アシストの幅と質を高めるためにAI機能を搭載 次世代型のプレミアムeバイク「スマーロ」を知る
2023年4月に開催されたサイクルモードTOKYO 2023のステージにて公開されたAI搭載のスマートバイクがスマーロ。自転車としてはまだまだ新しいeバイクのさらに先を行くプレミアムなeバイクである。そんな話題性のあるスマーロを借り出すことができたので、今回は自転車ジャーナリストの難波ケンジさんに紹介してもらおう。
伝統的スポーツサイクルブランドがeバイクでやるべき事に悩んでいたれいめい期に登場し、今までの自転車の常識を覆すデザインと、都市居住者の要望にしっかりと寄り添った機能、そしてeバイクのメリットをうまく車体に落とし込んだ走りで、eバイクの世界にポジションを築いたBESV(ベスビー)。
そのベスビーから登場した新しいブランドがスマートバイクのSMALO(スマーロ)だ。
このスマーロは世界的なIT部品メーカーを母体とするベスビーの開発力を生かし、IoT(インターネット・オブ・ザ・シングス)、という、あらゆるものがインターネットにつながるコネクテッド社会を自転車に組み込んだ機能と、AI搭載の自転車が自分で判断する機能を盛り込んだブランドである。
そんなスマーロからはまず2つのモデルが登場した。ひとつはホリゾンタルフレームに28インチホイールを採用したシティeバイクのLX2。そしてもう1台が20インチホイールを採用した小径eバイクのPX2となる。
では、LX2の特徴から紹介していこう。まずはAIによる自動変速だ。車体に搭載したコンピュータは車速やケイデンス、登坂角度などの走行条件をモニタリングし、条件に合わせてドライブユニットと協調して、リヤ7段のシマノ製内装変速機を自動で変速する。
そのため、車速が上がるにつれてシフトアップしていくのはもちろん、減速し停車すると判断したら再発進しやすいギアにシフトダウンし、上り坂ではトルクに合わせた最適なギアをAIが判断して快適な走行を実現するものだ。
もうひとつの目玉機能がIoT機能。ベスビー スマートプラスアプリというスマホアプリと車体を通信で接続することにより、走行条件に応じた残り航続距離を算出など、さまざま機能が使用できる。
また、スマホ画面のロックアイコンをタップ&スワイプすることで、バイクに装着されたeロックの解除ができる機能(手動でコードを入力して解除も可能)がある。
なお、eロックが有効の状態で持ち上げられたり移動されるなど、異常な振動を検知すると警告音を発報することもでき、仮に持ち去られても車載GPSと4G機能によりバイクの所在地をリモートで確認することができるのだ。
さらにアプリケーションを通じて車体のファームウェア更新にも対応するなど、いままで一部のドライブユニットメーカーでしか実現できていなかった機能を持っている。
そしてもう1台がPX2。こちらは取り外し可能な365Whのリチウムイオンバッテリーと、20インチホイールを持ったコンパクトなシティモデルで、ベスビーの人気車であるPSシリーズのスマーロ版とも言える存在だ。
機能面では自動変速こそ装備されないが、AIによるアシスト制御やスマホアプリを使用する航続距離予測、通信を使ったロック機構など、LX2同様にさまざまな先進的機能を持つ車両である。
このように従来のeバイクとは違い多機能なスマーロだけに、購入するときはアフターサービスの体制が気になるが、前記したようにスマーロはベスビーのサブブランドなので、ベスビージャパンという日本法人にて同社のサポートを受けられる。これも特筆する点だ。
また、住宅内で充電することもあるであろうバッテリーはPSE規格に準拠したものなので安心して使用できる。それに電装部品には2年保証がついておりフレームは5年保証となっている。
日本市場の要望を聞いての製品作りと、サポートで信頼を手に入れてきたベスビーから登場したスマーロは、既存のスポーツサイクルブランドが実現できていない未来の機能を実装したブランドである。
スマーロのスペック
スマーロLX2
価格44万8000円
ホリゾンタルフレームに504Whの大容量バッテリーを搭載したLX2。後輪の内装変速機とフロントハブモーターの協調制御て自動変速と可変アシストを実現。車載4Gとスマホアプリでリモートロックやアップデートが可能。
DATA
カラー:ミッドナイトブラック、アークティックホワイト
重量:23.1kg
バッテリー:36V/14.0Ah 504Wh
充電時間:0~80%まで約2.5時間/0~100%まで約3.6時間(4A充電器)
アシスト設定:スマートモード(3モード)
変速:スマーロ Eシフト 7速(シマノNEXUS)
ドライブユニット:BESVオリジナル(フロントハブ)
ブレーキ:前後油圧ディスクブレーキ
タイヤ:28×2.0
スマーロPX2
価格39万8000円
20インチホイールにワイドタイヤを装着したコンパクトなeバイク、PX2はBESVの小径車の特徴であるギター型のフレームを採用し、取り外し可能なバッテリーを装着する。アシストはリヤハブモーター方式。
DATA
カラー:ミッドナイトブラック、アークティックホワイト
重量:21.4kg
バッテリー:36.9V/9.9Ah 365Wh
充電時間:0~ 80%まで約2時間/0~100%まで約3.3時間(4A充電器)
アシスト設定:スマートモード(3モード)
変速:シマノAltas 7速
ドライブユニット:BESVオリジナル
ブレーキ:前後油圧ディスクブレーキ
タイヤ:20×1.95
ひと目でわかるスマーロの特徴
スマホアプリとの連携でさらに高機能になる
BESV Smart plus APPは走行時は速度など表示するディスプレイとして使えるほか、GPSによる位置情報やバッテリー残量の確認が、離れた場所でも行える。また、バッテリー残量からアシスト可能距離の算出も行う。さらに変速機の微調整を行うなど非常に多機能。なお、アプリは無料だが、4G通信費は車両登録初年度は無料、2年目以降は月額350円(年払)の選択式となる予定。
SMALO×難波ケンジ
進化したスマートモードのアシスト制御やオートシフト機能 アシストの幅と質が大きく変わったスマートバイクの乗り味を体験
eバイクジャーナリスト
難波ケンジ
日本にeバイクを最初に持ち込み、紹介した人物として知られる自転車ジャーナリスト。小径車からロングストロークのMTB、トライアスロンまでオールジャンルで自転車を楽しむ。近年はメディア出演や講演などを通じて法律に適合したeバイクが社会に受け入れられるよう普及啓蒙に取り組む。
スマーロLX2
504Whの大容量バッテリーが入っているとは思えない細身のフレームデザインのLX2は、フロントハブにモーターが搭載される前輪アシストだ。そしてリヤハブは内装7段となり、AIの判断でアシストから変速まで全自動で行うというシステムとしては1歩進んだもの。
スマートモードで走り出してみると変速まで自動で行うのは新しい体験。オススメの走行条件は緩い坂道が連続する市街地でストップアンドゴーのあるような条件で、28インチホイールの転がりの良さと相まって、乗っていながら湯船につかっているような気楽な走りが楽しめる。
急な登坂に入るときの変速のスマートさにはアップデートの余地があるよう感じたが、スマートフォンアプリでファームウェアの更新が可能なのでそれも期待できるだろう。
大容量バッテリーを搭載しているためフレームサイズの小型化は難しいようで、身長172cmの筆者はサドルを1番下にすると適正なポジションを取ることができた。
走り自体はスポーツサイクルと言うよりクルーザーに近い感じの気楽なもので「流して乗る」という走りがピッタリとくる。前輪が引っ張っていってくれるフロントアシストの違和感はなく、むしろ前後輪で軸トルクが分散されるので安定した加速やコーナーリングが楽しめるのだが、バイク全体としてはリラックスした雰囲気の走りが似合う。
スマート変速はマニュアルモードにすることで変速を自分で行うことももちろん可能だが、基本的にはスマートモードに任せて使うのがこのバイクの正しい使い方。
ブレーキは前後油圧ディスクブレーキを装着しているので、制動力には不満はない。ちなみにブレーキレバーの脇にあるボタンを押すと電子音でクラクションが鳴らせる機能は新しく、従来のベルよりも人を驚かせないのがいい。
なお、大容量バッテリーを搭載しているので、10分に一度車載の4Gでクラウドと通信して車両の位置情報などをアプリと共有してくれる機能や、リモートロック機能などさまさざまなスマーロ独自のアプリケーション機能を余すところなく使うことができている。
変速操作から開放され、アシスト力を味わいながら都会を流す。そんな走り方がスマーロLX 2には似合っているだろう。
スマーロPX2
20インチホイールにベスビー車特有、ギター型のフレームを採用したスマーロPX2。
ハンドルにあるスマートボタンを押すと、AIがそのときのケイデンスやペダルトルク、スピードなどを判断して最適な出力でアシストしてくれるという機能を備える。
AIが判断するアシストということで乗ってみると、バイクが判断してアシスト力を決めてくれるので、ライダーは一定のペダリングをしていればよい。乗っていて考えることが減るので、気楽に流したいときは気持ちがいいものだ。
外付け7速の変速機はシマノ・アルタス。ロードバイク用などの高級品ではないが、1段1段クリック感を持って節度ある変速ができる点においては高級変速機と変わりなく、またAIによるアシストもあるから、変速機の多段一気変速はなくても困るわけではない。
デザインで目をひいたのはステム一体型のディスプレイだ。見やすくシンプルで高付加価値のパーツを自社開発できるところがPC用部品大手の BenQ(ベンキュー)のグループのベスビー(スマーロ)だからこそと言える。
もうひとつの特徴はフレームと一体のヘッドチューブから突き出た部分。ヘッドライトが内蔵されており暗くなると自動点灯する。ちなみにスマホアプリにてデイライト設定も可能だ。リヤフェンダーにはリヤライトが装備され、減速すると発光してブレーキライトとしても機能。
バイクのジオメトリーは、小径リヤモーター式を生かした短めのホイールベースに、若干寝たヘッドアングルを持つもの。
スポーティな走りよりもリラックスしたハンドリングと街乗りでの取り回しのよさを意識した仕上がりだが、そこそこにグリップのある幅太タイヤを装着するので、ベスビーのPS1と比べるとコーナリングの楽しさはPX2が上まわる。
アシスト力自体は余裕があるので、坂の多い街で乗ったとしても難なく走ることができるだろう。
国土交通省の型式取得済みバイクなので、安心して公道で走行できつつ、法律上限となる24km/hのギリギリまでアシストをしてくれたところから、スマーロPX2には高度なセンシング能力とその性能を生かすことのできるソフトウェアの制御の進化が見られた。