パンクなどのトラブル、それに身体の調子を崩してしまったなどなど、サイクリング中に起こるトラブルで「もう走れない」となったとき、どうやって安心できるところまで帰るか?
自転車保険に加入している人も増えているので、保険に付帯するロードサービスを利用するという手段もあるけど、こちらで回収してもらえるのは乗り物のみ。依頼人まで乗せてしまうと「旅客」の扱いになってしまうので、例えオーナーといえど人を一緒に乗せることはできないのだ。
そんなときに頼りになるのがタクシー。そして利用したいのが「タクシー配車アプリ」だ。
このアプリは今いるところ(もちろん公道に面しているところ)までタクシーが呼べるし、自分の位置はGPSデータでタクシー側に伝わるので場所を指示する必要はない。サイクリング中であれば土地勘のないところに行っていることも多いだけにこれは便利だ。
さらに決済をクレジットカード払いの設定にすることも可能なので、現金の持ち合わせがなくてもタクシーの利用ができるという便利なものだ。
アプリを使うことでとても便利に利用できるタクシー。でも、どうせなら人だけではなくてeバイクごと運ぶことはできないだろうか? ロードサービスも便利だがトラブルへの備えは数パターンあったほうがより安心できるものだ。
そこで今回は東京都の広いエリアで国際自動車(kmグループ)というタクシー所業者団体に加盟する「親切タクシー株式会社(東京都杉並区)」さんにご協力いただいて、eバイクをタクシーに積むことについて調べてみた。
結論から言うとタクシーにeバイクを積むことは可能だ。ただ、タクシーは公共の交通機関なので運行には「道路運送法」という法律が適用される。そして、そのなかにはドライバーさんの権利として、「車内に収納可能であっても積載物が車内を傷めたり、汚すおそれがあるなどと判断した場合は乗車を断ることができる」という内容があることを覚えておいて欲しい。
そうしたことを踏まえると、サイクリスト側はタイヤや車体に付いた土や泥を落とすこと、内装を汚さないようギヤやチェーンにカバーを掛けるなどの対策が必要と考えるべき。タクシーを待つ間に準備をしておきたい。
タクシーにeバイクを積んでみた
つぎにタクシー車内への積み込みについて紹介。親切タクシーさんの協力により「トールワゴン型タクシー(ジャパンタクシー)」と「セダン型タクシー(クラウンコンフォート)」の2タイプのタクシーに持参したeグラベルロードバイクを積ませてもらった。
こちらがジャパンタクシー。トヨタ自動車が製造、販売しているモデルで、ジャパンタクシーとは「プリウス」とか「アルファード」と同じクルマの車名である。都市部を中心にセダン型タクシーから車両の入れ替えが進んでいるモデルだ。
開口部が広いスライドドアを採用するジャパンタクシーへの積み込みは容易だ。ただし、室内幅は1395mmなので前後ホイールの両端間の長さが約1720mmあるグラベルロードバイクはもちろんのこと、小柄なミニベロeバイクでもハンドルを真っ直ぐにしたままでは収まらないだろう。
そこで使用したのがシートの跳ね上げ機能。本来は車いす利用者がそのまま乗り込むためのもので、ジャパンタクシーであれば全車が装備している機能。
後席の座面を跳ね上げることでスペースが広くなり、ハンドルを大きく切ってタイヤが横を向いた状態でも収まるようになった。同じ方法を取ればミニベロeバイクも問題なく積めるだろう。なお、この積み方をすると後席には人が乗れなくなるので助手席に乗車させてもらうことになる。
ただ、気になる点もある。後席スペースのeバイクはタイダウンなどでフロアに固定しているわけではない。そのため加減速時やカーブの揺れで車体が動いたり倒れたりして内装を傷つけてしまうかもしれない。また、eバイク自体に傷がつくかもしれない。そんなときは次の方法を試してほしい。
フロントホイールを取り外して積み込む
そこでフロントホイールを取り外し、フォークをフロアに直にあてるようにした。その状態でリヤホイールを跳ね上げたシートの左端の「角」にあてるとさらに安定感がアップする。
仕上げに助手席を下げてシートバックでハンドルを抑えるようにした。この方法がベターとは言い切れないが、短時間で積み込みできるところは評価できる。いざというときに積み方に迷わないようこのページをブックマークするか、画面保存しておくことを勧める。
リヤラゲッジスペースに積み込む
次にリヤラゲッジスペースに積めるかも試してみた。こちらもフロントホイールを取り外せば収まったのだけど、画像を見てわかるようにスペースに余裕はない。手順としてはeバイクをひっくり返すようなカタチで持ち上げて、リヤタイヤをラゲッジスペースの角へ差し込むように入れてから積んでいく感じだ。
ラゲッジスペースに積んだ場合は後席に座ることができる。乗車中は手でフォークやフレームなどを握ってeバイクが動かないよう支えておきたい。また、積み方的にスプロケやチェーンが内装に触れやすいので汚さないための気づかいも忘れずに。
セダン型タクシーに積み込む
つぎにチェックしたのが、セダン型タクシーへの搭載。車両はトヨタ自動車のクラウンコンフォート。タクシーとしてはひと世代前のモデルになるので都内では数が減っているが、郊外では多く走っている車種である。
道路交通法には「クルマの全長の1.2倍以内であれば積載物がはみ出してもいい」という項目があるので、「安全な積み方」であればサドル部分が飛び出しても違反にはならないことも覚えておいて欲しい。シートポストを下げたり外したりするための工具がない場合はトランクを閉めない状態での積載をドライバーさんにお願いしよう。
撮影をした親切タクシーのクラウンコンフォートにはそうした積み方をするためのゴムバンドが装備されていたが、社内的に「必ず積んでおく」という規定はないそうなので積んでいない車両もあると言う。
また、タクシー会社によってはそもそもトランクが閉まらない積載をNGとしていることもあるようなので、セダン型タクシーを利用する場合はトランクが閉まらない積載が可能かどうか、クルマが来てから確認することになる。とはいえeバイク積載NGとなったとしても別のタクシーを呼べばいいだけのことだ。
以上がタクシーへの積載実例。おそらくどこも紹介したことがない初めて目にする情報だと思う。とくに積載画像は実際にタクシーを呼ぶことになった際、参考になると思うので記事のブックマークかページのスクリーンショットは撮っておいて、スマホですぐ確認できるようにしておくことを勧める。
タクシー配車アプリ「S.RIDE」
最後に取材に協力してくれた親切タクシーさんも呼べるタクシー配車アプリの特徴をもう一度紹介しておこう。
まず、アプリの名称は「S.RIDE(エスライド)」というもの。アプリを立ち上げると現在位置が地図上に表示され目的地の入力項目が現れる。画面下には車両指定のボタンもある。
最初は積載しやすいワゴンタイプを呼んでみる。近くにタクシーがいれば「到着まで●~●分」とメッセージが出て、あとは待っていれば来てくれるが、地域や時間帯によってはワゴンタイプが見つかりにくいときもある。しばらく探して見つからなければセダン型タクシーを選択するという具合だ。
アプリの初期設定でクレジットカード情報を登録する画面があり、ここで必要事項を入力するとアプリ経由のタクシー利用のとき現場での精算が不要になる。もちろん現金精算も選択できるが、現金の持ち合わせがないときでも距離を気にせず利用できるのは便利なことだろう。
こうした機能を持つタクシー配車アプリはほかにもあるので「S.RIDE」のサービスエリア外に行ったときのために、いくつかのアプリを探してダウンロードしておくとより安心。
サイクリング中の故障に備えるというだけなく、夏の時期は身体的な負荷も高い。それだけに「もしも」のことを考えて、いつも持ち歩くスマートフォンにタクシー配車アプリを入れることは有意義。「アリだな」と感じてくれたのならぜひ実行して欲しい。