eバイク旅ノート Vol.48 北海道放浪01 稚内→西興部

eバイク(YAMAHA WABASH RT/ヤマハ・ワバッシュRT)で日本縦断3700キロチャレンジ旅は6月14日、宗谷岬で完結。その後、自由気ままに旅した「北海道旅」のレポートです。

宗谷岬到着で日本縦断チャレンジは無事完結。晴れて自由の身となった僕は、北海道をしばらく放浪の旅をすることにした。ゴールした日は宗谷岬の近くの民宿に泊まり、翌日、稚内へ戻り放浪旅の準備を始めた。日本縦断では宿泊のシンプル化と軽量化のためにテントを持参しなかったが、この旅ではキャンプもしたいと思っている。稚内滞在中にホームセンターへ行きキャンプに必要なテント、シュラフ、マットなどを合計約1万円で買いそろえた。この値段だから高性能ではないけど、まあ大丈夫でしょう。

稚内では『ザステイ稚内』に宿泊。ドミトリー中心の宿泊施設なのだが、とても清潔で、キッチンやランドリー、屋根付き駐車場などもありとても便利だった。稚内駅前なのでバックパッカーも多く、毎日旅人とおしゃべりを楽しんだ。丸2日間かけて、日本縦断ゴール報告のハガキを描き終えると、いよいよ出発だ。

北海道放浪の旅で決めていることは、道東と道央をグルっと時計回りで一周すること。それから友人の浅野くんが西興部町で営んでいる『西興部ゲストハウスGA.KOPPER』を訪ねること。そして、宗谷岬ゴールに駆けつけてくれた小原さんが、北海道を旅するライダーのための交流の場として旭川市に作った『HOKKAIDER BASE』のオープンに立ち会うこと。それ以外はオールフリー! eバイクで気ままに北海道を楽しむぞ~♪

宿を出るとまずは稚内市内を散策。まずは、北海道遺産のひとつ『稚内港北防波堤ドーム』を訪問、それから赤白に塗られた稚内灯台が印象的な『ノシャップ岬』を訪ねた。6月は観光シーズン前なので人が少なくゆっくり見て回ることができた。稚内市内を離れるとオホーツク海方面へ向かった。宗谷岬への道は一度走っているので、海岸線ではなく内陸を東西に横切る道道1077号(稚内猿払線)で向かう。キャンプ用具が増えたので4~5kg重くなっているが、それほどペダルは重く感じない。これも電動アシストの利点だ。周りはひたすら緑の林が広がっている、車もほとんど通らない道をのんびり進んでゆく。

稚内港北防波堤ドーム
古代ローマ建築を想わせる『稚内港北防波堤ドーム』は、冬の北西越波防止のために建設された高さ14m、長さ427mの半アーチ式ドーム
稚内の鹿
稚内の町中で何度か見かけた野生の鹿。この時は、郵便局を出たら鹿が歩道を歩いていたのでビックリ。そのあとも商店街を普通に歩いていた
ノシャップ岬
ノシャップ岬(野寒布岬)にノサップ岬(納沙布岬)、クッチャロ湖に屈斜路湖(クッシャロ湖)。北海道は同じような名前が多いので要注意

午後4時過ぎにオホーツク海に出た。丁字路を右折、左手に海を見ながら国道238号を南下する。しかし、道道1077号は全長20km以上もあったのに、コンビニどころか自動販売機もなかった。さすが北海道。国道を1時間近く走るとようやくご当地コンビニ『セイコーマート』のオレンジ色の看板が見えてきた。町と町の距離が離れている北海道でセイコーマートは、まさに砂漠のオアシス。とくに移動速度が遅く、長距離を走れない自転車旅にとって貴重な存在になっている。猿払を出ると30km先の浜頓別まで何もないので、夕食用のパンと飲み物を買っておく。

何もない海岸線にポツンと黄色い建物が現れた。山の中ではないが、まさにポツンと一軒家という感じだ。外壁に書かれた『ライダーハウスやませ』の文字にペダルを止めた。『ライダーハウス』とはバイク旅行者ために作られた(または部屋の一部を提供する)簡易宿泊所。自前シュラフで雑魚寝が基本の旅人宿なのだが、近年どんどん閉鎖されている。それでも、まだいくつか残っていて、旅人たちの交流&宿泊の場として有効活用されている。

ライダーハウスやませ
何もない、オホーツクの海岸線の道にポツンと建っている『ライダーハウスやませ』。長距離を走れない自転車旅人の強い味方になっている

建物の前へ行ってみると無人で、ガラス戸に「宿泊を希望する人は○○まで電話してください……」と張り紙があった。管理人に電話をすると、今日の宿泊は可能だが、今日はもう出られないので翌朝、管理人さんが集金に来るという。もちろん異論はない。バンガローのような建物に荷物を運びこみ、コンセントでバッテリー充電。階段に座り、夕方用に買ったパンをかじりつく。日が沈むと元々少なかった交通量はさらに減り、静かになった。聞こえるのはオホーツクの波の音だけ。見上げると満天の星が輝いていた。

朝7時。管理人の秋元さんが軽トラでやってきた。支払いをしながらおしゃべり。ライダーハウスはライダーの数は年々減っているし、負担も大きいのでそろそろ閉鎖したいと思っているのだが「うちを頼りに来る人もいるから、なかなかやめられないんだ」と明るく笑った。秋元さんのような人たちがいるから、いまも若者たちはビンボー旅を続けられる(おじさん旅も含めて(笑))。本当に感謝の気持ちしかない。

再び国道238号を走り出す。30分程で猿払村に着くと、『エサヌカ線』へ入って行った。エサヌカ線は牧草地に中を一直線に延びる道で、電柱と看板もない『This is Hokkaido』のような道。北海道らしい気持ちのいい景色の中を走れることから、ライダーに人気がある。しばらく行くとまっすぐな道が目の前にドーンと広がった。「最高!」「デッカイドー!」叫びながらハイテンションでペダルをこいだ。

エサヌカ線
まっすぐに伸びる直線道路。どこまでも続く緑の大地。道路沿いに電柱も看板もない『エサヌカ線』は観光スポットのひとつとなっている

いいペースで進み9時過ぎに浜頓別町に着いた。浜頓別町は北海道宗谷総合振興局中部に位置する町で、町内にあるクッチャロ湖は多くの野鳥が集まることで知られている。『道の駅 北オホーツクはまとんべつ』で小休憩。昼ごはんにはまだ時間が早いので、再び国道238号へ戻りさらに南下した。

しばらく走ると前方に大きなトンネルが現れた。少し手前の左手に海岸線を走る旧道が見えたのでそっちに入って行く。旧道に入ると海との距離がぐっと近づいた。10分ほど走ると険しい岩山と崖の斜面に立つ灯台が見えてきた。北見神威岬灯台だ。あのままトンネルに入っていたら出会えなかった景色なのだと思うと、とても貴重な景色に感じる。

北見神威岬灯台
オホーツクトンネルを避けて、旧道を走っていたら白黒の『北見神威岬灯台』に遭遇。こんな素敵な景色に出会えたのもeバイクのお陰?

枝幸のセイコーマートでまたまた休憩。通称『100円パスタ』で軽く腹ごしらえをする。僕がこの『100円パスタ』と最初に出会ったのは2011年。セイコーマートの棚に並んでいるのを見たとき、まずその値段にビックリ。試しに買って食べてみると、想像以上の味とボリューム、これが100円で食べられるなんて信じられない! と大喜び。それからすっかりファンになった。明太子パスタやナポリタン、ペペロンチーノに塩焼きそば、焼うどんなど種類も豊富。久しぶりに定番のナポリタンを食べたが、やっぱりおいしかった。ちなみにいまの値段は税抜き118円です。

セイコーマートの100円パスタ
コンビニ『セイコーマート』は北海道旅人のオアシス。見つけると、ついつい立ち寄ってしまう。小腹がすいたときの定番は『100円パスタ』

再び走り始めて30分、後輪にいや~な違和感を感じる。「いやいや」「まさか……」「そんなはずは……」と脳では否定するが、現実は厳しい。パンクだ。大阪以来2度目のパンク。路肩の端にバイクを寄せて、荷物を降ろし、修理を始める。予備チューブは持っているのでタイヤを外して交換するだけ。急ぐ旅でもないので気分的には余裕がある、修理の様子をスマホで撮影したり、楽しみながら修理をした。

パンクしたワバッシュ
WABASHの旅を始めて2度目のパンクは北海道だった。国道238号沿いの路肩で作業開始。急ぐ旅でもないので時間をかけて確実に修理する

午後1時半、オホーツク海沿いにある船の形をした『道の駅マリーンランド岡島』に到着。食堂があったのでカレーセット(ラーメン付き)を注文。2時間前に100円パスタを食べたばかりとは思えない速度で胃袋へ消えていった。自転車をこいでいると「次は何を食べようか?」食べ物のことで頭がいっぱいになる。わかっているけど、どうしても食べ過ぎてしまう。反省、反省。

道の駅マリーンランド岡島で食事
eバイク旅の楽しみのひとつが食事。腹ペコではペダルをこげない『道の駅マリーンランド岡島』では海を眺めながらカレーセットを完食した!

しばらく走ると後続車が並走、男性ドライバーがハンドルを握りながら「どこから来たんですか?」「どこへ向かっているんですか?」など質問の嵐。その人の名は久保田さん。車で北海道旅行中で、僕の後ろ姿がどうしても気になり声をかけたという。自分では見えない後ろ姿、僕は一体どんなオーラを放っているんだ?(笑) それからお互いの旅の話や経歴など、初対面? と思いえないほどいろんなことを話した。見知らぬ人が偶然出会って、同じ瞬間を共有する。それこそ旅の魅力なんだと思った。

久保田さんと岡島さん
車から僕を見つけ声をかけてくれた久保田さん。初めて会ったのに、ふたりとも人見知りしない性格なので、いきなりおしゃべりに花が咲いた

今日の目的地『西興部ゲストハウスGA.KOPPER』まで残り45km。『道の駅おうむ』に着くと同時に激しく雨が降り出した。慌てて軒先に入り雨宿り。しばらく様子を見るが止む気配がない。午後5時なので、8時には着けると思っていたが、この状況ではそれも難しそうだ。かなり遅くなりそうなのでゲストハウスの浅野くんに電話。状況を話すとここまで車で迎えに来てくれるという。ありがたい、何とかゲストハウスまで行けそうだ。

今回の旅ルート

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