【ヤマハ・ワバッシュRT編】eバイクこの1台 自分にとって、いちばんのeバイクを選ぼう

世界中で人気が上がってきているeバイクは、毎年、ニューモデルが登場するなど勢いあるジャンルだ。最近は日本の街中でもよく見かけるようになってきたので、今後はもっと増えていくだろう。ただ、そうはいってもまだeバイクの歴史は浅く、「どんなeバイクがあるか?」「eバイクでどんなことがやれるのか?」などなど、eバイクに乗りたい人に対して、選んでもらうための情報が伝え切れていない状態だ。そこでここでは、いま存在を知っておくべきeバイクをピックアップして、それぞれのスタイルから特徴まで詳しく紹介していく。今回取り上げるのはヤマハ・ワバッシュRTだ。

ワバッシュRT

モーターサイクルメーカーが作るeバイクの魅力
YAMAHAに乗る理由

趣味で乗るeバイクなので、何より自分の感性に合うモデルに乗りたいと思うのは当然だ。でも、見た目やスペックからだけで「自分に合う」とは言えない。真剣に付き合いたいeバイクならなおさらだ。だからこそ自分が乗る理由が知りたい。

音叉マーク
音叉マークはステッカーではなくて立体的なエンブレムでヘッドチューブに付いている。こうした質感の高い仕上げもヤマハらしい
フレーム
個性的なフレームワークにはオートバイのヤマハのノウハウが詰まっている。そこを知るとこの形状がますます魅力的になる

オートバイを経験してきた人にとって、ヤマハは自分の愛機だったりライバルだったり、記憶に強く鮮やかに刻まれている存在だと思う。

オートバイに乗るということは、その乗り物に対して信頼感を持つことが必要であり、その根拠は機械としての作りの良さからくるものだ。

見て、触れてまたがって、走り出したときに感じる信頼と高揚。これはよくできた機械(乗り物)から受ける独特のイメージで、そこからヤマハなら大丈夫、楽しめる!と思ったはず。そしてアクセルを開けていったのだろう。

そんなヤマハ発動機から発売されるeバイクがWABASH RT(ワバッシュ アールティー)。

このモデルは力強い走りができるeバイクの特徴が生かせるグラベルバイクのジャンルに属していて、発売以来、多くのユーザーから選ばれている一台だ。

WABASH RTはスタイリッシュなeバイクなので、見た目で選ばれることも多いが、スポーティな乗り物におけるスタイリッシュとは、性能の良さが形状に表れている状態なので、そう見えるのは、つまりそういうものということ。

eバイクの作り方、考え方はメーカーによって違うので、どれが正解というのはないだろう。だから我々は自分の感性に合うモデルを選ぶ。

じゃあ、WABASH RTを選ぶ理由はというと……以下から紹介していこう。

ドライブユニット
ヤマハ発動機製のドライブユニットは第2世代へと進化。スペック以外にも見どころ満載。その最初の搭載モデルがWABASH RT

新型ユニットの搭載と新カラーの設定
存在感が大幅UPした、WABASH RT

小型軽量になった新しいドライブユニットにより、スタイルがよりすっきりし、走行性能も向上した新型WABASH RT。個性的で高性能なeバイクが欲しい人に勧める一台だ。

ワバッシュRT

2024年9月に発売されたWABASH RT(マイナーチェンジ)の注目点と言えば、刷新されたドライブユニット搭載にある。PWシリーズ S2と呼ぶこのユニットは、従来より約16%の軽量化を達成し、ボディサイズも約20%コンパクトになった。なお、このコンパクト化は横幅も含まれるので、より自然にペダリングできるようになっている。そのうえで最大トルクを約7%向上させているため、体感的な軽快さは数値以上となった。

搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は500Wh。条件に応じた適切なアシストを行うオートマチックアシストモードでも一充電での航続距離は94kmと長く、最も消費の少ない+エコモードであれば何と188kmの数値だ。

もう一つの変更点はカラー。従来はセレスタイトブルーのみの設定だったが、マットストーングレー(撮影車)とマットショールグレーの2色展開。フレーム以外はブラック処理されているので、どちらのカラーも引き締まって見える。

ワバッシュRT
こちらはマットショールグレー。今回のカラーは共にグレー系で落ち着いた雰囲気になった。どちらもいい色なので迷うところ

その他は従来型を踏襲しているが、WABASH RTを紹介する上で忘れてならないのがフレーム。

WABASH RTのフレームはヤマハの設計で材質はアルミ。大容量バッテリーはダウンチューブ内に格納されるが、バッテリーが大きいだけにフレーム内空間も広くなる。すると剛性に影響が出てしまうので、ダウンチューブ内構造をツインチューブとして剛性を確保している。

Point

◎小型軽量のPWseries S2ドライブユニット搭載
◎ヤマハらしくトレンドを意識したカラー
◎モーターサイクル譲りの高剛性フレーム
◎500Whの大容量バッテリーを搭載

Spec

価格●46万3100円
サイズ●S、M、L
車体サイズ●1790×580×885~ 1010mm(全長×全幅×サドル高・Mサイズ) フレーム●ハイドロフォームアルミ
フォーク●アルミリジッドフォーク 12×100mm
ドライブユニット●PWseries S 2
定格出力●250Wh/75Nm
リチウムイオンバッテリー●500Whマルチロケーションバッテリー/36V-13.1Ah
充電時間●約3.5時間
一充電での航続距離●オート94km、ハイ85km、スタンダード 99km、エコ128km、+エコ188km
シートポスト●リモテック サスペンション ドロッパーシートポスト 30.9mm×40mm(Sサイズ)、60mm(M、Lサイズ)トラベル
サドル●ヤマハオールロードサドル
シフター●シマノ・GRX RX600 11S
リヤディレーラー●シマノ・GRX RX812 11S
ブレーキ●シマノ・GRX RX400 180mmフロントローター/160mmリヤローター
タイヤ●マキシス・ランブラー ER 700×45C

Detail

フレアタイプのドロップハンドル
グラベルバイクなので、未舗装路の走行でも抑えが効くフレアタイプのドロップハンドルを装備。外観の特徴の一つだ
厚みの異なるコラムスペーサー
フォーク上部には厚みの異なるコラムスペーサーセットが入っているので、一部を抜くことで体形に合わせてハンドル位置を下げることもできる
デュアルコントロールレバー
ブレーキレバーの内側にシフターが組み込まれたデュアルコントロールレバー。コンポーネントはシマノのGRXを採用している
ディスプレイAD
バッテリー残量、走行モード、速度、オドメーター、トリップメーター、残りアシスト距離が表示できるディスプレイADを装備する
油圧ディスクブレーキ
前後のブレーキは油圧ディスクブレーキを採用。天候に左右されない効きの強さに、速度コントロールのしやすさを併せ持っている
タイヤ
未舗装路に対応するトレッドを持つタイヤをチョイス。サイズは700×45Cと太め。エアボリュームもあるので乗り心地もいい
ドライブユニット
新しくなったドライブユニットを搭載。見てハッキリ分かるほどコンパクトになった。トルクも向上してより乗りやすくなった
新旧ユニット比較
新旧のユニット比較。奥が従来型で手前が新型。サイズダウンで出力アップという内容については以下で紹介していこう
バッテリー
一充電での航続距離はハイで85km、スタンダードは99km、エコは128km、+エコは188km、オートでは94kmとなっている
バッテリー
500Whの大容量のバッテリーはフレーム内に格納。充電時間はほぼ空の状態から満充電になるまでが約3.5時間と短いもの
スプロケットまわり
ギヤは11段変速。ディレーラーはシマノのグラベルバイク用GRX RX812。チェーンステーに車名ロゴが入れられている

ドロッパーシートポストとは

ドロッパーシートポスト走行状態
ドロッパーシートポストを下げた状態
ハンドル部に付けたレバー操作でシートポストを上げ下げできるドロッパーシートポストを標準装備。ダウンヒル時のポジョション取りのために使うが、信号待ちなどでも便利だ

開発責任者に聞く─WABASH RTとは
「ヤマハらしいこだわりの作り込みが魅力の個性派スポーツeバイクがWABASH RT」

渡邉 岳さん
渡邉 岳さん
ヤマハ発動機
SPV事業部 第2開発部 車両設計3グループ グループリーダー
渡邉 岳さん
開発責任者は渡邊さん。以前はモーターサイクルの開発も担当していた。原付スクーターの「ビーノ」も渡邊さんが担当した一台

ヤマハ発動機は1993年に世界で初めて電動アシスト自転車を発売したメーカーなので、電動アシスト自転車の世界では元祖の存在だ。そして同時にオートバイのイメージが強いメーカーであり、実際、オートバイ作りで蓄積した豊富なノウハウや技術を持つところ。それだけにWABASH RTやCROSSCORE RCには、そうしたヤマハらしさが随所に盛り込まれている。

例えばフレームのダウンチューブの構造。スポーツ自転車の世界では軽くシンプルな骨格構造とするのが一般的。アルミ材質であれば異形の断面にして、そこでねじり剛性だったりをコントロールする。eバイクになるとフレーム内にバッテリーを収めるので、バッテリーを取り外しできるよう、ダウンチューブに「大きな開口部」を作る必要がある。

しかし、単純なチューブに開口部を作ってしまうと、どうしても剛性が保てない。そこでWABASHRTの開発ではオートバイの技術からインスピレーションをもらい、開口部の中に「閉じた断面の構造を仕込む」という技術を盛り込み、剛性の調整を行っている。

また、フレームと言えばデザインも他にはない独特のものになっている。WABASH RTの開発では技術的なチームの他に車両全体のデザイン担当者もいたが、技術者の作りたいものとデザイナーのそれとでは意見が違うこともあり、ときには激しい議論があったそうだ。

でも、そこで双方の仕事を尊重しながら調整をしていくと、高いレベルでの落としどころが見つかる。そして、その成果がWABASH RTのフレームデザイン。他のナニとも似ていなくて、それでいてeバイクとして必要な要素は全て持っている。こうした物作りはオートバイや機械モノが好きな人にとっては高評価のポイントだ。

フレーム
特徴的な形状は技術者とデザイナーで、たっぷり話し合って生まれた。剛性とデザインを両立させたチャレンジングな造形である

このような特徴を持つWABASH RTだが、今回のモデルは進化版なので、新しいドライブユニットなど注目点はまだある。

それらは写真入りで紹介していくが、とにかくWABASH RT、CROSSCORE RC共に、走りの性能やデザインがいいということだけでなく「技術面に引かれて買う」のがアリなモデル。こういう選び方ができるのも、ヤマハらしいところと言えるだろう。

新旧ユニット比較
右が小型化と出力向上を両立したPWseries S2。重量は2.85kg。トルクが向上していると同時に、オートマチックモード制御もアップデートされている
ユニット取り付け部
フレーム取り付け部は剛性が高く、ボルトで締め込んでも変形しない。そのためフレームにドライブユニットを装着する際、取り付け部に僅かなクリアランス(工業製品の公差の範囲)ができてしまう。そこでヤマハはボルトを締め込むとせり出てくるスリーブ的なパーツを開発しクリアランスをゼロとした
配線接続部
配線接続はコネクター式になり整備性が向上
ドライブシャフト
ドライブシャフト先端がスプライン形状になり、クランクが選びやすくなった
増えたリブ
軽量にしつつ剛性を確保するためリブが増えていたりと、旧型と比べるとメカメカしくカッコいい外観になった

Other model クロスコアRCも新型ユニット搭載。さらにコネクテッドモデルも追加

クロスコアRC

CROSSCORE RC
価格:34万1000円

CROSSCORE Connected
価格:36万6300円

日常の移動でもeバイクに乗りたい人におすすめのCROSSCORE RC。サスペンションフォークを装備し、タイヤも27.5×2.0で乗り心地は快適。ドライブユニットは新型のPWseriesS2を搭載。そしてコネクティッドモデルのCROSSCORE ConnectedではBluetooth接続ディスプレイを装備し、ケイデンス、ペダリングパワー、カロリーを表示。さらに専用アプリのYAMAHA e-Bike Linkとの接続でメンテナンス情報、バッテリーリマインド、セーフティライドアシスト、ライドログの機能が使用できる。

ディスプレイ
Bluetooth接続、バックライト付き液晶ディスプレイを装備。ボタンも大型で操作しやすい。USB出力端子(給電用)もあるのでスマホの充電もできる
ドライブユニット
ドライブユニットは新型のPWseries S2を搭載していてトルクフル。また、オートマチックアシストモードもあり、より快適に走れるeバイクだ

コネクテッド機能4項目

  • ●メンテナンスノート
  • ●バッテリーリマインド
  • ●セーフティライドアシスト
  • ●ライドログ
コネクテッド機能

ユーザーに安全安心な走行環境を提供するため、車体とネット上のサーバーが通信するコネクティッド機能を採用。さらに専用アプリYAMAHA e-Bike Linkを入れたスマホがあると上記4つの情報を表示。安心、安全な走行を支援する機能なので、将来的に発展していくものとなっている

コラムカテゴリの最新記事