60歳オーバー夫婦がeバイクで行く日本一周。昨年は東日本を一周。今年4月から西日本一周の旅がスタートした。神奈川から中部、関西、中国と進み、岡山からフェリーで香川へ渡り時計回りで四国を一周、愛媛の松山までやってきた。いよいよ瀬戸内海、しまなみ海道へ!
DAY144「瀬戸内しまなみ海道へ」
松山の宿を出発すると今治方面へ向かった。週末だからかロードバイクをポツポツ見かける。みんなしまなみ海道へ行くのだろうか? 途中から国道を離れ海寄りの県道に入ると、ガタッと車が減り走りやすくなったが、ペダルが重くなった。もしかしてアシストの故障か?と焦ったら、ただの向かい風だった。よかった〜(笑)
僕のインスタを見てくれている北条に住む三浦さんから「お菓子屋を営んでいるのでぜひお立ち寄りください」と嬉しいメッセージが入った。ちょうど今日のルートなのでお邪魔することにした。着いたお店は少しレトロな可愛いお店で、ショーケースにはカラフルなマカロンが並んでいた。
初めましてのご挨拶の後、なんと僕と同じ神奈川県の出身であることがわかった。数年前にご夫婦で愛媛北条へ移住し、このお店をオープン。次々とお客さんがくるのを見て、地元の人に愛されていることがわかった。バイク旅好きな三浦さんは僕たちの日本一周、そして生き方に、刺激を受けているという。「頑張ってください」「応援してます!」温かい言葉に送られ、再び走り出した。
今治に入ると路面に『しまなみ海道』の自転車ルートを示すブルーのラインが現れた。尾道まで約70km。島旅の始まりだ。大きなループ橋を上って行くと最初の橋『来島海峡第3大橋』が見えてくる。眼下に広がる瀬戸内海。風が気持ちいい。橋を進んで行くと、たくさんの自転車とすれ違う。年齢も性別も国籍も様々、多くの人たちが自転車を楽しんでいる。天気はいいし、景色も素晴らしい、ヒロコも自然とテンションが上がる。
最初の島、大島に上陸する。海沿いにある『道の駅よしうみいきいき館』に入ると休日なので人がいっぱい、賑やかだ。日差しが暑いので、日陰を探し、冷たい飲み物で喉を潤す。
到着した宿は古い木造建築の素朴な民家(民泊)だった。しまなみ海道の宿は強気でどこも値段が高い、その中で見つけた良心的な宿がここだった。気さくな宿主さんが「外国人観光客もたくさん来るよ、私は英語全然喋れないけどね〜」明るく笑った。
宿泊地:愛媛県今治市(大島)
走行距離:64.5km
総走行距離:6505.9km
DAY145「うさぎの島へちょっと寄り道」
しまなみ海道2日目。今日も青空だ。瀬戸内海は波もなく穏やかで、まるで湖のよう。海岸線から内陸へ行くとちょっとした峠があり、下から10人くらいの自転車が上ってきているのが見えた。勾配がきついようで、体力のない女の人はみんな押している。
自転車で楽しむには抜群の環境だが、どの橋を渡るにも長い上り坂を上らなくてはならない。普段運動をしていない人や女性が自転車で坂道を上るのはかなりの重労働。これがもしeバイクなら、かなり楽になるはず。しまなみ街道の感想が、景色を見る余裕もなく「辛かった」「キツかった」では寂しすぎるので、ぜひ、eバイクのレンタル、旅を薦めて欲しい。
伯方・大島大橋を渡って伯方島にある、道の駅『伯方S・Cパーク』へ。ここの名物が伯方の塩を使ったソフトクリーム。基本は濃厚なミルク味なのだが、塩味が効いているので、より味を深く感じることができる。景色を眺めていると溶けてきたので、急ぎ足で堪能した。道の駅では自転車旅の女の子が声をかけてきたり、タンデム自転車で旅するオーストラリア人夫婦と話をしたり。自転車旅同士の会話を楽しんだ。やはりしまなみ海道は特別な場所だ。
大三島へ向かっていると、対向車線のロードバイクから「藤原さーん」と声が飛んできた。慌ててブレーキ。誰かと思ったら、一昨年前の東京サイクルモード、サイコロジーのブースで話をした女性だった。こんなところで会うとは驚きだ。彼女たちはインスタで僕の旅をチェック、今日はこの辺りを通ると推測、探していたところ絶妙なタイミングで僕たちが現れたという。2年ぶり、嬉しいサプライズ再会となった。
大三島でお昼ごはんを食べた後、フェリーで『うさぎの島』で知られる大久野島へ向かった。かつては毒ガス工場があったことから『地図から消された島』となったが、今は約500羽ものうさぎが棲息する、うさぎ島として全国で知られるようになった。
島に上陸すると、歩きながらうさぎの姿を探したがどこにもいない。おかしいな、10数年前に来た時はたくさんのうさぎがピョンピョン跳ね回っていたのに……どこへ隠れているんだろう? しばらく歩くと、ようやく見つかった。あまりに暑いため、みんなベンチの下や木の下など日陰に集まりっているよう。そして暑さに負けてみんな横になっている。地球温暖化で大変な思いをしているのはうさぎも同じようだ。そんな状況の中でも元気に遊んでいるうさぎもいて、一緒に写真を撮ったり、短いながらふれあいを楽しんだ。
今日の宿は生口島の北部、瀬戸田町にある『ボナプール楽生苑』。昨日の昭和レトロな民宿とは一転、近代的でオシャレな建物だった。ドアもカードキーといま風。部屋は2段ベッドが並ぶドミトリースタイルなのだが、共同キッチンがあったり、シャワールームも清潔で広く、とても使いやすかった。2階に広いテラスとテーブル席があったので、スーパーで買ったお弁当やお惣菜を広げ、瀬戸田水道の景色を眺めながら食べた。
宿泊地:広島県尾道市(生口島)
走行距離:50.5km
総走行距離:6556.4km
DAY146「しまなみ海道は自転車旅人の交差点」
今日は朝から雨が降っている。天気予報によると午前9〜10時には止みそうなので、ゆっくり準備を進め、小降りになったところを見計らい出発する。懐かしいレトロな雰囲気の『しおまち商店街』を通り、海沿いの県道81号へ。
まずは道沿いにあるジェラートが美味しいお店『ドルチェ』で休憩。レモンの島と呼ばれる生口島。地元産のレモンやフルーツ素材で作ったジャラートが人気のドルチェ。景色を眺めながらジェラート食べていると嬉しいことに徐々に雲が切れ、青空が見えてきた。
同じ方向へ向かっていると、同じ人に会うことが何度もある。数回見かけた外国人女性が上り坂で自転車を押していたので声をかける。イスラエルから来た人で3週間の日本旅行をしているという。坂道が辛いようで、僕たちのeバイクを見ながら「次は私もeバイクにするわ」と笑った。
生口橋を渡り丘を下ると自転車道路の正面に青い海が広がっていた。あまりにきれいだったので海をバックに写真を撮っていると、途中で追い越した2人組の自転車女子も追いついてきた。「お疲れ様ーっ」と声をかけると「疲れましたーっ」と汗を拭きながら笑った。その後、お互いの旅のことをおしゃべり。最後はお互いのスマホを借りて写真の撮り合いっこ。おかげで良い写真を撮ってもらえた。
因島から向島に渡ると、グッと住宅が増え、車も一気に多くなった。のどかな島の景色も、日常的な景色へ変わってしまった。向島から渡し船で尾道へ渡ると、しまなみ海道の旅も終わりとなる。午後4時とまだ時間が早かったので、自転車と荷物を宿に預け、千光寺山ロープウェイに乗って展望台『PEAK』へ向かった。展望台に出ると尾道の町並み、尾道水道、さらに向島、因島など瀬戸内海の島々が一望。息をのむような大パノラマが広がっていた。その景色はしまなみ海道の旅のラストを飾るにふさわしい、特別な景色だった。
宿泊地:広島県尾道市
走行距離:35.1km
総走行距離:6591.5km
DAY147「新しさと懐かしさが融合する尾道」
雨のため尾道で連泊とする。いま泊まっているのは『あなごのねどこ』というゲストハウス。商店街の一角にある、奥へ細長く伸びた古い建物を使った宿で、奥にはさらに中庭があって、さらにその奥には別棟のお店がある。部屋は和風なのに洋風に感じるし、図書部屋があったり、いろんな場所にアートが描かれていたり。とにかく面白い宿だった。
午後2時過ぎ、ようやく雨が上がったので尾道を散歩すことに。長いアーケードの商店街を歩きながらつまみ食い、そのまま尾道駅まで歩き、さらにその先にある古い倉庫を使った施設『ONOMICHI U2』(ホテルほか、レストラン、ショップ、レンタサイクルがある)なども散策。新しいものと懐かしい景色が絶妙な距離感で混在する、魅力的な町であることを改めて知った。
宿泊地:広島県尾道市
走行距離:0km
総走行距離:6591.5km
DAY148「お好み焼きで広島を実感」
今日は朝から快晴。こんな日はすぐに走り出したいと気持ちが急く。尾道を出ると国道2号、国道185号と瀬戸内海沿いを進んで行った。竹原の道の駅で休憩していると、広島県に入ったんだから、本場のお好み焼きを食べよう盛り上がる。
ネットで見つけたお好み焼き店は年配の夫婦が営むお店で、注文するとシャカシャカパッパと手際よく焼いてくれた。完成したお好み焼きをちりとりのようなものに入れて、テーブルの鉄板に運ばれてくる。自分が食べたいサイズにヘラで切り、そのまま口へ運んでゆく。うーん、やっぱりお好み焼きはうまい。広島最高。
竹原の古い町並みを見てから、さらに国道185号を西へ向かう。時に島々が浮かぶ瀬戸内海を眺めながら、時に田畑に民家が点在する田園風景の中を進んで行く。5時少し前に今日の目的地、呉に到着した。広島県の南西部に位置する呉市は古くは海軍、いまは海上自衛隊の拠点として知られている。
予約サイトから送られてきた呉の宿の住所へ行くと、なぜか雑居ビル。ここが宿?と思いながらエレベーターで4階に上がると、作業をしていたおばさんが、受付は1階のたこ焼き屋だよと教えてくれた。
たこ焼き屋のお姉さんのタブレットで宿泊手続き。自転車は親切にも5階のスタジオの一角に置かせてくれるという。がらんとした部屋に2段ベッドが3台。シャワーはドアを開けた別の部屋にあったり、これまでとは一味違う、ユニークな宿だった。夜は里帰りで泊まっているという女性とおしゃべり。ゆっくりと呉の夜はふけていった。
宿泊地:広島県呉市
走行距離:79.9km
総走行距離:6671.4km