世界中で人気が上がってきているeバイクは、毎年、ニューモデルが登場するなど勢いあるジャンルだ。最近は日本の街中でもよく見かけるようになってきたので、今後はもっと増えていくだろう。ただ、そうはいってもまだeバイクの歴史は浅く、「どんなeバイクがあるか?」「eバイクでどんなことがやれるのか?」などなど、eバイクに乗りたい人に対して、選んでもらうための情報が伝え切れていない状態だ。そこでここでは、いま存在を知っておくべきeバイクをピックアップして、それぞれのスタイルから特徴まで詳しく紹介していく。今回取り上げるのはベルクレッタのシン・ベルクレッタモデルだ。
輪行もできるこのeバイクならどこへだって行ける
遠くの道を走りにいこう
鉄道を利用する輪行は行動範囲を劇的に広げるだけなく、鉄道が持つ独特の旅情をサイクリングに組み込めるので、出かけた味わいはグッと深まる。ここからはそんな旅のために作られた「輪行が得意な」eランドナーを紹介していこう。
eバイクはアシストがあるので、いろいろな場所に走りにいける。海沿いだったり山だったり、行きたいところに行けるのだ。ただ、行きたいところが自宅から遠かったらどうする?車で運ぶと止めたところに戻ってこないといけないので、ルートに制約ができてしまう。
これがペダルバイクなら駅で自転車をバラして袋に詰めて鉄道で移動する「輪行」があるが、eバイクは車体構造や重量的に輪行が難しい……と言われていたが、状況は変わった。
旅の自転車、ランドナーが大好きで、ランドナー専門店を立ち上げたサイクリストがいた。それがベルクレッタの代表野村亘さんだ。
自転車旅は長く楽しめる趣味なのでキャリアが長い人も多い。でも、歳を取ると以前のように走ることが難しく、「出掛けることが減ってきた」という話が野村さんの耳に聞こえてきた。
そこで野村さんは、ランドナーを法規に合った仕様でeバイク化した。これで体力のカバーはできたが、同時にeバイクに新たな魅力が追加された。それが輪行のしやすさだ。
内容はこれから紹介するが、長距離を走るためのランドナーにアシストが付き、さらに輪行が容易という特性は興味深く、魅力的である。
撮影のために「らしい場所」に止めてみたがこれほど似合うとは。まるで「遠くの道を走りにいこう」と語りかけてくるような気もした。
名門オーダーフレームを使用
いくつになっても走っていたい人に一生涯で付き合える絶品eランドナー
趣味で乗るeバイクには自然と愛着を持つモノだが、その対象の作りがいいほど愛着の度合いは深まる。ここで紹介するシン・ベルクレッタモデルはそういう存在だ。
シン・ベルクレッタモデルを見たときの印象は、実にオーソドックスであるということ。「レトロ」という表現も合うし、若い世代には「新鮮なデザイン」と映るかも知れない。ただ、どの表現であってもベースにあるのは「きれいな自転車」という印象だろう。
使用するフレームは、スポーツ自転車のオーダーフレームで有名な東叡社製。細めのクロモリ丸パイプを使い、これぞスポーツ自転車という普遍的な形状で組まれている。
なお、クロモリ素材は適度な「しなり」を持つので、アルミ製フレームなどと比べて乗り心地がいいという。この特性はのんびり長い距離を走るランドナーに合うものだ。
そんな上質なフレームにきれいな輝きを持つ機能的な金属パーツや、質感のいいサドルが装着される。また、ワイヤのたるみ部分が作るアーチの形状もきれいだし、フェンダーステーの角度も機能的でありつつ見た目もきれいだ。
つまり、いくつもの“きれい”によって構成されているのがシン・ベルクレッタモデルである。
このようなこだわりが詰まった車体には、香港のCYCモーター製のフォトンというドライブユニットを装着。ベルクレッタが検査機関での試験を行い、道路法規に合うよう設定したもので、最大トルクは32Nm。十分に力強いユニットだが、その力の使い方が面白い。シン・ベルクレッタモデルに持たせたこだわりのポイントだ。
Point
◎東叡社製クロモリオーダーフレームの本格派
◎手軽に輪行ができる特許技術を使うeランドナー
◎日本の法規に合致した後付け電動化ユニット
◎「こぐ」感覚を大事にする控えめなアシスト
Spec
参考価格●80万円~(仕様ごとに異なる)
フレーム●東叡社スタンダードモデル
フロントキャリヤ●東叡社
ヘッドセット●グランボア(輪行用)
ブレーキ●ダイアコンペ
ブレーキレバー●ダイアコンペ
ドライブユニット●CYCモーター・フォトン(日本仕様)
最大トルク●32Nm
バッテリー●252Wh 36V-7Ah
一充電での最大航続距離●約100km(エコモード)
一充電での総上昇量●約1000m(エコモード)
リヤディレーラー●マイクロシフト・R9
カセット●シマノ・CS-HG41-7
チェーン●KMC・e8 スポーツL
チェーン脱落防止●シマノ・デュラエースフロントディレーラー
シートポスト●グランボア・アルミ棒ピラー
サドル●GP・VL-1221
ステム●日東・テクノミック80mm
ハンドル●日東
マッドガード●本所・TH29
ライト●キムラ製作所・LH-17
リム●グランボア・パピオン
タイヤ●GB・LH-17
輪行装備●ベルクレッタ・ベル輪アタッチメント
Detail
開発責任者に聞く─シン・ベルクレッタモデルとは
「歳を取っても自転車旅を続けて欲しい そんな思いから生まれたeランドナー」
ベルクレッタ代表は写真の左側に写る野村 亘さんで、隣は副代表の野村眞奈美さん。
代表の野村さんはお店を開く前から趣味で自転車旅をしてきた人で、定年退職後、念願だった自分の自転車店「ベルクレッタ」を地元でオープン。主に扱うのは高級ランドナーだが、近所の人の自転車修理も手掛け、地域への貢献も大事に考えているハードルの低い店となっている。
さて、そんな野村さんが作ったeランドナーだが、作るきっかけになったのは自身を含め、高齢になってきたランドナー乗りに訪れてしまった体力の衰えだった。
そこで体力をカバーしつつ、自転車旅を続けるために考えたのがランドナーのeバイク化。
必要なパーツは自分で探し、信頼できるモノを見つけ出した。ただ、海外製のため日本の道路法規に合わない。そこで電動アシスト自転車の構造を勉強し、法規に合いつつ、自らが欲しいと思うアシスト特性に設定し直した。
特性についてはグラフをお借りしているので、そちらを見てもらうとして、シン・ベルクレッタモデルにはもう一つ、輪行形態への作業が容易という大きな特徴がある。
従来の輪行では外したフォークとフレームは養生やベルトでの固定が必要だったが、ベルクレッタが発明し、特許を取得した「ベル輪」技術を使うとそれらの作業が不要。また、タイヤが回る状態で輪行袋をかぶせられるので押し歩きができる。重量のあるeバイクにとって、この作りはうれしいものだ。
このように個性的な作りのシン・ベルクレッタモデル。撮影した仕様で車両価格は80万円~とお手頃価格ではない。だけど「高い」というものではないと思う。
例えばハイスペックなeバイクも、数年たつとデザインや性能の面から乗り換えも考えるだろうが、シン・ベルクレッタモデルであればデザインも時代に左右されにくいし、フレームの耐久性も心配ない。
また、ドライブユニットやバッテリーは後付けなので、その時代の最新モデルにアップデートして、長く乗ることが可能だ。このような視点で見ると、けっして値段が高いとはいえないものだと思う。
そんなシン・ベルクレッタモデルが気になった人は、ベルクレッタを訪れ、現車をその目で見て欲しい。
ベルクレッタ式輪行の手順
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Other model シン・ベルクレッタモデルの第2弾
デモンタブル フルオーダーモデル
参考価格:100万円~
パイプのつなぎ目にラグを使用したフレームをチョイスしたシン・ベルクレッタモデル。こちらのフレームはフルオーダー仕様。輪行用の作りも記事で紹介したモデルと異なり、フレームのトップチューブとダウンチューブが真ん中から分割する仕様。より短時間で輪行が可能な状態にできる。フレームはランドナー用だが、ハンドルのチョイスやフレームカラーなどを変えることで、しゃれた雰囲気に仕上がっている。