60歳を過ぎた夫婦によるeバイク日本一周。妻のヒロコはスポーツも運動も嫌いな超インドア派。初めての自転車旅が今回の日本一周。果たしてどうなるか?不安があったが、電動アシストとのおかげで無事、東日本を走り切った。今年4月から西日本一周の旅。神奈川から西へ西へと向かい、関門海峡までやって来た。
DAY156「関門トンネルを歩いて九州上陸」
下関は歴史を感じる建物がいくつかある。西日本初の鉄筋コンクリート造りの『旧秋田商会ビル』や国内最古の現役郵便局『下関南部町郵便局』、国指定の重要文化財になっている『旧下関英国領事館』などをeバイクで訪ねて回る。どれも趣があり、絵になる。写真に収めるといよいよ関門海峡へ向かう。
関門海峡を自転車で越える唯一の方法が『関門トンネル人道』。人と自転車、原付(50cc以下)用のトンネルで、自転車と原付は押して越えることになる。通行料20円を払いエレベーターで地下55mへ。後から賑やかな小学生らしき団体がやってくる、追いつかれると大変なことになりそうなので急ぎ足で進んでいく。無事県境を越えて福岡入り。
地上に出ると九州の空気を吸い込み、走り出した。今日の目的地は中津だが、その前に門司港に立ち寄る。明治初期に開港した門司港は、大正ロマンを感じるレトロな建物が多く残っている。特に門司港駅の駅舎は素晴らしいので、ぜひヒロコに見てもらいたかった。連れて行き色々案内するがどれも「ふ〜ん」と反応は薄め。まあこんなこともあります(笑)
山を越えて新門司港側へ出ると県道25号で南下する。バイパスのような広いところもあるが、路肩のない狭い場所があったり、走りにくい。トレーラーが多いので、巻き込まれないよう距離感を保ちながら進んでゆく。
「中津といえば唐揚げだよね♪」とヒロコと話していた。ところが調べてみるとほとんどのお店が持ち帰り専門。どうしようか?と思っていると、テーブルを置いた唐揚げ屋を道沿いに発見。ここだ!と滑り込んだ。中津市の手前の豊前市だけど、まあいいでしょ。お弁当を2つ買うと、嬉しいことに店主さんが味噌汁をサービスしてくれた。唐揚げは衣はカリッとサクサク、肉はジューシー。ニンニクが効いていて美味しかった。さすが本場。ふたりとも満面の笑顔になった。
宿泊地:大分県中津市
走行距離:74.2km
総走行距離:6983.6km
DAY157「別府温泉で地獄めぐり」
朝、自転車に荷物を積み込んでいると気温が高く額に汗が滲んできた。これまでは朝は少し寒かったのに、今日は薄手の長袖と半袖の重ね着でちょうどいい、ついに夏が来たか。
別府に向かって国道500号を走っていると、小さな揚げパン屋があった。立ち寄ると女性が明るい笑顔で迎えてくれた、揚げパンを買うと「自転車ですごいわね♪」と言いながらアイスコーヒーをおまけしてくれた。さらに「この先はアフリカンサファリまでは上り坂だけど、その先は別府まで下り坂よ♪」と道の情報まで教えてくれた。
よし頑張ろう。アフリカンサファリを目指してひたすらペダルをこぎ続ける。標高500mを超えたところで大きな象のモニュメントが現れた。やった、上り切ったぞ。ヒロコと一緒に喜んだ。少し進むと道沿いに『十文字原展望台』の文字があった、横道へ入ってゆき展望台に立つと、息をのむような大パノラマが広がっていた。眼下に別府と大分の街並み、そして別府湾、遠くに四国まで見える。「これは絶景!」「すごいね!」ふたりとも大興奮だった。
午後3時過ぎに別府温泉に着いた。時間に余裕があったので『べっぷ地獄めぐり』をすることにした。日本屈指の温泉地、別府では各所で熱湯や噴気、熱泥などが湧き出す場所をめぐることを地獄めぐりと呼ばれている。7つの地獄に入場できるチケットを購入すると、海地獄、鬼石坊主地獄、かまど地獄などなど……すごい名前の地獄と順にめぐって行った。それぞれが温泉公園のようになっていて、泥沼から温泉がぐつぐつを沸いていたり、お湯が赤かったり、白かったり、7つ地獄が全然違う。まさに温泉のアミューズメントという感じで楽しむことができた。ヒロコは初めてだが、想像以上に楽しんでいた。
宿泊地:大分県別府市
走行距離:62.4km
総走行距離:7046.0km
DAY158「別府冷麺を食べてみた」
今日は別府に連泊。日中はフードコートへ行き旅ノートの原稿書き。お昼は名物グルメの『別府冷麺』を食べに『別府冷麺一番』というお店へ。どんぶりに冷たいスープと丸麺(蕎麦粉入り)が入っていて、その上に牛肉チャーシュー、キャベツのキムチ、ゆで卵、ネギ胡麻などが載っている。食べてみると麺はもっちり系、盛岡で食べた冷麺とは一味違う冷麺だった。スープにコクがありとても美味しい。日本の食は奥が深い。
宿泊地:大分県別府市
走行距離:0km
総走行距離:7046.0km
DAY159「竹瓦温泉でリフレッシュ」
朝から激しい雨が降っている。今日、九州南部と四国が梅雨入り、大分県も数日中に梅雨入りするだろう。この雨ではどこへも出かけられないので別府で連泊。せっかくなので宿の近くにある『竹瓦温泉』へ行ってみる。別府を代表する温泉で、唐破風造の屋根のかかった建物が美しい。天井の高いロビーもレトロでいい雰囲気。それより何より、昼間からの温泉はとても贅沢で最高に気持ちがよかった。
宿泊地:大分県別府市
走行距離:0km
総走行距離:7046.0km
DAY160「九州名物HOTEL AZ」
雨が上がったので出発する。海沿いの国道10号で大分市へ向かう。1車線以上もありそうな広い歩道を、海を眺めながらゆっくり進んでゆく。
今日は曇りの予報だったが徐々に晴れ間も出てきて、気温はぐんぐん上昇。ついにTシャツ一枚で走れるようになった。数日前から週間天気予報は連日の雨マーク、今日も雨を覚悟していたが、結局一度も振られることなく、豊後大野市のホテルに到着した。
今日の宿はこれまで道沿いで何度も見かけ、気になっていた『HOTEL AZ』にチェックイン。庶民的な雰囲気で部屋は2段ベッド。ツインもあるがこちらの方が安いのでこちらにした。早い時間に着いたので部屋でゆっくり過ごす、夕食は近くのスーパーで買ってきた惣菜で簡単に済ませた。
宿泊地:大分県豊後大野市
走行距離:45.6km
総走行距離:7091.6km
DAY161「森の中で手作りジブリに出会った」
今日は宮崎県日向まで、距離があるので早めに起床した。ホテルが朝食付きだったのでお腹いっぱい食べて出発。町を出ると緩やかな上り坂が始まった。深い緑の山の中を進んでゆくとトンネルが連続、最後に三国トンネルを抜けると下り坂になった。
珍しく前方に荷物を積んだ自転車旅人が見えた。追いつくと走りながら声をかけた。「こんにちは、今日はどこまでですか?」「行けるところまでです〜」と笑いながら応えた。緩い上り坂、僕たちの方がペースが速いのでそのまま先行、先に道の駅宇目に到着した。話がしたいなと思ったので休憩しながら自転車旅人を待ったが、ルートを変えたのか現れなかった。
国道326号。山の中を走っていると、ジブリ映画に出てくるキャラクターらしき像が森の中に立っていた。近くに人がいたので自転車を止めて声をかけた、趣味で作ったものらしく、写真もとってもいいと言ってくれた。キャラクターたちと一緒に記念写真。ジブリ映画に紛れ込んだような不思議な時間を過ごした。
道の駅『北川はゆま』で買ったお弁当をベンチで広げ、昼ごはんにする。普通のお弁当だが、旅の空の下、ヒロコとふたりで食べると美味しく感じる。今日は豊後大野を出た後はずっと山の中。そういえば今日は2つの道の駅以外で食事ができそうなお店をひとつも見かけなかった。今日は九州屈指の山越えルートだったことを実感した。
宿泊地:宮崎県日向市
走行距離:75.0km
総走行距離:7166.6km
DAY162「細島灯台と願いが叶うクルスの海」
ホテルを出ると『日向岬』へ向かった。朝イチで長い上り坂はきついがeバイクなので何と進んで行ける。海岸沿いから坂道を上りきると駐車場が現れる。ここから先にある『細島灯台』へは歩いてゆくようだ。10分ほど歩くと広い海と大きな空に白い灯台。気持ちのいい景色が広がった。頑張って走ってきてよかったね。
別の展望台から『願いが叶うクルスの海』が眺めた後、再び国道10号へ。道の駅『日向』で休憩、ついで空気入れを借りてタイヤをパンパンにしておく。国道から少し外れた美々津入って行くと、タイムスリップしたような町並みが続いていた。写真などを撮っていると、ヒロコが建築物を管理している女性から「2階が面白いのよ」と声をかけられた。ふたりで建物の中を見学させてもらう。小さな階段を登ると2階には隠し部屋、さらに天井の高さが違う部屋や、外からは見えない格子があったり、凝った仕組みがいっぱい、想像以上に面白かった。
国道10号を走るがどうも落ちつかない。なぜなら、宮崎の宿はネットで決済をしたのだが、昼を過ぎても届くはずの部屋番号や入室番号が届かないのだ(民泊でセルフチェックイン方式)。3時を過ぎても来ない。メールをしても返信なし。まさか、詐欺か!? ついにやられたか。諦めかけた時、スマホがブルッ。開くと宿からのメールだった。よかったー。ホッと胸を撫で下ろした。
グレーの雲を見上げながら「お願いだから、降るなよ」「頼むから、宿に着くまで我慢してくれ」祈ったが、願いは叶わず雨が落ちてきた。久しぶりにカッパを着る。その後雨は本格的になり、車の水飛沫を浴び、全身ずぶ濡れで宮崎の宿に到着。今日は色々疲れた1日だった。
宿泊地:宮崎県宮崎市
走行距離:83.4km
総走行距離:7250.0km