【ジャイアント・タロンE+編】eバイクこの1台 自分にとって、いちばんのeバイクを選ぼう

世界中で人気が上がってきているeバイクは、毎年、ニューモデルが登場するなど勢いあるジャンルだ。最近は日本の街中でもよく見かけるようになってきたので、今後はもっと増えていくだろう。ただ、そうはいってもまだeバイクの歴史は浅く、「どんなeバイクがあるか?」「eバイクでどんなことがやれるのか?」などなど、eバイクに乗りたい人に対して、選んでもらうための情報が伝え切れていない状態だ。そこでここでは、いま存在を知っておくべきeバイクをピックアップして、それぞれのスタイルから特徴まで詳しく紹介していく。今回取り上げるのはジャイアント・タロンE+だ。

タロンEプラス

街を走ると分かる、ここはeMTBの領域だ
快適さとカッコよさの両立

都会を走り抜けると感じるのが「坂が多い」ということ。それだけに都会にはパワフルなeバイクが合う。都会に合う乗りやすくてカッコいいeバイク、それがeMTBだ。

マウンテンバイク(MTB)は山で乗るために作られたスポーツ自転車。刻々と変わる路面に合わせ、身体を使っての車体コントロールがしやすい形状のフレームに、乗り手の負荷軽減に貢献しつつ走りを安定させるサスペンション、それに太いタイヤなど独自のスポーツ性を持っている。

ハードな場所を走るので、ロード専用車と比べてタフな作り、デザインになっているが、そんな自転車を街で乗るスタイルに注目したい。

実際、90年代あたりではしゃれた街の代名詞である表参道、裏原宿エリアで流行の先端を行く人がMTBを愛用していたこともあった。

これはファッション的な理由だけではなかった。表参道などがある渋谷区周辺は起伏のある地形のため坂道が多い。それでいて道も入り組んでいるので、歩道の段差を越えて走るシーンはよくあることだが、これはつまり「舗装された山や谷を走る」ようなものなので、そこではMTBの特性が生きたのだった。

さて、eMTBだ。現在も街中に様々な電動アシスト自転車が走っているが、それらと比べてeMTBは断然カッコいい。しかも特性はアシストを含めて都会にも合うものなので、そういったこと考えるとeMTBは、「都会でカッコよく快適に乗れるもの」であることは間違いない。山を走りたい人だけでなく、街乗り派にも、ぜひ注目してもらいたい。

タロンEプラス

パワフルで乗りやすいだけじゃない
街着にスーツ、どんな服も似合うからどこにだって乗っていける

山道を走ることはハードなことだが、それとはまた違うハードさがあるのが都会の道。だからこそ、タフな作りのeMTBが合う。街でeMTBに乗ることは意外ではないのだ。

タロンEプラス

タロンE+が搭載しているドライブユニットは、ヤマハと共同開発をした「シンクドライブコア2」。最大トルクは55Nmと強力で、ケイデンスは120rpmという高回転域まで対応するもの。あらゆるギヤのあらゆる乗り方であっても、性能が生かせるものになっている。

そんな走破性の高さに加えて乗りやすさも重視。扱いやすい出力特性にセッティングされているので、初心者も不安なく乗れる。

バッテリーはダウンチューブ内に500Whリチウムイオンバッテリーを格納。フレームのポートからの充電が可能だが、キーでロックを解除するとフレームから外すこともできるので、生活環境に合わせやすい。

フロントサスペンションは100mmトラベルのものを装備。加えて29×2.4サイズのエアボリュームがあるタイヤを履くので、路面からの衝撃吸収性は高く、乗り心地が良いバイクになっている。

なお、リヤはハードテールと呼ばれるリヤサスなしのタイプだ。

リヤサスがないことに物足りなさを感じることがあるかも知れないが、ハードテールはペダリングに対する車体の反応にダイレクト感があって、クイックな動きも得意なので、人や物を避けて走ることも多い街中走行において、ハードテールであることは利点だ。

フレームカラーはブラックのみだが、この色ならどんな服装にも合うので、休日のライドだけでなく、スーツでの移動にも似合うはずだ。

Point

◎ヤマハと共同開発のパワフルユニット搭載
◎100mmトラベルのフロントフォークを装備
◎走破性の高さとカッコよさを併せ持つ大径29インチタイヤ
◎500Wh大容量バッテリーをダウンチューブに搭載

Spec

価格●38万5000円
カラー●ブラック
サイズ●S、M
フレーム●ALUXXアルミニウム
フォーク●SRサンツアー・XCR32100mmトラベル
ドライブユニット●ジャイアント・シンクドライブ コア2
最大トルク●55Nm
最大ケイデンス●120rpm
バッテリー●ジャイアント・エナジーパック500 36V-3A
ディスプレイ●ジャイアント・ライドコントロールダッシュ2 in 1
ハンドルバー●ジャイアント・コネクトTRライザー31.8 720mm
サドル●ジャイアントスポーツ
シートポスト●アルミニウム30.9 350mm(S)、375mm(M)
ペダル●アルミニウムケージ
シフター●シマノ・キューズ U6000 10S
リヤディレーラー●シマノ・キューズU6000
カセットスプロケット●シマノ・キューズ LG300 10S
ブレーキ●シマノ・MT200 F:180mmローター/R:160mmローター
タイヤ●マキシス・リーコン 29×2.4
付属品●キックスタンド

Detail

フロントフォーク
フロントフォークはSRサンツアー製でトラベル量は100mm。太くてエアボリュームがあるタイヤと併せて衝撃の吸収性に優れる
フォークの調節機構
フロントフォークは本格的なもので、スプリングのプリロード調整も可能。また、伸縮動作を停止するロックアウト機能も付いている
フロントブレーキ
フロントブレーキは雨の日などでも強い制動力が出せる油圧ディスクブレーキ。メーカーはシマノをチョイスする。フロントローターの径は180mmだ
リヤブレーキ
リヤブレーキもシマノ製油圧ディスクブレーキ。ローター径は160mm。ハブは前後共にジャイアント製。フロントが110×15 28H、リヤが148×12 32H
ハンドル
ハンドル幅は60cmを超えるので、歩道通行可の歩道であっても走ると法令違反になる。それだけに車道を安定して走ることのできる性能がありがたい
タイヤ
タイヤサイズは29×2.4。ロード系と比べると太いタイヤではあるが、太過ぎるファットタイヤではない。街中にある駐輪場のタイヤ止めにもはまるはず
リヤ三角
リヤサスがないハードテール。ペダリングに対しての反応が良く、リヤサスユニットがない分、車重も軽い。街乗りでは押し歩きもあるので軽さも大事
シートポスト
シートポストはアルミ製。フレームサイズがSの場合は全長350mm、Mの場合は全長375mmのシートポストが採用される。サドルはジャイアント製
リヤディレーラー
リヤディレーラーはシマノ・キューズ U6 000。ギヤの段数は10速。ロードバイクやクロスバイクに比べて、ローギヤ設定のMTBはトップスピードは伸びないが、常用域で走りやすい
シフター
シフターは右グリップ下にある。指で押し込むだけでシフトアップもダウンもできるので、直感的な操作にも向いている。街中にも合うギヤ比と併せて積極的にシフトしたい
ドライブユニット
ドライブユニットはヤマハと共同開発したジャイアント・シンクドライブ コア2。最大トルクは55Nm。ユニットの製造はヤマハだが、制御特性はジャイアント独自で開発したもの
ディスプレイ
ハンドル左側にライドコントロールダッシュというディスプレイ&コントロール部が付く。本体にはUSBの給電ポートもあるのでスマホの充電にも便利
スポーツモード
アシストモードは4つあり、ボタン操作で切り替えできる。ディスプレイには速度、ケイデンス、距離、トリップ、平均速度、バッテリー残量など表示
バッテリー
キーでロック解除することでフレームから取り外しできるので、駐輪場に電源がなくても大丈夫。なお、充電はフレームに付けたままでも可能だ

開発担当者に聞く─ジャイアントeバイクの魅力とは
「タフで力強いだけじゃない 優れた制御でライドをサポート」

勝本 丈さん
勝本 丈さん
ジャイアント
商品部 企画課
勝本 丈さん
ジャイアントのeバイクは車種ごとにアシスト特性を最適化しているので、ユニットは同じでも乗り味は車種に合ったものになっている

ジャイアントは台湾で生まれた自転車メーカーで、現在は全世界に販売網を持つ企業。ブランド展開はジャイアントのほか、女性向けのLiv(リブ)、ハイエンドカーボンコンポーネントブランドであるCADEX(カデックス)の3つ。

そんなジャイアントがeバイクを登場させたのは2010年と古く、その後、しばしの間を置いて2019年より本格的にeバイクの発売を開始。現在はヨーロッパを中心にeバイクを販売している。

いまのeバイク界のトレンドはヨーロッパを意識したものだが、そのヨーロッパでは小径車よりフルサイズが主流。さらに最近はeMTBを街乗りで使う人も多いそうだ。

でも、それもそのはず。スポーツeバイクの中でもeMTBに搭載されるドライブユニットは力強いので、アシスト力を重視するならeMTBを選ぶだろう。それにサスペンションや太いタイヤという装備もあるので乗り心地がいいし、走行安定性もいい。

また、ポジション的に上半身が立ち気味で視界が広く取れるなど、eMTBは街乗りに向く特徴を多く持っているのだ(ただ一点、たいていのMTBはハンドル幅が広いため、日本では歩道通行が不可)。

そんなことから日本のジャイアントでも、eMTBをクロスバイク的に乗ることを勧めていて、そのためのeバイクがタロンE+である。

このモデルはオフロード向けなので、ドライブユニットのトルクは55Nmと力強いものだ。ただ、トルクが太いとグリップが低い路面ではホイールスピンしやすい傾向で、状況によってはドライブユニットの性能を生かし切れないこともある。

そこでタロンE+では、トルクの出力を決めるセンサーの高度化を行うことで、ドライブユニットから適切なタイミングで出力を引き出す。これによりグリップの低い路面でもトラクションが掛けやすい。

こうした特性は街中でも有効なもので、例えば雨で濡れた路面標示は滑りやすいが、ここで強くペダリングをしてしまうと駆動輪である後輪がスリップしやすくなる。

そして意図しないスリップは、バイクが直立した状態であっても不安定になることもあるのだが、トルクの立ち上がり特性が適切であればそうした状況にもなりにくいのだ。

街中といっても全ての道がきれいに整備されているわけでもないし、平らな地形でもない。それに日常的に乗るとなれば雨の日だってある。そんなことを考えると、制御の賢さを含めて高性能なeMTBをクロスバイク的に街中で乗るというのは大いにアリなこと。

また、他のジャンルのeバイクにはないゴツさも街中では目立つ。クルマで言うと、クロカン4WDを街中で乗るようなものでカッコいい。

街乗りのeバイクを探しているのなら、タロンE+も購入候補に入れてみることを勧めたい。

タロンEプラス
街中で乗ることを推してはいるが、eMTBなので未舗装路でのライドも楽しめる。いろいろな楽しみ方ができるのもeMTBを選ぶ利点だ

Other model もっと軽快に、もっとタフに、どちらの要望にも対応する

エスケープR E+

エスケープR E+
価格:33万円

高い走行性能を持ちながら、ロードバイクほどスポーツ度が高い車体ではないので、気軽に乗りたい人にも向いているモデル。ドライブユニットはヤマハと共同開発のシンクドライブコア。バッテリーはパナソニック製をダウンチューブ内に格納。一充電での航続距離はスポーツモードで80km、アクティブモードで95km、ツアーモードで132km、エコモードが200km(いずれも参考値)になっている。価格と性能のバランスがいいモデル。

ダウンチューブ
ドライブユニットにつながるラインが特徴的な形状のダウンチューブ内にバッテリーが収められている。バッテリーは取り外しできる
ハンドル
エスケープRE+のハンドルは60cm以内なので、歩道通行が可能なところでは歩道も走れる。駐輪の際にスペースを取らないのも便利
勝本さん
エスケープR E+に新設定されたフレームカラーは勝本さんも推すもの。撮影のときに実車を見ているがたしかにいい。きれいだ
スタンスEプラス

スタンスE+
価格:68万2000円

搭載するドライブユニットは他のモデル同様にヤマハと共同開発のものだが、最大トルクが75Nm、最高ケイデンス140rpmというハイスペックのシンクドライブ・スポーツ2となる。バッテリーも国内最大容量となる625Wh。そしてリヤサスシステムはシンプルな構造とすることで軽さや耐久性、整備性を高めている125mmトラベルシングルピボットリヤサスペンションシステム「フレックスポイント」を採用している。

リヤサスペンション
高性能ながらリンクなどの構造をシンプルにした、軽量なサスペンションシステムとなっている。また、耐久性が高いのも特徴
ドライブユニット
最大トルクが75Nmというスペックで、バッテリーも625Whと大容量。こちらは本格的にオフ走行を楽しむ人向けのモデルだ

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