スポーツも運動も嫌いな超インドアな妻ヒロコ、還暦からeバイクを始めた夫かんいちのeバイク夫婦日本一周の旅。昨年は約3か月かけて東日本一周。今年は西日本一周を目指して神奈川をスタート、太平洋側を西へ。四国、九州、沖縄をめぐると折り返し。九州を離れ山口までやってきた。
DAY210「懐かしい木造校舎を使った明倫学舎」
萩に連泊。朝ごはんを食べ終え外へ出ると、すでに真夏の暑さ。今日はeバイクはお休みにして、歩いて『萩・明倫学舎』へ向かう。ここは国の登録有形文化財に登録されている貴重な木造校舎を使った観光施設。萩の観光案内や藩校明倫館の歴史、展示室。世界遺産を紹介する『世界遺産ビジターセンター』などがある。展示はどれも興味深いものだったが、建物が木造校舎ならではの温かみがあり、ゆったり気分で見学することができた。
昼が近くなるとさらに気温が上昇した。エアコンの効いたゲストハウスに戻るとヒロコは昼寝、僕は涼しい居間でパソコンを広げて原稿書き。夜、新しい旅行者が来たのでおしゃべり、旅好き同志、世界各地を旅したという共通点から海外あるあるで盛り上がった。
宿泊地:山口県萩市
走行距離:0km
総走行距離:8889.2km
DAY211「ちょっと変わったネコ寺へ」
もう一日、萩で過ごすことにした。コインランドリーで洗濯が終わると歩いて萩城下町へ向かった。江戸屋横町に入り維新の三傑の一人である木戸孝允の旧宅や蘭方医・青木周弼の旧宅、旧久保田家住宅などを見学した。各建物にガイドさんがいてその場所の歴史や建築の特徴などを詳しく説明してくれるのが、歴史に疎い僕たちにはありがたかった。
炎天下の中、一万歩も歩いたのでさすがに疲れた。昼はエアコンの効いたゲストハウスに戻って、体を休める。夕方になると山口に住むヒロコの友達が遊びにきてくれ、車で郊外にある『ネコ寺(雲林寺)』へ連れて行ってくれた。小さなお寺なのだが、境内の至るところに招き猫や猫の置物、木彫りの猫など様々な猫が置かれていた。一つ一つ個性があるので見ているだけでも楽しい。残念ながら拝観時間は過ぎていため、猫みくじや猫の御守、猫の絵馬などは見られなかったので、次はぜひ、拝観時間に来てみたい。
夕食は萩市市内に戻り、山口県民のソウルフードうどんチェーン店『どんどん』へ。僕はざるうどんとカツ丼のセット、ヒロコは肉うどんをガッツリ食べた。甘めのダシにもっちり麺、納得の味だった。2日間休んだので、ヒロコは元気回復。明日からeバイク旅を再開。益田まで走る予定だ。
宿泊地:山口県萩市
走行距離:0km
総走行距離:8889.2km
DAY212「日本海沿いで島根県入り」
早朝、相部屋の他の人を起こさないよう、大きな音を立てず静かに出発準備を進める。いつものペースできないので出発が30分以上遅くなってしまった。日本海沿いの国道191号を進んで行く。今日も快晴。町を出てしばらくすると海が見えてきた。日本海はどこか暗いイメージを持っていたが、夏の日本海は青々と澄んでいて明るい。遠くに見える島は見島だろうか。
道の駅『阿武町』で休憩。トイレから帰ってくるとヒロコが女性と話をしている。聞くと彼女の知人のSNSに僕たちの写真が出ていたらしく、ヒロコの顔を見つけて声をかけたという。彼女たちは今日から待望の夏休みで、車で長野までへ行くんだと嬉しそうに話してくれた。
僕は大丈夫だがヒロコは軽い熱中症になっているのか、日陰に自転車を停めて水を飲んだり、首を冷やしたり、辛そうにしている。体力のない女性が30℃を優に越える暑さの中を走り続けるのは大変なこと。アシストがあるeバイクとはいえ、かなりハードワークなことは確か。年齢的なこともあるし、こまめに休憩をしながら進んで行く。
田万川トンネルを抜けて島根県入り。今日の宿泊地、益田に早目に着くことができた。まずはコンビニに行きネットで買ったディスクブレーキのパッドを受け取る。こんな風に移動しながら交換パーツを受け取れるのだからありがたい。今日の宿は初めてのカプセルホテル。狭いイメージがあったのでこれまで避けていたが、ここは広い荷物スペースがあるので安心。案内されたスペースはドミトリーのベッドよりかなり広く、四方を壁で囲われているのでプライバシーもバッチリ。おまけにテレビまで付いている。想像以上に快適に過ごすことができた。
宿泊地:島根県益田市
走行距離:68.8km
総走行距離:8958.0km
DAY213「“江津”と書いて“ごうつ”と読む」
ヒロコも昨晩はぐっすり眠れたよう。国道9号を出雲方面へ進んで行く。一桁国道だが意外と交通量が少なく走りやすい。道はほとんど森の中、緩やかなアップダウンが続く。景色が開けた場所にある道の駅『ゆうひパーク三隅』で小休憩。
高台にある道の駅で、広場から見える海と線路の景色が素晴らしかった。“撮り鉄”の聖地というのも頷ける。列車の写真が撮りたいと思い時刻表を確認すると、30分後に通ることがわかった。通り過ぎるのはあっという間、タイミングを逃したらアウトなので緊張する。「来たーっ」「うわー思ったより早い」ふたりでドタドタと撮影。青い海をバックに走るローカル列車、まずまずの写真が撮れた。
道の駅の少し先に『ドライブイン日本海』という自販機コーナーがあった。中を見ると懐かしいうどんそばの販売機があるじゃないか。僕が通っていた高校の購買部にあった販売機と同じ機械で、部活帰りによく食べていたことを思い出す。久しぶりに食べると、青春の味がした。
今日の目的地は江津。きっと“えつ”と読むのかと思っていたら、なんと“ごうつ”と読むことがわかりビックリする。「うそでしょ」「えーなんで!?」ヒロコとふたりで盛り上がった。日本一周の旅しなければ、知らなかった土地や地名、出会えなかった人がたくさんいる。旅は自分の世界を広げてくれる、最高の方法だと思う。
国道沿いに広い駐車場があった。何気なく入って行くと海水浴場で、白い砂浜でたくさんの人が夏の海を楽しんでいた。これぞ夏休みという感じ。この暑さ、海に入ったら気持ちいいだろうなぁと思うが、水着もないし、夫婦揃ってカナヅチなのでやめておく(笑)。
今日の宿は平屋建てのビジネスホテル。外観は昔のペンション風、部屋の中は昭和にタイムスリップしたようなデコレーション。備え付けの家具も古いし、ベッドのスプリングもかなりへたっているけど、親切に自転車を室内に保管してくれたので、まあいいか(笑)。エアコンの効いた部屋でぐっすり睡眠。さあ、明日も頑張るぞ。
宿泊地:島根県江津市
走行距離:57.6km
総走行距離:9015.6km
DAY214「それぞれの旅スタイル」
今日も朝からくそ暑い(笑)。そして今日も日本海沿いの国道9号をひたすら行く。地図で見ると海に近いのだが、ずっと海が見えているわけではなく、内陸に入ると海の近くの道だということを忘れるくらい自然が深くなる。時々見える夏の日本海はため息が出るくらい美しい。道はアップダウン、短いトンネルを繰り返す。
コンビニに入ると珍しく同年代の自転車旅行者と遭遇した。話しかけると、里帰りを兼ねて山陰をツーリングしていることがわかった。自転車を見ると懐かしのランドナー、使い込んだブルプロのサドルにキャンピングキャリヤ、帆布製のサイドバッグ、トークリップ&トーストラップなど、タイムカプセルから飛び出してきたよう。
さらに話を聞くと宿泊は民宿だという。これぞまさに昭和の旅。僕たちは令和製のeバイクに最新ウエア、宿泊はネットカフェ、民泊、ゲストハウス、ビジネスホテルなど色々。同世代の自転車旅でもスタイルはバラバラ。どちらにしても、一番大切なのは自分が好きなスタイルの旅をするということなんだと思う。
順調に距離を伸ばし、道の駅『キラキラ多伎』に到着した。海水浴場が隣接していることから施設も駐車場も大賑わい。夏休みを楽しむ家族連れ、子供たちでごった返している。お弁当を買って休憩所で食べるが、入れ代わり立ち代わり人がやって来るので落ち着かない。
再び走り始める。出雲市に入る広々とした平原の景色に変わった。今日は安いホテルが見つからなかったのでネットカフェ泊り。かなり混んでいたがヒロコと続き番号のブースを無事確保できた。ソフトを食べたり、シャワーを浴びたり、パソコンでオリンピックを観たり、エアコンの効いたブースでリラックス。旅の初めの頃はネットカフェに難色を示していたヒロコだが、最近は「意外と快適だよね♪」とすっかり前向きになっている。さすが女性は適応力が高い。
宿泊地:島根県出雲市
走行距離:77.7km
総走行距離:9093.3km
DAY215「縁結びの神様出雲大社へ」
マクドナルドで朝食を食べてから出雲大社へ向かった。30分ほどで到着。駐車場に自転車を停めて境内へ入って行く。巨大な大注連縄がある神楽殿を参拝。続けて拝殿、八足門と進んで行く。大社造りと呼ばれる日本最古の神社建築様式の御本殿。厚い桧皮葺きの屋根が美しい。出雲大社は、縁結びの神様。全てのご縁に感謝、これからも大切にしていこうと心に誓った。
その後は周辺を散策。歩いていると境内のあちこちに可愛いウサギの像があることに気が付く。“因幡の素兎”がモチーフとなった大国主大神さまとウサギの青銅の御像があったり。出雲大社とウサギの縁が深さを感じる。日本一周のひとつの目標だった、日本を代表する2つの神社『伊勢神宮』と『出雲大社』を訪問することができた。これはふたりの忘れられない思い出。さあ、次へ進もう。
今日の目的地、米子へ向かう。しばらく走ると左手に穴道湖が見えてきた。日本海と接続した汽水湖で日本では7番目の大きさを誇る。西日本有数の水鳥の渡来地として知られていて、240種以上の鳥類が生息するといわれている。
湖畔沿いを走り続け松江市内に着くと、湖畔のあちこちにロープが張られていた。今日は『松江水郷祭湖上花火大会』の開催日なので、その会場準備らしい。数日前、松江で泊まりたいと思い予約サイトで宿を探したのだがどこも満室、その理由はこの花火だった。結局、米子に泊まることになったのだが、花火大会も見たかったなーと後ろ髪を引かれながら、米子へ向かった。
島根県と鳥取県の県境で古そうな石碑を発見。小さなことだがたまにこういうのを見つけると嬉しくなる。米子のビジネスホテルは、何とフロントが長い階段を上がった2階にあった。荷物を運ぶのにこの階段を何往復もするのか…… 大変そうだなと思っていたら、受付の人が2階に自転車を置いてもいいと言ってくれた。さらに親切なことに自転車を2階へ運ぶのまで手伝ってくれた。感謝感謝だ。何よりも先に僕たちのことを考えてくれたこと、型にはまらず、柔軟な対応をしてくれたことが嬉しかった。
宿泊地:鳥取県米子市
走行距離:79.0km
総走行距離:9172.3km
DAY216「オリンピックに刺激を受ける」
疲れていたのか昨夜はテレビを点けたまま寝ってしまった。やはり暑いというだけでかなり体力を奪われるらしい。米子を出たら6日間連続走行になるので、連泊をして体力を温存することにした。
テレビではオリンピックの模様が流れている。国や人種も関係なく、人間が身体を使って何かに挑戦する姿に感動する。僕たちもオリンピック選手には程遠い存在だけど、最後まで走り続け、この旅を成し遂げようと改めて思った。ヒロちゃん、これからもよろしくね!
宿泊地:鳥取県米子市
走行距離:0km
総走行距離:9172.3km