年の長崎の変化など、いろんなことを話してくれた。そして今日も長崎は暑かった。車を降りてちょっと歩いただけで、汗が滝にように流れてくる。こんな気温の中を自転車をこいでいるのか、自分たちは結構大変なことをしているのかも、改めてそう思った。

宿泊地:長崎県長崎市
走行距離:0km
総走行距離:8426.5km

四海樓
22年ぶりに食べた長崎『四海樓』のちゃんぽん、発祥の店と言われるだけに美味しかった。優しくてクリーミーな味にヒロコも大満足
平和祈念像
平和祈念像の天を指す手は“原爆の脅威”、水平に伸ばした手は“平和”を、閉じた瞼には“原爆犠牲者の冥福を祈る”想いが込められている
長崎のミルクセーキ
長崎の喫茶店で『ミルクセーキ』を注文するとミルクドリンクではなく、スプーンで食べるフローズンタイプのアイスデザートが出てくる
長崎新地中華街
日本三大中華街のひとつが長崎新地中華街。東西、南北あわせて約250mの十字路に中華料理店、中国菓子や中国雑貨などが軒を連ねる

DAY201「伊王島大橋でドローン撮影」

3泊もお世話になった高西くん。いろんな場所を車で案内してもらい、家ではゆっくり休ませてもらった。おかげで充実した時間を過ごすことができた。さらに今日僕たちをドローンで撮影してくれるというではないか。ワクワクしながら伊王島大橋を往復。青い海と空、雄大な橋を走る2台のeバイク、最高の映像が出来上がった。高西くん本当にありがとう。感謝です。

3日ぶりの自転車走行。ただ走っているだけなのに暑さが、どんどん体力を奪っていく。体が鈍っていることを実感する。長崎市内の中心地を走り抜けた後も、しばらく市街地走行が続く。途中で見つけたワークマンで暑さ対策のシャツやタオルを購入、ホームセンターでは壊れかけていたワイヤーロックを新調。旅に終盤戦に備えた。

3時過ぎ、ホテルにチェックイン。全身汗びっしょりだったので、シャワーを浴びると生き返るよう。ヒロコは久しぶりの自転車走行と猛暑のダブルパンチ、疲れていたようで夜8時過ぎには寝息を立てていた。夏休みの期間に入ったらしく、ホテルの中は高校生だらけ。部活らしくホテルのランドリーは大量の洗濯物。友人の部屋をノックする音や笑い声があちこちから聞こえてくる。

宿泊地:長崎県時津町
走行距離:40.6km
総走行距離:8467.1km

「eバイクで伊王島大橋を渡る」
ドローン撮影:カメライダー高西
高西さん
長崎でお世話になった高西くん。本職はフリーのカメラマン。長崎市内や野母崎などを車で案内してくれた上にドローン撮影まで。感謝感謝です
3日ぶりの自転車
3日ぶりの自転車。少しの間エアコンの効いた世界に浸かっていたので、暑さが身にこたえる。すっかり軟弱になってしまったふたり(笑)

DAY202「西海橋を渡って佐世保へ」

昨日はずっと市街地だったが、ようやく田舎道になった。自然が多くなり、時々海も見える。大村湾は外海とほとんど接していないため海と思えないほど静か。堤防もない海の近くに民家が建っているのだから驚く。それだけ穏やかなのだろう。

午後になると日差しが強くなり、暑さが増した。コンビニの中でしばらく涼んだり、ボトルに氷を入れて氷水にしたり、塩飴をなめたり、熱中症対策をしながら進んで行く。国道206号。午後1時過ぎ、西海橋が見えてきた。完成当時は固定アーチ橋としては世界で三番目に長く、東洋一といわれていた。西海橋公園ウォークデッキから日本三大急潮のひとつ『針尾瀬戸』を見ていると、急流とうず潮に吸い込まれそうな気がして怖くなった。

佐世保では昭和の香りがするホテルにチェックインした。自転車の置き場を確認するとホテルの駐輪場は1泊500円(1泊)と言われビックリ。200日も旅しているがホテルで自転車の駐車料金をいわれたのは初めて。そこで理論派のヒロコが登場、交渉を始めるといとも簡単に無料になった。さすがヒロコ、頼りになる(笑)。さあ、明日はいよいよ、最西端『神崎鼻』だ。

宿泊地:長崎県佐世保市
走行距離:56.6km
総走行距離:8523.7km

めだか屋
国道沿いで偶然見つけた、めだか屋さん。周辺に数軒あった。地元の神奈川では見たことがないし、さらに無人販売だったので驚いた
観光案内所
国道206号で大きな風車を見つけ、何だろうと思ったら観光案内所だった。気になったらすぐに道草、寄り道できるのがeバイクの利点
大村湾
世界的にも珍しい特性を持つ二重閉鎖性海域の大村湾は波もなく驚くほど穏やか。ヒロコは僕から聞くまで湖だと思っていたらしい
西海橋
1955年に開通した長さ316mのアーチ橋『西海橋』。当初は有料だったが1970年に無料化。2006年には並行するように『新西海橋』が架けられた

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