還暦を超えた夫婦がeバイクで日本一周の旅を始めた。スポーツマンとは程遠いふたり、特に妻のヒロコは運動嫌いで超インドア、途中でギブアップしないか心配したが、約3か月間をかけて東日本を走り切った。今年4月からスタートした西日本の旅、神奈川から東海を走り、関西を越えて岡山までやってきた。
DAY123 国産ジーンズ発祥の地『児島』へ
4日間連続走行で疲れが溜まっていたこと。さらに直島を歩きまわったこともあり、今日はお休みにする。eバイクは電動アシストがあるとはいえ、体力を使ってこぎ進んでいくのは自転車と同じ。休息も必要なのです。
午前中は児島でお世話になっているヒロコの友人、いぶちゃんが車で王子が丘の展望台へ連れて行ってくれた。標高234mの小高い山に展望台とカフェがあり、広い窓から見える景色は最高に素晴らしかった。瀬戸内海に浮かぶ大小の島々、瀬戸大橋、遠い四国の町まで一望。壮大なパノラマを満喫した。
『お休み』といいながらも、午後は図書館やネットカフェで旅ノートの原稿書き。その合間に“児島ジーンズストリート”を歩いたり、コインランドリーへ行ってお洗濯したり、忙しく動き回ることに笑 まあ、これが僕たちの旅のスタイルなんだよね〜
宿泊地:岡山県倉敷市
走行距離:18.1km
総走行距離:5798.4km
DAY124 江戸の風情が残る倉敷美観地区へ
今日は晴れ、絶好の観光日和なのでeバイクで17km離れた古い町並みが残る倉敷美観地区へ出かけた。今はゴールデンウィークの真ん中、どこへ見ても観光客がいっぱい。倉敷川沿いの通りや裏通り、どの通りも歴史を感じる美しい建物ばかりなのだが、人が多くアミューズメントパークを歩いているような気分だった。
eバイクで走るのは大変なので歩いて回る。少し外れた場所で見つけたカフェ“七明縁”で一休み。ようやく静かになった、インドカレーや豆乳ヨーグルトなどを食べながら、店主の女性とお店を始めたきっかけや苦労話などおしゃべり。ゆるい時間を楽しんだ。
再び町をブラブラ。昼を過ぎると暑さが上昇、Tシャツ1枚になった。アイビースクエアへ行くとビールフェスをやっていた。僕は下戸だが、こんな暑い日に飲むビールはきっと格別だろう。ヒロコは呑める口なのだが今日は自転車。ソフトクリームを食べたし、お土産も買った、さあ、そろそろ帰ろうか。
宿泊地:岡山県倉敷市
走行距離:35.9km
総走行距離:5834.3km
DAY125 アートの島経由、日本一長いアーケード商店街へ
宇野(岡山)〜高松(香川)のフェリーが5年前に廃止になったことが数日前にわかった。これまでオートバイの旅で何度も使っていたメイン航路なので、今もあるだろうと勝手に思い込んでいた。瀬戸大橋を考えれば、廃止も当然の流れ。ということで、直島を経由して高松へ渡ることになった。
4日間もお世話になった、いぶちゃんとお父さんにお礼を言って児島を後にした。まずは宇野港からフェリーに乗って直島へ。3日前は観光客でいっぱいだった直島、今日はゴールデンウィークの最終日とあって観光客もまばら。とても静かで、同じ島とは思えなかった。
高松ゆきのフェリーが出るまで時間があったので、前回見学できなかったアート満載の直島銭湯『I❤︎湯』を見学、お昼ごはんを食べたり、ゆっくり過ごした。
約1時間フェリーに揺られて高松に上陸。宿に荷物を下ろして町をブラブラ、アーケードに入り歩き始めるが歩けど歩けど終わらない。どこまでも続いていて交差点に出ると、さらに左右にアーケードが延びている。さすが日本一の長さを誇る高松中央商店街!
最近はどこも大型ショッピングセンターが中心だが、アーケードは個性豊かな個人商店がいっぱい。「えっ、ここ何屋さん?」「この店にお客さん来るのかな?」「あっ、美味しそう!」ふたりで笑いながら、冗談を言い合いながら、楽しく歩いた。
宿泊地:香川県高松市
走行距離:17.9km
総走行距離:5852.2km
DAY126 讃岐うどん「マルタニ製麺」へ
いよいよ今日から四国の旅が始まる。香川といえば“讃岐うどん”。今日は丸亀まで行くのでその途中で立ち寄れそうなうどん屋をいくつかピックアップした。1軒目の“うどん宮武”へ行くと、ガーン! まさかの臨時休業。忙しかったゴールデンウイークの代休らしい。
気を取り直してネット検索で見つけた、近くの店“マルタニ製麺”へいってみる。小さいお店で、いかにも地元のうどん屋という感じ。これは期待値大だ。僕は“冷やかけ”とおでん、ヒロコも“冷やかけ”とイカ天を選んだ。食べてみるとシコシコ強い腰のある麺で喉にドーンとくる。これぞまさに、僕たちが求めていた讃岐うどん。ふたりとも満面の笑顔になった。
調子が出てきたところでもう一軒。立ち寄った“桑島製麺所”はセルフではなく、腰もやや弱かったが、さすが香川県と唸りたくなる、美味しいうどんだった。
おにぎりのような美しい形の山が、香川県を代表する“讃岐富士(飯野山)”。記念写真を撮ると、今日の宿“うえる亀ゲストハウス”へ向かう。宿主の中島さんとは東京の海外バイクツーリングのイベントで会って以来なので約10年ぶりの再会となった。顔を見るのは久しぶりだが元気そう。
夜は再会を祝って中島さんが丸亀の名物“骨付鳥”や海鮮料理などご馳走してくれた。また席には中島さんの友人である、さぬきうどんライターの百々さん、香川に移住してゲストハウスBB LODGEを始めたという、ゆいさんも合流、賑やかな夜となった。中島さんありがとうございます♪
宿泊地:香川県丸亀市
走行距離:42.9km
総走行距離:5895.1km
DAY127 うどん、丸亀城、讃岐財田駅と惜別
丸亀に連泊。香川の面白いのは朝から開いているうどん屋がたくさんあること。朝ごはんを食べに近所の“綿谷うどん”へ行ってビックリ、関東ではあり得ない100席以上もある巨大なうどん屋だった。さらにかけうどんは小サイズでもボリューム満点。ゲソ天も大きく朝からお腹一杯になった。
そのまま歩いて“丸亀城”へ。天守から丸亀の町を眺め、午後は中島さんの車で近々取り壊される鉄道駅舎“讃岐財田駅”を見に行った。その後、昨日会ったゆいさんの“BB LODGE”へ。10日前にオープンしたばかり、できたてホヤホヤのゲストハウス。内装や庭などゆいさんらしさ、可愛さ満点。これからどんな人たちが、どんな思い出をこの宿で作っていくのだろう、1年後、5年後のBB LODGEが楽しみだ。
宿泊地:香川県丸亀市
走行距離:0km
総走行距離:5895.1km
DAY128 うどんは20年前の記憶を呼び覚ます
ゲストハウスの中島さんから聞いていた、土器川沿いの歩行者&自転車道路で南へ向かった。広い空の下、順調にeバイクを走らせる。午後には徳島県に入りそうなので、最後に美味しい讃岐うどんが食べたい。ルートの国道438号沿いに『谷川米穀店』という知る人ぞ知るうどん屋がある、そこを目指すことにする。
ところが長い上り坂が続き思うように距離が伸びない。営業時間は午後1時まで、間に合うか不安になってくる。もしも間に合わなかったら、いや、そんなことは考えたくない。その時の精神的、肉体的ダメージが大きすぎる、不安を打ち消すように必死にペダルをこぐ。
「見えた!」「やったーっ、間に合ったー!」頑張った甲斐あって間に合った。谷川米穀店は山の集落の一角にある小さなお店。ほぼ民家のような外観なので、知らない人はお店とは気が付かないだろう。僕は20年前のかすかな記憶があるだけだったが、見た瞬間にここだ!と思い出した。
ここのメニューはうどんの小と大、生卵のみ。出汁はなく、醤油をかけて食べるスタイル。暑かったので『冷』を頼んだが、飲み物のようにうどんが入ってゆく。シンプルに美味しい。小麦粉の香りと、麺のコシと喉越しを味わう、うどんとはそういうのもと言っているような気がした。ご馳走様でした!
国道438号はその後も上り坂が続いた。しばらく進むとトンネルが見えてきた。峠の三頭トンネルだ、これを抜ければ徳島県。下り坂のカーブをいくつか曲がると吉野川に沿って伸びる県道12号に出た。川に沿って東へ進んでゆく。今日の宿泊地、『うだつの町並み』が残る脇町に4時前に到着した。
伝統的建造物が並ぶエリアに入ると、まるでタイムスリップしたよう。趣のある建物が次から次と現れる。その美しさに心を奪われる。日本一周の宿泊地に古い町並みが残る場所を選んでいるわけではないのだが、このような場所にくると日本の伝統を感じられるので嬉しい。
宿泊したゲストハウス『のどけや本館』も古い旅館を使った宿で趣があり、レトロ感が満載だった。今日は僕の誕生日、夜はリクエストで少し離れた場所にあるインドカレー店へ行き、カレーとラッシーでお祝いをした。忘れられない旅の思い出がまたひとつ増えた。
宿泊地:徳島県美馬市
走行距離:62.0km
総走行距離:5957.1km
DAY129 うどん>徳島ラーメンへ
ゲストハウスを出て少し走ったところにレトロな劇場『オデオン座』があった。見学に入ると、案内人が現役の小劇場で、演歌のショーが行われたり、映画のロケに使われたこともあると教えてくれた。地下や控室など普段見られない場所を見学できるのが面白かった。
吉野川の堤防に沿って延びた道を使って徳島市内へ向かう。青空で天気はいいのだが、とにかく風が強い。それも向かい風なので思うように距離が伸びない。徳島の友人やまちゃんが昼ごはんを一緒に食べようと誘ってくれているのだが、約束のお店になかなか辿り着けず、着いたのはランチタイムを大きく回り、午後2時になっていた。やまちゃん、すみません。
徳島ラーメンの店『東大』で、これぞ徳島ラーメンという感じの濃厚とんこつ醤油ラーメンを堪能する。やまちゃんとは、10年前の旅からの付き合いで、徳島に来る度に美味しいお店を紹介してくれたり差し入れをくれたり、優しい人なのだ。今回も応援に駆けつけてくれ、感謝です。
阿南では、同じようにeバイクツーリングを楽しんでいる伊達さんと2年ぶりに再会。学生時代によく来たという洋食店へ行き、ハンバーグを食べながらお互いの近況やeバイクの話をした。伊達さんもeバイクで日本一周をしたいのだが、なかなか時間が作れないらしい。そんな話を聞くとこれは僕たち夫婦の旅であると同時に、どこかの誰かの代わりに旅をしているのかもしれないと思うことがある。やまちゃんや伊達さんのように応援してくれる人がいて、疑似体験としてこの旅を楽しんでいる人もいる、そんな人たちの思いが僕たちのエネルギーとなって、日本一周の旅は進んでゆくのだ。
宿泊地:徳島県阿南市
走行距離:68.4km
総走行距離:6025.5km