- 1. 人気のPSシリーズがモデルチェンジ/BESV(ベスビー)
- 2. バリエーションが一気に増えて選ぶ楽しみが生まれたSmaChari(スマチャリ)
- 3. モーターサイクルメーカーのeバイクとは/YAMAHA(ヤマハ)
- 4. スポーツ自転車の経験がないユーザーにeバイクの魅力を伝えていく/PANASONIC(パナソニック)
- 5. 新型のVADO SL2(バドSL2)は余力あるクルーザー的なeバイク/SPECIALIZED(スペシャライズド)
- 6. いくつになってもサイクリングがしたい人のための絶品eランドナー/VELcletta(ベルクレッタ)
- 7. アシスト距離を伸ばしつつ安全性も高める回生技術/太陽誘電

2025年4月19日~20日、東京都江東区にある東京ビッグサイト 東6・7・8ホールにて、日本最大のスポーツ自転車フェスティバル「CYCLE MODE TOKYO 2025(サイクルモード東京2025、以下サイクルモード東京)が開催された。
サイクルモード東京ではロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイク、ミニベロなどの完成車から、ヘルメットやウエア、小物類などの多くのブースが出展。また、敷地の広さを生かした距離の長い試乗コースを設定し、各ブランドの最新バイクを体験できる試乗会も行われた。
そして、サイクルモード東京ではeバイクの普及を進めるための「eバイクEXPO」というeバイク専門コーナーを設けているので、本稿ではeバイクエリアで見つけた最新の情報を紹介していこう。



人気のPSシリーズがモデルチェンジ/BESV(ベスビー)
問・ベスビージャパン


ベスビーを代表するモデルと言えば卓越したデザイン性やパワフルなモーター、賢いアシスト制御などを持つPSシリーズだが、その魅力をさらに高めるニューモデルが登場。サイクルモード東京で初展示された。それが「PSA2」と「PSF2」だ。
新しくなったのはアシストの制御。ベスビーのeバイクにはユーザーの乗り方に合わせてアシストモードを自動で切り替えるスマートモードがあるが、PSA2とPSF2はアシスト制御のアルゴリズムがより高度になったラーニング機能付きのスマートモードになった。
このラーニングスマートモードは「個人ごと」の走らせ方を素早く(走り始めてから約15分ほど)、そして高度に学習するもので、スマートモードにセットしてあれば乗り手のペダルを踏む特性に合わせた「その人専用」と言える最適なアシスト制御をするようになっている。
さらにディスプレイも新型HMIディスプレイに進化。視認性を高めるとともに、取り付け位置をステムの位置から左手側へ移動。グリップを握った状態でもスイッチ操作がやりやすくなった。






JGR1.1用レンジエクステンダーが登場

グラベルeロードバイク「JGR1.1」の2025年モデルも展示されていた。デザインやパーツ構成に変更はないが、新たに専用のエクシステンダーバッテリーを設定。同時に車体側ファームウェアもアップデート版となった。
JGR1.1に新たに設定されたエクステンダーバッテリーの容量は198Wh。装備することでアシスト可能距離が195km(標準バッテリーのみは130Km)となるので、例えばキャンプしながらのロングライドでもバッテリー切れの心配なしで楽しむことができる。
そしてもうひとつ、eバイクの使い勝手を激変させる能力があった。一般的なエクステンダーバッテリーは走行時に車体側バッテリーが消耗したあとに給電するが、JGR1.1の制御では停車時、ペダリングを止めている滑走時、アシスト領域以上の速度で走行しているときなどの「電気の消費がない」ときにはエクステンダーバッテリーから車体側バッテリーへ自動で充電を行うようになっている。
そのため1度エクステンダーバッテリーを使うと、日常的は走行では車体側バッテリーの充電量は大きく減ることはないので、充電の回数も減る。また、エクステンダーバッテリーだけを部屋に持ち込んで充電。それをJGR1.1にセットすると「走行しながらの充電ができる」ので、電源がない駐輪環境であってもeバイクの充電に困ることはない。これはとくに集合住宅に住んでいる人にとって充電しにくさを解消するものとなるだろう。
なお、エクステンダーバッテリーが満充電の状態で車体側バッテリーを約半分充電できるので、車体側バッテリーを満充電(約90%充電)にしておきたい場合はエクステンダーバッテリーから2回充電すればいい。


バリエーションが一気に増えて選ぶ楽しみが生まれたSmaChari(スマチャリ)
問・本田技研工業

ホンダが開発するペダルバイクの電動アシスト化・コネクティッド化サービスのSmaChari(スマチャリ)。
これまではワイズロードが販売するRAIL DISC-e(レイルディスク-e)とRAIL ST-e(レイルST-e)がSmaChariを採用していたが、第3弾としてロードバイクのコーダーブルーム「FARNA DISC TIAGRA-e(ファーナディスクティアグラ-e)」が登場。4月19日より予約開始となった。
フレームサイズは3つ。430mm(適応身長155cm~170cm)、465mm(適応身長165cm~175cm)、500mm(適応身長170cm~190cm)。フレームはアルミ、変速段数は10速、重量は14.6kgとなっている。気になる価格は予価32万4500円だ。


SmaChariブースにはFARNA DISC TIAGRA-eのほかにもSmaChari搭載バイクが多数展示されていたが、これらはまだ発売の予定は決まっていない参考出品車とのこと。
展示されているモデルはすべて現在、ふつうのペダルバイクとして発売されているものだが、そこにドライブユニットやバッテリーが装着される。カタチとしてはこれで電動アシスト自転車化となるのだが、電動アシスト自転車として公道を走るためにはアシスト特性を日本の法規制に対応させる必要がある。そしてSmaChariは組み込む、自転車を選ばずに、後付けの電動化ユニットでも法規制に対応する仕様に仕上げるアプリなので、展示されているモデルはすべて法規制に対応する状態になっている。
それだけにいずれこれら参考出展車両も発売されるかもしれないが、このように様々な自転車を電動アシスト自転車化でき、さらに「ホンダ」という人気も知名度、信頼度もダントツの企業の製品なだけに今後はもっとSmaChari搭載バイクが増えてくると思われる。
なお、現在、ホンダが手掛けているのはアプリとバッテリーの構造の一部のみだが、開発チームはいずれ「ホンダ製モーター、バッテリーの開発も手掛けたい」と思っているそうだ。ユーザーとしてもそれはぜひ現実になってほしいだけに、Powerd by Hondaのeバイクに乗りたい人は(出るかはまったく不明だが)SmaChariの話題を広めていこう!







モーターサイクルメーカーのeバイクとは/YAMAHA(ヤマハ)
問・ヤマハ発動機

ヤマハのスポーツeバイクブランド「YPJ」では、2024年にWABASH RT(ワバッシュRT)とCROSSCORE RC(クロスコアRC)に、従来のユニットより小型軽量になったPWシリーズ S2ドライブユニットを採用。制御にはペダリングトルク、スピード、ケイデンス、角度をセンサーで計測して最適なアシストを行っていて、出力面では従来モデルよりトルクが約7%増えている。
また、BB部に付くセンターユニットタイプではユニットの厚みがあるためQファクターが広めになっていたが、S2ドライブユニットはアクスル長も従来モデルより22.8mmも短くなっているのでQファクターがスポーツバイクらしい幅になりペダリング効率が向上している。

ヤマハはモーターサイクルのメーカーで、公道を走るモデルだけでなく世界最高峰モーターサイクルレースに出場するレーシングマシンも開発している。
そしてモーターサイクルはフレームの中にエンジンを収めている構造を持つ乗り物で、そのフレームは複雑な形状を持ちつつも必要な強度や剛性を確保しつつ、操縦性がいいことも求められるものである。
YPJの設計、開発ではこうしたモーターサイクル作りで培った技術が盛り込まれていて、例えばeMTBのYPJ-MT Pro(YPJ-MTプロ)ではバッテリーをフレームで挟み込むような配置にしたり、サスペンションの取り付け位置も日本に枝分かれさせたトップチューブの間にすることで、フレームの剛性やサスペンションの動作を優先しつつ、デザイン的にもヤマハらしい先鋭的でスタイリッシュに仕上げている。
駆動力の伝達性能についてもモーターサイクル作りの知見が生きているので、ライダーの踏力とアシスト力がチェーンステー部などでぶれたりすることなくタイヤに真っ直ぐ力が伝わるような設計がされているというもの。加えてドライブユニットとアシスト特性の制御セッティングは、自社で開発しているので、フレームの性能と合わせて理想的なアシストを体験できるものとしている。





スポーツ自転車の経験がないユーザーにeバイクの魅力を伝えていく/PANASONIC(パナソニック)

XEALT(ゼオルト)は6月に2025年モデルの発売が控えているが、4月に開催されたサイクルモード東京には展示車が用意できずに2024年モデルが展示されていた。ちなみに2025年の情報は5月頃にパナソニックサイクルテックのHPで公開される予定という。とはいえ、ゼオルトシリーズも昨年に親子でeバイクライドを楽しむための「XEALT S3F」と子ども向けeバイク「XEALT S1J」を発売しているので新型の予定はなく、すべてのモデルにおいて基本スペックの変更はない。カラー変更などがメインのマイナーチェンジとなるそうだ。
2025年のXEALTは自転車に乗ったことない人をターゲットとし、eバイクに乗ることでこれまで知らなかったスポーツ自転車に乗ることで得られる感動を多くの人に知ってもらうようPRの活動をしていくという。
そのために自転車ユーザーを対象としたイベントではないところにも出展して、スポーツ自転車未経験の方がXEALTシリーズに触れてもらえる機会を増やしていくということだが、旗艦モデルであるM5やオールラウンダーのS5には高性能なGXドライブユニット(自社製ユニット)を搭載し、初めてスポーツ自転車に乗る人でもアドベンチャーなルートに挑戦できるスペックを持っているので、スポーツ自転車未経験者にはうってつけのモデル。そうしたモデルの存在が自転車好き以外の人々の目に届くところへ出ていくことはいいことだと思うし、幅広い層を相手にしても、品質やアフターフォローについても、生活の中に必ずひとつはあるだろう「パナソニック」の製品なので、自転車の知識がなくても高品質、安全、安心と思ってもらえるはず。こうした点も「XEALTが広がる」要素であることは間違いない。




新型のVADO SL2(バドSL2)は余力あるクルーザー的なeバイク/SPECIALIZED(スペシャライズド)

スペシャライズドブースでは発売されたばかりの新型VADO SL2が注目を集めていた。
VADO SL2は車体の剛性感アップや太くなったタイヤ、最大320WhとパワフルになったSL1.2モーターの搭載により、従来のVADO SLよりもタフに走れるeバイクになった。
カテゴリーはクロスバイクとなっているが性質はクルーザーよりといったところで、スペシャライズドでは、これまでクルマやモーターサイクルで通勤していたところを「VADO SL2に置き換えてもらいたい」と言うほど走りには自信を持つモデルとなっている。なお、VADO SL2についてはアメリカ本国も「Calling it an E-bike is an Insult(ただのeバイクとは呼ばせない)」というキャッチを付けている。
それにユニークな機能としては、車載コンピュータにApple(アップル)の協力により「探す」の機能を搭載。AirTag(エアタグ)がなくてもアップル製品の「探す」アプリでバイクの位置を知ることができるというものがある。



いくつになってもサイクリングがしたい人のための絶品eランドナー/VELcletta(ベルクレッタ)

クロモリフレームのランドナー専門店である自転車ベルクレッタからは、東叡社製のフルオーダーフレームにベルクレッタが独自に法規制対応させたドライブユニット、バッテリーなどの電動化ユニットを搭載したシン・ベルクレッタモデルを展示していた。
シン・ベルクレッタモデルは輪行ができるeランドナーで、写真のモデルはフレームが分割できるデモンタブルタイプで「ベル輪」と呼ぶベルクレッタの輪行用技術と合わせると短時間で輪行形態、そして走行形態にすることができる。
かんじんのアシストシステムはドライブユニットが最大トルク30Nmの270Wh。一充電の走行距離はエコモードで約100km。一充電での総上昇量が約1000mと公表されている。このユニットは後付けなので、ユニットにアップデートがあったときもユニットを載せ替えることで最新の性能にすることもできるので、高品質なフレームの利点と価値を生かして長く乗れるeバイクとなる。



アシスト距離を伸ばしつつ安全性も高める回生技術/太陽誘電
問・太陽誘電

コンデンサーなどの受動電子部品などを製造する電気機器メーカーの太陽誘電では、ペダル停止時やブレーキング時といった「減速」のエネルギーを電気に変える「電動アシスト自転車の回生システム」を開発している。
とはいえ、太陽誘電は電気機器メーカーなので、自社で電動アシスト自転車を製造しているわけではなく、同社の技術を自転車、製造をする企業へ販売するという立ち位置である。

さて、この回生というシステムだが、漢字の字面から内容が想像しにくくどうにもわかりにくいものであるが、要は発電する技術のことだ。
太陽誘電が開発している「フェリモ」と呼ぶ回生システムは後輪ブレーキをかけたときやペダリングを止めているときのいわゆる減速状態のときに、その状況をシステムが減速時であると判断をしたときに前輪に付けたドライブユニットでホイールの回転のエネルギーを発電に使用する。そして作った電気をバッテリーへ充電すると言う制御を行えるもので、つまり、走りながら電気を作れるので、搭載するバッテリーの容量以上にアシスト走行が可能となる。そのためフェリモを採用した電動アシスト自転車は長距離のアシスト走行ができると言うものになっている。

回生(発電)の度合いは自由に設定できるので、例えば多くの充電がしたいと言う車両の場合は、ホイールの回転力を多めに発電に回すことでそれが実現できる。ただ、考え方としては以前あったようなタイヤのサイドにダイナモを押し付けて発電するライトと同じように、回転抵抗となってしまうので、強めに回生を効かせた場合は滑走する距離が短くなる。
でも、それが例えば下り坂である場合、クルマやモーターサイクルで言うところのエンジンブレーキのような効果となるので、手でブレーキを握らなくても適度に減速されるようになる。これは重量が重くなる子載せ自転車での下り坂走行を安全に、そして楽に走ることにもつながるので、女性や子ども、高齢者が乗る電動アシスト自転車には相性のいい技術と言える。
