旅行家・藤原かんいちが30日間で果たしたeバイク(YAMAHA WABASH RT/ヤマハ・ワバッシュRT)による佐多岬→宗谷岬、日本縦断3700キロチャレンジ旅。今回は総集編です。
藤原かんいちが改めて語る。日本縦断の裏話、YAMAHA WABASH RTのこと、感じたeバイクの魅力と欠点、これからのこと……
Q:改めて日本縦断を振り返ってみましょう。まずは、30日間で日本縦断達成おめでとうございます!
「ありがとうございます! 30日間というのは日本縦断の距離を3600kmに設定して、単純に30日間で割ったら1日120km。頑張ればギリギリ走れると思い目標にしました。
それまで1日150km前後走ったことは何度かあったのでいけるかなと、ただ、30日間連続で走ったことはないので、普通ないと思いますが(笑)正直できるかどうか、やってみなければわからなかった。それに、30日の間には雨や風の日もある、標高2000mを越える峠もある、60歳を超えているので体が最後までもつのかもわからない。想像もつかないことばかりでしたが、だからこそやってみたかった」


Q:実際に走ってみて、体力的にはどうでしたか?
「もともと筋トレとかスポーツが好きじゃなくて、さらにここ数年はイラストを描く仕事が中心になって、ますます動かなくなった。時々eバイクに乗るくらい、ほとんど家の中にいたので、筋力、体力にはかなり不安がありました。
それでも旅となると自然と体が動きだすのが不思議なところ。具体的には、最初の7日間で1000km近く走って、30日間は別として、日本縦断はできると確信しました。
旅の間は常に軽い筋肉痛でしたが、毎日毎日、eバイクをこぐのが楽しくて、疲れているんだけど『もう走りたくない!』と思ったことは一度もありませんでしたね。ほかと比べることはできないけど、電動アシストによる恩義も大きかったと思います」
Q:トラブルはありましたか?

「パンクは1回だけ。オートバイの旅でパンク修理は数え切れないほどしているので問題はありませんでした。予想外だったのは“尻痛”。これまでeバイクで1000km以上走っているのに、初めて痛くなった。どうにもならないので、広島のホームセンターでGEL入りのサドルカバーを購入、それを付けてからはかなり楽になりました。尻痛に悩んでいる人にはオススメです。
あとは“ギックリ腰”。松山市の朝、腰に激痛が走った瞬間『あ、終わった……』と思いました。それでも意地で激痛に耐えながら自転車に跨ったら、ペダルをこぐことができた。『よし、体がどうなってもいい、行けるとこまで行こう!』とペダルを回しました。無理をして動いたのが良かったみたいで、その日の夜にはかなり動けるようになりました。今回、ギックリ腰は安静にしているよりも、動かした方がいいことが実体験でわかりました(笑)
それからトラブルではないのですが、後半の福島県→宮城県は連日の雨と低温(最高気温14~5度)。いま思うと、一番疲れが出ていた時期で、精神的にも肉体的きつかった。走行距離も一気に80km台まで落ちて……正直、目標の30日間は無理かなと思いました。
その後、八幡平アスピーテラインで久しぶりに晴れて、大自然の景色も素晴らしくて、一気に元気が回復。走行距離も140kmまで戻った。それから2日後には北海道、ゴールが見えてきたことも大きかったと思います」

Q:日本縦断はホテルやネットカフェでの宿泊が中心、テントは持参しなかったんですか?
「キャンプは好きなので持っていこうか最後まで迷いました。ただテントやシュラフ、マット、自炊道具などで荷物が5~6kg重くなる。さらにキャンプ場だと充電できるかわからない。ここは距離を延ばすことを優先に考えて持参しないことにしました。
宿を決めるときも、毎日、どこまで行けるかわからないので、決めるのはいつも当日の昼過ぎ。スマホで“じゃらん”“agoda(アゴダ)”“Booking.com”など旅行サイトをチェック。場所、料金のほか、自転車を室内に保管できるか? などを基準に決めていました。
ネットカフェも良く泊まりました。予約がいらないし、シャワーも浴びられる。とても便利なんだけど、eバイクの盗難が心配でした。そこでネットカフェに泊まるときは平塚カメラマンのオートバイの前後輪に2つのワイヤー錠をがっちり繋げていました。
宿泊地として一番好きなのは旅人たちと出会えるゲストハウスやホステルですね。阿蘇の“阿蘇ベースバックパッカーズ”、尾道の“SINGAI CABIN”、金沢の“ポンギー”、富良野の“トマール”の4か所に泊まりましたが、どこも清潔で快適。料金も安い。eバイク旅の宿泊場所としてピッタリだと思います」

Q:荷物はかなりコンパクトにまとまっているように見えますが?
「スタート時は、リヤキャリヤに防水サイドバック2個と防水ザックを載せていました。それと小さなフロントバック。重量は合計30kgくらいありましたね。重かったのは予備バッテリーと充電器で約4kg。
アシストがあるeバイクとはいえ、長い上り坂や長時間走行は疲れるし、バッテリーの消耗も早くなる。車体への負担も大きくなる。軽い方がいいのは普通の自転車と同じなのでできる限りの荷物を削りました。それでも最初は荷物が多くて、かなり重かったので北海道用のウエアや撮影関連用品など、使わなそうなアイテム(10kg弱)は大阪から宅配便で送り返しました。これで随分軽くなりました」

Q:実際に3700kmの旅を共にしたYAMAHA WABASH RTはいかがでしたか?
「当初はフラットハンドルのYAMAHAのYPJ-TCでやる予定でした。ところが出発の約2か月前にYAMAHA WABASH RTが衝撃デビュー。見た瞬間『これで行きたい!』と思いました。バッテリー内臓フレームの最新デザイン、それもオンもオフも走れるグラベルロードですから、まさに日本縦断や旅のために生まれたeバイクだと感じました。実際、日本縦断後に回った北海道一周を合わせると計5000km近く走りましたが、僕のカンは当たっていました。
まず、アップ気味のポジションがゆっくり走るロングツーリングにピッタリでした。本当に疲れない。それからタイヤ。旅では荒れた路面を走ることもあります、そんなとき太いサイズの700×45cなら安心。エアボリュームがあるので、振動を吸収してくれるので疲れない。幅広のフレアーハンドルもコントロールしやすく、ダート走行で威力を発揮しました。剣山スーパー林道は荷物が重かったので快適走行とまではいかなかったけど、空身だったら楽しめたと思います。
それから36V-13.1Ahの大容量バッテリーにも助けられました。予備を含めて2本持参していたので『バッテリー切れ』ということは一度ありませんでした。これはロングツーリングの強い味方です。
ちなみにカタログデータでは最強アシスト『HIGHモード』で85kmとありますが、平らな北海道ではHIGHモードで140km以上走ったことがありました。逆に延々に上り坂が続いたときは32kmで終った(渋峠越え)こともありましたが(笑)。『おーっ、今日は距離が延びたぞー』『やばい、やばい、もうすぐ0%になる』などメーターを見ながら一喜一憂、最適なギヤの組み合わせを考えたりすることも、またeバイク楽しさだと思います」

Q:eバイクで旅をする利点、魅力は何だと思いますか?
「自転車との大きな違いは、電動アシストから生まれる、肉体的&精神的な余裕だと思います。苦しい上り坂だと自転車はこぐことで精一杯、周りの景色を見る余裕がないけどeバイクなら木々や草花の変化を感じながら走ることができる。見逃してしまいそうな景色、新たな発見に出会うことができるのが魅力です。
また、気楽に坂道や脇道へ入って行けるのもいいところです。普通なら坂道は避けたいと思うのですが(笑)、eバイクだと逆に行ってみたくなる。坂を上ってみるとメインルートからは見えない感動の絶景が広がっていたことがあります。これもまたeバイクだから見られた景色なのです。
それからあえてアシストモードを最小限にしたり、使わないで脚を鍛えてみたり。次の信号まで『アシスト禁止』とか『ecoモード限定』とか、ゲーム的に使って楽しむこともありました。
これまで乗っていたオートバイと比べると、歩道やサイクリングロードを走れたり、走れる範囲がぐっと広がりました。体を動かす気持ちよさは自転車の特権。運動で流す汗は特別です。もちろん健康にもいいし、ご飯も自然とおいしくなる。さらに血行が良くなるので頭が冴えて、いいアイデアが浮かんできたり……いいことづくしです。

Q:ではeバイクの欠点は?
「欠点は車重が重いこと。YAMAHA WABASH RTは約21kgあるので、ロードバイクのように気軽にグイっと車体を持ち上げて、段差を越えたりすることはできません。まあこれは荷物満載だったら、普通の自転車でも同じかもしれませんが(笑)
それから充電という制約があること。キャンプでも日帰りや短距離なら問題ないのですが、長距離の旅だと電源のあるキャンプでなければ宿泊ができない。荷物をたくさん載せて走れるeバイクはキャンプとの相性もいいので、将来的に電源があるeバイク用のサイトができたら嬉しいですね」

Q:次の旅の計画は?
「妻と2台のeバイクで日本一周をしたい。日本縦断で感じた、自転車が持っている、自然との一体感、体を動かす気持ち良さなどなど、eバイク旅の素晴らしさを彼女にも感じてほしいのです。体力差がある夫婦でもeバイクなら一緒に旅ができる。そして、体を使かって旅する喜びをたくさんの人に伝えていきたい。これは還暦オーバー夫婦の新たなる挑戦です」

来る2022年11月25日~27日に東京原宿にて旅を写真と車両、藤原かんいちのトークで伝える「E-Bike日本縦断の旅展」が開催されます! ぜひ遊びに来てください♪ 詳しくはhttps://e-bikejapan.com/event/6598/