僕が住んでいる神奈川県における東西南北4つの端っこを目指す旅。今回目指すのは最北端にある和田峠。神奈川県相模原市緑区と東京都八王子市にまたがる陣馬山の北側にある、標高690mの峠だ。おそらく昔に自転車で行っていると思うが、あまりに昔過ぎて記録は何も残っていない。なので、気分的には限りなく初訪問に近い。自宅から相模湖経由で和田峠まで約40km。帰路を八王子経由にすれば往復約80kmなので、日帰りで行くにはベストな距離。バッテリーも満充電しておけば、走り切れるだろう。
朝7時半、家を出る。3月、まだ風は冷たい。まずは相模湖を目指す。相模湖へ行くルートはいくつもあるが、住宅地は避けたいので、相模川に沿って北上するルートを選んだ。相模川にかかる高田橋を渡るとすぐに右折、一般道と土手を走る細い道を繋いで進む。広い畑地帯の外れに高い塔が立っている。何かと思い近づくと、珍しいことに火の見櫓のようだった。さびの具合からして、かなりの年代物。周辺の民家の造りを見ても、この辺りはかなり昔から人が住んでいたことがわかる。自宅の周辺は新興住宅地で新しい建物ばかり。わずか10kmでタイムスリップした気分になった。
小倉橋を渡り、国道412号へ。ここからしばらくは一本道。交通量が多いので、邪魔にならないよう路肩側を慎重に進んで行く。前々回走った相模湖が見えてくる。今回はサラッと走り抜け、相模湖駅前へ。駅前の交差点で国道20号に乗り換える。国道20号はアップダウンが激しいが、eバイクなら特に上り坂を気にすることなく走ることができる。電動アシストに感謝しながら進んでいく。
和田峠の入口、藤野駅手前の信号を右折して県道522号に入っていく。緩やかな上り坂。中央線の踏切を越えると道幅はグンと狭くなる。さらにペダルをこぎ進むと中央高速自動車道をくぐるトンネルが現れる。小さなトンネルは道幅が狭く、途中から一車線分しかなくなった。前から大型車が来たらすれ違えないので、前方から車が来ないのを確認すると急いで進んだ。
トンネルと抜けると下り坂、民家が点在するのどかな田舎道になった。道に沿って小さな川が流れている。沢井川だ。思ったよりも民家がたくさんある。この辺りからだと都内から遠くないので通勤している人もいるのかな? そんなことを考えながらペダルをこぐ。しばらく走ると再び緩やかな上り坂になる。点在する民家、畑、林、山、まさに田舎の風景。神奈川の北部はこんな景色なのか……と静かに呟いた。駐在所もあるけど、この辺は平和で犯罪もなさそうだ。
小さな橋を渡るとT字路にぶつかった。標識があり、左は上野原4km、右は和田峠5kmと記してある。迷わず右折。ここから先は県道521号。少し先の左手に桐花園キャンプ場の文字「そろそろキャンプもしてみたいなぁ……」と独り言。木々に囲まれた山道を過ぎると再び集落が現れる。陣馬山登山口から狭い1車線になる。道のすぐ横が庭、物干しで洗濯ものが揺れていたり、鉢植えが並んでいたり、生活の匂いを近くに感じる。
民家が点在、茶畑もある。和田浄水場を過ぎると民家は途切れ『豪雨・路面凍結、降雪時は通行止め』と書かれた大きなゲートが現れる。ここからいよいよ本格的な峠道が始まる。キツイ上り坂、ペダルが重いと思ったら、斜度12%の標識が立っていた。一旦バイクを停め、電動アシストをSTDモードからHIGHにチェンジ。さらにギヤをひとつ軽くすると、勾配をものともせずスイスイ上って行く。上り坂が楽しめるのはeバイクの特権だ。カーブをいくつか曲がると視界が開けた。広い駐車場と『陣馬山和田峠・峠の茶屋』と書かれた店がある。やった、最北端、和田峠に到着だ!
残念ながら峠の茶屋は工事中らしく休業中だった。特にやることもないので、記念写真を撮ったら、ダウンヒルへGO! eバイクは車重があるので下りは大の得意(笑)。周りの景色がちぎれるように飛んでいく。ブレーキレバーを握り、スピードをコントロール。汗をかいた後のダウンヒルは最高のご褒美だ。
杉林のゲートをくぐると、ポツポツ民家が現れた。東京都最初の町、上恩方だ。集落の中をしばらく進むと大きな商店と陣馬そばの文字が現れた。隣にはバスの折り返し所があり、高尾駅行きのバスが止まっている。そば屋と商店は残念ながらお休み。公衆トイレとベンチがあったのでeバイクを止めて休憩にする。自動販売機でジュースを購入。神奈川の旅にかんぱい。見上げると抜けるような青空が僕を見ていた。
この旅で神奈川県4極制覇となった。神奈川県の最西端、三国峠は富士山を望む絶景のすぐそばにあった。最南端は城ヶ島、太平洋の眺めが素晴らしかった。最東端は浮島、工業地帯の外れの公園から海を眺めた。そして静かな山の中にあった最北端の和田峠。eバイクのお陰で地元神奈川の魅力を再発見。さあ、次はどこへ行こうかな。