eバイク(電動アシスト自転車)の中でもクロスバイクと呼ばれるタイプ、いわゆる「eクロスバイク」が人気だ。とりわけ、税込で20万円台〜30万円台のモデルは狙い目で、多くの人が最初の一台目として考える価格帯だろう。そこで、その価格帯から厳選した5つのモデルを、一気乗り試乗してみたレビューをお届けしよう。
動画で見たい人はこちら
BESV JF1
BESV(ベスビー)は台湾発の先進的なeバイク専門ブランドだ。JF1はその代表的eクロスバイク。アシストを行ってくれるドライブユニットは後輪に組み込まれており、細身でスタイリッシュなデザインを実現しているのが特徴的だ。バッテリーは取り外し可能で、予備バッテリーを携帯するための専用ケースもオプション販売されている。最も大きいLサイズで、実測重量は上の写真の状態で17.2kg。大きいサイズでこの重量は、eクロスバイクの中でも軽い部類に入ると言える。
BESV JF1試乗レビュー〜強力アシストとシャキシャキした乗り味
アシストが比較的強力にグンと働くのがまず印象的だった。こぎ出しと坂道での加速感の気持ち良さがある。乗り味としては、シャキシャキとしているというか、ハンドリングがクイックで機動力のある感じがした。重量自体がこのジャンルの中では比較的軽量なこともこのシャキシャキ感に寄与しているだろう。また、ハンドルの幅が日本の道路法規に合わせて短めになっていることもその一因か。性能としては、まさにスポーツ自転車を地でいくものだ。
その一方で、バッテリーが取り外し可能で屋内で充電がしやすい・長距離のサイクリングで予備バッテリーを持っていける、オプション品としてドロヨケ・スタンド・キャリヤの用意があるなど、拡張性や利便性が考えられているのがこの自転車の価値だと思う。価格も30万円以内に収まるので、手が届きやすくコストパフォーマンスも5台中最大と言える。初めてのeバイクとして、そしてそのあともずっと乗り続けるためのeバイクとして、ベストな選択肢の一台と言えそうだ。
TREK FX+2
TREK(トレック)はアメリカの世界的に有名なスポーツ自転車ブランドだ。FXシリーズはその人気クロスバイクシリーズで、これはそれをeバイク化したモデル。大きな特徴は前後ドロヨケ・前後ライト・リヤキャリヤ・チェーンガード・キックスタンドをフル装備しているということだ。それでいて、まったく“ママチャリ感”のないスポーティなフォルムを実現。実測重量は18.1kg(Mサイズ)と、これだけの装備をつけていても比較的軽量に仕上がっている。
TREK FX+2試乗レビュー〜実用性とスポーツ走行性能を見事にバランス
ドロヨケ・キャリア・スタンド・ライト・チェーンケースをフル装備した、シティサイクルのテイストをした自転車なので走りは重たいのかと思いきや、意外にもすごく軽い。それでいて乗り心地が良く、ハンドリングが滑らかで癖がなくて、非常に操縦しやすい。アシストはガツンと効くタイプではなく、滑らかに、ジェントルに効いてくれるタイプだが、それがむしろ市街地の走行には適していると感じた。
eクロスバイクとして非常に完成度の高い乗り味を実現しつつ、かつシティサイクルとしてのテイストをうまく盛り込んでいて、それでいて見た目もかっこいいというのがこの自転車の価値であり、その点は5台中最も光っている。通勤や移動などの市街地走行での実用性に振りつつも、週末のサイクリングにも対応できる運動性能を求める人には、ドンピシャな一台と言えよう。
GIANT ESCAPE R E+
GIANT(ジャイアント)は世界最大規模の自転車メーカーであり、自社ブランドとしてのGIANTも世界展開する超メジャーブランドだ。ESCAPE(エスケープ)は日本でヒットを続けるクロスバイクの代名詞と呼べるシリーズで、本作はその名を冠したeクロスバイクだ。ポイントは最大200kmの長距離走行を可能にする大容量バッテリーと、スポーツ自転車に不慣れな人でも操縦しやすい設計だ。実測重量はちょうど20kg(Mサイズ)と、eクロスバイクの中ではやや重めだ。
GIANT ESCAPE R E+試乗レビュー〜静かで滑らかなアシスト感と乗り心地の高さ
まずいいと思ったのは乗り心地の高さだ。タイヤが極太というわけでもなく、重量も5台中最も重いので路面からの突き上げがきついのかな、と思っていた。しかし、タイヤが転がっていく感覚が非常にマイルドで振動吸収性が抜群だった。さらにドライブユニットも秀逸で、アシストは力強い一方で非常に滑らかかつ自然に働いてくれるうえに、静粛性が高かった。これは全モデル中トップだと感じた。
重量がやや重めな分、強靭なキックスタンドが装着されているのも良い点だった。駐輪するときの安定性と安心感が強い。また今回はバッテリーが切れるまで何km走れるかということはテストしていないが、このバッテリーの大容量さによる安心感も良い点だ。
これでいて価格は税込33万円と、お買い得感も高い。こちらも狙い目で万人におすすめできる一台と言っていい。
MIYATA CRUISE i 6180
MIYATA(ミヤタ)は歴史ある日本の自転車ブランドで、シティサイクルでなじみのある人は多いだろう。CRUISE(クルーズ)はその電動アシスト自転車のシリーズだ。この自転車の他にはない大きな特徴は、クロスバイク然としたルックスの中にサークル錠を初期装備していることだ。フロントライトも初期装備する。それでいて野暮ったい感じがせず、スタイリッシュにまとまっている。実測重量は19.2kg(49サイズ。上の写真の状態で計測)と大きいサイズによる数値ではあるが、バッテリー容量が大きい分か比較的重めと言える。
MIYATA CRUISE i 6180試乗レビュー〜性能のバランス高し。その中に“日本的実用性”をうまくミックス
走りについては全体的にそつがなく、バランスが高いと感じた。アシストの滑らかさと力強さ、操縦のしやすさ、乗り心地と、どれかが突出しているということもないが、悪い点がない。重量が重めだが、走りは意外に軽く気持ち良い。また細かい点となるが、ブレーキや変速関連の信頼性が求められる部品全体に日本のシマノ製パーツを用いており、ブレーキングの安心感や変速性能の高さ・確実性が備わっていると感じられ、それも良い点であり、一つの特徴と言える。
そしてこのサークル錠。やはり駐輪の際の使い勝手は抜群だ。いちいちロックを持ち歩かなくてよいのは本当に楽。クロスバイクとしてのバランスの良い走行性能を確保しつつ、“日本的実用性”も実現しているオリジナリティにこの自転車の価値がある。
SPECIALIZED VADO SL4.0
SPCECIALIZED(スペシャライズド)は、スポーツ自転車のジャンルでは世界屈指の人気を誇るアメリカンブランドだ。このVADO(バド)SL 4.0は、他のeクロスバイクとは一線を画したモデルで、まずもって見た目としてこれがeバイクだとは分からないほどスタイリッシュだ。こんなに細身なのに、しっかりとドライブユニットとバッテリーが組み込まれている。またフロントライトとテールランプも、非常にスタイリッシュに装着されている。当然重量も抜群に軽い。大きいLサイズで、実測重量は何と15.4kgだ。
SPECIALIZED VADO SL 4.0試乗レビュー〜走行性能が抜きん出ている!
これは乗ってみれば誰でも分かる。走行性能ということだけに関して言えば、これは頭2つ分は抜きん出ている。アシストの滑らかさと力強さ、走りの軽さ、乗り心地、操縦のしやすさなど、あらゆる点で気持ちが良い。アシストを試しにオフにしてみたが、それでも十分よく走ってくれる。グリップやペダルなど、細かいパーツもこだわってあり、そうした部品の使い心地の良さも光っている。
一方で、スタンドやドロヨケ、キャリヤ類は初期装備されていない構成と、スポーツ走行性能に特化しているタイプの自転車だということは言える。また、価格もほぼ40万円と高めではある。
平日の通勤や移動での使用はもちろんだが、どちらかというと休日のサイクリングを重視する人に向いた一台と言えそうだ。