eバイク旅ノート Vol.76 eバイク日本一周16「阿武隈川ときどき東北グルメの旅」

23年6月に始まった藤原かんいち&ヒロコ夫婦によるeバイク日本一周の旅。神奈川(自宅)から日本海へ出て北上、北海道一周を経て宮城県まできた。ここまでの走行距離は4000km、旅行期間は80日間を越えた。東日本編のゴール(神奈川)まで残り約600km。

DAY85

東松島のホテルでガッチリ朝食を食べておく。食べ物はペダルをこぐためのガソリン。満タンにして出発する。まずは国道45号で松島へ向かう。日本三景のひとつに数えられる松島。大小260もの島々が浮かぶ風景は美しく松尾芭蕉も魅了されたといわれている。これまで何度か訪れているが、いつも陸から見るだけ、今回は遊覧船から松島を眺めてみようと思っている。

国道から遊覧船のチケット乗り場はすぐに見つかった。さすが有名観光地、人がいっぱいだ。窓口で松島湾内を周遊する仁王丸コースのチケットを購入。30分後に乗船した。出港すると島が見えてくる。船内放送で島の由来や名前が案内される。千貫島、かぶと島、ドーラン島、馬の鞍掛島……いろんな名前がある。あまりに多すぎて覚えきれないが、それぞれに個性があるので見ているだけでも楽しかった。いつもの自転車移動とは違う時間、とてもいい気分転換になった。

再びeバイクの人になる。目指すは仙台市。国道45号は塩釜市内に入ると民家が激増、さらにビル、商業施設、交通量も多くなってくる。仙台のグルメといえば『牛タン』が有名。腹ペコ夫婦の「牛タン♪」大合唱が始まった。こうなると仙台まで待ちきれない、手前の多賀城市で見つけた専門店『たんや善治郎』に飛び込んだ。職人技で焼き上げた牛タンは、厚みがあるのに柔らか。最高においしかった。

久しぶりの大都会、仙台。車の多さに戸惑いながら慎重に進んで行く。3時過ぎにビジネスホテルに着いた、時間があるので市内を散策しよう。長いアーケード街をブラブラ歩き、とても賑やかで若者も多い。仙台駅に入ると『ずんだ小径』なるエリアがあった。行ってみると、ずんだを使ったスイーツの店が何軒かあり、ソフトクリーム、シェイク、ケーキ……いろんなものがあった。迷った末、ずんだシェークをセレクト。さらにホテルで食べるずんだ餅もキープしておく。初めて飲んだずんだシェークはとても濃厚で枝豆感もあっておいしい。牛タンとずんだで仙台を満喫。幸せな1日となりました♪

宿泊地:宮城県仙台市
走行距離:45.9km
総走行距離:4074.6km

松島
日本三景のひとつとして知られる『松島』。大小260あまりの島が浮かぶ松島湾の魅力を堪能できる遊覧船の出港時間に合わせて乗船乗り場へ向かう
仁王丸
遊覧船『仁王丸』は人気で平日だというのにほぼ満席。ユニークな名前が付いた島が次から次に現れる。島めぐりの50分はあっという間だった
松島湾
松島海岸から塩釜へ向かう国道45号沿いは松島湾の展望が素晴らしかった。eバイクは歩道を走れるし、気軽に止まって写真が撮れるのが利点
歩行者用トンネル
トンネルに入ると排気音が大反響して爆音になる。トラックに追い越されるときの恐怖感も半端ないので、歩行者用トンネルがあると嬉しい
ランチ丸たん得々定食
多賀城市の『たんや善治郎』で食べたランチ。ぶ厚い丸たんが6枚に牛たんソーセージが付いた“ランチ丸たん得々定食”。牛たんの魅力がたっぷり詰まっていた
ずんだっ茶シェイク
仙台駅にある喜久水庵で買って飲んだ『ずんだっ茶シェイク』は美味だった。他にずんだっ茶フロート、ずんだソフト、飲むずんだ等のメニューもあった

DAY86

昨晩はホテルに駐輪場がないため、離れた地下駐輪場にeバイクを留めることになった。防犯カメラがあるので大丈夫と思いながら、不安もあったので、朝、自分たちのeバイクが見えたときはホッとした。そういえば青森市内のホテルでも自転車の保管がNGだった。北海道まではロビーや倉庫に保管してくれたり、部屋に置かせてくれたこともあった、親切に対応しくれた日々を懐かしく思い出す。

今日は天気予報で最高気温は38度。暑くなる午前中になるべく進んでおきたいので、早めに出発する。仙台市内は交通量が多く、信号だらけ思うように進まない。国道4号は車が多いので歩道に入ると、段差が多く気を遣う。やっぱり市街地走行は疲れる。

しばらくはチェーン店が並ぶ賑やかな景色が続いたが、名取市を出るとようやくのどかな田舎になった。地図を見ると国道4号ではなく、阿武隈川沿いのルートでも福島市内まで行けそう。国道よりも車が少なく、自然の中を走れそうなので、途中から国道349号へシフトした。

路肩を走っていると交差点で信号待ちの軽自動車からおじさんが降りてきて「向こうに自転車道路があるよ~」と親切に教えてくれた。言われた方へ入って行くと川沿いに延びる自転車道に出た。ここなら車が来ないので安心して走れる。感謝だ。日陰がなく日光がガンガン当たるのは辛いが、阿武隈川を眺めながら走るので気持ちがいい。

川沿いの道が途切れると、再び車道へ戻る。森の道がどこまでも続く。お腹空いたなーと話していると、山の中にポツンと一軒屋が現れた。『いなか道の駅やしま』。中を覗くと商店らしく食品が並んでいる。食事もできるようなので名物の『たけのこカレー』とお弁当でお昼にした。外と中にテーブルがいくつかあり、食事を終えた工事作業の人たちが気持ちよさそうに昼寝をしていた。

店主さんがとてもフレンドリーな人で2019年の台風で阿武隈川が氾濫してこの店が冠水したこと、周りの森のこと川のこと、河川工事の実情など、いろんなことを話してくれた。食後にはアイスコーヒーまでご馳走になる。暑さでバテバテになっていたが『いなか道の駅やしま』のお陰で心も体も癒された。

福島に到着。今日は暑い中86kmも走ったご褒美に、夜は福島名物『円盤餃子』とビールで祝杯。揚げ焼き餃子なのでしつこいかと思ったら、サッパリと食べやすく20個ペロッと平らげてしまった。忙しそうに人が歩き回っていた仙台市に比べると福島は小ぢんまりとしていて、アットホーム。どこか人ものんびりしている。僅か80kmしか離れていないのにずいぶん違う。しかし気温は変わらずめちゃくちゃ暑い。早めに寝て、明日は早めに出発しよう。

宿泊地:福島県福島市
走行距離:86.2km
総走行距離:4161.8km

駐輪場にeバイクを停める
仙台市内はホテルで自転車保管ができなかったため、仕方なく地下にある有料駐輪場に一晩駐輪した。防犯カメラがあるが盗難は大丈夫か不安だった
生れた時からどんぶりめしポスター
仙台を走っていると何度か見かけた大衆食堂『半田屋』。「生れた時からどんぶりめし」が半田屋のキャッチコピー。ポスターも可愛らしくてインパクトがある
土手の自転車道路
普通の車が入って来ない自転車道路を偶然見つけ「やったーっ」「ラッキー♪」とはしゃぐふたり。川の土手にできた道は眺めも良く気持ちが良かった
田畑が広がる景色
東北の田舎らしい田畑が広がるのどかな景色が広がった。eバイクを止められる場所を見つけて小休憩。何気ない景色、たわいない会話が心地いい
阿武隈川
大自然の中を悠々と流れる阿武隈川を左手に眺めながらeバイクを走らせる。この道はかなりローカルなようで、地元の車さえほとんど見かけなかった
いなか道の駅やしまや
国道だというのに周辺にはお店など全くなく、お腹もペコペコだったので『いなか道の駅やしまや』が見えたときは砂漠のオアシスのように感じた
国道394号
阿武隈川に沿って延びる国道394号。丸森町~梁川町間は崖があったり、木々が鬱蒼と茂る森があったり、爽やかな竹林があったり、変化に富んでいた
円盤餃子
福島の夜に食べた名物グルメ『円盤餃子』。フライパンの形に合わせて餃子を並べて焼いたので円盤の形になっている。たっぷりの餡、熱々でおいしかった
古関裕而メロディーボックス
福島市内のホテルへ帰る途中の歩道で見つけた『古関裕而(福島出身の作曲家)メロディーボックス』。ボタンを押すと美しい古関メロディーが流れた

DAY87

今日も朝から暑いです。国道4号を行くが交通量が多くて落ち着かない。並行して走る県道があるようなので入って行くと、車がグンと減り走りやすくなった。田畑と民家が点在するのどかな田舎道が続く。

今日の目的地は郡山。中間地点となる城下町、二本松着いた。せっかくなので日本百名城のひとつ『二本松城跡』へ立ち寄る。現在、城跡は霞ヶ城公園になっていて、入口には幕末の戊辰戦争でふるさとを守るために若い命を散らした『二本松少年隊』の群像、階段を登って行くと復元された箕輪門があった。さらに進むと三の丸に出る。本当は本丸跡まで行きたいところだが、時間があまりないのでここまでにする。僅かだが歴史の面影を感じられてよかった。

再び阿武隈川へ向かって行くと、運良く川沿いにサイクリングロードが延びていた。地図を確認すると郡山市内の手前まで川沿いで行けそうなのでそのまま進んで行く。昨日に比べると山が少なく、視界を遮るものがないので開放的に感じる。阿武隈川もいろんな景色がある。

とにかく今日も暑い。コンビニで氷を買ってボトルに詰め込む。こうしておけばしばらくの間は冷たい水を飲むことができる。青森からずっとこのスタイルで暑さを凌いでいる。

2日連続で阿武隈川沿いを走ってきたので、いつの間にか思い出の川になっていて、離れるときはちょっと寂しくなっていた。午後3時過ぎ、郡山に到着。予約していたビジネスホテルチェックインする。部屋に入ると涼しい、天国だ~! 全身全霊でエアコンのありがたさを噛み締める。

落ち着いたところで、郡山名物グルメ『郡山ブラックラーメン』を食べに出かける。一番近くにあった店、ますや本店へ入ってみる。オープン直後だったので一番乗り。出てきたラーメンは名前の通りスープが真っ黒。しょっぱいのかな?と思ったら、見た目と違ってまろやか。後味もサッパリしていてとても食べやすいラーメンだった。福島のラーメンといえば喜多方ラーメンや白河ラーメンを思い浮かべるが、郡山ブラックも負けていなかった。どちらにしても、福島県はラーメン天国なんだけどね。

宿泊地:福島県郡山市
走行距離:55.5km
総走行距離:4217.3km

福島県
暑い一日がまた始まった。北海道を出てから連日35℃前後で、38℃の日もあった。太陽を全身に浴びて進む自転車旅、熱中症に気を付けながら走り続ける
福島県
旅を始めて3か月。旅を始める前、ヒロコは運動もしていないしヘルニアもあるがリタイヤすることなくここまで走って来た。まだまだ行けるぜ61歳
二本松少年隊群像
二本松城跡の入口にある彫刻家・橋本堅太郎作『二本松少年隊群像』では、大義のため戦う少年隊の姿や、息子の軍服を縫う母親などが描かれている
阿武隈川
福島県と宮城県を北から南へと流れる阿武隈川。2日間連続で川沿いの道を走ったので、ふたりにとっては思い出の多い川になった
郡山ブラック
ご当地ラーメン『郡山ブラック』。見た目は濃そうだが、実はあっさりしていて深いコクもある。麺はストレートとちぢれ麺で選べる。味わい深いラーメンでした♪

DAY88

今日はいよいよ関東入りだ。今夜の宿は栃木県の西那須野のビジネスホテル。国道4号を1時間ほど走り鏡石町に入ると、田んぼアート開催中の案内看板があった。『田んぼアート』はテレビのニュースなどでは見たことがあるが、本物を見るのは初めて。会場となる図書館へ行き、受付をして4階の展望室へ登って行くと見えた。毎年違う絵柄で今年は『唱歌“牧場の朝”のまち』、大小様々な牛が表情豊かに描かれていた。

その後もひたすら国道4号。一桁国道だというのにほとんどが対向2車線の狭い道、路肩もないので、大型のトラックが背後から迫ってくると冷や冷やする。歩道があったと思い入って行くと、大きな亀裂が入っていたり、雑草だらけだったり、ほとんど管理されていない。自転車にはつらい道が続く。

白河市内に入ると、昼ごはんを食べるため市街地へ向かった。偶然目に留まった食堂に入ると、女性ひとりで切り盛りするアットホームなお店だった。手作りの梅干しがあったり、食後にスイカを出してくれたり、サービス満点。さらに生姜焼き定食がコーヒー付きで660円の安さ。食後に気さくな店主さんと楽しくおしゃべり。「自転車で日本一周なんて、私は絶対にいやだーっ!」大笑いしながら大きく手を横に振った。さらにお店を出るときに「暑いから塩分補給に」と言って浅漬けのきゅうりと氷までいただく。温かい心遣いに感謝。エネルギーも満タンチャージできたし、とてもいい時間になった。

しばらく進むと前方に栃木県那須町の標識が現れた。やった、ついに関東まで戻ってきたぞ。感傷に浸りたいところだが、予定の西那須野まで30km以上あるので、先を急ぐ。その後はひたすらペダル&時々水分補給を繰り返しながら前進。午後5時過ぎ、予約していたビジネスホテルに無事到着。明日の栃木県の降水確率90%なので、ここで2泊することにする。

宿泊地:栃木県那須塩原市
走行距離:82.1km
総走行距離:4299.4km

タカラヤ古民具骨董館
「ええっ? 国道に恐竜?」驚いて行ってみると、『タカラヤ古民具骨董館』という場所でした。今日は入れなかったが、色々あるようで、いつか中も見てみたい
田んぼアートの案内板
鏡石町に入ると『田んぼアート』の案内板が現れた。矢印に沿って進んで行く。ふたり共初めて見るので、ワクワクしながらペダルをこいだ
鏡石町の田んぼアート
鏡石町の田んぼアートは図書館の展望室から観覧できることから「窓から眺める絵本~もう一つの“図書館”~」と呼ばれている。これもひとつの絶景ですね
巨大白河だるま
長い歴史を持つ『白河だるま』。国道4号で見つけた巨大だるまは、北側から見ると魔よけ・家内安全の赤色、南側から見ると目標達成を表す白色になっていた
まんまやの店主と
ランチで入った食堂『まんまや』。ひとりでお店を切り盛りしている元気なお姉さんから、きゅうりの浅漬けと氷をいただいた。こんな出会いも旅ならでは
国道4号の栃木県境
国道4号の栃木県境にて。北海道と東北の旅が終わり、関東エリアまで戻ってきた。いよいよ東日本編のゴール、神奈川(自宅)が遠くに見えてきた

DAY89

朝起きると、叩きつけるよう激しい雨が降っていた。今日は休みにして本当によかったと思う。天気予報で場所によっては避難指示が出るくらい記録的な豪雨になっていることがわかった。久しぶりの休息日。しばらくベッドでゴロゴロ。こんな風にのんびりした時間を過ごすのは旅に出て初めてかもしれない。

夜6時過ぎ、傘を借りてスーパーへ買い出し。総菜やカップ麺などを買ってきて部屋で夕食にする。安い部屋なので椅子は一つだけ、ひとりはベッドに腰掛けて食べる。それでもなんだか幸せな気分。ざっと計算したところ、あと4日間走れば自宅に着けそうなことがわかった。本当にカウントダウンのところまで来た。最後まで気を抜かず、そして楽しみながら走ろう。

宿泊地:栃木県那須塩原市
走行距離:0km
総走行距離:4299.4km

取材協力:
ヤマハ発動機
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/ypj/
セナブルートゥースジャパン
https://senabluetooth.jp/
ステムデザイン
https://www.stem-design.net
武田レッグウェアー
https://www.rxl.jp

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