タイトルを読んで、「eバイクの記事なのに、山でホットサンドを頬張ってきた!って、どういうこと?」と感じた方も、いらっしゃるかもしれない。
そう、この記事は、eバイクを手軽に使える移動の足として、ツーリング+αを楽しむことを目的とした記事なのです。
eバイクならではの機動力を楽しみつつ、温存した体力を使って、山に登ったり、釣りをしたり、山奥に一軒だけある飲食店を訪ねたり、絶景を愛でながらアウトドア飯を楽しみたい!そんな遊びを紹介していきます。
今回の、旅人は編集・エリグチくん(写真左)と私・ポンチョ(写真・右)です。
目的地は、富士山!の中腹。上の写真の右端、雪と森の境目あたり。
JR御殿場駅から富士山二合目に位置する水ヶ塚公園までeバイクで約19kmをツーリング。
そこから緑豊かな森を歩き、森林限界を越えて標高1804mの双子山までハイキング。つまり、登山をします!
双子山からは、相模湾や駿河湾、箱根の山や伊豆大島まで見渡せる眺望を愛でながら、御殿場名産のハムやソーセージをパンに挟んでいただく予定でした。
その予定だったんですが……当日、富士山は終始雲の中。午後からは雨予報も出ていて……雨が降り出す前に双子山に登り、つくり、食べ、下りてこないと……なんだか、ツラいことになりそう……。
ということで、朝8時半からオープンする「御殿場パン工房山口屋」に直行。静岡県内屈指の評判を誇るパン屋さんの名物は、最高級の小麦粉、フレッシュミルク、アカシアハチミツで仕込んだ生地を専用窯で焼き上げた食パンです。
こだわりの食材を用い、きめ細やかで豊かな風味に仕上げられたその食パンは、ゴルフの大会で御殿場を訪れたタイガー・ウッズ選手や石川 遼選手が絶賛したフレンチトーストにも使われているものだそう。どれほどのものなのか!? 期待値は高まります。
食パンとともにいただくのは、御殿場名産のハム!
続いて向かったのは、1945年創業の老舗肉屋さん、「渡辺ハム工房」です。
御殿場は、第二次世界大戦以前に欧米人の別荘地があったそう。その人たちが始めた養豚、そして食肉加工の技術が現在まで受け継がれているということ。だから、御殿場には肉屋やハム屋が10軒以上あるんです。
その一軒が、訪れた渡辺ハム工房。
私がこのハム工房を知ったのは、東名高速道路のサービスエリアでした。購入したハムの美味しさに魅了された私は、ここのハムをホットサンドにして、富士山を見ながらランチをしたい!と思ったのです。それが、今回の旅のはじまりです。
でも、店内に入るとハムやソーセージがいくつもあり、果たしてどれを選ぶとよいか?と迷ってしまう程。なのですが、お目当ては決まっています。
厚切りハムをサンドしたいので、「プレスハム ブロック(小)(2100円)」という商品です。
ブロック、つまり薄くカットされていない、塊のハムです。以前購入したのもコレで、ホットサンドにしたら、間違いないだろうと確信。
アウトドアと厚切りハムは、私と同世代の50歳前後の方なら、子供の頃にテレビCMで見た定番の組み合わせ。焚火であぶった厚切りハムを、これまでのジンセイのなかで幾度となく味わっています。
でも、念のため店主の渡辺義基さんにどんなハムがよいかを聞くと「プレスハムは豚もも肉を使っていて脂身が少なく、でも旨味が濃くジューシー。なので、ホットサンドに使うならコレがおすすめ!」とのこと。
渡辺さんは過去にイベントでホットサンドを提供したことがあるそうで、「プレスハムは最高に美味しかった!」といいます。
いやぁ、私の感覚は間違ってなくて、よかった!
さらに日本で初めて商業ベースの栽培を始めたという伊豆・韮山産のエリンギを使った「きのこの無添加ソーセージ(900円)」、ジビエを食べやすくというテーマで開発した「鹿ソーセージ 中央アジア味(900円)」の2品も、謎な味わいに興味をそそられ購入してみました。
さぁ、雨が降る前に目的地へ急げ!
御殿場駅から水ヶ塚公園までは、静岡県道23号御殿場富士公園線で一本。陸上自衛隊・滝ケ原駐屯地、米海兵隊・キャンプ富士の間を抜けて行きます。
本当なら、約19km、1時間のツーリングの間は富士山が目の前にずっと見えている気分最高な道なんですが……。今回は、どんより曇り空しか見えない状況でした。
私は、この水ヶ塚公園にこれまで10回以上訪れていて、富士山が見えなかったことはなく、かなり相性がよいはずなのですが、残念……。
水ヶ塚公園は、7月から9月の富士山開山の時期は、マイカー規制される富士宮口へとシャトルバスが運行する発着地。なので、その時期はかなり混み合いますが、それ以外の時期は空いていて、とても過ごしやすい場所です。
標高は1500m。お日様が出ていれば冬でも暖かさを感じられますが、曇っていると、寒さが強いんです。この日は4月中旬でしたが、冷めたい空気に包まれました。
園内には、自転車を駐輪できるラックも備えた「森の駅 富士山」というお土産販売、軽食、トイレ等を備えた施設もあります。
富士登山者に向けたアウトドアグッズや登山中に食べたい食品も販売されているので、忘れ物を購入することも可能です。
ちなみに私がココでよく買っているのは、富士山溶岩焙煎珈琲バッグで、ティーバッグのように抽出するコーヒーです。あっさりしているけれど味わいがあり、今回も購入したかったのですが、森の駅は定休日。残念。
この公園に来たら立ち寄りたいのが展望台です。森の駅から10分くらい登ります。そこから見える富士山、大きく口を開けた宝永山の景色は他では見られない雄大さ!なのですが、今回はグレーの空……写真は2023年11月に撮影した時のものです。
どーんと迫力のある富士山が眼前にあって、圧倒され、自然とテンションが上がります。
ハイキングは公園前の入口からスタート
eバイクを森の駅 富士山前にデポ。県道23号を渡った場所にあるのが、双子山や富士宮口へとつながる須山口登山道です。
この登山道にはどこにもマウンテンバイク乗り入れ禁止の案内はありません。なので、途中までトレイルを走らせて、マウンテンバイクならではの楽しい時間さを味わいたいとも考えましたが……、国立公園の中ですし、今回は自粛しました。
平坦なトレイルは、走るのも歩くのも楽しい緩やかなカーブと美しい樹々が続き、気持ちのよさに満ちた場所です。
ハイカーも多くはないので、共存できるようになると、いいんですけれどね。ハイカーでもある私にとっては、静かなトレイルのままであって欲しいという感情もあり、でももう少しマウンテンバイクに寛容であってほしいと思う部分もあり、悩ましいところです。
あいにくの天気でしたが、それでも美しい
水ヶ塚公園から双子山までは、距離4.2km。ゆっくり歩いて約2時間の行程。帰りは、下りなので、1.5時間。御殿場駅まで30分。そして登り始めた時間が、10時半。雨が降り出す予報が15時。
少しでも雨に降られる可能性を下げるために、登りは1.5時間でクリアすべく急ぎ足。当日の気温は10℃くらいなのに汗が吹き出し、アームウォーマーを外して半袖で早歩きしました。
幕岩という断崖を超えたところからカラマツの背丈が低くなり、森林限界へ。自衛隊や海兵隊の演習場の向こうには御殿場市内と箱根の山、その西側には沼津市の北側に連なる愛鷹山。どちらも、うっすらとですが、見えています。
到着した双子山の山頂からは、山中湖や丹沢の山、遠くに伊豆大島が見え、背後には富士山もあるはずなんですが、上の写真の通り。真っ白いキャンバスにその姿を映して想像するばかり。
こちらの写真は、12月に双子山山頂から撮影したもの。夕方が近づいて、夕陽に紅く染まっている様子です。私たちが見上げた先には、こんな富士山が佇んでいるんです。
この写真は、双子山への最後の登り。眺望もなく、富士山が見えなくても、荒涼とした、でも地球のエネルギーの強さを、わずか2時間弱歩いただけで味わえるのは、富士山だからこそ。
当日出会った人は、平日ということもあって、3人。遠足らしき子供たちの声が聞こえた時もありましたが、出会うことはなく、貸し切り状態でした。
富士山というと、弾丸登山、渋滞、最近なら登山規制、入山料等々、その混雑が話題になっていますが、ここはそうしたこととは無縁。登山口からほんの少し外れただけで、風の吹き抜ける音が響き渡る静逸な風景があります。それは、東京都心部からわずか100kmに位置するとは思えない、悠久の大地の姿です。
さぁ、厚切りプレスハムのホットサンドをいただきます!
双子山山頂は、強い冷風が吹き荒れていたので、山影に入り、風が届かない場所でランチの準備開始。
用意したのは、上の写真右から御殿場パン工房山口屋の食パン、渡辺ハム工房のプレスハム ブロック(小)、きのこの無添加ソーセージ、鹿ソーセージ 中央アジア味。
本当は焼いたプレスハムも試したかったけれども、時間がないので、厚切りカットしたままをサンドすることに。一切れ味見してみたのだけれども、肉の風味と塩梅が絶妙でした。
やはり、このハムの美味しさは間違いありません!
さて、私がホットサンドの準備をしている間、編集エリグチくんはホットサンドメーカーをフライパン代わりに使って、ソーセージをソテー。肉のいい香りが立ち込めてきて、腹ペコオヂサンにはたまりません。
そうそう、基礎知識ですが、上下2つに分かれるホットサンドメーカーは、片面だけを使ってフライパンとして使えるんです。コゲつき防止加工されているものが多いので、卵料理だってお手の物です。
チャレンジャーな編集エリグチくん。ソーセージをソテーした後に、山口屋で購入した焼きそばパンをサンド。気温が低く、風が強く、手がかじかむ状況だったので、少しでも温かいものを食べたい一心でサンドしたんだと思います、きっと。
ですが、味変にチーズやマヨネーズ、はたまたキムチ等を乗せていたらともかく……ただのホット焼きそばパンになりました。失敗ではありませんが、企画倒れな感じでした。
さて、上の写真が、私の念願、厚切りプレスハムとチーズのホットサンドとソーセージです。コーヒーは、フレンチプレスでササっと抽出しました。
はい、お味はサイコーでした!
渡辺ハム工房、よい仕事をしてくれています。あっさりめのハムは厚切りでほんのり温まったことで肉々しさが増し、チーズのミルキーな風味と高相性。ふっくらしたパンはサンドされて薄くなってしまいましたが、ハムとパンの旨味がグッと凝縮された感じがあります。たこせんべいほどには薄くなっていませんが、凝縮感は似ています。
きのこのソーセージはエリンギがふんわり感を演出。鹿ソーセージは独特の風味とスパイスの香りが個性的な味わい。エリグチくんも私も、撮影担当の茂田カメラマンも、「あぁ美味い!」と連呼していました。
生憎の天気で絶景とまではいきませんでしたが、他にはない富士山らしい景色を堪能。
eバイクを漕いで、山を登って、旅した先の名物を美味しくいただけました。写真の通り、ニコニコ、ニヤニヤが止まりませんでした。
しかも、雨をギリギリかわせ、ずぶ濡れにならずに済みました。帰途、見えない富士山の方を見て、お礼をしました。
「よい旅ができました、ありがとうございました!」と。